国土地理院の標高データとは?活用される理由
土地購入や住宅建築を検討する際、「この場所の標高はどのくらいか」「浸水リスクはあるか」と気になる方は多いでしょう。
この記事では、国土地理院の標高データの仕組み、地理院地図での確認方法、ダウンロード方法、活用シーン、注意点を、国土地理院公式サイトの情報を元に解説します。
標高データの使い方を理解することで、土地購入時の浸水リスク確認や建築計画に役立てられるようになります。
(1) デジタル標高地形図の概要
国土地理院によると、デジタル標高地形図は航空レーザー測量や写真測量によって得た標高データをメッシュで区切ったものです。
標高データは、地表面の高さを数値化したデータで、防災計画、土木工事、土地利用計画などに広く活用されています。
**数値標高モデル(DEM: Digital Elevation Model)**は、標高データをメッシュ(方眼)で区切り、その中心点の標高値を抽出したデータです。
(2) 航空レーザー測量と写真測量の違い
標高データの取得方法には、主に2つの手法があります。
| 測量方法 | 特徴 | 精度 |
|---|---|---|
| 航空レーザー測量 | 航空機からレーザーを照射して地表の標高を測定 | 高精度 |
| 写真測量 | 航空写真から地形の高さを測定 | 中精度 |
(出典: 国土地理院)
航空レーザー測量は、樹木の下の地表面まで測定できるため、より正確なデータが得られます。
(3) 防災・土地購入での重要性
標高データは、浸水リスクの確認に有用です。土地購入時に周辺の標高を確認することで、河川氾濫や高潮時のリスクを把握できます。
ただし、標高データだけで判断せず、自治体のハザードマップや地盤調査も併用することが重要です。過去の浸水履歴や地盤の軟弱性も考慮してください。
標高データの種類と精度
(1) 1mメッシュ標高データ(最高精度、提供範囲約46%)
国土地理院によると、1mメッシュ標高データは最も高精度で、2024年3月31日時点で全国の約46%の3次メッシュで提供されています。
提供範囲: 約134,000km²(日本の国土の約35%)
1mメッシュデータは、都市部や防災上重要なエリアを中心に整備されており、建築計画や詳細な地形解析に適しています。
(2) 5mメッシュ標高データ(航空レーザー・写真測量)
5mメッシュには、航空レーザー測量(5A)と写真測量(5B)の2種類があります。
- 5A(航空レーザー): 高精度で、樹木の下の地表面まで測定可能
- 5B(写真測量): 中精度で、広範囲をカバー
5mメッシュは1mメッシュより提供範囲が広く、全国の多くの地域で利用できます。
(3) 10mメッシュ標高データ(地形図等高線)
10mメッシュは、地形図の等高線から作成されたデータで、全国をほぼカバーしています。
精度は1m、5mより劣りますが、広域の地形解析や概略的な標高確認に適しています。
(4) 測地成果2024への改定(2025年4月1日)
国土地理院によると、2025年4月1日に標高成果を「測地成果2024」に改定しました。
主な変更点:
- 衛星測位を基盤とする標高の仕組みに移行
- 新しいジオイドモデル「ジオイド2024(日本とその周辺)」を作成
- 大規模地震後の迅速な復旧・復興作業での活用が可能に
古い標高データを使用している場合は、最新の測地成果2024との整合性を確認してください。
地理院地図で標高を確認する方法
(1) スマートフォンでの現在地標高表示
地理院地図のスマートフォン版では、現在地の標高を一発表示できます。
使い方:
- スマートフォンで https://maps.gsi.go.jp/ にアクセス
- 現在地ボタンをタップ
- 画面下部に標高が表示される
外出先で気になる場所の標高をすぐに確認できるため、土地の下見や防災意識の向上に役立ちます。
(2) 地図上の任意の地点の標高と座標確認
パソコン版の地理院地図では、地図上の任意の地点をクリックすると標高と座標を表示できます。
使い方:
- https://maps.gsi.go.jp/ にアクセス
- 地図上の確認したい場所をクリック
- ポップアップで標高・緯度・経度が表示される
複数地点の標高を比較したい場合は、この機能が便利です。
(3) 色別標高図と3D表示機能
地理院地図では、色別標高図を地形図に重ねて表示できます。標高の高低が色で可視化されるため、地形の起伏を直感的に把握できます。
