不動産ファンドとは?仕組み・種類・メリット/デメリットを解説

公開日: 2025/10/26

不動産ファンドとは?少額から不動産投資ができる仕組み

「不動産投資に興味があるけど、数千万円の資金も物件管理の時間もない」と感じている方は多いのではないでしょうか。

この記事では、1万円~数万円から始められる不動産ファンドの仕組み、種類、メリット・デメリットを、金融庁投資信託協会の公式情報を元に解説します。

不動産ファンドの基本を理解し、自分に合った投資方法を選べるようになります。

この記事のポイント

  • 不動産ファンドは、投資家から集めた資金でオフィスビル・商業施設等に投資し、賃料収入・売却益を分配する金融商品
  • J-REIT、私募REIT、不動産クラウドファンディングの3種類がある
  • 少額から分散投資ができ、物件管理が不要、安定配当が期待できるメリットがある
  • 元本保証がなく、価格変動・空室・金利上昇・自然災害等のリスクがある
  • 投資額・流動性・リスク許容度に応じて自分に合ったタイプを選ぶことが重要

不動産ファンドの基本的な仕組み

不動産ファンドとは、投資家から集めた資金でオフィスビル・商業施設・マンション等の不動産に投資し、賃料収入や売却益を分配する金融商品です。

現物不動産投資との違い

不動産ファンドと現物不動産投資(一棟マンション・アパート等を直接購入)の主な違いは以下の通りです。

項目 不動産ファンド 現物不動産投資
必要資金 1万円~数万円 数千万円~数億円
物件管理 不要(専門会社が実施) 必要(入居者募集、修繕等)
分散投資 可能(複数物件に分散) 困難(1-2物件に集中)
流動性 高い(J-REIT) 低い(売却に時間がかかる)

不動産ファンドは、現物不動産投資のハードルを大幅に下げる金融商品として注目されています。

元本保証がないことに注意

不動産ファンドは投資商品であり、元本保証はありません。不動産市況・空室率・金利動向により、価格変動や元本割れの可能性があります。預金とは異なり、投資リスクがあることを理解した上で投資しましょう。

不動産ファンドの3つの種類を比較

不動産ファンドには、J-REIT、私募REIT、不動産クラウドファンディングの3種類があります。

3タイプの特徴比較

投資信託協会等の情報を元に、3タイプを比較します。

項目 J-REIT 私募REIT 不動産クラウドファンディング
投資額 数万円~ 数千万円~億円 1万円~
流動性 高い(証券取引所で売買) 低い(中途解約不可) 低い(中途解約不可)
配当利回り 3-5%程度 4%前後 案件により異なる
投資家 個人投資家 機関投資家 個人投資家
税制 法人税の実質非課税 法人税の実質非課税 通常の所得税

(出典: 投資信託協会ニッセイ基礎研究所

J-REIT(上場不動産投資信託)

J-REITは証券取引所に上場している不動産投資信託です。

特徴:

  • 投資額: 1口数万円から投資可能
  • 流動性: 証券取引所で売買できるため流動性が高い
  • 配当利回り: 3-5%程度が目安
  • 税制優遇: 利益の90%超を分配すると法人税が実質非課税

J-REITは個人投資家が最も手軽に始められる不動産ファンドです。

私募REIT(非上場不動産投資信託)

私募REITは機関投資家向けの非上場不動産投資信託です。

特徴:

  • 投資額: 数千万円~億円単位と高額
  • 流動性: 非上場のため中途解約不可、流動性が低い
  • 分配金利回り: 4%前後と安定配当が特徴
  • 投資家: 年金基金、生命保険会社等の機関投資家が中心

三井住友トラスト基礎研究所によると、2025年1月時点の私募ファンド市場規模は44.9兆円です。

不動産クラウドファンディング

不動産クラウドファンディングは、1万円程度の少額から投資可能な不動産投資商品です。

特徴:

  • 投資額: 1万円から投資可能
  • 運用期間: 数ヶ月~数年(案件により異なる)
  • 中途解約: 基本的に不可、流動性が低い
  • 投資家保護: 優先劣後システムで損失発生時は事業者の出資分から充当

インターネットで手軽に投資できますが、流動性の低さに注意が必要です。

不動産ファンドのメリット

不動産ファンドの3つの主要なメリットを説明します。

少額から分散投資ができる

J-REITは数万円、不動産クラウドファンディングは1万円から投資可能です。現物不動産投資は数千万円が必要なのに対し、不動産ファンドは大幅に低い資金で始められます。

