土地評価額とは:不動産取引・税金計算の基準となる価格
土地評価額の定義:公的機関が公表する指標となる価格
土地評価額とは、公的機関が公表する「指標となる土地の価格」です。不動産取引の参考価格や、固定資産税・相続税などの税金計算の基準として使用されます。
土地の価格は市場で変動しますが、税金を計算するには公平な基準が必要です。そのため、国土交通省や国税庁、都道府県などの公的機関が、毎年決まった時期に評価額を公表しています。
土地評価額が必要な場面:税金計算・売買の参考・相続
土地評価額は、主に以下の場面で必要になります。
- 固定資産税の計算: 毎年納める固定資産税は、固定資産税評価額を基準に算出
- 相続税・贈与税の計算: 相続や贈与で土地を取得した際、路線価(相続税評価額)を基準に税額を算出
- 不動産売買の参考価格: 実勢価格や公示地価を参考に、適正な売買価格を判断
- 不動産鑑定の基礎資料: 不動産鑑定士が鑑定評価を行う際の基礎データ
土地は「一物四価」(または「一物五価」)と呼ばれ、1つの土地に対して4〜5種類の評価額が存在します。目的に応じて、使用すべき評価額が異なる点に注意が必要です。
土地評価額は「一物四価」:4種類の評価額とその違い
この記事のポイント
- 土地評価額は「一物四価」と呼ばれ、公示地価、基準地価、路線価、固定資産税評価額の4種類が存在
- 固定資産税評価額は公示地価の70%程度、路線価は公示地価の80%程度が目安
- 目的によって使用すべき評価額が異なる(固定資産税→固定資産税評価額、相続税→路線価、売却価格の参考→公示地価・実勢価格)
- 評価額は公的サイト(全国地価マップ、国土交通省「不動産情報ライブラリ」)で無料閲覧可能
- 専門的な計算が必要な場合は、不動産鑑定士・税理士への相談を推奨
公示地価:国土交通省が毎年1月1日時点で公表
公示地価は、国土交通省が毎年1月1日時点で公表する土地の標準価格です。毎年3月に公表され、全国約26,000地点の標準地の1㎡あたりの価格が示されます。
公示地価は、一般の土地取引の指標となるほか、公共事業用地の取得価格の基準にも使用されます。他の評価額の基準となる「基準価格」としての役割も果たしています。
基準地価:都道府県が毎年7月1日時点で公表
基準地価は、都道府県が毎年7月1日時点で公表する土地の標準価格です。毎年9月に公表され、全国約21,000地点の基準地の1㎡あたりの価格が示されます。
公示地価は都市計画区域内が対象ですが、基準地価は都市計画区域外も含まれるため、より広い地域の価格を把握できます。公示地価と基準地価を組み合わせることで、年2回(1月・7月)の地価動向を確認できます。
相続税評価額(路線価):公示地価の80%程度、相続税・贈与税の基準
相続税評価額(路線価)は、国税庁が毎年1月1日時点で評価し、7月に公表する土地の価格です。相続税・贈与税を計算する際の基準として使用されます。
路線価は、公示地価の80%程度が目安とされています。路線(道路)に面した土地の1㎡あたりの価格が千円単位で表示されます。
路線価は、国税庁の公式サイトで確認できます。令和6年(2024年)分の路線価は、7月に公表されました。
固定資産税評価額:公示地価の70%程度、固定資産税の基準
固定資産税評価額は、市町村(東京23区は都)が決定する土地の価格です。3年ごとに評価替えが行われ、固定資産税・都市計画税・不動産取得税・登録免許税などの税金計算の基準となります。
固定資産税評価額は、公示地価の70%程度が目安です。毎年4〜6月に送付される「固定資産税納税通知書」に記載されています。
実勢価格:実際の取引で成立した価格
実勢価格は、実際の不動産取引で成立した価格です。市場の需要と供給により決まるため、公的な評価額とは異なる場合があります。
実勢価格は、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で実際の取引価格を確認できます。売却を検討する際は、実勢価格を参考にすることが重要です。
土地評価額の調べ方:公的サイトと必要書類
全国地価マップで4種類の評価額を無料閲覧
全国地価マップは、一般財団法人資産評価システム研究センターが提供する無料サイトです。以下の4種類の公的土地評価情報を地図上で閲覧できます。
| 評価額の種類 | 公表機関 | 基準日 | 公表時期 |
|---|---|---|---|
| 固定資産税路線価 | 市町村 | 1月1日 | 4〜6月(納税通知書) |
| 相続税路線価 | 国税庁 | 1月1日 | 7月 |
| 地価公示価格 | 国土交通省 | 1月1日 | 3月 |
| 都道府県地価調査価格 | 都道府県 | 7月1日 | 9月 |
全国地価マップは、住所または地図から該当する土地を検索できます。4種類の評価額を一度に確認できるため、土地の価格を把握する際に便利です。
国土交通省「不動産情報ライブラリ」で実勢価格を確認
国土交通省の「不動産情報ライブラリ」では、実際に取引された不動産の価格(実勢価格)を確認できます。
検索方法は以下の通りです。
- 「不動産取引価格情報検索」を選択
