大津市マンション事件とは?不動産購入時の事故物件確認方法

著者: Room Match編集部公開日: 2025/11/18

マンションでの事件・事故と不動産取引への影響

中古マンション購入を検討する際、「この物件で過去に事件・事故はなかったか」と不安に感じる方は少なくありません。特に大津市のマンション事件のように、報道された事件・事故があると、不動産取引にどのような影響があるのか気になるところです。

この記事では、マンションでの事件・事故と告知義務の関係、事故物件の価格への影響、購入時の確認方法を、国土交通省のガイドライン等の公式情報を元に解説します。

不動産購入者として、事故物件の正しい知識を身につけ、賢い判断ができるようになります。

この記事のポイント

  • マンションでの事件・事故は、不動産取引時の告知義務が生じる
  • 2021年10月に国土交通省が「人の死の告知に関するガイドライン」を策定
  • 賃貸は概ね3年間、売買は無期限の告知義務がある
  • 事故物件の価格は通常より10~50%減少する傾向
  • 購入時は重要事項説明での確認と自主調査が重要

マンションでの事件・事故の告知義務とは

マンション等で事件・事故が発生した場合、不動産取引時に告知義務が生じます。告知義務とは、不動産取引において、買主・借主に重要事項を説明する義務のことです。

宅地建物取引業法(宅建業法)では、宅地建物取引士が買主・借主に対して重要事項を説明することが義務付けられています。事件・事故は「心理的瑕疵(しんりてきかし)」として、重要事項説明の対象となります。

心理的瑕疵とは、心理的な抵抗感を生じさせる物件の欠陥のことです。例えば、自殺・他殺・火災等で人が亡くなった物件は、心理的瑕疵のある「事故物件」として扱われます。

共用部分での事件・事故の扱い

マンションの専有部分(部屋の内部)での事件・事故は告知義務の対象ですが、共用部分(エントランス、エレベーター、階段等)での事件・事故はどうなるのでしょうか。

国土交通省のガイドラインによると、日常的に利用する共用部分での事件・事故も、告知対象となる場合があります。例えば、エレベーター内での事故死や、エントランスでの殺傷事件は、告知義務が生じる可能性が高いです。

一方で、屋上や駐車場等、日常的に利用しない共用部分での事件・事故は、告知義務が生じない場合もあります。個別の判断が必要なため、不動産会社や弁護士に相談することをおすすめします。

不動産価値への影響

事件・事故が発生したマンションは、不動産価値が下落する傾向があります。事故物件の売却価格は、通常より10~50%減少するケースが多いです。

価格下落の程度は、事件・事故の内容、発生時期、物件の立地等により異なります。詳細は後述の「事故物件の価格への影響と売却相場」で解説します。

事故物件の告知義務とは?国土交通省ガイドライン解説

2021年10月策定のガイドライン概要

2021年10月、国土交通省は「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定しました。このガイドラインは、事故物件の告知義務の範囲・期間を明確化し、不動産取引の透明性を高めることを目的としています。

ガイドラインの主なポイントは以下の通りです。

  • 自然死・日常生活の不慮の死は原則告知不要
  • 自殺・他殺・火災による死亡は告知義務あり
  • 特殊清掃が必要な場合は告知対象
  • 賃貸は概ね3年間、売買は無期限の告知義務
  • 社会的影響が大きい事件は、期間に関わらず告知が必要

