一筆の土地とは?不動産登記の基礎知識
土地の相続や売却を検討する際、「一筆の土地」という言葉を耳にすることがあります。この用語は不動産登記における基本単位であり、土地取引の理解に欠かせません。
この記事では、一筆の土地の定義、分筆・合筆の手続き、売買時の注意点を、法務局の公式情報を元に解説します。
土地の所有や取引を正確に把握し、適切な手続きを進められるようになります。
この記事のポイント
- 一筆の土地とは、土地登記簿上の一個の土地を指す単位で、一筆ごとに地番が付される
- 分筆は1つの土地を2つ以上に分割すること、合筆は複数の土地を1つにまとめること
- 一筆の土地の一部を売買する場合は、分筆登記後に所有権移転登記が必要
- 共有状態の土地は全員の同意がなければ売却できないリスクがある
- 分筆・合筆には土地家屋調査士による測量と登記申請が必要で、費用と時間がかかる
一筆の土地とは?不動産登記の基礎知識
一筆の土地の定義と数え方
一筆の土地とは、土地登記簿上の一個の土地を指す単位です。「ひとふで」または「いっぴつ」と読みます。
土地登記簿は一筆の土地ごとに1用紙を備え、ふつう一筆につき一所有権が成立します。土地を数える際は「1筆、2筆」と数えます。
土地登記制度における一筆の役割
一筆の土地は、不動産登記制度の基本単位として重要な役割を果たします。
土地の売買契約や所有権移転登記は一筆ごとに行う必要があり、登記記録や図面も一筆ずつ取得します。この仕組みにより、土地の権利関係が明確に管理されています。
一筆ごとに一所有権が成立する仕組み
原則として、一筆の土地に対して一つの所有権が成立します。
ただし、複数人で一筆の土地を共有することも可能です。この場合、全員の合意がなければ売却できないため、共有は慎重に検討する必要があります。
一筆の土地の登記と地番
地番とは何か(一筆ごとに付される番号)
地番とは、登記所が一筆の土地ごとに付ける番号です。
一筆の土地は地番によって特定され、土地登記には必ず地番を使用します。地番は「○○番」「○○番の△」といった形式で表されます。
地番と住居表示の違い
地番と住居表示は異なります。
| 項目 | 地番 | 住居表示 |
|---|---|---|
| 目的 | 土地の特定 | 建物の住所表示 |
| 使用場面 | 不動産登記、固定資産税 | 郵便物、住民票 |
| 管理者 | 法務局 | 市区町村 |
土地の登記や売買では地番を使用するため、混同しないよう注意が必要です。
地番の調べ方と登記情報の取得方法
地番を調べる方法は以下の通りです。
- 登記情報提供サービス: オンラインで登記簿や地図を確認できます
- 法務局の窓口: 地番照会や登記事項証明書の取得が可能
- 固定資産税納税通知書: 地番が記載されています
デジタル化が進み、2025年現在は登記情報提供サービスでオンラインで確認できるようになっています。
分筆とは?手続きと費用
分筆の定義とメリット
分筆とは、1つの土地(一筆)を2つ以上に分割することです。
分筆のメリットは以下の通りです。
- 土地の一部売却が可能: 必要な部分だけを売却できる
- 相続時の公平な分配: 複数の相続人に土地を分けられる
- 用途別の管理: 住宅用と駐車場用など、用途別に分けて管理できる
分筆が必要なケース(土地の一部売却、相続等)
分筆が必要になる主なケースは以下の通りです。
- 土地の一部を売却する場合: 一筆の土地の一部だけを売買する際は、分筆登記を完了してから所有権移転登記を行う必要があります
- 相続で複数人に分ける場合: 土地を複数の相続人で分割する際に分筆を行います
- 用途を分けて利用する場合: 一部を宅地、一部を畑にするなど、用途を分けたい場合に分筆します
分筆の手続き(測量、登記申請)
分筆の手続きは以下の流れで行います。
- 土地家屋調査士に依頼: 測量と登記申請を行う国家資格者に依頼します
- 境界確定測量: 隣地所有者の立会いのもと、境界を確定します
