神奈川県の土地市場の特徴と本記事の目的
神奈川県で土地を購入して注文住宅や賃貸物件を建てたいと考える方にとって、「どのエリアを選べばよいのか」「土地価格はいくらが適正なのか」という疑問は尽きません。神奈川県は東京都心部へのアクセスが良好で、人口流入が続き、土地価格が4年連続で上昇している注目のエリアです。
この記事では、神奈川県の土地価格相場と推移、エリア別の価格相場と地域特性、土地購入時の注意点とチェックポイント、土地購入の流れと諸費用の内訳を解説します。国土交通省の公示地価データや神奈川県の公式統計等の公的情報も活用しながら、読者が自分で判断できるようサポートします。
初めて土地を購入する方でも、神奈川県内のエリアごとの特徴を理解し、自分に合った土地を選べるようになります。
この記事のポイント
- 神奈川県の土地価格は4年連続上昇、2025年公示地価は前年比+4.12%で全国トップクラス
- エリア別(横浜市、川崎市、湘南エリア、相模原市等)の坪単価と地域特性を理解し、通勤・生活スタイルに応じて選ぶ
- 立地(交通アクセス・生活利便性)と地盤状況が最重要、資産価値と耐震性に影響する
- 災害リスク(津波・土砂災害・液状化)をハザードマップで確認する
- 土地購入時の諸費用は物件価格の10〜20%が目安(仲介手数料、地盤改良費等)
(1) 神奈川県の土地市場が注目される理由
神奈川県の土地市場が注目される理由は、以下の3点です。
まず、東京都心部へのアクセスの良さです。横浜市・川崎市から東京都心部へは電車で30分以内という利便性があり、通勤・通学に便利なエリアです。相鉄・東急直通線(2023年3月開通)により、新横浜から渋谷まで直通アクセスが可能になり、沿線エリアの利便性がさらに向上しています。
次に、都市機能の充実です。横浜駅・川崎駅を中心に商業施設・オフィス・公共交通が集積しており、生活利便性が高いエリアです。湘南エリアは海岸線沿いで観光地としても人気があり、リモートワークや移住需要が高まっています。
最後に、人口流入の継続です。神奈川県は人口増加率が高く、特に横浜市・川崎市ではファミリー層や移住者の需要が高まっています。人口流入は土地需要の増加につながり、地価を押し上げる要因となっています。
(2) 4年連続上昇する地価の背景
神奈川県の地価は4年連続で上昇しています。神奈川県の公式発表によると、2024年の公示地価は住宅地で前年比+2.8%、商業地で前年比+5.4%、工業地で前年比+5.9%と大きく上昇しました。2025年の公示地価は前年比+4.12%とさらに上昇しています。
背景には、前述の東京都心部へのアクセス、都市機能の充実、人口流入に加えて、相鉄・東急直通線の開通(2023年3月、新横浜〜渋谷間)、低金利環境(住宅ローン金利が歴史的低水準で推移)、リモートワークの普及(湘南エリアへの移住需要の高まり)などがあります。
神奈川県の「かながわ地価レポート」によると、住宅地は4年連続上昇、商業地は13年連続上昇、工業地は12年連続上昇しており、市場が活況であることを示しています。
(3) 本記事で解説する内容
本記事では、以下の4つのポイントを中心に解説します。
- 神奈川県の土地価格相場と推移(公示地価データに基づく市場動向)
- エリア別の土地価格相場と地域特性(横浜市、川崎市、湘南エリア、相模原市等)
- 土地購入時の注意点(立地、地盤状況、災害リスク、用途地域等)
- 土地購入の流れと諸費用の内訳(仲介手数料、地盤改良費等)
神奈川県の土地価格相場と推移|公示地価データから見る市場動向
(1) 2025年の公示地価と全国比較
2025年(令和7年)の公示地価によると、神奈川県の平均は30万1569円/㎡(坪単価約100万円)で、前年比+4.12%の上昇を記録しました。用途別では、住宅地+3.26%、商業地+7.04%、工業地+7.23%と全用途で上昇しています。
全国的にも神奈川県の地価上昇率は高く、特に商業地・工業地の伸び率は全国トップクラスです。
公示地価とは、国土交通省が毎年1月1日時点の土地価格を調査し、3月に公表する公的な地価指標です。不動産取引や税金の算定基準として活用されます。
(2) 過去40年の価格推移(用途別)
神奈川県の「かながわ地価レポート」によると、神奈川県の地価は1983年から43年分のデータが蓄積されており、長期的な推移を確認できます。
- 過去最高値: 1991年の64万5642円/㎡(バブル期)
- 過去最低値: 1983年の19万2227円/㎡
