マンションのエレベーター基礎知識│設置基準・維持費・トラブル対策

公開日: 2025/10/26

マンションのエレベーターはいつから必要?設置基準の基本

マンション購入を検討する際、「何階建てからエレベーターが必要なのか」「低層階でもエレベーターはあった方がいいのか」と疑問に思う方は少なくありません。

この記事では、建築基準法による設置基準、エレベーターの台数・速度の目安、維持費・管理費の内訳、よくあるトラブルと対処法を、国土交通省日本エレベーター協会等の公式情報を元に解説します。

エレベーターの有無や台数で迷っている方も、安全性・快適性・コストを総合的に判断できるようになります。

この記事のポイント

  • 建築基準法で高さ31m超の建物(7〜10階相当)に設置義務があるが、6階以下でも利便性・バリアフリーの観点から設置が多い
  • 適正台数は戸数規模別に異なり、50戸未満1台、50〜100戸2台、100戸以上3台以上が目安
  • 維持費は保守点検費(年間30〜50万円/台)、電気代(年間10〜20万円/台)、修繕積立金(15〜20年周期で400〜800万円)が必要
  • 2009年改正で戸開走行保護装置・地震時管制運転装置が義務化され、安全性が向上している
  • 低層階(3〜5階)でもバリアフリー・将来の高齢化を考慮するとエレベーター有が推奨される

エレベーターの設置基準と法律

国土交通省によると、建築基準法第34条で高さ31m超の建物(7〜10階相当)に非常用昇降機(エレベーター)の設置を義務付けています。

一方、6階以下の建物は設置義務がありませんが、利便性・バリアフリーの観点から設置するケースが多いです。3〜5階の低層マンションでも、高齢者・車椅子利用者・妊婦・ベビーカー利用者には必須の設備といえます。

SUUMOによると、6階以下でもエレベーターを設置する理由として、「将来の高齢化に対応」「資産価値向上(売却・賃貸時の需要が高い)」が挙げられています。

エレベーターの台数と速度の目安

エレベーターの台数・速度は、マンション生活の快適性に直結します。戸数規模・建物の高さにより適正な台数・速度が変わります。

戸数規模別の適正台数(50戸・100戸・200戸)

ギアミクスによると、戸数規模別の適正台数は以下の通りです。

戸数規模 適正台数 理由
50戸未満 1台 朝夕の利用集中時でも待ち時間30〜40秒程度
50〜100戸 2台 1台では待ち時間が5分以上になる場合がある
100戸以上 3台以上 大規模マンションは3台以上が必須

(参考: ギアミクス

台数が不足すると、朝夕のラッシュ時に長時間待たされることになり、生活の質が低下します。

待ち時間・速度の目安と快適性

快適な待ち時間は、1台あたり30〜40秒とされています。速度は建物の高さにより以下のように異なります。

建物の高さ 速度の目安 対象階数
低層(6階以下) 45m/分 〜6階
中層(7〜14階) 60m/分 7〜14階
高層(15階以上) 105〜150m/分 15階以上

(参考: SUUMO

速度が遅いと、高層階に住む住民の移動時間が長くなり、不便さが増します。

タワーマンションのエレベーター事情

タワーマンション(20階以上)では、高速エレベーター(150〜240m/分)と一般エレベーターを併用するケースが多いです。高速エレベーターは上層階専用、一般エレベーターは低層階専用として分けることで、待ち時間を短縮しています。

また、タワーマンションでは制震・免震構造を採用し、地震時の揺れを軽減する対策も行われています。

維持費・管理費の内訳と相場

エレベーターの維持費は、マンションの管理費・修繕積立金に大きく影響します。維持費を3つに分けて解説します。

保守契約の種類(POG・フルメンテナンス)

エレベーターの保守契約には、POG契約とフルメンテナンス契約の2種類があります。

契約種類 月額費用 内容 備考
POG契約 1〜5万円 清掃・点検・オイル補給・消耗品交換のみ 部品交換・修理は別途費用
フルメンテナンス契約 2〜6万円 清掃・点検に加え部品交換・修理も含む POG契約より割高だが予算管理しやすい

(参考: マンション管理の教科書

メーカー系(三菱・日立・東芝・オーチス・フジテック等)と独立系で費用差があり、独立系は約30%削減可能とされています。ただし、メーカー純正部品の入手が難しい場合もあるため、管理組合で慎重に検討する必要があります。

保守点検費・電気代の年間相場

エレベーターの年間維持費は、1台あたり40〜70万円が目安です。

項目 年間費用 備考
保守点検費 30〜50万円 POG契約かフルメンテナンス契約か
電気代 10〜20万円 24時間稼働のため
合計 40〜70万円

(参考: マンション管理の教科書

この費用は管理費に含まれ、全区分所有者で負担します。

修繕積立金と更新費用

エレベーターは15〜20年周期で大規模修繕(リニューアル)が必要です。費用は1台あたり400〜800万円とされています。

あなぶきハウジングサービスによると、エレベーター新設の場合は1,300〜1,600万円(4停止3人乗り)が目安です。

自治体によっては補助金制度(1/3〜1/2補助)があるため、新設・更新時には自治体の制度を確認してください。

よくあるトラブルと対処法

エレベーターのトラブル事例と対処法を具体的に解説します。

閉じ込め事故の対処法

エレベーターに閉じ込められた場合、インターホンで救助要請し、無理に脱出しないことが重要です。エレベーター内は換気されており、パニックにならず救助を待ちましょう。

国土交通省によると、2009年改正で戸開走行保護装置(ドアが完全に閉まる前にかごが昇降する事故を防ぐ装置)と地震時管制運転装置(地震の加速度を感知し、かごを着床位置に自動停止させる装置)が義務化され、安全性は大幅に向上しています。

