不動産査定とは
不動産売却を検討する際、「自宅はいくらで売れるのか」「複数の不動産会社に依頼したいが費用が心配」と悩む方は少なくありません。
この記事では、無料で不動産査定を受ける仕組みと、査定サービスの選び方を解説します。訪問査定と机上査定の違い、一括査定のメリット・デメリット、営業電話対策を含む実践的なノウハウを提供します。
初めて不動産を売却する方でも、適正な査定額を把握し、信頼できる業者を選べるようになります。
この記事のポイント
- 不動産会社の査定は無料で、売却成立時の仲介手数料で収益を得る仕組み(査定費用の請求は法律で禁止)
- 無料査定は「目安」で法的効力はなく、有料鑑定は不動産鑑定士による法的効力のある評価(費用15万円以上)
- 複数社(2-3社程度)に査定依頼することで適正な市場価格を把握し、極端な高値査定や低値査定を見極められる
- 一括査定サイトは便利だが、複数社から営業連絡が来るため、依頼会社数を絞るか匿名査定サービスを活用する
- 査定価格はあくまで「目安」であり実際の売却価格ではないため、過去の取引事例や周辺相場も自分で調べることが重要
(1) 不動産査定が必要な理由
不動産を売却する際、適正な価格を把握することは非常に重要です。査定が必要な主な理由は以下の通りです。
- 市場価格の把握: 自分の不動産が現在の市場でどの程度の価値があるかを知ることができる
- 売却戦略の立案: 適正価格を知ることで、売り出し価格や交渉の余地を検討できる
- 複数社の比較: 複数の不動産会社の査定を比較することで、最も適切な売却パートナーを選べる
- 資金計画の策定: 売却後の資金計画を立てるための重要な判断材料になる
不動産の価格は、立地・築年数・管理状態・市場動向により大きく異なるため、専門家による査定が不可欠です。
(2) 査定額の算出方法
不動産会社が査定額を算出する際は、以下の要素を総合的に判断します。
- 取引事例比較法: 過去の類似物件の取引価格を参考にする
- 原価法: 建物の再調達価格から築年数による減価を差し引く
- 収益還元法: 賃貸物件の場合、将来得られる収益から逆算する
- 立地・周辺環境: 駅からの距離、周辺施設、地域の人気度等
- 物件の状態: 築年数、間取り、設備、リフォーム履歴等
HOME4Uによると、複数社に査定依頼することで適正な市場価格を把握できます。
無料査定の仕組みと有料鑑定との違い
不動産査定には「無料査定」と「有料鑑定」があり、それぞれ目的と法的効力が異なります。
(1) なぜ無料で査定が受けられるのか
ナカジツによると、不動産会社は査定費用の請求が禁止されており、売却成立時の仲介手数料で収益を得る仕組みです。
不動産会社の収益モデルは以下の通りです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 査定費用 | 無料(法律で禁止) |
| 仲介手数料 | 物件価格の3%+6万円+消費税(宅地建物取引業法で規定) |
| 収益発生時期 | 売買契約成立時 |
査定は「集客手段」としての役割を持ち、売却を検討している顧客との接点を作るために無料で提供されています。
(2) 無料査定と有料鑑定の違い
ハピすむによると、無料査定は不動産会社が過去の取引事例と市場状況から算出する目安で法的効力はなく、有料鑑定は不動産鑑定士が法定基準に従って評価し法的効力があります。
| 項目 | 無料査定 | 有料鑑定 |
|---|---|---|
| 実施者 | 不動産会社 | 不動産鑑定士(国家資格) |
| 法的効力 | なし | あり |
| 基準 | 独自基準・過去の取引事例 | 不動産鑑定評価基準(法定) |
| 費用 | 無料 | 15万円以上 |
| 目的 | 売却価格の目安 | 法的に正しい価格の証明 |
| 所要期間 | 数時間〜数日 | 1-2週間 |
通常の売却では無料査定で十分ですが、法的効力が必要な場合は有料鑑定が必要です。
(3) 有料鑑定が必要なケース
