住宅ローン審査が通らない理由とは何か?
「年収も勤続年数も問題ないはずなのに、なぜ住宅ローン審査に落ちたのか」と困惑している方はいませんか。事前審査は通ったのに本審査で落ちた、複数の金融機関に申し込んでも通らない、といった経験がある方もいるでしょう。
この記事では、住宅ローン審査で見落としやすい7つの盲点、審査に落ちた時の原因の調べ方、審査に通るための対策を、金融機関の公式情報と専門家の解説に基づき解説します。
住宅ローン審査に不安を感じている方が、事前に確認・対処すべきポイントを理解し、審査通過の可能性を高めるための情報を提供します。
この記事のポイント
- 住宅ローン審査に落ちる理由は金融機関が教えてくれないため、自分で信用情報を確認する必要がある
- 携帯電話の分割払い延滞、スーパーホワイト、事前審査後の転職・借入などが意外な落とし穴
- 信用情報の延滞記録は5~10年間消えず、その間は審査に通りにくい
- 審査基準は金融機関ごとに異なるため、1社に落ちても別の金融機関で通る可能性がある
- 事前審査に通っても約6.9%が本審査で落ちるため、ローン特約を必ず付けるべき
住宅ローン審査が通らない理由とは
(1) 事前審査と本審査の違い
住宅ローンの審査は、事前審査(仮審査)と本審査の2段階で行われます。
| 項目 | 事前審査 | 本審査 |
|---|---|---|
| 目的 | 借入可能額の目安を確認 | 正式な融資可否を決定 |
| 提出書類 | 少ない(源泉徴収票・本人確認書類等) | 多い(住民票・印鑑証明・物件資料等) |
| 審査期間 | 1~3日 | 1~2週間 |
| 審査の厳しさ | 簡易的 | 詳細かつ厳格 |
事前審査は簡易的な審査であり、本審査でより詳しく確認されます。そのため、事前審査に通っても本審査で落ちる可能性があります。
(2) 審査落ちの割合(事前審査14.3%、本審査6.9%)
国分ハウジングによると、2025年のデータでは、初めて申し込んだ人の14.3%が事前審査で落ち、6.9%が本審査で落ちているとされています。
事前審査に通っても約7%が本審査で落ちることは、決して珍しくありません。
このため、物件購入契約時には、「住宅ローンが借りられなかった場合、売買契約を白紙撤回できる」というローン特約を必ず付けることが重要です。
(3) 審査落ちの理由は教えてもらえない
家売るオンラインによると、ほとんどの金融機関は、個人情報保護のため、審査落ちの詳細な理由を教えてくれません。
審査に落ちた場合、自分で原因を特定する必要があります。
最も有効な方法は、信用情報機関に開示請求を行い、自分の信用情報に延滞記録や異動情報(ブラックリスト)が登録されていないか確認することです。
金融機関が重視する一般的な審査基準
(1) 完済時年齢(98.5%の金融機関が重視)
SBI新生銀行によると、金融機関の審査で最も重視されるのは完済時年齢で、98.5%の金融機関が審査項目としています。
一般的な基準:
- 申込時年齢: 20~65歳
- 完済時年齢: 80歳未満
2024年時点で、完済時年齢を80歳前後まで引き上げる金融機関が増加しており、以前より借りやすくなっています。
ただし、高齢になるほど返済期間が短くなり、毎月の返済額が増えるため、無理のない返済計画が必要です。
(2) 健康状態(96.6%)と団体信用生命保険(団信)
健康状態も、96.6%の金融機関が審査で重視しています。
これは、**団体信用生命保険(団信)**への加入が必須とされているためです。
団信とは、住宅ローン契約者が死亡・高度障害になった場合に、ローン残高が保険金で返済される保険です。
健康状態に問題があると団信に加入できず、結果として住宅ローンの審査に通らない場合があります。
対策:
- フラット35など、団信加入が任意のローンを検討する
- 引受基準緩和型の団信を提供する金融機関を探す
(3) 年収基準(94.0%、会社員は300万円以上)
年収は、94.0%の金融機関が審査で重視しています。
一般的な年収基準:
- 会社員: 300万円以上
- 個人事業主: 400万円以上(金融機関により異なる)
ただし、年収が基準を満たしていても、次に説明する返済負担率が高すぎると審査に落ちます。
(4) 返済負担率(年収の30~35%以内)
返済負担率とは、年収に対する年間返済額の割合です。
