戸建て賃貸のデメリットを理解して入居判断を
戸建て賃貸は、広い居住スペース・庭付き・騒音が少ないといった魅力的なメリットがあり、家族での引っ越しを検討する際に候補に挙がることが多い住まいです。
しかし、戸建て賃貸にはマンションやアパートとは異なる独自のデメリットも存在します。入居前にこれらを理解しておかないと、入居後に「こんなはずじゃなかった」と後悔する可能性があります。
この記事では、国土交通省や不動産ポータルサイトの情報を元に、戸建て賃貸のデメリットと対策を詳しく解説します。
この記事のポイント
- 戸建て賃貸のデメリットは、①維持管理の負担(庭の手入れ)、②光熱費が高い(断熱性が低い築古物件が多い)、③防犯・プライバシーの課題、④契約条件(定期借家が多い)、⑤修繕費用の負担区分が曖昧になりやすい
- 庭や外構の手入れを怠ると善管注意義務違反で原状回復費用を請求される可能性がある
- 築古の木造戸建ては断熱性能が低く、光熱費が月2万円程度(マンションより5,000~1万円高い)
- 定期借家契約は更新がなく、再契約を断られると転居を強いられるリスクがある
- 契約前に内見と契約書の確認を徹底し、修繕費用の負担区分・定期借家の再契約可否を明確化することが重要
維持管理の負担:庭・外構の手入れが必要
戸建て賃貸の最も大きなデメリットの一つが、庭や外構の維持管理負担です。
草むしり・剪定・落ち葉掃除
マンションやアパートでは管理会社が共用部の清掃を行いますが、戸建て賃貸では借主が庭や外構の手入れを行う必要があります。
必要な維持管理:
- 草むしり:春~秋は月1~2回程度必要
- 剪定:庭木がある場合、年1~2回の剪定が必要
- 落ち葉掃除:秋は週1回程度の掃除が必要
- 外構の清掃:駐車場・アプローチの掃除
これらの作業は時間と労力がかかり、特に共働き世帯や高齢者には大きな負担となります。
雪国では除雪作業も
雪国では、冬季に玄関前・駐車場の除雪作業が必要です。雪が多い地域では、朝晩の除雪が日課となり、かなりの重労働です。
除雪機を使う場合は購入費用(数万円~数十万円)とガソリン代もかかります。
善管注意義務違反で原状回復費用の請求リスク
賃貸借契約では、借主は物件を「善良な管理者として注意して使用する義務(善管注意義務)」を負います。
庭の草取りを怠って荒れ放題にした場合、善管注意義務違反として退去時に原状回復費用(草取り・剪定・整地等)を請求される可能性があります。
SUUMOによると、庭の維持管理は借主の責任となることが多く、契約書で維持管理の範囲を事前に確認しておくことが重要です。
光熱費が高い:築古物件は断熱性が低い
戸建て賃貸は、マンションやアパートと比べて光熱費が高くなる傾向があります。
木造戸建ては冷暖房効率が悪い
築古の木造戸建ては断熱性能が低く、外気温の影響を受けやすいという特徴があります。
断熱性能が低い原因:
- 築30年以上の物件は現行の断熱基準を満たしていない
- 単板ガラスの窓(熱が逃げやすい)
- 断熱材が不十分または劣化している
冬は寒く夏は暑いため、冷暖房の稼働時間が長くなり、光熱費が高くなります。
4人家族で月2万円が目安
こだて賃貸コラムによると、戸建て賃貸の光熱費は4人家族で月2万円程度が目安とされています。
| 住居形態 | 光熱費の目安(4人家族) |
|---|---|
| 戸建て賃貸 | 月2万円程度 |
| マンション・アパート | 月1.5万円程度 |
| 差額 | 月5,000~1万円 |
特に冬季の暖房費・夏季の冷房費が高くなるため、年間で見るとマンションより6万円~12万円程度高くなる可能性があります。
対策:
- 内見時に断熱性能(二重窓・断熱材)を確認
- 断熱性能の高い物件を選ぶ
- エアコンの効率的な使用(設定温度の調整等)
防犯・プライバシーの課題
戸建て賃貸は、マンションやアパートと比べて防犯面での課題が大きくなります。
戸締まり箇所が多く防犯対策が必要
マンションは玄関のみ施錠すれば済みますが、戸建て賃貸は窓や勝手口など戸締まり箇所が多く、防犯対策が必要です。
戸締まり箇所の例:
- 玄関
- 勝手口
- 1階の全ての窓(10箇所以上)
- 2階の窓(降りられる場所)
外出時・就寝時に全ての窓を施錠する習慣をつけないと、空き巣被害のリスクが高まります。
1階は侵入されやすい
戸建て賃貸の1階は、道路や隣家から侵入されやすいという特徴があります。
警視庁の侵入窃盗統計によると、戸建て住宅の侵入手口は「窓ガラス破り」が最も多く、特に1階の窓が狙われます。
防犯対策:
- 防犯カメラの設置(契約前に設置可否を確認)
- センサーライトの設置
- 補助錠・防犯フィルムの取り付け
- 2階以上の窓にも補助錠を設置
外から生活が見えやすい
戸建て賃貸は、外から生活が見えやすいというプライバシーの課題もあります。
対策:
- カーテン・ブラインドの設置
- フェンス・生垣で視線を遮る
- 1階の窓にすりガラスフィルムを貼る
これらの対策は借主負担で行う必要がありますが、退去時に原状回復を求められる可能性があるため、契約前に貸主に確認してください。
契約条件:定期借家が多く更新できないリスク
戸建て賃貸は、マンションやアパートと比べて契約条件が厳しいことが多いです。
定期借家契約とは
戸建て賃貸の多くは「定期借家契約」で提供されています。
定期借家契約とは、契約期間満了で確定的に契約が終了し、法的な更新権がない賃貸借契約です。
国土交通省 - 定期借家制度をご存じですかによると、定期借家契約は貸主が不在期間のみ貸すケース(転勤・海外赴任等)が多く、この契約形態が大半です。
| 項目 | 定期借家契約 | 普通借家契約 |
|---|---|---|
| 契約期間 | 1~3年程度 | 2年(更新可) |
| 更新 | なし(再契約は貸主次第) | 借主の更新権あり |
| 賃料 | 相場より安いことが多い | 相場通り |
| 途中解約 | 原則不可(特約で可能) | 可能 |
定期借家契約は賃料が相場より安いというメリットがある一方、再契約を断られると転居を強いられるリスクがあります。
再契約を断られる可能性
定期借家契約は、契約期間満了後に再契約を貸主に断られる可能性があります。
再契約を断られるケース:
- 貸主が自己使用する(転勤から戻る、実家に戻る等)
- 売却・解体の予定がある
- 貸主が借主に不満を持っている
このため、子どもの学校や職場との関係で長期居住を希望する場合、定期借家契約はリスクが高くなります。
対策:
- 契約前に貸主の意向(再契約の可否)を不動産会社に確認
- 再契約が可能な条件を契約書に明記
- 普通借家契約の物件を優先的に探す
敷金・礼金がマンションより高め
戸建て賃貸は、敷金・礼金がマンションより1~2ヶ月分多い傾向があります。
| 住居形態 | 敷金 | 礼金 |
|---|---|---|
| マンション・アパート | 1~2ヶ月分 | 0~1ヶ月分 |
| 戸建て賃貸 | 2~3ヶ月分 | 1~2ヶ月分 |
初期費用が高額になるため、資金計画に余裕を持つことが重要です。
修繕費用の負担区分が曖昧になりやすい
戸建て賃貸では、修繕費用の負担区分が曖昧になりやすいという問題があります。
経年劣化は貸主負担・故意過失は借主負担が原則
