仲介手数料の領収書に印紙が必要な理由
不動産売買の仲介手数料を支払った際、不動産会社から発行される領収書に収入印紙が貼られているのを見たことがあるでしょう。「これは誰が負担するのか」「なぜ必要なのか」と疑問に感じる方も多いはずです。
この記事では、仲介手数料の領収書における印紙税の要否、金額、貼付方法、貼らなかった場合のペナルティを解説します。2019年の改正内容や2025年最新の制度を含め、国税庁の公式情報を元に正確な情報を提供します。
この記事のポイント
- 仲介手数料の領収書は5万円以上(税抜)で収入印紙が必要
- 印紙税を負担するのは不動産会社(文書作成側)で、依頼者は負担しない
- 電子領収書(PDFメール送付等)は印紙不要でコスト削減になる
- 印紙を貼らない場合は3倍の過怠税、消印を忘れた場合は1.1倍のペナルティがある
- 銀行振込の場合は振込明細が証拠になるため、領収書発行は法的に不要
(1) 領収書が課税文書に該当する条件
印紙税法では、「売上代金に係る金銭の受取書」を課税文書と定めています。これは商品やサービスの対価として金銭を受け取ったことを証明する書類を指します。
不動産会社が発行する仲介手数料の領収書はこれに該当し、一定金額以上の場合は収入印紙の貼付が必要です。
(2) 仲介手数料は「売上代金に係る金銭の受取書」に該当
仲介手数料は不動産会社の売上代金であるため、その領収書は課税文書に該当します。個人が自宅を売却した場合の売買代金の領収書とは異なり、不動産会社が営利目的で受け取る金銭の証明書となるためです。
(3) 印紙税を負担するのは不動産会社(文書作成側)
印紙税は文書を作成した側が負担します。仲介手数料の領収書は不動産会社が作成するため、収入印紙の購入・貼付は不動産会社の義務です。
依頼者(売主・買主)が印紙税を負担する必要はありません。領収書に印紙が貼られていなくても、依頼者にペナルティが課されることはありません。
印紙税の基本と課税文書の種類
(1) 印紙税とは(国税、収入印紙で納付)
印紙税は、領収書や契約書などの課税文書に課される国税です。収入印紙を文書に貼付し、消印(割印)することで納税します。
収入印紙は郵便局、法務局、一部コンビニエンスストアで購入できます。200円の印紙が最もよく使われます。
(2) 課税文書の種類(領収書、契約書等)
印紙税法では20種類の課税文書が定められています。不動産取引に関係する主な課税文書は以下の通りです。
- 不動産売買契約書
- 工事請負契約書
- 領収書(売上代金に係る金銭の受取書)
- 賃貸借契約書(一部)
(3) 非課税文書の例(電子領収書、振込明細等)
以下の文書は課税文書に該当せず、印紙税が不要です。
- 電子領収書:PDFファイルやメール等で発行する領収書
- 振込明細:銀行振込の記録(金銭受領の証明として利用可能)
- クレジットカード決済の領収書:金銭受領でないため印紙不要
- 5万円未満の領収書:非課税枠内
仲介手数料の領収書における印紙税の要否と金額
(1) 印紙が必要な金額(5万円以上、2019年改正)
2019年の税制改正により、領収書の非課税枠が3万円から5万円に引き上げられました。2025年現在、5万円以上(税抜金額で判定)の領収書に収入印紙が必要です。
5万円未満の領収書は非課税のため、印紙は不要です。
(2) 税抜金額で判定する方法(消費税区分記載)
領収書に消費税額を区分して記載すれば、本体価格(税抜金額)で印紙税額を判定できます。
例:
- 税込55,000円、税抜50,000円、消費税5,000円と記載 → 税抜50,000円は5万円未満のため印紙不要
- 税込55,000円とのみ記載 → 55,000円で判定するため印紙必要(200円)
消費税を区分記載することで、印紙税を節約できる場合があります。
(3) 金額別の印紙税額一覧(5万円〜1億円超)
| 領収書の記載金額 | 印紙税額 |
|---|---|
| 5万円未満 | 非課税(0円) |
| 5万円〜100万円以下 | 200円 |
| 100万円超〜200万円以下 | 400円 |
| 200万円超〜300万円以下 | 600円 |
| 300万円超〜500万円以下 | 1,000円 |
| 500万円超〜1,000万円以下 | 2,000円 |
| 1,000万円超〜2,000万円以下 | 4,000円 |
| 2,000万円超〜3,000万円以下 | 6,000円 |
| 3,000万円超〜5,000万円以下 | 10,000円 |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 20,000円 |
