土地の登記事項証明書とは何か
土地の購入・売却・相続・融資など、不動産に関する手続きを進める際、「登記事項証明書を取得してください」と言われることがあります。登記事項証明書は、土地や建物の所有者、抵当権などの権利関係を確認するための重要な書類です。
この記事では、土地の登記事項証明書の役割、種類、取得方法(窓口・郵送・オンライン)、記載内容の見方、取得費用を解説します。法務局の公式情報に基づき、土地取引関係者が効率的に登記事項証明書を取得・活用するための情報を提供します。
この記事のポイント
- 登記事項証明書は土地や建物の「履歴書」のような役割を果たし、所有者・抵当権等の権利関係を確認できる
- 2008年の登記のデータ化により「登記簿謄本」から「登記事項証明書」に名称変更、内容は同じ
- 取得方法は窓口・郵送・オンラインの3種類で、オンライン請求が最も安く便利(所要10分、手数料490円)
- 全部事項証明書と現在事項証明書があり、不動産取引では過去の履歴も確認できる全部事項証明書が推奨
- 2025年4月1日から手数料が改定され、オンライン請求(窓口受取)490円、郵送520円、窓口600円
(1) 登記事項証明書の役割(不動産の履歴書)
登記事項証明書は、土地や建物の「履歴書」のような役割を果たします。不動産の所在地、面積、所有者、抵当権などの権利関係が記載されており、以下の場面で必要となります。
主な利用場面:
- 不動産の購入・売却: 所有者や抵当権の有無を確認
- 住宅ローンの申込み: 金融機関が担保価値を確認
- 相続手続き: 相続財産の確認
- 不動産トラブルの調査: 権利関係の正確な確認
登記事項証明書を確認することで、不動産取引のリスクを最小限に抑えられます。
(参照: HOME4U「不動産の登記簿謄本(登記事項証明書)の読み方は?」)
(2) 登記簿謄本との違い(2008年にデータ化で名称変更)
登記簿謄本と登記事項証明書は、内容は同じですが、2008年の登記のデータ化により名称が変更されました。
違い:
- 登記簿謄本: 旧名称(2008年以前の紙ベースの登記簿を複写したもの)
- 登記事項証明書: 現在の名称(データ化された登記記録を印刷したもの)
どちらも土地や建物の登記記録内容が記載された書類を指し、実務上は同じ意味で使われます。
(3) 誰でも取得できる公開情報(所有者への通知なし)
登記事項証明書は、他人の不動産でも誰でも取得できます。所有者への通知はされません。これは、不動産取引の透明性を確保し、権利関係を公開することで取引の安全を守るための制度です。
取得できる人:
- 不動産の所有者本人
- 不動産の購入検討者
- 不動産業者
- 金融機関
- その他、誰でも
不動産取引や相続の際に必要な情報を確認できる公開情報です。
(参照: 法務局「登記事項証明書(土地・建物)を取得したい方」)
登記事項証明書の種類と選び方
(1) 全部事項証明書(抹消事項を含む全履歴)
全部事項証明書は、抹消された事項を含む全履歴を記載した証明書です。過去の所有者や抹消された抵当権も確認できます。
記載内容:
- 現在有効な事項(所有者、抵当権等)
- 抹消された事項(過去の所有者、抹消された抵当権等)
- 全ての登記履歴
不動産取引では、過去の権利関係を確認できる全部事項証明書が一般的に推奨されます。
(参照: 自分で登記.com「登記事項証明書とは?」)
(2) 現在事項証明書(現在有効な内容のみ)
現在事項証明書は、現在有効な内容のみを記載した証明書です。過去の所有者や抹消された抵当権は記載されません。
記載内容:
- 現在有効な事項のみ(所有者、抵当権等)
- 抹消された事項は記載されない
現在の権利関係のみを確認する場合は、現在事項証明書で十分です。
(3) 一部事項証明書と閉鎖事項証明書
一部事項証明書:
- 登記記録の一部のみを記載した証明書
- 特定の事項のみを確認する場合に使用