- 現在(2025年): 30万1569円/㎡(過去最高値の約47%)
バブル崩壊後は長期的に下落傾向が続きましたが、2013年頃から回復に転じ、住宅地は4年連続上昇、商業地は13年連続上昇、工業地は12年連続上昇しています。
(3) 相鉄・東急直通線の開通が地価に与えた影響
2023年3月に開通した相鉄・東急直通線(新横浜〜渋谷間)は、神奈川県の地価に大きな影響を与えました。日本経済新聞の報道によると、沿線エリアの地価は開通後に上昇傾向を示しており、特に新横浜駅周辺や沿線の住宅地で顕著です。
新横浜から渋谷まで直通アクセスが可能になったことで、沿線の利便性が向上し、通勤・通学の需要が高まっています。今後も沿線エリアの地価上昇が続く可能性があります。
エリア別の土地価格相場と地域特性
神奈川県は面積が広く、横浜市・川崎市のような都市部から湘南エリア・県央エリアのような郊外まで多様なエリアがあり、地価や特性が大きく異なります。
(1) 横浜市・川崎市(都心部)の相場と特徴
川崎市:
- 坪単価: 約154万円/坪(2025年公示地価)
- 特徴: 東京都心部へのアクセスが極めて良好(川崎駅から品川駅まで約10分)。商業施設・オフィスが集積し、利便性が高い。地価は神奈川県内で最も高い
- 向いている人: 東京都心部への通勤を最優先する方、都市の利便性を重視する方
横浜市:
- 坪単価: 約130万円/坪(2025年公示地価)
- 特徴: 横浜駅を中心に商業地が発達。みなとみらいエリアは再開発が進み、観光・ビジネスの拠点として人気。住宅地も多く、区によって価格差が大きい
- 向いている人: 横浜の都市機能と住環境を両立したい方
(2) 湘南エリア(藤沢・鎌倉・茅ヶ崎)の相場と特徴
湘南エリア:
- 坪単価: 約60〜94万円/坪(鎌倉市は約94万円、藤沢市・茅ヶ崎市は約60〜70万円)
- 特徴: 海岸線沿いで観光地として人気。リモートワークの普及により、移住需要が高まっている。日本経済新聞の報道によると、2024年基準地価で湘南エリアの地価上昇が顕著
- 向いている人: 海の近くで暮らしたい方、自然環境を重視する方、リモートワーク中心の方
- 注意点: 海岸部の土地は津波・高潮リスクや塩害のリスクがあるため、ハザードマップを確認する
(3) 相模原市・県央エリアの相場と特徴
相模原市:
- 坪単価: 約53万円/坪
- 特徴: 神奈川県内では比較的価格が抑えられているエリア。東京都心部への距離はあるが、横浜線・相模線等で横浜・東京方面へアクセス可能。住宅地が多く、落ち着いた環境
- 向いている人: 価格を抑えたい方、広い土地を確保したい方
県央エリア(厚木市・海老名市等):
- 坪単価: 約50〜70万円/坪
- 特徴: 相鉄・小田急線で都心部へアクセス可能。商業施設も充実し、価格と利便性のバランスが良い
- 向いている人: 価格と利便性のバランスを重視する方
神奈川県で土地を購入する際の注意点とチェックポイント
(1) 立地選びの重要性(交通アクセス・生活利便性・資産価値)
土地選びで最も重要なポイントは「立地」です。立地は以下の3つの要素に影響します。
- 交通アクセス: 駅からの距離、都心部への所要時間、バス路線の有無等
- 生活利便性: スーパー・コンビニ・病院・学校等の近さ、生活インフラの充実度
- 資産価値: 立地の良い土地は将来的に資産価値を維持しやすく、売却時の流動性も高い
神奈川県での土地探しによると、神奈川県の平均土地購入価格は1,677万円、平均面積は100㎡、駅から徒歩30分圏内が一般的な条件です。
立地の良い土地は価格が高くても、長期的なメリット(生活利便性、資産価値の維持)を考慮すると、総合的にお得な場合があります。
(2) 地盤状況の確認と地盤調査の重要性
土地選びで次に重要なポイントは「地盤状況」です。地盤が強固な土地は以下のメリットがあります。
- 耐震性が高い: 地震の揺れに強く、建物の損傷リスクが低い
- 地盤改良費用を抑えられる: 軟弱地盤の場合、地盤改良費用が50〜200万円かかる可能性がある
- 長期的な安心: 地盤沈下のリスクが低く、建物の寿命が長い
購入前に地盤調査データを確認することを推奨します。自治体や国土地理院が提供する地盤マップで、大まかな地盤の強さを確認できます。
(3) 災害リスクの確認(津波・土砂災害・液状化)
神奈川県は海岸部・山間部が多く、災害リスクを確認することが重要です。