リビンマッチによると、有料鑑定の費用は15万円以上が一般的で、通常の売却では無料査定で十分ですが、以下のケースでは有料鑑定が必要です。
- 相続税の申告: 相続財産の評価額を税務署に提出する場合
- 企業間取引: 会社の資産評価や合併・買収(M&A)の際
- 裁判での証拠資料: 離婚や相続に関する裁判で正確な資産価値を証明する場合
- 公的機関への提出: 金融機関への担保評価、破産管財人への提出等
法的効力が必要な場合以外は、無料査定を活用することをおすすめします。
査定方法の種類(訪問査定・机上査定)
不動産査定には「机上査定(簡易査定)」と「訪問査定(詳細査定)」の2種類があります。
(1) 机上査定(簡易査定)の特徴
机上査定は、物件情報のみから算出する査定で、現地訪問なしで短時間(数時間〜数日)で結果が出ます。
メリット:
- スピードが早い: 数時間〜数日で結果が出る
- 手間がかからない: 現地訪問不要、物件情報の入力のみ
- 匿名でも可能: サービスによっては個人情報なしで概算を確認できる
デメリット:
- 精度が低い: 物件の実際の状態を確認していないため、誤差が大きい
- 詳細な評価は不可: 建物の劣化状況、設備の状態等は反映されない
活用シーン:
- 売却を本格的に検討する前の概算確認
- 複数社を絞り込むための第一段階
- 相場感を掴みたい場合
(2) 訪問査定(詳細査定)の特徴
訪問査定は、不動産会社の担当者が現地を訪問し、物件の状態を詳細に確認して行う査定で、より正確な価格が算出されます。
メリット:
- 精度が高い: 物件の実際の状態を確認するため、より正確な査定額が出る
- 詳細な評価: 建物の劣化状況、設備の状態、日当たり、眺望等を反映
- 専門家のアドバイス: 売却戦略や市場動向について直接相談できる
デメリット:
- 時間がかかる: 現地訪問の調整と査定に1週間程度かかる
- 立ち会いが必要: 訪問時に立ち会いが必要(30分〜1時間程度)
活用シーン:
- 実際に売却を決めた場合
- 正確な査定額を知りたい場合
- 売却戦略を相談したい場合
(3) どちらを選ぶべきか
売却検討の段階に応じて使い分けることをおすすめします。
| 段階 | 推奨する査定方法 |
|---|---|
| 売却検討初期(相場確認) | 机上査定 |
| 複数社の絞り込み | 机上査定 → 2-3社に絞る |
| 実際の売却準備 | 訪問査定 |
まずは机上査定で相場感を掴み、本格的に売却を検討する段階で訪問査定を依頼するのが効率的です。
無料査定サービスの選び方
不動産査定サービスには様々な種類があり、それぞれ特徴が異なります。
(1) 不動産一括査定サービスの特徴
不動産一括査定サービスは、複数の不動産会社に一度に査定を依頼できるサービスで、物件情報を入力すると複数社から査定結果が届きます。
メリット:
- 効率的: 1回の入力で複数社に依頼できる
- 比較しやすい: 複数社の査定額を並べて比較できる
- 適正価格の把握: 複数社の査定を比較することで、極端な高値査定や低値査定を見極められる
デメリット:
- 営業連絡: 複数社から電話やメールで営業連絡が来る
- 個人情報の入力: 氏名、電話番号、メールアドレス等の入力が必要
- エリア制限: 地方物件では対応会社が少ない場合がある
(2) 主要サービスの比較(HOME4U・LIFULL HOME'S・SUUMO等)
HOME4UとGRO-BELラボによると、2025年の主要一括査定サービスは以下の通りです。
| サービス名 | 運営会社 | 提携会社数 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| HOME4U | NTTデータグループ | 約2,500社 | 23年の実績、NTTグループの信頼性 |
| LIFULL HOME'S | 株式会社LIFULL | 約4,500社 | 提携会社数最多、匿名査定対応 |
| SUUMO | リクルート | - | 最大10社同時依頼、大手ポータルの安心感 |