国土交通省 - 原状回復をめぐるトラブルとガイドラインQ&Aによると、原状回復の負担区分は以下の通りです。
| 損傷の原因 | 負担者 | 例 |
|---|---|---|
| 経年劣化 | 貸主 | 壁紙の日焼け、畳の変色、給湯器の寿命 |
| 故意・過失 | 借主 | 壁の穴、床の傷、鍵の紛失 |
| 通常使用 | 貸主 | 家具の設置跡、画鋲の穴(数個程度) |
ただし、戸建て賃貸は設備が多く(給湯器・エアコン・トイレ・庭等)、マンションより修繕費用の負担区分が曖昧になりやすいという特徴があります。
契約書で明確化が必須
修繕費用でトラブルを防ぐため、契約書で以下の点を明確化しておく必要があります。
契約書の確認事項:
- 給湯器・エアコンの故障:貸主負担か借主負担か
- 雨漏り:貸主が修繕義務を負うか
- 庭の維持管理:草取り・剪定の費用は誰が負担するか
- 退去時の原状回復:通常損耗の範囲はどこまでか
GLC - 戸建賃貸の修繕費はどれくらいかかる?によると、給湯器・エアコン・雨漏りなどの修繕費用は数万~数十万円かかるため、契約書で負担区分を明確化しておくことが重要です。
不明点は契約前に不動産会社に確認し、書面で回答をもらうことをおすすめします。
デメリットへの対策:契約前の確認が重要
戸建て賃貸のデメリットを理解した上で、以下の対策を行うことで入居後のトラブルを防げます。
内見時のチェックポイント
内見時に以下の点をチェックしてください。
| チェック項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 断熱性能 | 二重窓か単板ガラスか、断熱材が入っているか |
| 設備の状態 | 給湯器・エアコンの型番・製造年、動作確認 |
| 庭の広さ | 維持管理が可能な広さか |
| 防犯設備 | 防犯カメラ・センサーライトの設置可否 |
| 日当たり | 冬の光熱費を抑えられるか |
| 騒音 | 隣家・道路からの騒音は許容範囲か |
写真を撮り、疑問点はその場で不動産会社に確認してください。
契約書の確認事項
契約書で以下の点を確認し、不明点は契約前に不動産会社に質問してください。
| 確認事項 | 内容 |
|---|---|
| 契約形態 | 定期借家契約か普通借家契約か、再契約の可否 |
| 修繕費用の負担区分 | 給湯器・エアコン・雨漏り等の負担者は誰か |
| 庭の維持管理範囲 | 草取り・剪定の範囲と費用負担 |
| 途中解約 | 途中解約可能か、違約金はいくらか |
| ペット可否 | ペット飼育の条件 |
契約書に記載がない場合は、書面で追加してもらうことを推奨します。
まとめ:デメリットを理解して納得の住まい選びを
戸建て賃貸には、広さ・庭付き・騒音が少ないといった魅力的なメリットがある一方、維持管理の負担、光熱費が高い、防犯・プライバシーの課題、契約条件(定期借家が多い)、修繕費用の負担区分が曖昧になりやすいといったデメリットも存在します。
庭や外構の手入れを怠ると善管注意義務違反で原状回復費用を請求される可能性があり、築古の木造戸建ては断熱性能が低く光熱費が月2万円程度(マンションより5,000~1万円高い)かかります。
定期借家契約は更新がなく、再契約を断られると転居を強いられるリスクがあるため、契約前に貸主の意向を確認しておくことが重要です。
契約前に内見と契約書の確認を徹底し、修繕費用の負担区分・定期借家の再契約可否・庭の維持管理範囲を明確化することで、入居後のトラブルを防ぐことができます。
世帯構成やライフスタイルに合った住まい選びを行い、不明点は不動産会社に相談しながら納得のいく判断をしてください。
