マンションのエレベーターはいつから必要?設置基準の基本
マンション購入を検討する際、「何階建てからエレベーターが必要なのか」「低層階でもエレベーターはあった方がいいのか」と疑問に思う方は少なくありません。
この記事では、建築基準法による設置基準、エレベーターの台数・速度の目安、維持費・管理費の内訳、よくあるトラブルと対処法を、国土交通省・日本エレベーター協会等の公式情報を元に解説します。
エレベーターの有無や台数で迷っている方も、安全性・快適性・コストを総合的に判断できるようになります。
この記事のポイント
- 建築基準法で高さ31m超の建物(7〜10階相当)に設置義務があるが、6階以下でも利便性・バリアフリーの観点から設置が多い
- 適正台数は戸数規模別に異なり、50戸未満1台、50〜100戸2台、100戸以上3台以上が目安
- 維持費は保守点検費(年間30〜50万円/台)、電気代(年間10〜20万円/台)、修繕積立金(15〜20年周期で400〜800万円)が必要
- 2009年改正で戸開走行保護装置・地震時管制運転装置が義務化され、安全性が向上している
- 低層階(3〜5階)でもバリアフリー・将来の高齢化を考慮するとエレベーター有が推奨される
エレベーターの設置基準と法律
国土交通省によると、建築基準法第34条で高さ31m超の建物(7〜10階相当)に非常用昇降機(エレベーター)の設置を義務付けています。
一方、6階以下の建物は設置義務がありませんが、利便性・バリアフリーの観点から設置するケースが多いです。3〜5階の低層マンションでも、高齢者・車椅子利用者・妊婦・ベビーカー利用者には必須の設備といえます。
SUUMOによると、6階以下でもエレベーターを設置する理由として、「将来の高齢化に対応」「資産価値向上(売却・賃貸時の需要が高い)」が挙げられています。
エレベーターの台数と速度の目安
エレベーターの台数・速度は、マンション生活の快適性に直結します。戸数規模・建物の高さにより適正な台数・速度が変わります。
戸数規模別の適正台数(50戸・100戸・200戸)
ギアミクスによると、戸数規模別の適正台数は以下の通りです。
| 戸数規模 | 適正台数 | 理由 | 
|---|---|---|
| 50戸未満 | 1台 | 朝夕の利用集中時でも待ち時間30〜40秒程度 | 
| 50〜100戸 | 2台 | 1台では待ち時間が5分以上になる場合がある | 
| 100戸以上 | 3台以上 | 大規模マンションは3台以上が必須 | 
(参考: ギアミクス)
台数が不足すると、朝夕のラッシュ時に長時間待たされることになり、生活の質が低下します。
待ち時間・速度の目安と快適性
快適な待ち時間は、1台あたり30〜40秒とされています。速度は建物の高さにより以下のように異なります。
| 建物の高さ | 速度の目安 | 対象階数 | 
|---|---|---|
| 低層(6階以下) | 45m/分 | 〜6階 | 
| 中層(7〜14階) | 60m/分 | 7〜14階 | 
| 高層(15階以上) | 105〜150m/分 | 15階以上 | 
(参考: SUUMO)
速度が遅いと、高層階に住む住民の移動時間が長くなり、不便さが増します。
タワーマンションのエレベーター事情
タワーマンション(20階以上)では、高速エレベーター(150〜240m/分)と一般エレベーターを併用するケースが多いです。高速エレベーターは上層階専用、一般エレベーターは低層階専用として分けることで、待ち時間を短縮しています。
また、タワーマンションでは制震・免震構造を採用し、地震時の揺れを軽減する対策も行われています。
維持費・管理費の内訳と相場
エレベーターの維持費は、マンションの管理費・修繕積立金に大きく影響します。維持費を3つに分けて解説します。
保守契約の種類(POG・フルメンテナンス)
エレベーターの保守契約には、POG契約とフルメンテナンス契約の2種類があります。
| 契約種類 | 月額費用 | 内容 | 備考 | 
|---|---|---|---|
| POG契約 | 1〜5万円 | 清掃・点検・オイル補給・消耗品交換のみ | 部品交換・修理は別途費用 | 
| フルメンテナンス契約 | 2〜6万円 | 清掃・点検に加え部品交換・修理も含む | POG契約より割高だが予算管理しやすい | 
(参考: マンション管理の教科書)
メーカー系(三菱・日立・東芝・オーチス・フジテック等)と独立系で費用差があり、独立系は約30%削減可能とされています。ただし、メーカー純正部品の入手が難しい場合もあるため、管理組合で慎重に検討する必要があります。
