日本の不動産市場の現状:2024年の動向と地域別の特徴
日本の不動産市場の動向を把握することは、投資判断や住宅購入の検討において重要です。
この記事では、2024年の日本不動産市場の動向、価格推移、地域別の特徴、海外投資家の動向を、国土交通省の不動産価格指数や投資市場の公式データを元に解説します。
三大都市圏と地方圏の価格動向の違い、収益不動産市場の規模、海外投資家の投資理由を理解することで、日本の不動産市場の全体像を客観的に把握できます。
この記事のポイント
- 2024年の日本不動産投資市場は「復活の年」となり、投資額が前年比63%増の5兆4,875億円を記録(9年ぶりの5兆円超え)
- 不動産価格は2013年から総じて上昇傾向が続いており、特にマンション価格が高騰している
- 三大都市圏・地方四市は上昇傾向だが、その他地方圏は下落傾向で、エリアごとの動向把握が重要
- 収益不動産の資産規模は約315.1兆円(2024年)で、全ての用途が前回調査から拡大
- 海外投資家は円安・低金利を理由に日本不動産に注目し、物流施設・データセンター(70%以上)、ホテル(44%)に投資が集中
1. 日本の不動産市場が2024年に「復活の年」を迎えた背景
(1) 2024年の投資額が前年比63%増の5兆4,875億円(9年ぶりの5兆円超え)
2024年の日本不動産投資市場は、投資額が前年比63%増の5兆4,875億円を記録し、9年ぶりに5兆円を超えました。これは、2023年の市場低迷から大きく回復し、日本不動産投資市場の「復活の年」となったことを示しています。
セクター別では、ホテルが市場を牽引し、2024年通年で初の1兆円超えを達成しました。インバウンド需要の回復が背景にあります。
(2) 国内資本による購入額が過去最高を記録した要因
2024年は国内資本による購入額が過去10年で最高額を記録しました。国内投資家の積極姿勢が顕著で、低金利環境が継続していることが主な要因です。
不動産業向け貸出残高は前年比5.6%増の124.1兆円と、投資環境は良好です。ただし、経済全体(3.1%)を大きく上回る増加ペースとなっており、過熱感に注意が必要との指摘もあります。
2. 不動産価格の推移:2013年以降の上昇傾向と2024年の動向
(1) 国土交通省の不動産価格指数(2013年から総じて上昇)
国土交通省が公表する不動産価格指数(年間約30万件の取引価格をもとに算出)によると、日本の不動産価格は2013年から総じて上昇傾向が続いています。
不動産価格指数は、2010年の平均を100として価格動向を指数化したもので、2025年も全体的に上昇基調が継続しています(執筆時点)。
(2) マンション価格の高騰と住宅購入者への影響
特にマンション価格が顕著に高騰しており、住宅購入者にとっては取得しにくい状況が続いています。三大都市圏を中心に、新築マンションの価格上昇が著しく、中古マンションの価格も連動して上昇しています。
この価格高騰は、建築資材費の上昇、人件費の増加、好立地物件の供給不足などが複合的に影響しています。
3. 地域別の価格動向:三大都市圏・地方四市・その他地方圏の違い
(1) 三大都市圏(東京・大阪・名古屋)および地方四市(札幌・仙台・広島・福岡)の上昇傾向
三大都市圏(東京圏・大阪圏・名古屋圏)および地方四市(札幌市・仙台市・広島市・福岡市)では、不動産価格が上昇傾向にあります。
これらの地域は、人口集積が進み、経済活動が活発で、インフラ整備も充実しているため、不動産需要が堅調です。特に東京圏は、国際的なビジネス拠点としての地位を維持しており、投資需要も高い水準にあります。
(2) その他地方圏の下落傾向とエリア選定の重要性
一方、三大都市圏・地方四市以外のその他地方圏では、住宅地を中心に価格が下落傾向にあります。人口減少・高齢化が進む地域では、不動産需要が減少し、価格下落が続いています。
このため、不動産投資や住宅購入を検討する際は、エリアごとの動向を把握することが極めて重要です。全国一律の価格動向ではなく、地域別の詳細なデータを確認する必要があります。
| 地域分類 | 価格動向 | 主な要因 |
|---|---|---|
| 三大都市圏 | 上昇傾向 | 人口集積、経済活動、インフラ充実 |
| 地方四市 | 上昇傾向 | 地方中核都市としての需要、都市機能集積 |
| その他地方圏 | 下落傾向 | 人口減少、高齢化、需要減少 |
4. 不動産投資市場の規模と構造:収益不動産315.1兆円の内訳
(1) 資産規模の推移(前回比+25.7兆円、すべての用途が拡大)
収益不動産(賃貸収入等の収益を生み出す不動産)の資産規模は、約315.1兆円(2024年、ニッセイ基礎研究所調査)で、前回比+25.7兆円となりました。
オフィス、賃貸マンション、商業施設、物流施設、ホテルなど、すべての用途が前回調査から拡大しており、市場規模の継続的な拡大が確認されています。
(2) セクター別動向(ホテル初の1兆円超え、物流施設・データセンターの成長)
2024年のセクター別動向では、以下の特徴が見られます。
- ホテル: 2024年通年で初の1兆円超えを達成。インバウンド需要の回復が牽引
- 物流施設・データセンター: 外国投資家の投資対象の70%以上を占め、成長が顕著
- オフィス: 2025年上期も活発な取引が継続
- 賃貸マンション: 安定需要により投資対象として人気
これらのセクター別動向は、経済環境や社会ニーズの変化を反映しています。
5. 海外投資家の動向:円安・低金利が惹きつける理由と投資対象
(1) 円安(40年ぶりの安値)と正のレバレッジスプレッド確保
海外投資家が日本不動産に注目する主な理由は、円安(40年ぶりの安値)、低金利環境、正のレバレッジスプレッド確保が可能な唯一の国であることです(国土交通省の海外投資家アンケートより)。
正のレバレッジスプレッドとは、不動産投資の利回りが借入金利を上回る状態を指し、日本は2024年時点で世界で唯一、借入後も正のスプレッドを確保できる国とされています。
中華圏投資家の87.5%が「今が買い時」と回答するなど、海外投資家の関心が高まっています。
(2) 物流施設・データセンター(70%以上)、ホテル(44%)への投資集中
海外投資家の投資対象は、物流施設・データセンター(70%以上)、ホテル(44%)に集中しています。これらのセクターは、Eコマースの拡大、デジタル化の進展、インバウンド需要の回復により、高い成長が期待されています。
ただし、外国資本による購入額は前年比-42%と減少しており、2023-2024年は2年連続で純売却超過となっています。海外投資家の動向は為替レート、国際情勢により急変する可能性があるため、継続的な注視が必要です。
6. まとめ:日本不動産市場の現状と今後の見通し
日本の不動産市場は、2024年に投資額が5兆4,875億円を記録し、「復活の年」となりました。価格は2013年から総じて上昇傾向が続いており、特にマンション価格が高騰しています。
三大都市圏・地方四市は上昇傾向ですが、その他地方圏は下落傾向で、エリアごとの動向把握が重要です。収益不動産市場は315.1兆円に拡大し、ホテル・物流施設・データセンターが成長セクターとなっています。
海外投資家は円安・低金利を理由に日本不動産に注目していますが、今後の見通しは金融政策(金利動向)に大きく影響されます。投資判断は個別の状況により異なるため、専門家(不動産鑑定士、ファイナンシャルプランナー等)への相談を推奨します。