| すまいValue | 大手6社共同 | 6社 | 大手不動産会社6社のみ提携 |
| HowMa | - | - | AI査定機能搭載、即座に概算確認 |
サービスを選ぶ際は、以下のポイントを確認しましょう。
- 提携会社数: 地方物件では提携会社数が多いサービスが有利
- 運営会社の信頼性: NTTデータ、リクルート等の大手が運営するサービスは安心
- サービス運営年数: 長期運営サービスは実績と信頼性が高い
- 匿名査定対応: 個人情報を入力せずに概算を確認できるサービスもある
(3) AI査定・匿名査定の活用
2025年の不動産一括査定サービスでは、AI査定機能や匿名査定サービスが普及しています。
AI査定の特徴:
- 人工知能(AI)が過去の取引データや市場動向を分析して自動的に算出
- 即座に結果が得られる(数秒〜数分)
- 個人情報の入力不要(サービスによる)
匿名査定の特徴:
- 個人情報(氏名、電話番号等)を入力せずに物件情報のみで概算価格を確認できる
- 営業連絡を避けられる
- LIFULL HOME'S等が対応
活用方法:
- まずAI査定や匿名査定で概算を確認
- 売却を本格的に検討する段階で、2-3社に正式依頼
- 訪問査定で詳細な査定額を確認
この手順により、過剰な営業連絡を避けながら効率的に査定を進められます。
一括査定の注意点とデメリット
一括査定サービスは便利ですが、いくつかの注意点とデメリットがあります。
(1) 複数社からの営業連絡への対応
不動産売却マスターによると、一括査定サイトに登録すると複数社から電話やメールでの営業連絡が来るため、対応に時間を取られる可能性があります。
対策方法:
- 依頼会社数を絞る: 一度に依頼する会社数を2-3社に絞る
- 匿名査定を活用: まず匿名査定で概算を確認してから正式依頼
- 連絡方法を指定: 申込時に「メールのみ」等の希望を記載
- 早めに断る: 依頼しない会社には早めに断りの連絡を入れる
(2) 高値査定のリスク
査定価格≠売却価格であり、他社との比較で選ばれるために意図的に高く設定された高値査定が含まれる場合があります。
高値査定の見極め方:
- 複数社の査定を比較: 極端に高い査定額は要注意
- 根拠を確認: なぜその価格になったのか、根拠を詳しく聞く
- 過去の取引事例を確認: 自分でも国土交通省の不動産取引価格情報で周辺相場を調べる
- 販売戦略を聞く: その価格で本当に売れるのか、販売戦略を確認
査定価格を過信せず、市場動向や周辺相場も自分で調査することが重要です。
(3) 個人情報の取り扱い
グロープロフィットによると、一括査定サービスに個人情報を登録すると複数社に情報が共有されるため、個人情報の取り扱いに注意が必要です。
注意点:
- プライバシーポリシーを確認: サービスのプライバシーポリシーを確認する
- 信頼できるサービスを選ぶ: 大手ポータルサイト運営のサービスを優先
- 必要最低限の情報のみ入力: 任意項目は空欄でも可
- 匿名査定の活用: 個人情報を入力せずに概算を確認できるサービスを活用
まとめ:無料査定を上手に活用するために
不動産の無料査定は、売却成立時の仲介手数料で収益を得る仕組みのため無料で提供されています。通常の売却では無料査定で十分ですが、法的効力が必要な場合(相続、企業間取引、裁判等)は不動産鑑定士による有料鑑定(15万円以上)が必要です。
複数社(2-3社程度)に査定依頼することで適正な市場価格を把握し、極端な高値査定や低値査定を見極めることが重要です。一括査定サイトは便利ですが、複数社から営業連絡が来るため、依頼会社数を絞るか匿名査定サービスを活用しましょう。
査定価格はあくまで「目安」であり実際の売却価格ではないため、過去の取引事例や周辺相場も自分で調べることをおすすめします。まずはAI査定や机上査定で相場感を掴み、本格的に売却を検討する段階で訪問査定を依頼するのが効率的です。
不動産売却には専門的な知識が必要なため、査定結果や売却戦略については宅地建物取引士等の専門家への相談をおすすめします。