- 都道府県・市区町村・地区を指定
- 取引時期・土地の種類を選択
- 検索ボタンをクリック
実勢価格は市場動向により変動するため、売却を検討する際は、複数の取引事例を参考にすることが推奨されます。
固定資産税納税通知書で固定資産税評価額を確認
固定資産税評価額は、毎年4〜6月に送付される「固定資産税納税通知書」に記載されています。納税通知書には、「価格」または「評価額」として記載されています。
納税通知書を紛失した場合は、市町村(東京23区は都税事務所)で「固定資産評価証明書」を取得することで確認できます。
固定資産税の計算方法と相続税・贈与税への活用
固定資産税の計算式:固定資産税評価額×標準税率1.4%
固定資産税は、以下の計算式で算出されます。
固定資産税 = 固定資産税評価額 × 標準税率1.4%
標準税率は1.4%ですが、市町村により異なる場合があります。また、住宅用地の場合、以下の軽減措置が適用されます。
| 住宅用地の区分 | 軽減措置 |
|---|---|
| 小規模住宅用地(200㎡以下の部分) | 評価額を1/6に軽減 |
| 一般住宅用地(200㎡超の部分) | 評価額を1/3に軽減 |
路線価方式の計算式:路線価×奥行価格補正率×土地面積
路線価方式は、路線価が設定されている地域で使用される計算方法です。国税庁の公式サイトによると、以下の計算式で算出されます。
相続税評価額 = 路線価 × 奥行価格補正率 × 土地面積
路線価は千円単位で表示されるため、実際の金額に換算する際は1,000倍します。奥行価格補正率は、土地の奥行距離に応じて適用される補正率です。
倍率方式の計算式:固定資産税評価額×倍率
倍率方式は、路線価が設定されていない地域で使用される計算方法です。以下の計算式で算出されます。
相続税評価額 = 固定資産税評価額 × 倍率
倍率は、国税庁の「評価倍率表」に地域ごとに定められています。
計算例:具体的な数値での実例
例1:固定資産税の計算(小規模住宅用地)
- 固定資産税評価額:1,800万円
- 土地面積:150㎡(小規模住宅用地に該当)
- 軽減措置:評価額を1/6に軽減
固定資産税 = 1,800万円 × 1/6 × 1.4% = 42,000円
例2:路線価方式による相続税評価額の計算
- 路線価:300千円(= 30万円/㎡)
- 奥行価格補正率:1.00(標準的な奥行)
- 土地面積:200㎡
相続税評価額 = 30万円 × 1.00 × 200㎡ = 6,000万円
土地評価額を活用する際の注意点とリスク
評価額の種類によって金額が異なる
1つの土地に対して複数の評価額が存在するため、目的に応じて正しい評価額を使用する必要があります。
| 目的 | 使用すべき評価額 |
|---|---|
| 固定資産税の計算 | 固定資産税評価額 |
| 相続税・贈与税の計算 | 路線価(相続税評価額) |
| 売却価格の参考 | 公示地価・実勢価格 |
| 不動産鑑定 | 不動産鑑定価格 |
実勢価格は市場動向により変動
実勢価格は、市場の需要と供給により変動します。公示地価や路線価は過去の時点(1月1日または7月1日)の評価額であるため、最新の市場動向とは乖離する場合があります。
売却を検討する際は、複数の不動産会社に査定を依頼し、最新の実勢価格を確認することが推奨されます。
土地の形状・接道状況による補正率の適用
路線価方式で評価額を計算する際、土地の形状や接道状況により、以下の補正率を適用する必要があります。
- 奥行価格補正率: 土地の奥行距離に応じて適用
- 側方路線影響加算率: 角地など、側方に道路が接している場合に適用
- 二方路線影響加算率: 2つの道路に接している場合に適用
- 不整形地補正率: 土地の形状が不整形な場合に適用
これらの補正率は、国税庁の「財産評価基準書」に詳細が記載されています。専門的な計算が必要な場合は、税理士への相談を推奨します。
専門家(不動産鑑定士・税理士)への相談を推奨
土地評価額の計算は、基本的な方法であれば自分で行うことも可能ですが、以下の場合は専門家への相談を推奨します。
- 相続税・贈与税の申告: 税理士に相談し、適切な評価額を算出
- 土地の形状が複雑: 不動産鑑定士に依頼し、正確な評価額を算出
- 売却価格の判断: 複数の不動産会社に査定を依頼し、適正価格を確認
まとめ:目的に応じた土地評価額の使い分け
土地評価額は「一物四価」と呼ばれ、公示地価、基準地価、路線価、固定資産税評価額の4種類が存在します。目的によって使用すべき評価額が異なるため、以下のように使い分けることが重要です。
- 相続税・贈与税の計算: 路線価(公示地価の80%程度)
- 固定資産税の計算: 固定資産税評価額(公示地価の70%程度)
- 売却価格の参考: 公示地価・実勢価格
評価額は、全国地価マップや国土交通省「不動産情報ライブラリ」で無料閲覧できます。ただし、土地の形状や接道状況により補正率を適用する必要があるため、専門的な計算が必要な場合は、不動産鑑定士や税理士への相談を推奨します。
最新の情報は毎年更新されるため、税金の計算や不動産取引を行う際は、最新の評価額を確認しましょう。
