不動産仲介手数料の割引とは?仕組みと知っておくべき基礎知識
不動産の売買や賃貸を検討する際、「仲介手数料をできるだけ抑えたい」と考える方は少なくありません。
この記事では、仲介手数料の法定上限と割引制度の仕組み、各社のサービス比較、割引を受ける際の注意点について解説します。宅地建物取引業法の規定を踏まえながら、賢く節約するためのポイントをお伝えします。
この記事のポイント
- 仲介手数料は法定上限額であり、値引き交渉は法的に可能
- 東急リバブルは紹介・リピート利用で10%割引の特典がある
- エイブルの半額適用は直営店のみで、フランチャイズ店は異なる
- 賃貸仲介の原則は0.5ヶ月分(借主の事前承諾があれば1ヶ月分まで)
- 仲介手数料だけでなく、総額で比較することが重要
仲介手数料の法定上限と計算方法
仲介手数料は、宅地建物取引業法により上限額が定められています。ただし、これはあくまで「上限」であり、下限規制はありません。
売買仲介の上限額(売買価格×3%+6万円+消費税)
売買仲介手数料の法定上限額は、売買価格に応じて以下のように計算されます。
| 売買価格 | 上限額 |
|---|---|
| 200万円以下 | 売買価格×5%+消費税 |
| 200万円超400万円以下 | 売買価格×4%+2万円+消費税 |
| 400万円超 | 売買価格×3%+6万円+消費税 |
例えば、3,000万円の物件を売買する場合、仲介手数料の上限は約105万円(3,000万円×3%+6万円+消費税)となります。
賃貸仲介の上限額(原則0.5ヶ月分)
賃貸仲介手数料については、宅地建物取引業法により、借主からは原則として家賃の0.5ヶ月分(+消費税)が上限とされています。
ただし、借主から事前の承諾を得た場合に限り、1ヶ月分(+消費税)まで受領することが可能です。この「事前承諾」のタイミングが問題となったのが、後述の東急リバブル裁判です。
2024年7月改正の内容(800万円以下への特例拡大)
2024年7月1日から、売買仲介手数料の特例が拡大されました。従来は400万円以下の物件が対象でしたが、800万円以下の物件まで特例が適用されるようになりました。
この改正により、800万円以下の物件では売主・買主双方から最大33万円(+消費税)を受領できるようになり、空き家などの低価格帯物件の流通促進が期待されています。
仲介手数料割引の仕組みと各社のサービス比較
不動産会社によっては、仲介手数料の割引制度を設けている場合があります。
東急リバブルの割引制度(紹介・リピート・会員特典)
東急リバブルでは、以下の割引特典が用意されています。
- 紹介割引:知人・親族からの紹介で10%割引
- リピート割引:過去に東急リバブルを利用した方は10%割引
- 東急コスモス会員特典:東急コスモス会員は10%割引
これらの割引は公式サイトで案内されており、条件を満たす場合は積極的に活用することで仲介手数料を抑えることができます。
エイブルの仲介手数料(直営店は半額)
エイブルでは、直営店で契約する場合、仲介手数料が家賃の55%(税込)となり、実質半額で利用できます。
ただし、注意が必要なのはフランチャイズ店(エイブルネットワーク)の場合です。フランチャイズ店は独立した事業者が運営しているため、仲介手数料は家賃1.1ヶ月分が基本となるケースがあります。
割引が可能になる仕組み(両手仲介、コスト削減等)
仲介手数料の割引や無料化が可能になる主な仕組みは以下のとおりです。
- 両手仲介:売主・買主双方から仲介手数料を受領できる取引では、一方の手数料を割引することで集客を図るケースがある
- コスト削減:店舗数や人件費を抑え、オンライン中心で対応することで手数料を削減
- 他の収益源:火災保険の代理店手数料や引越し業者紹介料など、仲介手数料以外で収益を確保
エイブルの仲介手数料が半額じゃないケースの理由
「エイブルは仲介手数料半額」と認識している方も多いですが、実際には半額にならないケースがあります。
直営店とフランチャイズ店の違い
エイブルの店舗は、大きく「直営店」と「フランチャイズ店(エイブルネットワーク)」に分かれます。
| 店舗種別 | 仲介手数料 | 備考 |
|---|---|---|
| 直営店 | 家賃の55%(税込) | 半額適用 |
| フランチャイズ店 | 家賃1.1ヶ月分(税込) | 半額適用なし |
フランチャイズ店は「エイブル」の看板を使用していますが、運営は独立した事業者が行っており、手数料体系も異なります。
契約前に確認すべきポイント
- 店舗が直営店かフランチャイズ店かを事前に確認する
- 仲介手数料以外の初期費用(火災保険、鍵交換費用等)も含めた総額を確認する
- 複数の不動産会社で見積もりを取り、比較検討する
仲介手数料割引を受ける際の注意点とリスク
仲介手数料の割引は魅力的ですが、注意すべき点もあります。
サービス品質への影響の可能性
仲介手数料を過度に値引き交渉すると、サービスの優先度や対応品質に影響する可能性があります。不動産会社の収益源である仲介手数料を削ることで、担当者のモチベーションや販売活動への注力度が下がるリスクも考慮すべきです。
火災保険やオプション費用の上乗せに注意
仲介手数料が無料や半額の業者では、火災保険や鍵交換費用、消毒費用などのオプションサービスで費用を回収するケースがあります。仲介手数料だけを見て判断せず、総額で比較することが重要です。
賃貸仲介での事前承諾の重要性(東急リバブル裁判の教訓)
2019年に東京地裁で判決が出され、2020年に東京高裁で確定した「東急リバブル裁判」は、賃貸仲介手数料に関する重要な判例です。
この裁判では、借主の事前承諾を得ずに仲介手数料1ヶ月分を徴収したことが違法と判断され、東急リバブルに約11.8万円の返還命令が出されました。
ポイント:賃貸仲介手数料は原則0.5ヶ月分であり、1ヶ月分を徴収するには借主の「事前の」承諾が必須です。契約時ではなく、媒介依頼時に承諾を得る必要があると解釈されています。
総額での比較の重要性
仲介手数料の割引額だけでなく、以下の項目も含めた総額で比較することを推奨します。
- 仲介手数料
- 火災保険料
- 鍵交換費用
- 消毒・クリーニング費用
- その他オプション費用
まとめ:仲介手数料を賢く節約するためのポイント
仲介手数料は法定上限額であり、値引き交渉や割引制度の活用は法的に認められています。
東急リバブルの紹介・リピート割引や、エイブル直営店の半額サービスなど、各社の割引制度を把握し、条件を満たす場合は積極的に活用しましょう。
ただし、過度な値引き交渉はサービス品質に影響する可能性があること、仲介手数料以外の費用で回収されるケースがあることにも注意が必要です。仲介手数料だけでなく、総額で比較し、信頼できる不動産会社を選ぶことが、最終的な満足度につながります。