金融機関の基準は、年収の30~35%以内とされています。
重要な注意点:
返済負担率の計算には、住宅ローン以外のすべてのローン返済額も含まれます。
- カーローン
- 教育ローン
- カードローン
- クレジットカードのリボ払い
- クレジットカードのキャッシング枠(利用していなくても計算に含まれる場合がある)
これらを合計した年間返済額が年収の30~35%を超えると、審査に落ちる可能性が高くなります。
(5) 勤続年数(最低1年以上、理想は3年以上)
勤続年数も審査で重視されます。
一般的な基準:
- 最低: 1年以上
- 理想: 3年以上
転職したばかりの場合、安定した収入があるか判断できないため、審査に通りにくくなります。
ただし、同業種への転職で年収が上がった場合など、金融機関によっては柔軟に対応してくれる場合もあります。
見落としやすい7つの盲点
(1) 信用情報の延滞記録(携帯電話分割払いも含む)
最も見落としやすい盲点は、携帯電話の本体代金分割払いの延滞です。
リクルートによると、携帯電話の本体代金分割払いはローンとして信用情報に記録されます。
携帯料金の支払いが遅れると、信用情報に延滞記録が残り、住宅ローン審査に悪影響を与えます。
延滞記録の保存期間:
- 延滞解消後: 5年間
- 自己破産: 10年間
この期間中は、住宅ローン審査に通りにくくなります。
(2) スーパーホワイト(クレジット履歴がゼロ)
意外に思われるかもしれませんが、クレジットカードやローンの利用履歴が全くない状態(スーパーホワイト)も、審査で不利になります。
リクルートによると、金融機関は信用情報から返済能力を判断するため、返済実績がないと審査で不利になります。
対策:
- クレジットカードを作り、適切に利用・返済して実績を作る
- 少額でもよいので、期日通りに返済する習慣をつける
(3) 事前審査と本審査の間の転職・借入
事前審査に通った後、本審査までの間に転職したり、新しいローンを組んだりすると、本審査で落ちる可能性があります。
事前審査と本審査では、勤務先や借入状況が一致しているか確認されます。変更があると、審査が最初からやり直しになったり、審査に落ちたりします。
対策:
- 事前審査と本審査の間は、転職や新しい借入を避ける
- やむを得ず変更があった場合は、すぐに金融機関に報告する
(4) クレジットカードのキャッシング枠
クレジットカードのキャッシング枠も、返済負担率の計算に含まれる場合があります。
キャッシング枠を利用していなくても、「いつでも借りられる状態」と見なされ、審査に影響することがあります。
対策:
- 使っていないクレジットカードのキャッシング枠をゼロにする
- 不要なクレジットカードは解約する
(5) 他のローン返済(カーローン・教育ローン等)
カーローン、教育ローン、カードローンなどの返済額も、返済負担率の計算に含まれます。
これらのローンがあると、住宅ローンの借入可能額が減ったり、審査に落ちたりする原因になります。
対策:
- 可能であれば、他のローンを完済してから住宅ローンを申し込む
- 完済が難しい場合は、返済負担率を計算し、30~35%以内に収まるか確認する
(6) 健康状態の問題(団信に入れない)
前述の通り、健康状態に問題があると団信に加入できず、住宅ローン審査に通らない場合があります。
団信の審査は、告知書に基づいて行われます。過去の病歴や現在の健康状態を正直に申告する必要があります。
対策:
- 団信加入が任意のフラット35を検討する
- 引受基準緩和型の団信(ワイド団信)を提供する金融機関を探す
(7) 書類の不備や虚偽記載
書類に不備があったり、虚偽の記載があったりすると、審査に落ちます。
特に、年収や勤務先を偽って申告することは、審査に落ちるだけでなく、詐欺罪に問われる可能性もあります。
対策:
- 書類は正確に記入し、提出前に必ず確認する
- 分からない点があれば、金融機関や専門家に相談する
審査に落ちた時の原因の調べ方
(1) 信用情報機関への開示請求(CIC、JICC、KSC)
審査に落ちた原因を調べる最も有効な方法は、信用情報機関に開示請求を行うことです。
日本には3つの信用情報機関があります。
| 機関名 | 主な加盟機関 | 開示方法 |
|---|---|---|
| CIC | クレジットカード会社、信販会社 | インターネット、郵送、窓口 |