管理会社・保守会社が駆けつけるまで、落ち着いて待ちましょう。

故障・停止時の管理会社への連絡

エレベーターが故障・停止した場合、管理会社・保守会社に速やかに連絡してください。

POG契約の場合、部品交換・修理は別途費用が発生する可能性があります。一方、フルメンテナンス契約の場合は部品交換・修理も含まれているため、追加費用は発生しません。

定期点検(月1回〜年4回)を怠ると、故障のリスクが高まります。管理組合で保守契約の内容を確認し、適切な点検を実施することが重要です。

騒音・振動のトラブル

古いエレベーターでは、騒音・振動のトラブルが発生する場合があります。原因は、経年劣化による部品の摩耗や、油圧式エレベーターの機械音等です。

対策として、防音対策(機械室の防音工事、機械音を吸収する材料の設置)や、リニューアル(最新のロープ式エレベーターへの更新)が有効です。

日本エレベーター協会では、エレベーターの安全キャンペーンや技術基準の解説を行っており、管理組合で参考にすることができます。

エレベーター有無の選び方(低層階でも必要?)

低層階(3〜5階)でのエレベーター有無の選び方を解説します。

バリアフリー・高齢化への配慮

高齢者・車椅子利用者・妊婦・ベビーカー利用者には、エレベーターは必須の設備です。また、将来の高齢化を考慮すると、低層階でもエレベーター有の物件を選ぶことが推奨されます。

SUUMOによると、「6階以下はエレベーター不要」という認識は過去のものであり、バリアフリー法でエレベーター設置が推奨されている点も重要です。

資産価値・将来の売却可能性

エレベーター有の物件は、売却・賃貸時の需要が高く、資産価値向上のメリットがあります。

低層階でもエレベーターがあることで、幅広い層(高齢者、子育て世帯、単身者等)にアピールでき、売却・賃貸時に有利になります。

維持費と利便性のバランス

エレベーターの維持費は年間40〜70万円/台がかかりますが、利便性・バリアフリー・資産価値を考慮すると、低層階でもエレベーター有を選ぶメリットは大きいです。

ライフスタイル・将来の計画(高齢化、家族構成の変化等)を総合的に判断し、エレベーター有無を選びましょう。

まとめ:エレベーターの基礎知識と選び方のポイント

エレベーターは建築基準法で7階以上(高さ31m超)に設置義務がありますが、6階以下でも利便性・バリアフリーの観点から設置が多いです。

適正台数は50戸未満1台、50〜100戸2台、100戸以上3台以上が目安です。維持費は保守点検費(年間30〜50万円/台)、電気代(年間10〜20万円/台)、修繕積立金(15〜20年周期で400〜800万円)がかかります。

閉じ込め・故障時は管理会社・保守会社に連絡し、定期点検を怠らないことが重要です。低層階でもバリアフリー・高齢化を考慮してエレベーター有の物件を選ぶことを推奨します。

管理組合への相談、保守契約の見直し、エレベーター設置の検討を進めましょう。

よくある質問

Q1マンションのエレベーターは何階建てから必要ですか?

A1建築基準法第34条で高さ31m超の建物(7〜10階相当)に設置義務があります。6階以下は義務なしですが、利便性・バリアフリーの観点から設置するケースが多いです。3〜5階でも高齢者・車椅子利用者がいる場合は設置が推奨されます。将来の高齢化や資産価値向上を考慮すると、低層階でもエレベーター有の物件を選ぶメリットは大きいです。

Q2エレベーターの維持費は年間いくらかかりますか?

A21台あたり年間40〜70万円が目安です。内訳は保守点検費(月額1〜6万円、POG契約かフルメンテナンス契約か)、電気代(年間10〜20万円)です。15〜20年周期で大規模修繕(400〜800万円/台)も必要です。管理費・修繕積立金に含まれ、全区分所有者で負担します。メーカー系と独立系で費用差があり、独立系は約30%削減可能とされています。

Q3エレベーターに閉じ込められたらどうすればよいですか?

A3インターホンで救助要請し、無理に脱出しないでください。エレベーター内は換気されており、パニックにならず救助を待つことが重要です。2009年改正で戸開走行保護装置・地震時管制運転装置が義務化され、安全性は向上しています。管理会社・保守会社が駆けつけるまで、落ち着いて待ちましょう。定期点検を怠らないことも事故防止に重要です。

Q4低層階(3〜5階)でもエレベーターは必要ですか?

A4バリアフリー・将来の高齢化を考慮すると必要性は高いです。高齢者・車椅子利用者・妊婦・ベビーカー利用者には必須です。資産価値向上(売却・賃貸時の需要が高い)のメリットもあります。維持費(年間40-70万円/台)はかかりますが、ライフスタイル・将来の計画で判断してください。バリアフリー法でエレベーター設置が推奨されている点も重要です。