閉鎖事項証明書:
- 閉鎖された登記記録(建物の取り壊し等)を記載した証明書
- 過去の登記記録を確認する場合に使用
(参照: 司法書士 東堤エリ事務所「全部事項証明書・現在事項証明書の違い」)
(4) 不動産取引では全部事項証明書が推奨される理由
不動産取引では、全部事項証明書が推奨されます。理由は以下の通りです。
推奨理由:
- 過去の所有者を確認: 所有権の移転経緯を把握できる
- 抹消された抵当権を確認: 過去の担保状況を確認し、トラブルを未然に防ぐ
- 権利関係の全履歴を把握: 不動産の完全な履歴を理解できる
現在事項証明書では過去の情報が確認できないため、不動産取引のリスク評価が不十分になる可能性があります。
登記事項証明書の取得方法(窓口・郵送・オンライン)
(1) 法務局窓口での取得方法(全国どこの法務局でも可)
登記記録の完全デジタル化により、全国どこの法務局でもどの不動産の登記事項証明書でも取得できます。
窓口での取得手順:
- 最寄りの法務局に行く
- 備え付けの申請用紙に記入(所在地、地番、種類等)
- 手数料600円を支払う(収入印紙または現金)
- その場で受け取る(数分〜数十分)
メリット:
- その場で受け取れる
- 不明点を窓口で質問できる
デメリット:
- 法務局の営業時間(平日8:30〜17:15)に行く必要がある
- 手数料が最も高い(600円)
(2) 郵送請求の手順と受取期間(1~3日程度)
郵送請求は、申請書を郵送して登記事項証明書を受け取る方法です。
郵送請求の手順:
- 法務局のサイトから申請書をダウンロード
- 申請書に記入(所在地、地番、種類等)
- 手数料分の収入印紙を貼付
- 返信用封筒(切手貼付)を同封
- 法務局に郵送
- 1~3日程度で登記事項証明書が郵送される
メリット:
- 法務局に行く必要がない
デメリット:
- 受取まで1~3日かかる
- 手数料は600円(窓口と同じ)
(3) オンライン請求の手順(所要10分、平日8:30~21:00)
法務局のオンライン請求は、最も便利で安い方法です。
オンライン請求の手順:
- 法務局の「かんたん証明書請求」にアクセス
- 会員登録(初回のみ、メールアドレスとパスワード設定)
- 申請画面で不動産情報を入力(所在地、地番、種類等)
- 受取方法を選択(窓口受取 or 郵送受取)
- 手数料を支払う(クレジットカード or インターネットバンキング)
- 申請完了(所要10分程度)
メリット:
- 所要10分程度で申請完了
- 平日8:30~21:00まで利用可能(土日祝日は利用不可)
- 手数料が最も安い(窓口受取490円、郵送520円)
デメリット:
- 初回は会員登録が必要
- 土日祝日や平日21時以降は利用不可
(参照: SUUMO「登記事項証明書の取り方」)
(4) 受取方法の選択(窓口受取 vs 郵送受取)
オンライン請求では、受取方法を選択できます。
窓口受取:
- 手数料: 490円
- 受取期間: 3~4時間程度(申請後、指定した法務局で受け取る)
- 急ぎの場合におすすめ
郵送受取:
- 手数料: 520円
- 受取期間: 1~3日程度(自宅に郵送される)
- 法務局に行けない場合におすすめ
登記事項証明書の記載内容の見方(表題部・甲区・乙区)
登記事項証明書は、表題部、権利部甲区、権利部乙区、共同担保目録の4つの部分で構成されています。
(1) 表題部の読み方(所在地・地目・地積)
表題部は、不動産の物的情報を記載する部分です。
記載内容:
- 所在: 土地の住所(例:東京都千代田区丸の内一丁目)
- 地番: 土地の番号(例:1番3)
- 地目: 土地の用途(宅地、田、畑、山林、雑種地など23種類)
- 地積: 土地の面積(例:200.50㎡)
地目とは、土地の用途を示す登記上の分類で、宅地・田・畑・山林・雑種地など23種類があります。地積は登記上の面積で、実測面積と異なる場合があるため、取引時は実測確認が重要です。