賃貸と売買の告知期間の違い

事故物件の告知義務は、賃貸と売買で期間が異なります。

取引種別 告知期間 備考
賃貸 概ね3年間 3年経過後は告知不要(ただし社会的影響が大きい事件は例外)
売買 無期限 売買の場合は時効がない

賃貸の場合は「概ね3年間」とされていますが、社会的影響が大きい事件(報道された殺人事件等)は、3年経過後も告知が必要とされる場合があります。

売買の場合は告知義務に時効がないため、何年経過しても告知が必要です。これは、不動産を購入する買主にとって、過去の事件・事故は重要な判断材料であるためです。

告知義務違反のリスク

告知義務を怠った場合、以下のリスクがあります。

  • 損害賠償請求: 買主・借主から損害賠償を請求される
  • 契約解除: 契約を解除される
  • 行政処分: 宅建業法違反として行政処分を受ける可能性

告知義務違反は、不動産取引の信頼を損なう重大な問題です。売主・不動産会社は、正確な情報を買主・借主に伝える義務があります。

告知が必要なケースと不要なケース(自然死・事故死・自殺・他殺)

告知が必要なケース

国土交通省のガイドラインによると、以下のケースは告知義務があります。

  • 自殺: 専有部分または日常的に利用する共用部分での自殺
  • 他殺(殺人): 専有部分または日常的に利用する共用部分での殺人
  • 火災による死亡: 火災により人が亡くなった場合
  • 特殊清掃が必要な死亡: 孤独死等で特殊清掃が必要な場合

告知が不要なケース

以下のケースは、原則として告知不要です。

  • 自然死: 病死、老衰等の自然死
  • 日常生活の不慮の死: 入浴中の転倒死、食事中の窒息死等
  • 共用部分での自然死: 日常的に利用しない共用部分(屋上、駐車場等)での自然死

ただし、自然死でも特殊清掃が必要な場合(長期間発見されなかった孤独死等)は、告知義務が生じます。

特殊清掃が必要な場合の扱い

特殊清掃とは、孤独死・自殺等で汚染された室内を清掃・消臭する作業のことです。特殊清掃が必要な場合は、死因に関わらず告知義務が生じます。

これは、特殊清掃が必要な状態は、心理的瑕疵として買主・借主に影響を与えるためです。

社会的影響が大きい事件の扱い

社会的影響が大きい事件(報道された殺人事件等)は、告知期間に関わらず告知が必要とされます。これは、事件が広く知られている場合、買主・借主が事後に事件を知った際のトラブルを防ぐためです。

事故物件の価格への影響と売却相場

事故物件の価格下落率(10~50%減)

事故物件の売却価格は、通常より10~50%減少する傾向があります。価格下落の程度は、事件・事故の内容、発生時期、物件の立地等により異なります。

事件・事故の種類別の価格下落

事件・事故の種類別の価格下落率の目安は以下の通りです。

事件・事故の種類 価格下落率
殺人・自殺 20~50%減
自然死(特殊清掃あり) 10~30%減
自然死(特殊清掃なし) ほぼ影響なし

(出典: 株式会社クランピーリアルエステート)

殺人・自殺は心理的抵抗感が大きいため、価格下落率が高くなります。一方で、自然死で特殊清掃が不要な場合は、価格への影響はほとんどありません。

マンションと戸建ての価格下落の違い

マンションは戸建てより価格下落が小さい傾向があります。これは、マンションは同じ建物内に多数の住戸があるため、個別の事件・事故の影響が相対的に小さいためです。

一方で、戸建ては単独の建物であるため、事件・事故の影響が大きくなります。

事故物件専門の買取・売却サービス

事故物件の売却が難しい場合、事故物件専門の買取・売却サービスを利用する方法もあります。これらのサービスは、事故物件を適正価格で買取り、リフォーム・リノベーション後に再販売します。

不動産購入時の事故物件確認方法と注意点

重要事項説明での確認

不動産を購入する際は、重要事項説明で事故物件であるかを確認できます。重要事項説明では、宅地建物取引士が買主に対して、物件の重要事項(心理的瑕疵を含む)を説明する義務があります。

重要事項説明書に「過去に事件・事故があった」旨の記載があるか、必ず確認してください。記載がない場合でも、口頭で「過去に事件・事故はありませんでしたか?」と確認することをおすすめします。

自主調査の方法

重要事項説明だけでなく、自主調査も有効です。

事故物件サイトの活用:

  • 「大島てる」等の事故物件サイトで、住所を検索
  • 過去の事件・事故の情報が掲載されている場合がある

周辺住民への聞き取り:

  • 近隣住民に「この物件について何かご存知ですか?」と聞く
  • 管理人・大家に確認する

2024年4月開設の「不動産情報ライブラリ」の活用

2024年4月、国土交通省が「不動産情報ライブラリ」を開設しました。このサイトでは、不動産取引価格情報を検索できます。過去の取引価格が大幅に安い場合、事故物件である可能性があります。

宅建業者の免許番号・行政処分歴の確認

取引する不動産会社が宅地建物取引業の免許を持っているか、免許番号を確認してください。また、過去に行政処分を受けていないかも確認することをおすすめします。

確認方法:

  • 国土交通省 ネガティブ情報等検索サイトで行政処分歴を検索
  • 宅建業者の免許番号を確認(免許番号は不動産会社の公式サイトや広告に記載)

まとめ:事故物件の正しい理解と賢い判断のポイント

マンションでの事件・事故は、不動産取引時の告知義務が生じます。2021年10月に国土交通省が策定した「人の死の告知に関するガイドライン」により、告知義務の範囲・期間が明確化されました。

賃貸は概ね3年間、売買は無期限の告知義務があります。事故物件の価格は通常より10~50%減少する傾向がありますが、マンションは戸建てより価格下落が小さい傾向です。

不動産購入時は、重要事項説明での確認と自主調査(事故物件サイト、周辺住民への聞き取り等)を行うことが重要です。信頼できる宅地建物取引士や不動産会社に相談しながら、正しい情報を元に賢い判断をしましょう。

よくある質問

Q1マンションで事件・事故が起きた場合、告知義務はどうなりますか?

A1専有部分(部屋の内部)での事件・事故は告知義務があります。共用部分(エントランス、エレベーター、階段等)での事件・事故も、日常的に利用する箇所であれば告知対象となる場合があります。国土交通省のガイドラインでは、自殺・他殺・火災による死亡は告知義務があり、自然死・日常生活の不慮の死は原則告知不要とされています。

Q2事故物件の告知義務はいつまで続きますか?

A2賃貸は概ね3年間、売買は無期限の告知義務があります。ただし、社会的影響が大きい事件(報道された殺人事件等)は、期間に関わらず告知が必要とされます。売買の場合は告知義務に時効がないため、何年経過しても告知が必要です。これは、不動産を購入する買主にとって、過去の事件・事故は重要な判断材料であるためです。

Q3自然死と事件・事故の告知義務の違いは何ですか?

A3自然死(病死、老衰等)や日常生活の不慮の死(入浴中の転倒死、食事中の窒息死等)は原則告知不要です。一方で、自殺・他殺・火災による死亡は告知義務があります。ただし、自然死でも特殊清掃が必要な場合(長期間発見されなかった孤独死等)は、告知義務が生じます。特殊清掃とは、孤独死・自殺等で汚染された室内を清掃・消臭する作業のことです。

Q4事故物件の価格はどのくらい下がりますか?

A4事故物件の売却価格は、通常より10~50%減少する傾向があります。殺人・自殺は心理的抵抗感が大きいため20~50%減、自然死(特殊清掃あり)は10~30%減が目安です。マンションは戸建てより価格下落が小さい傾向があります。これは、マンションは同じ建物内に多数の住戸があるため、個別の事件・事故の影響が相対的に小さいためです。

Q5事故物件を確認する方法は何ですか?

A5重要事項説明での確認が基本です。宅地建物取引士が買主に対して、物件の重要事項(心理的瑕疵を含む)を説明する義務があります。重要事項説明書に記載があるか確認し、口頭でも「過去に事件・事故はありませんでしたか?」と確認することをおすすめします。自主調査として、「大島てる」等の事故物件サイトで住所を検索したり、周辺住民に聞き取りを行う方法も有効です。

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Room Match編集部

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