なぜ住宅ローンの見直しが重要なのか|金利上昇時代の対応策
住宅ローンを返済中の方にとって、ローンの見直しは家計改善の大きなチャンスです。
この記事では、借り換え・繰上返済・金利交渉といった見直し方法のメリット・デメリット、効果的なタイミング、具体的な判断基準を、住宅金融支援機構や全国銀行協会の公式情報を元に解説します。
ご自身の状況に合った見直し方法を選択できるようになります。
この記事のポイント
- 2025年は政策金利上昇により、約6割が住宅ローン選択を見直している
- 借り換えは「残高1,000万円以上・期間10年以上・金利差1%以上」が効果の目安
- 繰上返済は期間短縮型と返済額軽減型があり、目的に応じて選択する
- 金利交渉や固定金利への切り替えも有効な見直し方法となる
- 見直しには個別性が高いため、シミュレーションと専門家への相談が重要
(1) 2025年の金利動向(政策金利上昇・変動金利0.6〜0.7%台)
2025年1月に政策金利が0.5%へ上昇し、2026年末までに約1.1%への上昇が予測されています。
三菱UFJ銀行をはじめとする主要銀行は、短期プライムレート(銀行が優良企業に短期で貸し出す際の最優遇金利)の引き上げを実施しました。
一方、住まいサーフィンの調査によると、変動金利は主要銀行の優遇金利が0.6〜0.7%台で据え置きが続いています。
(2) 金利上昇が返済額に与える影響
変動金利で借り入れている場合、金利上昇は返済額の増加に直結します。
たとえば、借入額3,000万円・返済期間35年・金利0.6%の場合、毎月の返済額は約7.9万円です。金利が1.0%に上昇すると、毎月の返済額は約8.5万円に増加し、月々6,000円、年間7.2万円の負担増となります。
35年間では約250万円の総返済額増加となる可能性があります。
(3) 約6割が住宅ローン選択に変化している
住まいサーフィンの調査によると、約6割が金利上昇を受けて住宅ローン選択に変化を起こしています。
具体的には、借入額の減額、返済期間の短縮、固定金利への見直し等が挙げられます。
住宅ローン見直しのタイミング|いつ見直すべきか
住宅ローンの見直しには最適なタイミングがあります。
(1) 金利差が生じたとき
現在の借入金利と市場金利に差が生じた場合、見直しを検討するタイミングです。
SBI新生銀行の解説によると、金利差1%以上が借り換え効果の目安とされています。
金利差0.5%程度では、借り換え諸費用(50万〜70万円程度)を考慮すると効果が薄い可能性があります。
(2) ライフステージの変化(収入減・教育費負担増等)
収入減少、教育費負担の増加、医療費の増加等、家計に変化が生じたときも見直しのタイミングです。
繰上返済の「返済額軽減型」を活用することで、毎月の返済額を減らし、家計負担を軽減できます。
(3) 返済期間の中盤(残り10年以上が目安)
返済期間が残り10年以上ある段階が、見直しの効果が出やすいタイミングです。
返済期間が短い場合、借り換え諸費用が削減利息を上回り、かえって損をする可能性があります。
借り換えのメリット・デメリット|効果の目安と諸費用
借り換えは、現在の住宅ローンを完済し、より有利な条件の新しい住宅ローンに乗り換える方法です。
(1) 借り換えの効果が出やすい条件(残高1,000万円以上・期間10年以上・金利差1%以上)
SBI新生銀行の解説によると、借り換え効果の目安は以下の3条件が揃うことです。
| 条件 | 目安 |
|---|---|
| ローン残高 | 1,000万円以上 |
| 返済期間残り | 10年以上 |
| 金利差 | 1%以上 |
この3条件が揃う場合、借り換え諸費用を上回る利息削減効果が期待できます。
(2) 借り換えのメリット(総返済額の削減・返済期間の短縮)
借り換えのメリットは以下の通りです。
- 総返済額の削減: 金利が下がることで、利息負担が減少します
- 返済期間の短縮: 同じ返済額で期間を短縮することも可能です
- 固定金利への切り替え: 変動金利から固定金利へ切り替えることで、金利上昇リスクを回避できます
(3) 借り換えのデメリット(諸費用50万〜70万円・再審査・団信再加入)
借り換えには以下のデメリットがあります。
- 諸費用: 借り換えには新規ローンと同様の諸費用(保証料、事務手数料、登記費用等)が50万〜70万円程度かかります
- 再審査: 新規ローンと同様の審査があり、収入や健康状態によっては通らない場合があります
- 団体信用生命保険(団信)の再加入: 健康状態によっては加入できない可能性があります
(4) シミュレーションで効果を検証する