(参照: HOME'S「登記事項証明書とは?見方や種類を解説」)
(2) 権利部甲区の読み方(所有者情報・取得原因)
権利部甲区は、所有権に関する情報を記載する部分です。
記載内容:
- 所有者の住所氏名: 現在の所有者の情報
- 取得原因: 所有権を取得した理由(売買、相続、贈与等)
- 取得年月日: 所有権を取得した日付
- 登記の目的: 所有権移転、所有権保存等
過去の所有者も記載されており(全部事項証明書の場合)、所有権の移転経緯を確認できます。
(3) 権利部乙区の読み方(抵当権・地役権等)
権利部乙区は、所有権以外の権利に関する情報を記載する部分です。
記載内容:
- 抵当権: 住宅ローンの担保として設定される権利
- 地役権: 他人の土地を利用する権利(通行権等)
- 地上権: 他人の土地に建物を建てる権利
抵当権が設定されている場合、住宅ローンの債務が残っていることを意味します。売買時は抵当権の抹消が必要です。
(4) 共同担保目録の読み方
共同担保目録は、複数の不動産に対して設定された抵当権の情報を記載する部分です。
記載内容:
- 同一の債務に対して担保として設定された他の不動産の情報
- 土地と建物が別々に登記されている場合、両方に抵当権が設定されることが多い
共同担保目録を確認することで、他の不動産にも抵当権が設定されているかを把握できます。
(参照: 自分で登記.com「登記事項証明書の見方 イラストで解説」)
登記事項証明書の取得費用と手数料(2025年4月改定)
(1) オンライン請求(窓口受取)490円
2025年4月1日から、オンライン請求(窓口受取)の手数料は490円です(従来は480円)。
特徴:
- 最も安い取得方法
- 窓口申請より110円安い
- 受取まで3~4時間程度
(2) オンライン請求(郵送受取)520円
2025年4月1日から、オンライン請求(郵送受取)の手数料は520円です(従来は500円)。
特徴:
- 窓口申請より80円安い
- 受取まで1~3日程度
- 自宅で受け取れる
(3) 窓口での書面請求 600円
窓口での書面請求の手数料は600円です(据え置き)。
特徴:
- その場で受け取れる
- 不明点を窓口で質問できる
- 手数料が最も高い
(4) 手数料改定の理由(インフレと発行コスト)
2025年4月1日の手数料改定は、インフレや実際の発行コストを考慮したものです。
改定内容:
- オンライン請求(窓口受取): 480円 → 490円(+10円)
- オンライン請求(郵送受取): 500円 → 520円(+20円)
- 窓口での書面請求: 600円(据え置き)
(参照: 横浜地方法務局「令和7年4月1日から証明書手数料が変わります」) (参照: 司法書士あしたば法務事務所「登記事項証明書等の手数料の値上げについて」)
まとめ:登記事項証明書の効率的な取得と活用
土地の登記事項証明書は、不動産の「履歴書」のような役割を果たし、所有者・抵当権等の権利関係を確認できる重要な書類です。2008年の登記のデータ化により「登記簿謄本」から「登記事項証明書」に名称変更されましたが、内容は同じです。
取得方法は窓口・郵送・オンラインの3種類があり、オンライン請求が最も安く便利です(所要10分、手数料490円)。全部事項証明書と現在事項証明書があり、不動産取引では過去の履歴も確認できる全部事項証明書が推奨されます。
2025年4月1日から手数料が改定され、オンライン請求(窓口受取)490円、郵送520円、窓口600円です。登記事項証明書の記載内容は、表題部(所在地・地目・地積)、権利部甲区(所有者情報)、権利部乙区(抵当権等)、共同担保目録の4部構成です。
登記事項証明書で確認できるのは法的な権利関係のみであり、物件の物理的な状態や実際の利用状況は現地確認と専門家(司法書士・宅地建物取引士)への相談が必須です。
