土地売買契約書とは?重要事項説明書との違い
土地を購入・売却する際、「売買契約書」と「重要事項説明書」の違いを正しく理解していますか。両者は役割が異なり、それぞれ確認すべきポイントがあります。
この記事では、土地売買契約書の記載内容と確認ポイントを、国税庁や宅地建物取引業法に基づいて解説します。契約前に知っておくべき知識を整理し、トラブル回避に役立ててください。
この記事のポイント
- 重要事項説明書は契約前の説明書面、売買契約書は売買契約を成立させる法的書面
- 売買契約書には物件表示、代金、引渡日、特約条項等の必須記載事項がある
- 手付金は売買代金の5〜10%が相場、手付解除の条件を事前に確認
- 印紙税は軽減措置適用中(2027年3月31日まで)
重要事項説明書と売買契約書の違い
| 書類 | 作成者 | 目的 | タイミング |
|---|---|---|---|
| 重要事項説明書 | 宅建士 | 物件・取引条件の重要事項を説明 | 契約前 |
| 売買契約書 | 不動産会社(通常) | 売買契約を成立させる | 契約時 |
重要事項説明を受け、内容を十分に理解した上で売買契約書に署名押印します。
土地売買契約書の必須記載事項と確認ポイント
(1) 売買物件の表示(所在地・地番・面積)
売買契約書には、取引対象となる土地の情報が正確に記載されている必要があります。
- 所在地・地番: 登記簿謄本と一致しているか確認
- 地目: 宅地、田、畑等の種類
- 面積: 登記面積と実測面積の違いに注意
登記面積と実測面積が異なる場合、精算方法を契約書に明記するのが一般的です。
(2) 売買代金・支払条件・引渡日
売買代金と支払スケジュールは、契約書の最重要項目です。
- 売買代金: 総額と内訳(土地代金、消費税等)
- 支払スケジュール: 手付金、中間金、残代金の金額と支払期日
- 引渡日: 所有権移転と引渡しの期日
(3) 境界明示義務と測量の取り決め
境界明示義務は売主が負うのが通例です。契約書には以下を明記します。
- 境界標の有無と明示方法
- 測量の実施有無と費用負担
- 境界確定が不可能な場合の対応方法
境界トラブルは後々の紛争原因になりやすいため、契約前に十分確認しましょう。
特約条項の読み方と代表的な条項例
(1) ローン特約(融資不承認時の契約解除)
ローン特約は、住宅ローンの審査が不承認となった場合に、無条件で契約を解除できる条項です。
- 融資承認期限: 期限までにローン承認を得る必要がある
- 解除の効果: 手付金は全額返還される
- 対象金融機関: 特約で指定された金融機関のみ適用
融資承認期限は必ず確認し、余裕を持ったスケジュールを設定しましょう。
(2) 契約不適合責任(旧・瑕疵担保責任)の範囲
2020年の民法改正により、「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に変更されました。
契約不適合責任とは、売買契約の内容と異なる目的物を引き渡した場合の売主の責任です。契約書には以下を記載するケースが多いです。
- 責任期間: 引渡しから〇ヶ月以内
- 免責条項: 特定の事項について免責とする
- 対象範囲: 土壌汚染、地下埋設物等の具体的な事項
(3) 抵当権抹消・固定資産税精算の取り決め
- 抵当権抹消: 売主が引渡し前に抵当権を抹消する義務
- 固定資産税精算: 引渡日を基準に日割り精算するのが一般的
- 都市計画税: 固定資産税と同様に日割り精算
契約時の費用(手付金・印紙税・諸費用)
(1) 手付金の相場と法的効力
手付金は売買代金の5〜10%が一般的な相場です。
- 証約手付: 契約成立の証拠
- 解約手付: 買主は手付金放棄、売主は手付金の倍額返還で契約解除可能
- 違約手付: 契約違反時の違約金として機能
契約書でどの性質の手付金か確認しておきましょう。
(2) 収入印紙の金額と軽減措置(2027年3月まで)
不動産売買契約書には印紙税がかかります。2027年3月31日まで軽減措置が適用されています。
| 契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
|---|---|---|
| 1,000万円超5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
| 5,000万円超1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
| 1億円超5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
(出典: 国税庁)
(3) その他の諸費用(登記費用・仲介手数料)
契約時・引渡し時には以下の諸費用も発生します。
- 登記費用: 所有権移転登記、抵当権設定登記等
- 仲介手数料: 物件価格の3%+6万円+消費税(上限)
- 司法書士報酬: 5〜10万円程度
契約解除の条件とトラブル回避策
(1) 手付解除・違約解除の違い
| 解除種類 | 条件 | 効果 |
|---|---|---|
| 手付解除 | 相手方が履行に着手するまで | 買主:手付金放棄 / 売主:倍額返還 |
| 違約解除 | 契約違反があった場合 | 違約金の支払い |
| ローン特約 | 融資不承認の場合 | 無条件解除、手付金全額返還 |
(2) 契約不適合責任の期間と対応方法
契約不適合責任の期間は、契約書で定めるのが一般的です。
- 民法上の原則: 買主が不適合を知った時から1年以内に通知
- 契約書での制限: 引渡しから3ヶ月〜2年程度に制限するケースが多い
- 対応方法: 修補請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約解除
契約書の記載内容をよく確認し、不明点は宅建士や弁護士に相談しましょう。
まとめ:土地売買契約書で確認すべきチェックリスト
土地売買契約書を締結する前に、以下のチェックリストで確認しましょう。
契約前の確認事項
- 物件表示(所在地、地番、面積)が登記簿と一致しているか
- 売買代金、支払スケジュール、引渡日が明記されているか
- 境界明示の方法と費用負担が記載されているか
- ローン特約の融資承認期限が余裕のある日程か
- 契約不適合責任の期間と範囲が明記されているか
- 手付金の金額と性質(解約手付等)が記載されているか
- 収入印紙の金額が正しいか
契約書の内容に不明点がある場合は、署名押印前に必ず宅建士や弁護士に相談してください。2025年時点の情報を基に解説しましたが、最新の法改正や税制は専門家に確認することをおすすめします。


