マンション退去費用の内訳は?相場・請求トラブル回避法を解説

公開日: 2025/11/4

マンション退去費用とは?基本的な考え方

賃貸マンションから退去予定の方にとって、「退去費用がいくらかかるのか」「高額請求されないか」は大きな不安です。退去費用の相場が分からず、原状回復の範囲が不明なため、請求額に納得できないトラブルも少なくありません。

この記事では、国土交通省の原状回復ガイドラインに基づき、退去費用の内訳と相場、借主負担と貸主負担の範囲、高額請求への具体的な対処法を解説します。

この記事のポイント

  • 退去費用の内訳は、ハウスクリーニング費(1K・1Rで2~4万円程度)、修繕費、鍵交換費等で構成される
  • 通常損耗・経年劣化は貸主負担、故意・過失による損傷は借主負担が原則(国土交通省ガイドライン)
  • 敷金から原状回復費用を差し引いた残額が返還されるが、契約書の特約により異なる場合がある
  • 高額請求への対処法は、入退去時の写真撮影、見積もり内容の精査、国民生活センター等への相談が有効
  • 契約内容を必ず確認し、不明点は早めに相談することが重要

退去費用とは、賃貸借契約終了時に借主が負担する原状回復費用やクリーニング費用の総称です。敷金から差し引かれ、残額が返還されるのが一般的です。

国土交通省の原状回復ガイドラインでは、原状回復とは「借主の故意・過失による損傷を元に戻すこと」と定義され、通常損耗・経年劣化は含まれません。つまり、新品状態に戻す義務はなく、通常使用の範囲内の汚れや劣化は貸主負担となります。

退去費用の内訳と相場

退去費用の内訳を具体的に見ていきましょう。以下は2025年版の最新相場です。

ハウスクリーニング費の相場

ハウスクリーニング費は、退去後の専門業者によるクリーニング費用です。契約書に特約がある場合、借主負担となることが多くあります。

間取り 相場
1K・1R 2~4万円
1DK・2K 3~5万円
2DK・3K 4~7万円
3LDK以上 7~10万円

(参考:賃貸マンションアパートの退去費用の相場

特約がない場合、通常損耗の範囲内であれば貸主負担となります。契約内容を必ず確認しましょう。

修繕費(壁紙・フローリング等)の相場

修繕費は、壁紙やフローリング等の修繕にかかる費用です。借主の故意・過失による損傷の場合のみ請求されます。

項目 相場
壁紙の張り替え(1㎡あたり) 1,000~1,500円
フローリングの張り替え(1㎡あたり) 10,000~20,000円
畳の表替え(1畳あたり) 5,000~10,000円
襖の張り替え(1枚あたり) 3,000~5,000円

参考:賃貸マンションアパートの退去費用の相場

その他の費用(鍵交換、設備修理等)

その他、鍵交換費(1~2万円程度)、設備修理費(破損の程度による)等がかかる場合があります。

借主負担と貸主負担の範囲

原状回復の負担範囲を正しく理解することで、不当な請求を避けられます。国土交通省ガイドライン三井のリハウスの解説を参考に整理します。

借主が負担するケース(具体例)

以下のような損傷は、借主の故意・過失によるものと判断され、借主負担となります。

  • タバコのヤニ汚れ・臭い: 壁紙や天井の変色・臭いの除去費用
  • ペットの傷・臭い: フローリングや壁紙の傷、臭いの除去費用
  • 釘やネジの穴: 家具固定や絵画掲示のための大きな穴
  • カビ・汚れ(清掃怠慢): 浴室・キッチンのカビ、換気扇の油汚れ等
  • 設備の破損: 故意・過失による破損(ガラス、建具等)

貸主が負担するケース(具体例)

以下のような損耗は、通常使用の範囲内または経年劣化と判断され、貸主負担となります。

  • 日焼けによる変色: 壁紙・畳・フローリングの日焼け
  • 通常使用の汚れ: 家具の設置跡、通常の生活による汚れ
  • 画鋲の小さな穴: ポスター等を貼るための画鋲穴(小さな穴)
  • 経年劣化: 壁紙の自然な変色、設備の寿命による故障
  • 次の入居者確保のための修繕: 全体的なリフォーム費用

