マンション鍵交換費用とは?入居時・退去時の基本知識
マンションの賃貸契約時に「鍵交換費用1.5万円」などの請求を受け、「これは誰が負担するべきなのか」と疑問を感じる方は少なくありません。
この記事では、マンション鍵交換費用の相場、入居時・退去時の負担区分、国土交通省ガイドラインに基づいた考え方を解説します。
国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」等の公式情報を元に、契約内容の確認ポイントや注意点を具体的にお伝えします。
この記事のポイント
- マンション鍵交換費用の相場は1.5万~3万円程度(鍵の種類による)
- 国土交通省ガイドラインでは防犯上の理由で貸主負担が原則だが、特約で借主負担とすることも可能
- 入居時・退去時で負担区分が異なる場合があり、契約書の確認が最重要
- オートロック付きマンションでは逆マスターキー機能付き鍵が必要で、無断交換は契約違反
- トラブル時は国民生活センターや消費生活センターへの相談を推奨
マンション鍵交換費用の相場
マンションの鍵交換費用は、鍵の種類によって大きく異なります。
ピンシリンダー・ディスクシリンダー
従来型の鍵で、表面にギザギザの刻みがあるタイプです。防犯性が低く、現在では採用している物件が少なくなっています。
費用相場: 1万~1.5万円
ディンプルキー
表面に複数のくぼみ(ディンプル)がある鍵で、一般的なマンションで広く採用されています。防犯性が高く、ピッキングに強いのが特徴です。
費用相場: 1.5万~2.5万円
カードキー・電子錠
カードや暗証番号で開錠するタイプで、高級マンションや新築物件で採用されることが多いです。鍵の複製ができないため防犯性は高いですが、電池交換などのメンテナンスが必要です。
費用相場: 2万~5万円
鍵屋の鍵猿等の複数業者の料金表によると、ディンプルキーが1.5万~2.5万円程度が一般的な相場とされています。
鍵交換費用の負担は誰?
国土交通省ガイドラインの考え方
国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、防犯上の理由による鍵交換は貸主負担が原則とされています。
これは、前入居者が鍵を複製している可能性があるため、新入居者の安全を守るための措置として、貸主が負担すべきという考え方に基づいています。
賃貸契約書での確認ポイント
しかし、ガイドラインはあくまで「原則」を示したものであり、賃貸借契約書の特約で借主負担とすることも可能です。
最高裁判例では、合理的な範囲の特約であれば有効と判断されており、契約書に明記された特約は法的拘束力を持ちます。
そのため、鍵交換費用の負担については、以下のポイントを契約前に必ず確認する必要があります。
- 賃貸借契約書の重要事項説明で鍵交換費用の負担区分が明記されているか
- 特約条項として「借主負担」と記載されているか
- 鍵交換費用の金額が適正な相場(1.5万~3万円程度)の範囲内か
特約条項の有効性
LIFULL HOME'S Businessの解説によると、ガイドラインと実態には違いがあり、特約で借主負担とする契約が多いのが現状です。
特約が有効となるためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 借主に特別な負担を求める特約であることを明確に説明
- 合理的な範囲の負担額であること
- 契約書に明記され、借主が同意していること
入居時と退去時の費用負担の違い
入居時の鍵交換
入居時の鍵交換は、前入居者の鍵を無効化し、新入居者の防犯を確保するために行われます。
国土交通省ガイドラインでは貸主負担が原則ですが、実際には特約で借主負担とする契約が多く見られます。
入居時に鍵交換費用を請求された場合は、以下を確認しましょう。
- 契約書に明記されているか
- 金額が適正な相場の範囲内か
- 重要事項説明で説明を受けたか
退去時の鍵交換
退去時の鍵交換は、次の入居者のために行われるものです。
原状回復義務は「通常の使用による損耗・経年劣化」を除いたものであり、鍵の交換は次の入居者のための措置であるため、原則として貸主負担となります。
ただし、契約書で「退去時の鍵交換費用は借主負担」と明記されている場合は、支払義務が発生します。
契約書に明記がない場合
契約書に鍵交換費用の負担が明記されていない場合、国土交通省ガイドラインの原則に従い、貸主負担となるのが一般的です。
明記がないのに費用請求を受けた場合は、管理会社・貸主に契約書の根拠を確認し、納得できない場合は国民生活センターや消費生活センターに相談することを推奨します。
自分で鍵交換する場合の注意点
管理会社への確認が必須
自分で鍵交換業者を手配して費用を抑えたいと考える方もいますが、賃貸物件の場合は必ず管理会社・貸主の許可が必要です。
無断で鍵を交換すると、賃貸借契約違反となり、原状回復費用を請求される可能性があります。
オートロック対応の注意
オートロック付きマンションでは、専有部分の鍵が共用部分(エントランス)の解錠にも対応している必要があります。
これを逆マスターキー機能と呼び、通常の鍵に交換してしまうと共用部分に入れなくなる可能性があります。
meets moreによると、オートロック対応の鍵交換では、管理会社指定の業者に依頼するのが確実です。
無断交換の契約違反リスク
無断で鍵を交換した場合、以下のリスクがあります。
- 緊急時(火災、水漏れ等)に管理会社が入室できない
- 契約違反として原状回復費用を請求される
- オートロックが使えなくなる
必ず事前に管理会社・貸主に相談し、許可を得てから行動しましょう。
鍵交換のトラブル事例と対策
高額請求のトラブル
国民生活センターには、鍵交換業者による高額請求のトラブル事例が報告されています。
一般的な相場(ディンプルキー1.5万~2.5万円)と比較して、3~5万円以上高い請求を受けた場合は、管理会社に見積詳細を確認しましょう。
複数の鍵交換業者から見積もりを取り、相場を把握することも有効です。
契約書不備によるトラブル
契約書に鍵交換費用の負担が明記されていないのに、入居時・退去時に請求を受けるトラブルも発生しています。
このような場合、国土交通省ガイドラインでは貸主負担が原則であるため、支払義務はないと主張できる可能性があります。
トラブル時の相談先
トラブルが発生した場合は、以下の機関に相談できます。
- 国民生活センター: 消費者トラブル全般
- 消費生活センター: 各都道府県・市区町村に設置
- 宅地建物取引業協会: 不動産業者とのトラブル
事前の見積確認と契約書の精読が、トラブル防止の最も有効な対策です。
まとめ:鍵交換費用は契約書次第
マンション鍵交換費用の相場は1.5万~3万円程度で、鍵の種類により異なります。
国土交通省ガイドラインでは防犯上の理由で貸主負担が原則ですが、特約で借主負担とすることも可能です。入居時・退去時で負担区分が異なる場合もあるため、賃貸借契約書の重要事項説明で必ず確認しましょう。
オートロック付きマンションでは逆マスターキー機能付き鍵が必要で、無断交換は契約違反となるリスクがあります。
不明点や納得できない請求を受けた場合は、管理会社に確認し、必要に応じて国民生活センターや消費生活センターに相談することを推奨します。
