土地総合情報システムとは?不動産情報ライブラリへの名称変更
不動産の売却や購入を検討する際、「実際の取引価格はいくらなのか」と疑問に思う方は少なくありません。
この記事では、国土交通省が提供する公的な不動産取引価格データベース「土地総合情報システム(現:不動産情報ライブラリ)」の使い方、データの見方、活用方法を国土交通省公式サイトの情報を元に解説します。
公的データを活用して、適正な不動産相場を把握し、失敗しない不動産取引の判断材料を得られるようになります。
この記事のポイント
- 土地総合情報システムは2024年3月末で廃止され、4月から「不動産情報ライブラリ」に名称変更
- 2006年以降の約547万件の不動産取引価格データを無料で閲覧可能(2025年3月31日時点)
- 実際の成約価格(売り出し価格ではない)が表示されるため、正確な相場把握に有用
- 地図検索と地域選択の2つの検索方法があり、直感的に操作できる
- アンケート回答に基づくデータのため、全ての取引が掲載されているわけではなく、参考値として活用すべき
(1) 土地総合情報システムの概要と運営主体
土地総合情報システムは、国土交通省が運営していた不動産取引価格情報提供サイトです。2006年4月から運用を開始し、実際の不動産取引価格をデータベース化して公開してきました。
2024年3月末で「土地総合情報システム」は廃止され、2024年4月から「不動産情報ライブラリ」に名称変更されました。機能は継承・強化され、より使いやすくなっています。
(2) 2024年4月の名称変更とリニューアル
2024年4月1日から「不動産情報ライブラリ」として運用が開始されました。主な変更点は以下の通りです。
| 項目 | 変更前(土地総合情報システム) | 変更後(不動産情報ライブラリ) |
|---|---|---|
| 名称 | 土地総合情報システム | 不動産情報ライブラリ |
| 提供情報 | 取引価格、地価情報が主 | 取引価格、地価、災害リスク、都市計画情報等を統合 |
| 使いやすさ | PC中心 | スマートフォン対応強化 |
| URL | https://www.land.mlit.go.jp/ | https://www.reinfolib.mlit.go.jp/ |
(出典: 国土交通省|報道資料|「不動産情報ライブラリ」の運用を開始します)
国・地方自治体がバラバラに提供していた不動産関連情報が統合され、一つのサイトで確認できるようになりました。
(3) 不動産取引価格情報提供制度の仕組み
不動産情報ライブラリのデータは、「不動産取引価格情報提供制度」に基づいて収集されています。
仕組み:
- 不動産取引完了後: 登記手続きを行った取引当事者にアンケートを送付
- アンケート回答: 取引価格、物件の詳細、取引時期等を回答(任意)
- データ蓄積: 回答内容をデータベース化(個人情報保護のため詳細住所は非公開)
- 公開: 四半期ごとに更新し、誰でも閲覧可能に
2025年3月31日時点で約547万件のデータが蓄積されています。
不動産情報ライブラリで何ができる?提供データの種類
(1) 不動産取引価格情報(547万件のデータ蓄積)
実際の不動産取引の成約価格を確認できます。
提供される情報:
- 取引価格: 実際の成約価格(売り出し価格ではない)
- 所在地: 町名または地区名まで(個人情報保護のため詳細住所は非公開)
- 物件種別: 土地、土地と建物、中古マンション、農地、林地
- 取引時期: 年・四半期単位
- 土地面積・建物面積: ㎡単位
- 築年数: 中古マンション・建物の場合
- 最寄り駅: 駅名と徒歩時間
(2) 地価公示と都道府県地価調査
地価公示(国土交通省が毎年1月1日時点で公表)と都道府県地価調査(各都道府県が毎年7月1日時点で公表)のデータも確認できます。
取引価格との違い:
- 地価公示・都道府県地価調査: 標準地・基準地の1㎡あたりの価格
- 取引価格: 実際の取引の総額
地価公示は土地取引の指標として用いられますが、実際の取引価格は個別の条件により異なります。
(3) 災害リスク情報と都市計画情報
2024年4月のリニューアルで、以下の情報も統合されました。
- 災害リスク情報: 洪水ハザードマップ、土砂災害警戒区域等
- 都市計画情報: 用途地域、建ぺい率・容積率等
これらの情報を組み合わせることで、より総合的な不動産の評価が可能になります。
不動産情報ライブラリの使い方:検索方法と手順
(1) 地図から検索する方法
地図を見ながら直感的に検索できる方法です。
手順:
- 不動産情報ライブラリにアクセス
- 「地図から検索」を選択
- 地図上で調べたいエリアを拡大表示
- 物件種別(土地、土地と建物、中古マンション等)を選択
- 時期(年・四半期)を選択
- 地図上のピンをクリックして取引価格を確認
(2) 地域選択から検索する方法
住所や駅名から検索する方法です。
手順:
- 不動産情報ライブラリにアクセス
- 「地域から検索」を選択
- 都道府県、市区町村を選択
- 物件種別と時期を選択
- 取引価格の一覧表を確認
(3) 物件種別と時期の絞り込み