- 分筆案の作成: どのように分割するかを決定します
- 登記申請: 法務局に分筆登記を申請します
分筆には土地家屋調査士による測量と登記申請が必要で、個人での手続きは困難です。
分筆の費用と期間の目安
分筆にかかる費用と期間は以下の通りです。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 費用 | 数十万円〜(土地の広さや複雑さによる) |
| 期間 | 数ヶ月 |
費用と時間がかかるため、売買スケジュールには十分な余裕を持つ必要があります。
合筆とは?手続きと制限
合筆の定義とメリット
合筆とは、複数の土地(複数筆)を1つにまとめることです。
合筆のメリットは以下の通りです。
- 管理の簡素化: 複数の土地を一つにまとめて管理しやすくなる
- 登記費用の削減: 登記簿が1つになるため、登記費用が削減できる
- 売却時に有利: まとまった土地として売却しやすくなる場合がある
合筆できない土地(隣接しない土地、地目が異なる土地等)
合筆には制限があり、以下のような土地は合筆できません。
- 隣接しない土地: 離れた場所にある土地同士は合筆できません
- 地目が異なる土地: 宅地と畑など、地目が異なる土地は合筆できません
- 抵当権等の権利がある土地: 一方にだけ抵当権が設定されている場合は合筆できません
- 所有者が異なる土地: 所有者が異なる土地は合筆できません
合筆する前に、これらの制限に該当しないか確認する必要があります。
合筆の手続きと注意点
合筆の手続きは、分筆と同様に土地家屋調査士に依頼して行います。
注意点として、合筆は一度行うと元に戻せません。将来的な土地利用計画を十分に検討してから実施すべきです。
合筆後は元に戻せないリスク
合筆は不可逆的な手続きです。
一度合筆すると、再び分けたい場合は新たに分筆手続きが必要になり、費用と時間がかかります。慎重な判断が求められます。
一筆の土地の売買と注意点
一筆の土地の一部を売買する方法
一筆の土地の一部譲渡は法的に可能です。
ただし、第三者に対抗するには分筆後の移転登記が必須であり、これを怠ると権利を主張できません。一筆の土地の一部だけを売却する場合は、分筆登記を完了してから所有権移転登記を行う必要があります。
分筆登記後に所有権移転登記が必要な理由
所有権移転登記は、不動産の所有権が移転したことを公示するために行う登記です。
登記は第三者対抗要件であり、登記なしでは権利を第三者に主張できません。分筆だけでは売買は完了せず、必ず所有権移転登記まで行う必要があります。
共有状態の一筆の土地のリスク(全員の合意が必要)
複数人で一筆の土地を共有すると、全員の合意がなければ売却できない制約があります。
相続等で共有者が増えると合意形成が極めて困難になるリスクがあるため、共有は慎重に検討すべきです。可能であれば、分筆して各自が単独所有する形にすることを推奨します。
専門家(土地家屋調査士・司法書士)への相談の重要性
不動産登記は専門的な手続きであるため、不明点は土地家屋調査士や司法書士等の専門家に相談することを推奨します。
特に分筆・合筆は費用と時間がかかるため、事前に専門家の助言を受けることで、無駄な出費や手続きミスを避けることができます。
まとめ:一筆の土地に関する重要ポイント
一筆の土地とは、土地登記簿上の一個の土地を指す単位であり、一筆ごとに地番が付されて特定されます。土地の売買や相続では、この一筆という概念を理解しておくことが重要です。
分筆は1つの土地を2つ以上に分割すること、合筆は複数の土地を1つにまとめることです。一筆の土地の一部を売買する場合は、分筆登記後に所有権移転登記が必要であり、この手続きを怠ると権利を第三者に主張できません。
分筆・合筆には土地家屋調査士による測量と登記申請が必要で、費用(数十万円〜)と時間(数ヶ月)がかかります。売買スケジュールには十分な余裕を持ち、専門家に相談しながら進めることをお勧めします。
