土地の評価額とは|種類と目的による使い分け
土地の売却、相続、固定資産税の確認など、様々な場面で「土地の評価額」を調べる必要があります。しかし、評価額には複数の種類があり、「どの評価額を調べればよいか分からない」と悩む方は少なくありません。
この記事では、土地評価額の種類、固定資産税評価額・路線価・公示地価の調べ方を、公式情報源を元に解説します。
土地評価額の仕組みを理解することで、目的に合った評価額を正確に調べられるようになります。
この記事のポイント
- 土地評価額には公示価格・固定資産税評価額・相続税評価額・実勢価格の4種類があり、目的によって使い分ける
- 固定資産税評価額は納税通知書の課税明細書から無料で確認でき、公示価格の約70%が目安
- 相続税評価額(路線価)は国税庁公式サイトで無料確認でき、公示価格の約80%が目安、毎年7月1日頃公表
- 全国地価マップで4つの公的土地評価情報を一度に無料閲覧可能
- 評価額から実勢価格を推定する場合、固定資産税評価額÷0.7×1.1〜1.2の計算式で算出可能
(1) 公示価格(地価公示価格)|国土交通省が毎年公示
**公示価格(地価公示価格)**とは、国土交通省の土地鑑定委員会が毎年公示する標準地の「正常な価格」です。
公示価格の役割:
- 土地取引の指標となる基準価格
- 他の評価額(固定資産税評価額、相続税評価額)の基準
公表時期: 毎年3月
(出典: 国土交通省 地価公示)
(2) 固定資産税評価額|固定資産税・都市計画税の課税基準(公示価格の約70%)
固定資産税評価額とは、固定資産税や都市計画税、不動産取得税、登録免許税の課税基準となる評価額です。
特徴:
- **公示価格の約70%**を目安に設定される
- 3年に一度見直される(評価替え)
- 最新は令和6年度(2024年度)に実施
(出典: 税理士法人チェスター「相続税評価額と固定資産税評価額の違いは?」)
(3) 相続税評価額(路線価)|相続税・贈与税の申告基準(公示価格の約80%)
**相続税評価額(路線価)**とは、相続税や贈与税を申告する際の基準となる評価額です。
特徴:
- **公示価格の約80%**を目安に設定される
- 毎年7月1日頃に国税庁が公表
- 路線価方式と倍率方式がある
(出典: 税理士法人チェスター「相続税評価額と固定資産税評価額の違いは?」)
(4) 実勢価格|実際の売買価格(公示価格の約110~120%)
実勢価格とは、実際に不動産売買が成立し取引された価格です。
特徴:
- **公示価格の約110~120%**が目安
- 市場動向や周辺環境、売主・買主の個別事情により変動
- 評価額はあくまで目安であり、実勢価格は市場で決まる
(出典: 大信都市開発「土地評価額の何倍で売れる?実勢価格の計算方法と調べ方を徹底解説」)
固定資産税評価額の調べ方|無料で確認できる方法
(1) 課税明細書(納税通知書に同封)で確認
最も簡単な方法は、毎年5月頃に送付される納税通知書添付の「課税明細書」を確認することです。
確認方法:
- 納税通知書を開封
- 同封されている「課税明細書」を確認
- 「固定資産税評価額」の欄を確認
費用: 無料
(出典: HOME4U「固定資産税評価額はどこで調べる?― 課税明細書・台帳・評価証明の見方」)
(2) 固定資産課税台帳の閲覧(市区町村の役所で無料)
市区町村の役所で「固定資産課税台帳」を閲覧することで、固定資産税評価額を確認できます。
確認方法:
- 市区町村の役所(税務課・資産税課等)に行く
- 本人確認書類(運転免許証等)を提示
- 固定資産課税台帳を閲覧
費用: 無料
(出典: HOME4U「固定資産税評価額はどこで調べる?― 課税明細書・台帳・評価証明の見方」)
(3) 固定資産評価証明書の取得(300円程度)
市区町村の役所で「固定資産評価証明書」を取得することもできます。
確認方法:
- 市区町村の役所(税務課・資産税課等)に行く
- 本人確認書類を提示
- 固定資産評価証明書を申請
費用: 300円程度(自治体により異なる)
(出典: HOME4U「固定資産税評価額はどこで調べる?― 課税明細書・台帳・評価証明の見方」)
(4) 3年に一度の評価替えと最新情報の確認
固定資産税評価額は3年に一度見直される(評価替え)ため、最新の情報を確認する必要があります。
最新の評価替え: 令和6年度(2024年度)
(出典: HOMES「土地の評価額とは?調べ方や計算方法を分かりやすく解説」)
相続税評価額(路線価)の調べ方|国税庁公式サイトの使い方
(1) 国税庁「財産評価基準書」で路線価図を閲覧
国税庁の公式サイト「財産評価基準書」で、路線価図・評価倍率表を無料で閲覧できます。
確認方法:
- 国税庁「財産評価基準書」にアクセス
- 調べたい年分を選択(例:令和6年分)
- 都道府県を選択