- 津波・高潮リスク: 湘南エリア等の海岸部は、津波や高潮のリスクがあります。各自治体が公表するハザードマップで確認しましょう
- 土砂災害リスク: 山間部や傾斜地は、大雨時に土砂災害のリスクがあります。ハザードマップで土砂災害警戒区域を確認しましょう
- 液状化リスク: 埋立地や河川沿いの軟弱地盤は、地震時に液状化のリスクがあります。地盤マップで確認しましょう
神奈川県の各市町村の公式サイトでハザードマップを確認できます。
(4) 用途地域・建ぺい率・容積率の確認
土地には「用途地域」が定められており、建築できる建物の種類や規模が制限されます。
- 住居地域: 主に住宅を建てるエリア
- 商業地域: 店舗やオフィスを建てるエリア
- 工業地域: 工場を建てるエリア
建ぺい率は敷地面積に対する建築面積の割合、容積率は敷地面積に対する延床面積の割合を示します。これらは用途地域ごとに定められており、建築できる建物の規模を左右します。
各市町村の都市計画図で用途地域・建ぺい率・容積率を確認できます。
土地購入の流れと諸費用の内訳
(1) 土地探しから契約・引き渡しまでの流れ
土地購入の一般的な流れは以下の通りです。
- 予算の設定: 自己資金・住宅ローン借入額を確認し、総予算を決める
- エリア・条件の決定: 通勤・通学、生活スタイルに応じてエリアや条件を決める
- 土地探し: 不動産ポータルサイト(SUUMO、HOME'S等)や不動産会社で物件を探す
- 現地確認: 実際に現地を訪問し、周辺環境・日当たり・接道状況等を確認する
- 重要事項の確認: 用途地域、建ぺい率・容積率、地盤状況、災害リスク等を確認する
- 購入申し込み: 購入意思を不動産会社に伝え、申し込みを行う
- 契約: 売買契約を締結し、手付金(物件価格の5〜10%)を支払う
- 住宅ローン申し込み: 金融機関に住宅ローンを申し込む
- 決済・引き渡し: 残代金を支払い、土地の引き渡しを受ける
(2) 諸費用の内訳(仲介手数料・地盤改良費等)
土地購入時は物件価格以外に諸費用がかかります。諸費用は物件価格の10〜20%が目安です。
| 項目 | 金額の目安 | 説明 |
|---|---|---|
| 仲介手数料 | 物件価格の3%+6万円+消費税 | 不動産会社に支払う手数料(物件価格400万円超の場合) |
| 地盤調査費 | 5〜20万円 | 地盤の強度を調べる調査費用 |
| 地盤改良費 | 50〜200万円 | 軟弱地盤を強化する工事費用(地盤次第) |
| 水道・下水道引込工事費 | 50〜150万円 | 敷地内にライフラインを引き込む費用 |
| 登記費用 | 10〜30万円 | 所有権移転登記等の費用 |
| 印紙税 | 1〜3万円 | 売買契約書に貼付する印紙代 |
| 不動産取得税 | 土地評価額の3% | 土地取得時に課税される税金(軽減措置あり) |
(3) 建築条件付き土地と建築条件なし土地の違い
土地には「建築条件付き」と「建築条件なし」の2種類があります。
| 種類 | 特徴 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 建築条件付き土地 | 指定された建築会社で一定期間内に建物を建築する条件付き | 価格が安い、設計プランが決まっているため契約が早い | 設計の自由度が低い、建築会社を選べない |
| 建築条件なし土地 | 建築会社を自由に選べる | 設計の自由度が高い、好きな建築会社を選べる | 価格がやや高い |
設計の自由度を重視する方は「建築条件なし土地」を、価格を抑えたい方は「建築条件付き土地」を検討しましょう。
まとめ:神奈川県で理想の土地を見つけるためのポイント
神奈川県の土地市場は4年連続で上昇しており、2025年公示地価は前年比+4.12%で全国トップクラスの上昇率を記録しました。エリア別では、川崎市は坪単価約154万円、横浜市は約130万円、鎌倉市は約94万円、相模原市は約53万円が目安です。
土地購入時は、立地(交通アクセス・生活利便性・資産価値)と地盤状況(耐震性・地盤改良費用)を最優先で確認し、災害リスク(津波・土砂災害・液状化)をハザードマップで確認しましょう。
諸費用は物件価格の10〜20%が目安(仲介手数料、地盤改良費等)であり、総コストを事前に算出することが重要です。国土交通省の不動産情報ライブラリや不動産ポータルサイト(SUUMO、HOME'S等)を活用し、複数の物件を比較検討しながら、自分に合った土地を選びましょう。