保守点検費・電気代の年間相場
エレベーターの年間維持費は、1台あたり40〜70万円が目安です。
| 項目 | 年間費用 | 備考 | 
|---|---|---|
| 保守点検費 | 30〜50万円 | POG契約かフルメンテナンス契約か | 
| 電気代 | 10〜20万円 | 24時間稼働のため | 
| 合計 | 40〜70万円 | 
(参考: マンション管理の教科書)
この費用は管理費に含まれ、全区分所有者で負担します。
修繕積立金と更新費用
エレベーターは15〜20年周期で大規模修繕(リニューアル)が必要です。費用は1台あたり400〜800万円とされています。
あなぶきハウジングサービスによると、エレベーター新設の場合は1,300〜1,600万円(4停止3人乗り)が目安です。
自治体によっては補助金制度(1/3〜1/2補助)があるため、新設・更新時には自治体の制度を確認してください。
よくあるトラブルと対処法
エレベーターのトラブル事例と対処法を具体的に解説します。
閉じ込め事故の対処法
エレベーターに閉じ込められた場合、インターホンで救助要請し、無理に脱出しないことが重要です。エレベーター内は換気されており、パニックにならず救助を待ちましょう。
国土交通省によると、2009年改正で戸開走行保護装置(ドアが完全に閉まる前にかごが昇降する事故を防ぐ装置)と地震時管制運転装置(地震の加速度を感知し、かごを着床位置に自動停止させる装置)が義務化され、安全性は大幅に向上しています。
管理会社・保守会社が駆けつけるまで、落ち着いて待ちましょう。
故障・停止時の管理会社への連絡
エレベーターが故障・停止した場合、管理会社・保守会社に速やかに連絡してください。
POG契約の場合、部品交換・修理は別途費用が発生する可能性があります。一方、フルメンテナンス契約の場合は部品交換・修理も含まれているため、追加費用は発生しません。
定期点検(月1回〜年4回)を怠ると、故障のリスクが高まります。管理組合で保守契約の内容を確認し、適切な点検を実施することが重要です。
騒音・振動のトラブル
古いエレベーターでは、騒音・振動のトラブルが発生する場合があります。原因は、経年劣化による部品の摩耗や、油圧式エレベーターの機械音等です。
対策として、防音対策(機械室の防音工事、機械音を吸収する材料の設置)や、リニューアル(最新のロープ式エレベーターへの更新)が有効です。
日本エレベーター協会では、エレベーターの安全キャンペーンや技術基準の解説を行っており、管理組合で参考にすることができます。
エレベーター有無の選び方(低層階でも必要?)
低層階(3〜5階)でのエレベーター有無の選び方を解説します。
バリアフリー・高齢化への配慮
高齢者・車椅子利用者・妊婦・ベビーカー利用者には、エレベーターは必須の設備です。また、将来の高齢化を考慮すると、低層階でもエレベーター有の物件を選ぶことが推奨されます。
SUUMOによると、「6階以下はエレベーター不要」という認識は過去のものであり、バリアフリー法でエレベーター設置が推奨されている点も重要です。
資産価値・将来の売却可能性
エレベーター有の物件は、売却・賃貸時の需要が高く、資産価値向上のメリットがあります。
低層階でもエレベーターがあることで、幅広い層(高齢者、子育て世帯、単身者等)にアピールでき、売却・賃貸時に有利になります。
維持費と利便性のバランス
エレベーターの維持費は年間40〜70万円/台がかかりますが、利便性・バリアフリー・資産価値を考慮すると、低層階でもエレベーター有を選ぶメリットは大きいです。
ライフスタイル・将来の計画(高齢化、家族構成の変化等)を総合的に判断し、エレベーター有無を選びましょう。
まとめ:エレベーターの基礎知識と選び方のポイント
エレベーターは建築基準法で7階以上(高さ31m超)に設置義務がありますが、6階以下でも利便性・バリアフリーの観点から設置が多いです。
適正台数は50戸未満1台、50〜100戸2台、100戸以上3台以上が目安です。維持費は保守点検費(年間30〜50万円/台)、電気代(年間10〜20万円/台)、修繕積立金(15〜20年周期で400〜800万円)がかかります。
閉じ込め・故障時は管理会社・保守会社に連絡し、定期点検を怠らないことが重要です。低層階でもバリアフリー・高齢化を考慮してエレベーター有の物件を選ぶことを推奨します。
管理組合への相談、保守契約の見直し、エレベーター設置の検討を進めましょう。