物件種別は以下の5つから選択できます。
- 土地: 更地、宅地等
- 土地と建物: 戸建て住宅等
- 中古マンション: 区分所有建物
- 農地: 農業用地
- 林地: 山林
時期は四半期単位で選択でき、過去の価格推移を確認できます。2006年以降のデータが蓄積されているため、長期的な相場の変動も把握可能です。
取引価格データの読み方と相場判断への活用
(1) 成約価格データの見方
表示される取引価格は「実際の成約価格」です。売り出し価格(希望価格)とは異なり、より正確な相場を示します。
確認すべきポイント:
- 取引価格: 総額(万円)
- 単価: 1㎡あたりの価格(万円/㎡)
- 土地面積: ㎡または坪
- 建物面積: ㎡または坪(建物がある場合)
- 築年数: 中古マンション・建物の場合
- 最寄り駅: 駅名と徒歩時間
(2) 価格相場の判断方法
複数の取引事例を比較して、相場の目安を把握します。
判断のポイント:
- 同じエリアの複数の事例を確認: 1件だけでは偏りがあるため、複数件を比較
- 条件の類似性を確認: 土地面積、築年数、駅からの距離等が似ている事例を優先
- 時期を考慮: 市場環境の変化を反映するため、直近の取引を重視
- 単価で比較: 物件規模が異なる場合は、1㎡あたりの単価で比較
(3) 利用時の注意点:データの限界と個別性
不動産情報ライブラリのデータには、以下の限界があります。
注意点:
- 全取引が掲載されているわけではない: アンケート回答に基づくデータのため、サンプルとして活用
- 詳細住所は非公開: 個人情報保護のため、町名または地区名まで
- 個別の条件は反映されない: 日当たり、眺望、周辺環境等の個別要因は価格に影響するが、データには表示されない
- 四半期ごとの更新: 最新の取引データは次回更新まで反映されない
個別の不動産査定は、不動産会社や不動産鑑定士等の専門家への相談を推奨します。
レインズや他サービスとの違い
(1) レインズとの違い:閲覧権限と情報の範囲
レインズ(REINS:不動産流通機構が運営する不動産情報ネットワーク)との違いは以下の通りです。
| 項目 | 不動産情報ライブラリ | レインズ |
|---|---|---|
| 閲覧権限 | 誰でも利用可能 | 宅建業者のみ |
| 提供情報 | 成約価格(過去の取引) | 売り出し中の物件情報 |
| 詳細住所 | 町名まで | 詳細住所(宅建業者のみ) |
| 目的 | 相場把握 | 物件仲介 |
レインズは宅建業者専用のシステムであり、一般の方は利用できません。不動産情報ライブラリは誰でも無料で利用できる点が大きな違いです。
(2) 民間不動産サイトとの使い分け
民間の不動産ポータルサイト(SUUMO、HOME'S等)との違いは以下の通りです。
| 項目 | 不動産情報ライブラリ | 民間不動産サイト |
|---|---|---|
| 運営主体 | 国土交通省(公的機関) | 民間企業 |
| 提供情報 | 成約価格(過去の取引) | 売り出し中の物件(希望価格) |
| 信頼性 | 公的データのため高い | サイトにより異なる |
| 物件の詳細 | 限定的 | 写真・間取り・設備等が豊富 |
使い分け:
- 相場把握: 不動産情報ライブラリで成約価格を確認
- 物件探し: 民間不動産サイトで売り出し中の物件を検索
(3) 路線価・固定資産税評価額との違い
路線価や固定資産税評価額は、税金計算の基準となる公的な土地評価額です。
| 項目 | 不動産情報ライブラリ | 路線価 | 固定資産税評価額 |
|---|---|---|---|
| 目的 | 取引価格の参考 | 相続税・贈与税の計算 | 固定資産税の計算 |
| 評価額の水準 | 実勢価格に近い | 実勢価格の約80% | 実勢価格の約70% |
| 更新頻度 | 四半期ごと | 毎年1月1日時点 | 3年ごと |
路線価や固定資産税評価額は税金計算に使われますが、実際の取引価格とは異なります。
まとめ:不動産情報ライブラリの活用が効果的な場面
土地総合情報システムは2024年3月末で廃止され、4月から「不動産情報ライブラリ」に名称変更されました。2006年以降の約547万件の不動産取引価格データを無料で閲覧でき、実際の成約価格が表示されるため、正確な相場把握に有用です。
国土交通省が運営する公的データであり、信頼性が高い点が特徴です。地図検索と地域選択の2つの検索方法があり、直感的に操作できます。
不動産情報ライブラリの活用が効果的な場面:
- 不動産売却・購入前の相場把握: 適正価格の目安を知りたい
- 査定価格の妥当性確認: 不動産会社の査定額が適正か確認したい
- 不動産投資の判断材料: 投資エリアの価格推移を把握したい
- 公的データを重視: 民間サイトだけでなく、公的な情報源も確認したい
ただし、アンケート回答に基づくデータのため、全ての取引が掲載されているわけではなく、参考値として活用すべきです。個別の不動産査定は、不動産会社や不動産鑑定士等の専門家への相談を推奨します。
不動産取引は人生の大きな決断です。公的データを活用しながら、複数の情報源を組み合わせて、慎重に判断しましょう。