- 路線価図または評価倍率表を選択
- 住所を入力して検索
費用: 無料
(出典: 国税庁「財産評価基準書」)
(2) 路線価方式による評価額の計算方法(路線価×土地面積)
路線価方式とは、路線(道路)に面する標準的な宅地の1平方メートルあたりの価額(路線価)を基に土地を評価する方法です。
計算式:
評価額 = 路線価 × 土地面積(㎡)
(出典: 国税庁「No.4604 路線価方式による宅地の評価」)
(3) 倍率方式による評価方法(路線価のない地域)
倍率方式とは、路線価が定められていない地域で、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて評価する方法です。
計算式:
評価額 = 固定資産税評価額 × 倍率
倍率は国税庁の「評価倍率表」で確認できます。
(4) 毎年7月1日頃の更新と令和6年分の最新情報
路線価は毎年7月1日頃に国税庁が公表します。
最新情報: 令和6年分(2024年分)の路線価が公表済み
(出典: 国税庁「令和6年分の路線価等について」)
公示地価・基準地価の調べ方|全国地価マップの活用
(1) 全国地価マップで4つの公的土地評価情報を一度に閲覧
全国地価マップは、一般財団法人資産評価システム研究センターが運営する公式サイトです。
閲覧できる情報:
- 固定資産税路線価
- 相続税路線価
- 地価公示価格
- 都道府県地価調査価格
確認方法:
- 全国地価マップにアクセス
- 調べたい地域を検索
- 4つの評価情報を一度に確認
費用: 無料
(出典: 全国地価マップ)
注意点: 全国地価マップで表示される評価額は概算であり、実際の評価額と若干の誤差が出る可能性があります。
(2) 国土交通省の地価公示・都道府県地価調査
国土交通省の公式サイトでも、地価公示価格を確認できます。
確認方法:
- 国土交通省 地価公示にアクセス
- 調べたい地域を検索
- 公示価格を確認
(3) 2024年の公示地価動向|33年ぶりの上昇
2024年の公示地価は、全国平均(全用途)で前年の1.6%から2.3%へと上昇幅を拡大しました。
トレンド:
- 33年ぶりの上昇という歴史的な動向
- 都心部からやや距離のある郊外の街で下落から上昇に転じる動きが見られる
(出典: 住宅情報館「2024年の公示地価は33年ぶりの上昇!上昇エリアが更に拡大」)
土地評価額の使い分けと実勢価格の推定方法
(1) 目的別の使い分け|固定資産税・相続税・売買価格
土地評価額は、目的によって使い分ける必要があります。
| 目的 | 使用する評価額 |
|---|---|
| 固定資産税・都市計画税 | 固定資産税評価額 |
| 相続税・贈与税 | 相続税評価額(路線価) |
| 売買価格の参考 | 実勢価格(公示価格の約110~120%) |
(2) 固定資産税評価額から実勢価格を推定|÷0.7×1.1〜1.2
固定資産税評価額から実勢価格を推定する場合、以下の計算式で算出可能です。
計算式:
実勢価格 = 固定資産税評価額 ÷ 0.7 × 1.1〜1.2
例: 固定資産税評価額が1,000万円の場合:
実勢価格 = 1,000万円 ÷ 0.7 × 1.1〜1.2 = 約1,570〜1,710万円
(出典: 大信都市開発「土地評価額の何倍で売れる?実勢価格の計算方法と調べ方を徹底解説」)
(3) 各評価額の関係性と比率の目安
各評価額の関係性を整理すると、以下の通りです。
| 評価額 | 公示価格を基準とした比率 |
|---|---|
| 公示価格 | 100% |
| 固定資産税評価額 | 約70% |
| 相続税評価額(路線価) | 約80% |
| 実勢価格 | 約110〜120% |
(4) 評価額と実勢価格の違いと注意点
重要な注意点:
- 評価額はあくまで目安であり、実際の売買価格(実勢価格)は市場動向や個別事情により変動する
- 売却を検討する場合は、複数の不動産会社に査定を依頼することを推奨
- 専門的な税務相談が必要な場合は、税理士等の専門家に相談を推奨
まとめ|土地評価額を調べる際のポイント
土地評価額には公示価格・固定資産税評価額・相続税評価額・実勢価格の4種類があり、目的によって使い分けることが重要です。
固定資産税評価額は納税通知書の課税明細書から無料で確認でき、公示価格の約70%が目安です。相続税評価額(路線価)は国税庁公式サイトで無料確認でき、公示価格の約80%が目安で、毎年7月1日頃公表されます。
全国地価マップを活用することで、4つの公的土地評価情報を一度に無料閲覧できます。評価額から実勢価格を推定する場合、固定資産税評価額÷0.7×1.1〜1.2の計算式で算出可能です。
土地評価額を調べる際は、目的に合った評価額を選び、最新の公的機関情報を確認し、専門的な判断が必要な場合は税理士等の専門家に相談しましょう。
