住宅購入時の登記費用について知りたい方へ
住宅を購入する際、「登記費用はいくらかかるのか」「新築と中古で違いはあるのか」「費用を安く抑える方法はあるのか」と気になる方も多いでしょう。
この記事では、住宅登記費用の内訳、新築・中古別の費用相場、登録免許税の軽減措置、司法書士報酬の相場、費用を抑える方法を、国税庁の登録免許税税額表や法務局の登記手続き案内など公式情報を元に解説します。
住宅購入を検討している方が、登記費用を正しく理解し、必要な資金を準備できるようになります。
この記事のポイント
- 住宅登記費用は「登録免許税(国に納める税金)」+「司法書士報酬」で構成され、総額20〜50万円が相場
- 新築住宅の登記費用は23〜47万円、中古住宅は20〜30万円が目安
- 軽減税率を適用すると登録免許税を大幅に節約できる(所有権保存0.4%→0.15%、抵当権設定0.4%→0.1%等)
- 司法書士報酬は事務所により異なるため、複数の見積もりを取って比較検討することが重要
住宅登記費用とは|不動産購入時に必要な登記の基礎知識
住宅登記の役割と重要性
住宅登記とは、不動産の所有権や抵当権などの権利関係を法務局の登記簿に記録する手続きです。登記により、第三者に対して「この不動産は自分のものである」と主張する法的根拠が得られます。
登記をしないと、所有権を第三者に主張できないため、住宅を購入した際には必ず登記を行います。住宅ローンを利用する場合は、金融機関が抵当権設定登記を求めるため、登記が必須となります。
登記手続きには、登録免許税(国に納める税金)と司法書士報酬(専門家への手数料)がかかります。これらの費用を事前に把握し、資金計画に含めることが重要です。
登記の種類(建物表題登記、所有権保存登記、所有権移転登記、抵当権設定登記)
住宅購入時に必要な主な登記は以下の通りです。
| 登記の種類 | 内容 | 必要な場合 | 担当専門家 |
|---|---|---|---|
| 建物表題登記 | 新築建物を登記簿に初めて記録 | 新築のみ | 土地家屋調査士 |
| 所有権保存登記 | 新築建物の所有者を記録 | 新築のみ | 司法書士 |
| 所有権移転登記 | 不動産の所有者が変わる際に記録 | 中古のみ | 司法書士 |
| 抵当権設定登記 | 住宅ローンの担保権を記録 | ローン利用時 | 司法書士 |
新築住宅の場合は「建物表題登記」「所有権保存登記」が必要で、中古住宅の場合は「所有権移転登記」が必要です。住宅ローンを利用する場合は、新築・中古ともに「抵当権設定登記」が追加で必要になります。
住宅登記費用の内訳|登録免許税と司法書士報酬の相場
登録免許税とは(国に納める税金、税率は登記の種類により異なる)
登録免許税は、不動産登記の際に国に納める税金です。税率は登記の種類により異なり、国税庁の登録免許税税額表で確認できます。
主な登記の通常税率と軽減税率(2025年時点、2027年3月31日まで延長):
| 登記の種類 | 通常税率 | 軽減税率 | 課税標準 |
|---|---|---|---|
| 所有権保存登記(新築) | 0.4% | 0.15% | 固定資産税評価額 |
| 所有権移転登記(中古) | 2.0% | 0.3% | 固定資産税評価額 |
| 所有権移転登記(土地) | 2.0% | 1.5% | 固定資産税評価額 |
| 抵当権設定登記 | 0.4% | 0.1% | 借入金額 |
軽減税率は居住用住宅の登記に適用され、税額を大幅に節約できます。軽減措置は2027年3月31日まで延長されています。
司法書士報酬とは(2024年平均報酬56,678円)
司法書士報酬は、登記手続きを代行する司法書士に支払う手数料です。日本司法書士連合会の2024年報酬アンケートによると、所有権移転登記の平均報酬は56,678円となっています。
司法書士報酬は事務所により異なり、同じ登記でも5〜15万円程度の幅があります。報酬は自由化されているため、複数の司法書士事務所から見積もりを取り、比較検討することが重要です。
ただし、住宅ローンを利用する場合は金融機関が指定する司法書士を使う場合が多く、報酬の交渉が難しいことがあります。
土地家屋調査士報酬とは(建物表題登記7〜10万円)