また、3D機能で地形を立体的に表示でき、3Dプリンタ用データもダウンロード可能です。
標高データのダウンロードとAPIの使い方
(1) 基盤地図情報ダウンロードサービスの利用手順
基盤地図情報ダウンロードサービスから、数値標高モデル(DEM)を無料でダウンロードできます。
ダウンロード手順:
- https://service.gsi.go.jp/kiban/ にアクセス
- ユーザー登録(無料)とログイン
- ダウンロードするエリアと種類(5m、10m等)を選択
- ファイルをダウンロード(ZIP形式)
ダウンロードしたデータは、基盤地図情報ビューアやQGISなどのGISソフトで閲覧・解析できます。
(2) 標高APIの使い方(緯度経度から標高を取得)
国土地理院は、緯度経度を指定すると標高値を返す標高APIを提供しています(試験公開中)。
APIエンドポイント:
https://cyberjapandata2.gsi.go.jp/general/dem/scripts/getelevation.php?lon=経度&lat=緯度&outtype=JSON
レスポンス例:
{
"elevation": 12.5,
"hsrc": "5a"
}
elevation: 標高値(メートル)hsrc: データソース(1a=1mレーザ、5a=5mレーザ、5b=5m写真、10b=10m)
プログラムから標高データを自動取得したい場合に活用できます。
(3) GISソフトでのデータ閲覧・解析
ダウンロードした標高データは、以下のGISソフトで閲覧・解析できます。
- 基盤地図情報ビューア: 国土地理院が提供する無料ソフト
- QGIS: オープンソースのGISソフト(高度な解析が可能)
これらのソフトを使うことで、標高データから等高線を作成したり、断面図を描いたりできます。
標高データの活用シーンと注意点
(1) 土地購入時の浸水リスク確認
土地購入前に標高データを確認することで、浸水リスクを把握できます。
確認ポイント:
- 周辺の道路や河川との高低差
- 過去の浸水履歴(ハザードマップで確認)
- 地盤の軟弱性(地盤調査で確認)
標高が高い土地でも、地盤が軟弱な場合は液状化リスクがあるため、総合的に判断してください。
(2) ハザードマップとの併用
自治体のハザードマップは、過去の浸水実績や想定される浸水深を示しています。標高データとハザードマップを併用することで、より正確なリスク評価が可能です。
ハザードマップは各自治体のWebサイトや、国土交通省のハザードマップポータルサイトで確認できます。
(3) 建築計画での活用
建築計画では、敷地の標高データを元に以下を検討します。
- 建物の配置(高低差を活かした設計)
- 排水計画(雨水の流れを考慮)
- 擁壁の設置(高低差がある場合)
標高データを活用することで、敷地の特性を活かした建築計画が可能になります。
(4) APIの使用上の注意点(過度なアクセス禁止)
国土地理院によると、標高APIは試験公開中で、以下の注意点があります。
- 過度なアクセス禁止: サーバに過度の負担を与えないこと。過度なアクセスは予告なく遮断される可能性がある
- 予告なく変更・停止の可能性: 試験公開中のため、APIの仕様や提供が予告なく変更・停止される可能性がある
API利用時は、適切な利用頻度を守り、サーバに負担をかけないよう配慮してください。
まとめ:状況別の標高データ活用法
国土地理院の標高データは、航空レーザー測量や写真測量で得た標高をメッシュで区切ったものです。地理院地図(https://maps.gsi.go.jp/)のスマートフォン版で現在地の標高を一発表示でき、パソコン版では地図上の任意の地点の標高と座標を確認できます。
データは1m、5m、10mメッシュの3種類があり、1mメッシュが最高精度(提供範囲は全国の約46%)です。2025年4月1日に標高成果が「測地成果2024」に改定され、衛星測位を基盤とするシステムに移行しました。
土地購入時の浸水リスク確認には、標高データだけでなく、自治体のハザードマップや地盤調査も併用することを推奨します。建築計画では、標高データを元に建物の配置・排水計画・擁壁の設置を検討できます。
標高APIを利用する場合は、過度なアクセスを避け、適切な利用頻度を守ってください。詳細は国土地理院の公式サイトでご確認ください。