契約書の特約に要注意

契約書に「ハウスクリーニング費は借主負担」「通常損耗の一部を借主負担とする」等の特約がある場合、有効と判断されることがあります。

ただし、特約が有効となるには以下の条件を満たす必要があります。

  • 特約の必要性があり、暴利的でないこと
  • 借主が特約の意味を理解し、合意していること
  • 重要事項説明で明示されていること

不当に高額な特約や、借主に一方的に不利な特約は消費者契約法により無効となる場合があります。

高額請求への対処法

退去費用が高額請求された場合、以下の対処法を段階的に実施しましょう。

入居時・退去時の証拠保全(写真撮影)

入居時と退去時に、部屋の状態を写真で記録しましょう。日付入りの写真があれば、「入居前から傷があった」「通常使用の範囲内」と証明できます。

撮影ポイント:

  • 壁・床・天井の全体
  • 傷・汚れがある箇所
  • 設備の状態(キッチン、浴室、トイレ等)
  • 窓・建具の状態

立会い時の確認と記録

退去立会い時に、管理会社や大家と一緒に傷・汚れを確認します。その場で指摘された内容を記録し、納得できない点は明確に伝えましょう。

立会い後に送付される見積もりと、立会い時の指摘内容が一致しているかを確認します。

見積もり内容の精査ポイント

見積もり内容を項目別にチェックしましょう。

チェックポイント:

  • 通常損耗・経年劣化を含んでいないか
  • 修繕範囲が広すぎないか(部分修繕で済むものを全体修繕にしていないか)
  • 単価が相場より高額でないか
  • 契約書の特約と一致しているか

不明点や納得できない項目があれば、書面で質問しましょう。

相談窓口の活用(消費者ホットライン等)

自分だけでは判断できない場合、専門家に相談しましょう。

相談先:

窓口 内容 連絡先
消費者ホットライン 退去トラブル等の消費者相談 188(全国共通)
国民生活センター トラブル事例と対処法の提供 公式サイト
自治体の消費生活センター 地域の相談窓口 各自治体
弁護士 法的措置が必要な場合 法テラス等

参考:退去費用トラブルSOS

正当な請求を無視すると法的措置を取られる可能性があるため、冷静に対応し、専門家の助言を仰ぎながら交渉しましょう。

まとめ:退去費用を適正に抑えるために

マンション退去費用は、国土交通省ガイドラインに基づき、通常損耗・経年劣化は貸主負担、故意・過失による損傷は借主負担が原則です。退去費用の内訳は、ハウスクリーニング費、修繕費、鍵交換費等で構成され、1K・1Rで合計5~10万円程度が目安です。

高額請求を避けるには、入退去時の写真撮影、契約内容の確認、見積もり内容の精査が重要です。不明点や納得できない点があれば、国民生活センター等の専門機関に早めに相談しましょう。

退去費用を適正に抑えるための3つのポイントは、①契約内容の確認、②入退去時の記録、③不明点は早めに相談です。冷静に対応し、適正な退去費用で円満に契約を終了させましょう。

よくある質問

Q1敷金は必ず全額返ってきますか?

A1原則として、原状回復費用を差し引いた残額が返還されます。契約内容や汚損の程度により全額返還されないこともあります。通常損耗・経年劣化は差し引かれませんが、借主の故意・過失による損傷は差し引かれます。契約書の特約により、ハウスクリーニング費等が差し引かれる場合もあるため、契約内容を必ず確認しましょう。

Q2退去費用が100万円と言われました。払わないといけませんか?

A2100万円は異常に高額です。まず見積もり内容を項目別に精査し、不当な請求がないか確認しましょう。通常損耗を含んでいないか、修繕範囲が広すぎないかをチェックします。国民生活センター(消費者ホットライン188)や弁護士に相談することをおすすめします。正当な請求を無視すると法的措置の可能性があるため、冷静に対応し、専門家の助言を仰ぎながら交渉しましょう。

Q3ハウスクリーニング費は借主が必ず払うのですか?

A3契約書に特約がある場合、借主負担となることが多くあります。特約がない場合、通常損耗の範囲内であれば貸主負担となります。契約内容を必ず確認してください。1K・1Rで2~4万円程度が相場です。特約が有効となるには、借主が特約の意味を理解し合意していること、重要事項説明で明示されていること等の条件を満たす必要があります。

Q4壁の画鋲穴は修繕費を請求されますか?

A4ポスター等を貼るための画鋲穴(小さな穴)は通常使用の範囲内で貸主負担となります。釘やネジによる大きな穴は借主負担となります。国土交通省ガイドラインで明確に区別されており、画鋲の小さな穴は経年劣化と同様に扱われます。立会い時に指摘された場合は、穴のサイズと用途を確認し、国土交通省ガイドラインを根拠に説明しましょう。