建物表題登記は、土地家屋調査士が行います。報酬の相場は7〜10万円程度です。建物表題登記は建物完成後1ヶ月以内の申請が義務付けられており、遅延すると10万円以下の過料の対象となります。
新築住宅を購入する場合は、建物表題登記が必須となるため、この費用も資金計画に含める必要があります。
総額の相場(新築23〜47万円、中古20〜30万円)
住宅登記費用の総額の相場は以下の通りです。
- 新築住宅: 23〜47万円(建物表題登記、所有権保存登記、抵当権設定登記を含む)
- 中古住宅: 20〜30万円(所有権移転登記、抵当権設定登記を含む)
実際の費用は、固定資産税評価額、借入金額、司法書士報酬により変動します。軽減税率を適用すると、登録免許税を大幅に節約できます。
新築住宅の登記費用|建物表題登記・所有権保存登記・抵当権設定登記
建物表題登記の費用(7〜10万円、完成後1ヶ月以内の申請が義務)
建物表題登記は、新築建物を登記簿に初めて記録する登記です。建物の所在地・構造・床面積などを登記します。土地家屋調査士が行い、報酬の相場は7〜10万円です。
建物表題登記は登録免許税が非課税ですが、土地家屋調査士への報酬が必要です。建物完成後1ヶ月以内の申請が義務付けられており、遅延すると10万円以下の過料の対象となります。
所有権保存登記の費用(20万円程度、軽減税率0.15%)
所有権保存登記は、新築建物の所有者を登記簿に記録する登記です。建物表題登記の後に行います。司法書士が行い、登録免許税と司法書士報酬がかかります。
計算例(固定資産税評価額1,500万円の新築住宅、軽減税率適用):
- 登録免許税: 1,500万円 × 0.15% = 22,500円
- 司法書士報酬: 5〜10万円
- 合計: 約7〜12万円
軽減税率を適用すると、通常税率0.4%(6万円)から0.15%(22,500円)に減額され、約37,500円の節税となります。
抵当権設定登記の費用(住宅ローン利用時、軽減税率0.1%)
抵当権設定登記は、住宅ローン利用時に金融機関の担保権を登記する手続きです。司法書士が行い、登録免許税と司法書士報酬がかかります。
計算例(借入金額3,000万円、軽減税率適用):
- 登録免許税: 3,000万円 × 0.1% = 30,000円
- 司法書士報酬: 5〜10万円
- 合計: 約8〜13万円
軽減税率を適用すると、通常税率0.4%(12万円)から0.1%(3万円)に減額され、約9万円の節税となります。
新築住宅の総額計算例
新築住宅(固定資産税評価額1,500万円、借入金額3,000万円)の登記費用総額:
| 登記の種類 | 登録免許税 | 専門家報酬 | 小計 |
|---|---|---|---|
| 建物表題登記 | 非課税 | 7〜10万円 | 7〜10万円 |
| 所有権保存登記 | 22,500円 | 5〜10万円 | 7〜12万円 |
| 抵当権設定登記 | 30,000円 | 5〜10万円 | 8〜13万円 |
| 合計 | 52,500円 | 17〜30万円 | 約23〜37万円 |
軽減税率を適用することで、登録免許税を大幅に節約できます。
中古住宅の登記費用|所有権移転登記・抵当権設定登記
所有権移転登記の費用(軽減税率0.3%、司法書士報酬10〜15万円)
所有権移転登記は、不動産の売買・相続等で所有者が変わる際に行う登記です。中古住宅購入時に必要で、司法書士が行います。
計算例(固定資産税評価額2,000万円の中古住宅、軽減税率適用):
- 建物: 1,000万円 × 0.3% = 30,000円
- 土地: 1,000万円 × 1.5% = 150,000円
- 登録免許税合計: 180,000円
- 司法書士報酬: 10〜15万円
- 合計: 約28〜33万円
軽減税率を適用すると、建物の登録免許税が通常税率2.0%(20万円)から0.3%(3万円)に減額され、約17万円の節税となります。
抵当権設定登記の費用(軽減税率0.1%)
中古住宅でも住宅ローンを利用する場合は、抵当権設定登記が必要です。費用は新築と同様で、借入金額3,000万円の場合、登録免許税3万円+司法書士報酬5〜10万円で、約8〜13万円となります。
中古住宅の総額計算例
