土地所在図とは|不動産取引で必要になる場面
土地の購入・売却や相続手続きを進める際、「土地所在図」という図面の提出を求められることがあります。この図面がどのようなもので、どこで取得できるのか不安に感じる方も少なくありません。
この記事では、土地所在図の定義、取得方法、図面の見方、活用シーンを、法務省・法務局の公式情報を元に解説します。
初めて不動産取引や登記手続きに関わる方でも、必要な図面を正確に取得できるようになります。
この記事のポイント
- 土地所在図は1筆の土地の所在位置を示す図面で、表題登記の申請時に提出が必要
- 法務局窓口(450円)、オンライン請求(440-470円)、登記情報提供サービスの3つの方法で取得可能
- 地積測量図とセットで作成されることが多く、公図とは役割が異なる
- 2023年1月から法務省が地図データを一般公開し、無料で土地の位置を確認できるようになった(証明書としては使えない)
- 全ての土地に存在するわけではなく、分筆登記等が行われた土地にのみ存在
土地所在図の定義と他の図面との違い
土地所在図は、1筆の土地の所在位置を表示した図面です。方位、土地の形状、隣地の地番を記載し、表題登記の申請時に提出します。
法務省の不動産登記規則第73条によると、土地所在図は以下の要件で作成されます。
- 方位を記載
- 土地の形状を表示
- 隣地の地番を記録
- 近傍類似の土地の地図と同一の縮尺で作成
(1) 土地所在図と地積測量図の関係
土地所在図と地積測量図は、セットで提出されることが多い図面です。
| 項目 | 土地所在図 | 地積測量図 |
|---|---|---|
| 目的 | 土地の所在位置を示す | 測量結果(面積・寸法)を記載 |
| 記載内容 | 方位、土地の形状、隣地の地番 | 面積、辺の長さ、座標、測量年月日 |
| 提出時期 | 表題登記の申請時 | 表題登記の申請時(セット) |
| 取得場所 | 法務局 | 法務局 |
(出典: 盛岡地方法務局)
(2) 公図(地図に準ずる図面)との違い
公図は、複数の土地の位置関係を示す図面です。土地所在図とは以下の点で異なります。
| 項目 | 土地所在図 | 公図 |
|---|---|---|
| 対象 | 1筆の土地 | 複数の土地 |
| 内容 | 土地の所在位置 | 土地の位置関係、地番、道路、水路 |
| 用途 | 表題登記の申請 | 土地の位置確認、隣地関係の把握 |
| 精度 | 実測に基づく | 明治時代の地租改正時に作成されたものも多く、現況とずれがある場合もある |
(出典: 法務局にある「地図」「公図」「地積測量図」の違いはなんですか)
土地所在図の取得方法と手順
土地所在図は、以下の3つの方法で取得できます。
(1) 法務局窓口での取得
手順:
- 管轄の法務局を確認(法務局ホームページで検索)
- 窓口で「土地所在図の交付申請」を依頼
- 土地の所在地(地番)を伝える
- 手数料450円を支払い、図面を受け取る
メリット:
- 即日取得可能
- 登記官の印鑑がある正式な証明書
デメリット:
- 法務局の開庁時間内(平日8:30-17:15)に行く必要がある
(2) オンライン請求(かんたん証明書請求)の手順
登記・供託オンライン申請システムを利用すると、自宅から土地所在図を請求できます。
手順:
- 申請用総合ソフトをダウンロード(初回のみ)
- 土地所在図の交付請求を選択
- 土地の所在地(地番)を入力
- 手数料をクレジットカードまたはインターネットバンキングで支払い
- 郵送または法務局窓口で受け取り
手数料:
- 郵送: 470円
- 窓口交付: 440円
メリット:
- 自宅から請求できる
- 窓口取得より安い(窓口交付440円)
デメリット:
- 郵送の場合は到着まで数日かかる
- 初回は申請用ソフトのインストールが必要
(出典: 公図、地図、地積測量図とは?違いや取得方法をわかりやすく解説)
(3) 登記情報提供サービスでの閲覧
登記情報提供サービスを利用すると、土地所在図をPDFで即時閲覧できます。
手順:
- 登記情報提供サービスに利用登録(初回のみ)
- 土地の所在地(地番)を検索
- 土地所在図を選択し、PDFをダウンロード
- 手数料367円(クレジットカード決済)
メリット:
- 即時閲覧可能(24時間365日)
- 最も安い
デメリット:
- 登記官の印鑑がないため、銀行や役所への正式な提出には使えない場合がある
- 証明書が必要な場合は、法務局窓口またはオンライン請求を利用
土地所在図の見方と記載内容
土地所在図には、以下の情報が記載されています。
(1) 方位・縮尺・土地の形状
- 方位: 図面上部に「N」(北)の矢印で表示
- 縮尺: 「1/500」「1/250」等、近傍類似の土地の地図と同一の縮尺
- 土地の形状: 対象地の輪郭を太線で表示
(2) 隣地の地番と境界
- 隣地の地番: 対象地の周囲にある土地の地番を記載
- 境界: 隣地との境界線を表示
- 道路・水路: 対象地に接する道路や水路の位置を記載
法務省の規定により、これらの情報は正確に記載されることが求められています。
取得時の注意点とよくある疑問
(1) 全ての土地にあるわけではない
土地所在図は、分筆登記など表題登記が行われた土地にのみ存在します。
以下のような場合、土地所在図がない可能性があります。
- 古くからの土地で、登記が更新されていない
- 分筆・合筆が行われていない
- 地積測量図が作成されていない
土地所在図がない場合は、公図や14条地図で土地の位置を確認します。詳細は法務局にご相談ください。
(2) 証明書とオンライン閲覧の違い
| 項目 | 法務局の証明書 | 登記情報提供サービス |
|---|---|---|
| 登記官の印鑑 | あり | なし |
| 正式な証明書 | ✅ 使える | ❌ 使えない場合がある |
| 用途 | 銀行・役所への提出 | 参考資料・事前確認 |
| 手数料 | 440-470円 | 367円 |
(出典: 公図、地図、地積測量図とは?違いや取得方法をわかりやすく解説)
無料で土地の位置を確認する方法:
2023年1月から、法務省が地図データをG空間情報センター経由で一般公開しています。公図ビューアやMAPPLE法務局地図ビューアを利用すると、誰でも無料で土地の位置を確認できます。
ただし、これらのサービスで閲覧できるデータは証明書としては使えません。正式な登記手続きには、法務局発行の証明書が必要です。
まとめ:目的に応じた図面の選び方
土地所在図は、1筆の土地の所在位置を示す図面で、表題登記の申請時に提出が必要です。法務局窓口、オンライン請求、登記情報提供サービスの3つの方法で取得できます。
地積測量図とセットで作成されることが多く、公図とは役割が異なります。全ての土地に存在するわけではなく、分筆登記等が行われた土地にのみ存在します。
証明書が必要な場合は法務局の正式な交付申請を、事前確認や参考資料としては登記情報提供サービスや無料の公図ビューアを活用すると良いでしょう。
不動産取引や相続手続きで不明点がある場合は、土地家屋調査士、司法書士、弁護士等の専門家にご相談ください。