借り換えを検討する際は、必ずシミュレーションで効果を検証しましょう。
多くの金融機関がWebサイトで無料のシミュレーションツールを提供しています。現在の借入残高、金利、返済期間を入力し、借り換え後の条件と比較することで、諸費用を含めた総合的な損益を確認できます。
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繰上返済の効果|期間短縮型vs返済額軽減型
繰上返済は、毎月の返済とは別に、ローン元金の一部または全部を前倒しで返済する方法です。
全国銀行協会の解説によると、繰上返済には「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2パターンがあります。
(1) 期間短縮型の特徴(返済額は変えず期間を短縮)
期間短縮型は、毎月の返済額は変えずに返済期間を短縮する方法です。
メリット:
- 利息削減効果が大きい(返済期間が短くなるため、利息総額が減少)
- 早期完済で老後の負担を軽減
デメリット:
- 毎月の返済額は変わらないため、家計負担は軽減されない
(2) 返済額軽減型の特徴(期間は変えず返済額を削減)
返済額軽減型は、返済期間は変えずに毎月の返済額を減らす方法です。
メリット:
- 毎月の返済額が減少し、家計負担が軽減される
- 収入減少時や教育費負担増加時に有効
デメリット:
- 利息削減効果は期間短縮型より小さい
(3) どちらを選ぶべきか(ライフプラン別の選択基準)
以下の基準で選択しましょう。
| 状況 | 推奨 |
|---|---|
| 老後の負担を減らしたい | 期間短縮型 |
| 家計の余裕を作りたい | 返済額軽減型 |
| 教育費負担が増える見込み | 返済額軽減型 |
| 収入が安定している | 期間短縮型 |
(4) 繰上返済のタイミング
繰上返済は早期に実施するほど効果が高くなります。
ローン元金に対して利息が計算されるため、元金が多い時期(返済初期)に繰上返済することで、利息削減効果が最大化されます。
ただし、手元資金を全て繰上返済に回すと、急な出費に対応できなくなるため、生活予備費(生活費の3〜6ヶ月分)を確保した上で実施しましょう。
金利交渉と固定金利への切り替え|その他の見直し方法
借り換え・繰上返済以外にも、見直し方法があります。
(1) 現在の金融機関への金利交渉(他行の条件を活用)
複数の金融機関から見積もりを取り、他行の金利条件を交渉材料として活用することで、現在の金融機関が金利引き下げに応じる場合があります。
借り換えと異なり、諸費用がかからないため、成功すれば効率的な見直し方法となります。
ただし、必ず成功するわけではないため、複数の選択肢を検討しましょう。
(2) 変動金利から固定金利への切り替え
三井住友銀行の解説によると、金利上昇が見込まれる局面では、固定金利への切り替えで返済額を一定にし、見通しを立てやすくする方法があります。
メリット:
- 金利上昇リスクを回避できる
- 返済計画が立てやすくなる
デメリット:
- 切り替え後は金利が下がっても恩恵を受けられない
- 変動金利より金利が高い場合が多い
(3) 見直し方法の比較(借り換え・繰上返済・金利交渉)
各見直し方法の比較表は以下の通りです。
| 方法 | 効果 | 諸費用 | リスク |
|---|---|---|---|
| 借り換え | 大(金利差が大きい場合) | 50万〜70万円 | 再審査、団信再加入 |
| 繰上返済 | 中(元金減少による利息削減) | 無料〜数千円 | 手元資金減少 |
| 金利交渉 | 小〜中(成功すれば効率的) | 無料 | 成功保証なし |
| 固定金利切替 | 中(金利上昇リスク回避) | 金融機関による | 金利低下の恩恵なし |
(4) 専門家への相談の重要性
住宅ローンの見直しは個別性が高く、ご自身の状況(借入残高、金利、返済期間、今後のライフプラン)により最適な方法が異なります。
ファイナンシャルプランナーや住宅ローンアドバイザー、金融機関の窓口に相談することで、総合的な判断が可能になります。
まとめ:住宅ローン見直しで家計を改善するために
住宅ローンの見直しは、借り換え・繰上返済・金利交渉・固定金利切替といった複数の方法があります。金利差、ローン残高、返済期間、ライフプランに応じて、最適な方法を選択することが重要です。
見直しには個別性が高いため、シミュレーションツールを活用し、複数の金融機関から見積もりを取ることをおすすめします。
ファイナンシャルプランナーや金融機関の窓口に相談しながら、無理のない返済計画を立てましょう。