| JICC | 消費者金融、銀行 | スマートフォン、郵送、窓口 |
| 全国銀行個人信用情報センター(KSC) | 銀行、信用金庫 | 郵送 |
開示請求は、本人確認書類と手数料(500~1,000円程度)があれば、誰でも行えます。
(2) 延滞記録の確認(5~10年間記録される)
信用情報を確認し、以下の記録がないかチェックしましょう。
- 延滞記録: クレジットカードやローンの支払いが61日以上遅れた記録
- 異動情報(ブラックリスト): 債務整理、自己破産、代位弁済などの記録
- 申込記録: 短期間に複数のローンやクレジットカードに申し込んだ記録
これらの記録があると、審査に通りにくくなります。
(3) 返済負担率の計算
自分で返済負担率を計算し、30~35%以内に収まっているか確認しましょう。
計算式:
返済負担率(%)= (住宅ローン年間返済額 + 他のローン年間返済額) ÷ 年収 × 100
例:
- 年収: 500万円
- 住宅ローン月々返済額: 10万円(年間120万円)
- カーローン月々返済額: 3万円(年間36万円)
返済負担率 = (120万円 + 36万円) ÷ 500万円 × 100 = 31.2%
この場合、返済負担率は31.2%で、ギリギリ基準内です。
審査に通るための対策
(1) 審査前に信用情報を確認する
住宅ローン申し込み前に、自分の信用情報を確認しておくことを強く推奨します。
延滞記録や異動情報があれば、それが消えるまで待つか、他の対策を検討する必要があります。
(2) 携帯電話・クレジットカードの支払いを期日までに行う
住宅ローン申し込みを検討している場合、携帯電話やクレジットカードの支払いは必ず期日までに行うようにしましょう。
1日でも遅れると、信用情報に記録される可能性があります。
(3) 事前審査と本審査の間に新しいローンを組まない・転職しない
事前審査に通った後、本審査までの間は、転職や新しいローンを組むことを避けることが重要です。
やむを得ず変更があった場合は、すぐに金融機関に報告しましょう。
(4) 返済負担率を30~35%以内に抑える
返済負担率が高すぎると審査に落ちるため、他のローンを完済するか、借入額を減らすことを検討しましょう。
頭金を増やすことで、借入額を減らし、返済負担率を下げることができます。
(5) 複数の金融機関に申し込む(審査基準が異なる)
審査基準は金融機関ごとに異なります。
1社に落ちても、別の金融機関で通る可能性があるため、複数の金融機関に申し込むことを推奨します。
ただし、短期間に多数の金融機関に申し込むと、「申込ブラック」と見なされる可能性があるため、3~5社程度に絞ることが望ましいです。
(6) 団信不要のフラット35を検討する
健康状態に問題がある場合、団信加入が任意のフラット35を検討しましょう。
フラット35は、住宅金融支援機構が提供する全期間固定金利の住宅ローンで、団信加入が必須ではありません。
ただし、団信に加入しない場合、万一の時に家族に返済負担が残るため、別途生命保険に加入するなどの対策が必要です。
まとめ:審査で失敗しないための準備
(1) 事前に信用情報をチェックする
住宅ローン審査に通るためには、事前に信用情報をチェックすることが最も重要です。
信用情報機関(CIC、JICC、KSC)に開示請求を行い、延滞記録や異動情報がないか確認しましょう。
延滞記録があれば、それが消えるまで待つか、他の対策を検討する必要があります。
(2) ローン特約を必ず付ける
事前審査に通っても、約6.9%が本審査で落ちます。
物件購入契約時には、**ローン特約(住宅ローンが借りられなかった場合、売買契約を白紙撤回できる特約)**を必ず付けましょう。
これにより、万一本審査で落ちた場合でも、手付金を返してもらえ、契約を解除できます。
(3) 専門家(住宅ローンアドバイザー・FP)への相談
住宅ローン審査に不安がある場合は、**住宅ローンアドバイザーやファイナンシャルプランナー(FP)**に相談することを推奨します。
専門家は、あなたの状況を分析し、審査に通りやすい金融機関の選び方や、返済計画の立て方をアドバイスしてくれます。
住宅ローン審査は、年収や勤続年数だけでなく、信用情報、他のローン、健康状態など、多くの要素が関わります。
見落としやすい盲点を事前に確認し、適切な対策を取ることで、審査通過の可能性を高めることができます。