中古住宅(固定資産税評価額2,000万円、借入金額3,000万円)の登記費用総額:
| 登記の種類 | 登録免許税 | 司法書士報酬 | 小計 |
|---|---|---|---|
| 所有権移転登記 | 180,000円 | 10〜15万円 | 28〜33万円 |
| 抵当権設定登記 | 30,000円 | 5〜10万円 | 8〜13万円 |
| 合計 | 210,000円 | 15〜25万円 | 約36〜46万円 |
新築と中古の費用の違い
新築住宅は建物表題登記(7〜10万円)が追加で必要ですが、所有権保存登記の税率(0.15%)が所有権移転登記(0.3%)より低いため、固定資産税評価額が同じであれば、登録免許税はほぼ同等か新築のほうが若干安くなる場合があります。
ただし、中古住宅は土地の所有権移転登記も必要なため、土地の評価額が高い場合は中古のほうが総額が高くなる傾向があります。
登記費用を安く抑える方法|軽減税率・複数見積もり・自分で登記
軽減税率の適用条件(床面積50㎡以上、取得後1年以内の登記等、2027年3月31日まで延長)
住宅用家屋の軽減税率を適用するには、以下の条件を満たす必要があります。
軽減税率の主な適用条件:
- 床面積: 50㎡以上
- 用途: 居住用(自己居住または賃貸用)
- 登記時期: 取得後1年以内に登記
- 新築の場合: 築年数制限なし
- 中古の場合: 昭和57年1月1日以降に建築、または耐震基準適合証明書等がある
これらの条件を満たすことで、所有権保存登記0.4%→0.15%、所有権移転登記2.0%→0.3%、抵当権設定登記0.4%→0.1%等、大幅な節税効果が得られます。
軽減措置は2027年3月31日まで延長されています。最新の情報は国税庁の公式サイトで確認してください。
司法書士報酬の複数見積もりを取る
司法書士報酬は事務所により異なるため、複数の司法書士事務所から見積もりを取り、比較検討することで費用を抑えることができます。
インターネットで「司法書士 登記 見積もり」で検索すると、オンライン見積もりができる事務所も見つかります。ただし、住宅ローンを利用する場合は金融機関が指定する司法書士を使う場合が多く、報酬の交渉が難しいことがあります。
自分で登記する方法とリスク(建物表題登記は自分でも可能)
登記手続きは専門知識が必要ですが、自分で行うことも可能です。特に建物表題登記は比較的単純な手続きで、自分で行う方もいます。
自分で登記するメリットは、専門家への報酬(7〜15万円)を節約できる点です。デメリットは、手続きに時間がかかる、ミスがあると修正が必要、住宅ローン利用時は金融機関が認めない場合がある、などのリスクがあります。
法務局の不動産登記申請手続きで手続き方法を確認できますが、不明点が多い場合は専門家に相談することを推奨します。
住宅ローン利用時の注意点(金融機関指定の司法書士)
住宅ローンを利用する場合、金融機関が抵当権設定登記を求め、指定の司法書士を使うよう求められることが一般的です。
この場合、司法書士の選択や報酬の交渉が難しくなります。金融機関指定の司法書士を使う理由は、登記手続きの確実性と迅速性を確保するためです。
住宅ローンを利用する際は、登記費用も含めた総額を事前に確認し、資金計画に反映させることが重要です。
まとめ|住宅登記費用の準備と専門家への相談
住宅登記費用は、「登録免許税(国に納める税金)」+「司法書士報酬」で構成され、総額20〜50万円が相場です。新築住宅は23〜47万円、中古住宅は20〜30万円が目安となります。
軽減税率を適用すると、登録免許税を大幅に節約できます(所有権保存0.4%→0.15%、所有権移転2.0%→0.3%、抵当権設定0.4%→0.1%等)。軽減措置は2027年3月31日まで延長されており、床面積50㎡以上、居住用、取得後1年以内の登記などの条件を満たす必要があります。
司法書士報酬は事務所により異なるため、複数の見積もりを取って比較検討することが重要です。ただし、住宅ローン利用時は金融機関指定の司法書士を使う場合が多く、報酬の交渉が難しいことがあります。
登記手続きは複雑なため、不明点は法務局や司法書士、土地家屋調査士などの専門家に相談することを推奨します。最新の税率や軽減措置については、国税庁の公式サイトで確認してください。