| 1億円超 | 40,000円 |
(4) 銀行振込の場合は領収書不要(振込明細が証拠)
銀行振込で仲介手数料を支払った場合、振込明細が金銭受領の証拠となります。このため、法的には不動産会社に領収書の発行義務はありません。
実務上、印紙税を節約するため、振込の場合は領収書を発行しない不動産会社も多く見られます。依頼者から求められた場合にのみ発行するケースもあります。
(5) 電子領収書なら印紙不要(PDFメール送付等)
電子領収書(PDFファイルをメールで送付する等)は課税文書に該当しないため、収入印紙は不要です。不動産会社にとってコスト削減になり、依頼者にとっても即座に受領できるメリットがあります。
電子契約・電子領収書の普及により、印紙税を削減する動きが加速しています。
(6) クレジットカード決済の領収書は印紙不要
クレジットカード決済の場合、領収書に「クレジットカード払い」と明記すれば印紙税は不要です。クレジットカード決済は金銭の直接受領ではなく、信用取引の記録であるため、課税文書に該当しません。
収入印紙の貼付方法と消印(割印)の正しいやり方
(1) 収入印紙の購入場所(郵便局・法務局・コンビニ)
収入印紙は以下の場所で購入できます。
- 郵便局:全額面の収入印紙を取り扱い
- 法務局:全額面の収入印紙を取り扱い
- コンビニエンスストア:200円の印紙が中心(一部店舗では他の額面も)
- 金券ショップ:定価より安く購入できる場合がある(ただし額面が限定的)
不動産取引では200円の印紙が最も多く使われます。
(2) 領収書への貼付位置
収入印紙は領収書の余白(通常は右上)に貼付します。貼付位置に法的な決まりはありませんが、見やすい位置に貼るのが一般的です。
(3) 消印(割印)の方法と注意点
収入印紙を貼付したら、印紙の再利用を防ぐため消印(割印)が必要です。消印は印紙と文書(領収書)にまたがって押印または署名します。
消印の方法:
- 会社印・代表者印で押印
- 署名(サインペン等で氏名を記載)
注意点:
- 印紙のみに押印しても無効(文書にもまたがる必要あり)
- 消印を忘れると過怠税が課される
(4) 消印を忘れた場合のペナルティ
消印を忘れた場合、印紙税額と同額の過怠税が課されます。例えば200円の印紙を貼ったが消印を忘れた場合、200円の過怠税が追加され、合計440円(200円+200円+消費税)の負担となります(1.1倍)。
印紙を貼らなかった場合の過怠税と注意点
(1) 印紙を貼らなかった場合の過怠税(3倍)
収入印紙を貼らなかった場合、本来の印紙税額の3倍の過怠税が課されます。例えば200円の印紙が必要なのに貼らなかった場合、600円(200円×3倍)を納付することになります。
これは当初の税額200円に加えて、2倍の罰則(400円)が課されるためです。
(2) 消印を忘れた場合の過怠税(1.1倍)
前述の通り、消印を忘れた場合は印紙税額と同額の過怠税が課され、合計で1.1倍の負担となります。
(3) 個人の営利目的売却は印紙必要(賃貸物件・駐車場等)
個人が賃貸物件や駐車場など、営利目的で所有していた不動産を売却した場合、その売買代金の領収書には収入印紙が必要です。営利目的の売却は事業所得または雑所得に該当し、課税文書の作成義務が発生するためです。
(4) 個人の非営利目的売却は印紙不要(自宅売却等)
個人が自宅など、非営利目的で所有していた不動産を売却した場合、その売買代金の領収書には収入印紙は不要です。個人の非営利取引は課税対象外となるためです。
ただし、不動産会社に支払う仲介手数料の領収書(不動産会社が発行)には印紙が必要です(営利目的の受領のため)。
まとめ:仲介手数料の領収書と印紙税の実務ポイント
仲介手数料の領収書における印紙税の要否は、金額(5万円以上・税抜)と発行形態(紙・電子)によって決まります。印紙税を負担するのは不動産会社であり、依頼者が負担する必要はありません。
2019年の改正で非課税枠が5万円に引き上げられ、消費税を区分記載すれば税抜金額で判定できるため、印紙税を節約できる場合があります。また、電子領収書(PDFメール送付等)は印紙不要でコスト削減になります。
印紙を貼らなかった場合は3倍の過怠税、消印を忘れた場合は1.1倍のペナルティが課されるため、不動産会社は適切な対応が求められます。
不明点がある場合は、税理士や税務署への相談を推奨します。2025年時点の制度を解説していますが、税制は改正される可能性があるため、最新情報の確認をお願いします。