また、複数の物件・地域に分散投資できるため、リスクを抑えられます。

物件管理が不要

不動産ファンドでは、物件管理は専門の運用会社が行います。入居者募集、賃料回収、修繕対応等の手間がかからないため、投資家は本業に集中できます。

安定した配当収入が期待できる

J-REITの配当利回りは3-5%程度、私募REITは4%前後と、賃料収入をベースとした安定配当が期待できます。

ただし、将来の配当は保証されていません。不動産市況・空室率・金利動向により配当額は変動します。

不動産ファンドのデメリット・リスク

不動産ファンドには以下のデメリット・リスクがあります。

元本保証がない(価格変動・元本割れリスク)

不動産ファンドは元本保証がなく、不動産市況により価格が変動します。J-REITは証券市場で取引されるため、経済状況・金利動向により投資口価格が下落し、元本割れの可能性があります。

空室リスク・金利上昇リスク

不動産ファンドの収益源は賃料収入です。空室率が上昇すると賃料収入が減少し、配当額が減る可能性があります。

また、金利が上昇すると借入コストが増加し、収益を圧迫します。J-REITは負債比率が40-50%程度のため、金利動向の影響を受けやすい特徴があります。

流動性リスク(私募REIT、不動産クラウドファンディング)

私募REITや不動産クラウドファンディングは、運用期間中の中途解約ができません。資金が拘束されるため、余裕資金で投資することが重要です。

J-REITは証券取引所で売買できるため流動性が高いですが、市況により希望価格で売却できない場合があります。

自然災害・事業者倒産リスク

地震・台風等の自然災害により、投資対象の物件が損害を受けるリスクがあります。また、ファンド事業者が倒産した場合、投資資金の回収が困難になる可能性があります。

投資家保護制度は限定的であり、リスク分散が重要です。

不動産ファンドの市場動向(2025年)

2025年の不動産投資市場の動向を紹介します。

投資額・空室率の最新データ

JLLによると、2025年上半期の不動産投資額は3.19兆円(前年比+22%)と増加しています。東京Aグレードオフィスの空室率は2.4%と低水準を維持しており、需要が堅調です。

私募ファンド市場規模

三井住友トラスト基礎研究所の調査によると、私募ファンド市場規模は44.9兆円と拡大しています。

J-REIT市場は金利動向・不動産市況により変動しますが、長期的には安定した配当が期待できることから、投資家の関心が高まっています。

まとめ:自分に合った不動産ファンドを選ぶには

不動産ファンドは、少額から不動産投資ができる金融商品ですが、元本保証がなく価格変動リスクがあることを理解しましょう。

J-REIT(流動性高、数万円から)、私募REIT(機関投資家向け、高額)、不動産クラウドファンディング(1万円から、流動性低)の3タイプから、自分の投資額・リスク許容度に合わせて選ぶことが重要です。

次のステップとして、証券会社の口座を開設し、J-REITの銘柄情報やリスク情報を確認してみましょう。個別銘柄を選ぶ際は、配当利回りだけでなく、投資対象の物件・地域・空室率・負債比率等を総合的に判断することをおすすめします。

よくある質問

Q1不動産ファンドは元本保証されていますか?

A1いいえ、元本保証はありません。不動産ファンドは投資商品であり、不動産市況・空室率・金利動向により元本割れの可能性があります。預金とは異なり、投資リスクがあることを理解した上で投資してください。優先劣後システム(不動産クラウドファンディング)も損失を軽減する仕組みですが、元本を保証するものではありません。

Q2J-REITと私募REITの違いは何ですか?

A2J-REITは証券取引所に上場しており、1口数万円から投資可能で流動性が高いのが特徴です。私募REITは非上場で機関投資家向けであり、最低投資額が数千万円~億円単位と高額で流動性が低いですが、安定配当(4%前後)が期待できます。個人投資家にはJ-REITが適していますが、高額投資が可能な場合は私募REITも検討できます。

Q3不動産クラウドファンディングは中途解約できますか?

A3基本的に中途解約はできません。運用期間(数ヶ月~数年)が終了するまで資金が拘束されるため、余裕資金で投資することをおすすめします。流動性が低い点が不動産クラウドファンディングの主なデメリットです。急な資金需要が発生する可能性がある場合は、J-REITの方が適しています。

Q4不動産ファンドの配当利回りは今後も続きますか?

A4過去の配当利回り(J-REIT 3-5%、私募REIT 4%前後)は参考値ですが、将来の配当は保証されていません。不動産市況・空室率・金利動向により配当額は変動します。投資する際は、過去の実績だけでなく、投資対象の物件・地域・空室率・負債比率等のリスク情報も確認してください。

Q5J-REITの税制優遇とは何ですか?

A5J-REITは利益の90%超を分配すると法人税が実質非課税になる税制優遇があります。このため、高い配当利回りを実現できます。ただし、投資家が受け取る配当は所得税・住民税の課税対象(配当所得、約20%)です。特定口座(源泉徴収あり)を利用すれば、確定申告不要で税金が自動的に徴収されます。