マンションの共用部分とは?専有部分との違いの基本
マンション購入を検討する際、「共用部分と専有部分の違いがよく分からない」「バルコニーは自由に使えるのか」「管理費・修繕積立金は何に使われるのか」と疑問に思う方は少なくありません。
この記事では、共用部分と専有部分の法律上の定義、判断が分かれやすい部分(玄関扉、窓、バルコニー)の扱い、管理費・修繕積立金の使途を、国土交通省・マンション管理センター等の公式情報を元に解説します。
マンション購入・居住時のトラブルを避けるため、共用部分と専有部分の違いを正しく理解しましょう。
この記事のポイント
- 共用部分は「法定共用部分」「規約共用部分」「専用使用権付き共用部分」の3種類に分類される
- 専有部分は「居室内の壁・床・天井の内側」が原則だが、玄関扉・窓・配管の一部は共用部分扱いになる
- バルコニーは共用部分であり所有権はないが、専用使用権により特定区分所有者が使用できる
- 管理費は共用部分の清掃・維持管理・管理委託費に、修繕積立金は大規模修繕の積立に使われる
- 個別マンションの管理規約により扱いが異なる場合があるため、管理組合・専門家への確認が必須
共用部分の定義と3つの種類
国土交通省によると、マンションの共用部分は区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)により定義されています。共用部分は以下の3種類に分類されます。
法定共用部分(構造上当然に共用)
法定共用部分は、エントランス、廊下、階段、エレベーター、屋上、外壁等、構造上当然に共用される部分です。区分所有法により自動的に共用部分とされ、管理規約で定める必要はありません。
法定共用部分は、全区分所有者の共有財産であり、個人が勝手に改造・使用することはできません。
規約共用部分(管理規約で共用と定めた部分)
規約共用部分は、管理規約で共用部分と定めた部分です。例えば、管理人室、集会室、駐輪場、駐車場等が該当します。
規約共用部分は、管理規約で定めることで共用部分とされるため、マンションにより扱いが異なる場合があります。
専用使用権付き共用部分(特定区分所有者が使用)
バルコニー、専用庭、駐車場等は、共用部分ですが、特定の区分所有者が専用使用権により使用できます。
バルコニーは共用部分であり所有権はありませんが、専用使用権により特定区分所有者が使用できるため、「専用使用権付き共用部分」と呼ばれます。
ただし、専用使用権には制約があり、避難経路として確保する必要があるため、荷物を置きすぎる等の行為は禁止されています。
専有部分の定義と境界線
専有部分は、区分所有者が所有する部分です。一般的には「居室内の壁・床・天井の内側」が専有部分とされます。
専有部分の基本(居室内の壁・床・天井の内側)
専有部分は、区分所有者が自由にリフォーム・改装できる部分です。壁紙の張替え、床の張替え、間取り変更等は、専有部分の範囲内であれば可能です。
ただし、構造躯体(柱・梁・壁の構造部分)は共用部分であり、専有部分ではありません。間取り変更時には構造躯体に影響がないか、専門家に確認することが重要です。
玄関扉・窓・サッシの扱い(共用部分)
玄関扉・窓・サッシは、一見すると専有部分のように思えますが、共用部分扱いになることが一般的です。
理由は、外観の統一性・防火性能・防犯性能を保つためです。玄関扉・窓を勝手に交換・改造することは禁止されています。
ただし、玄関扉の内側(鍵、ドアノブ等)は専有部分扱いになる場合があります。個別マンションの管理規約で確認してください。
配管・配線の境界線
配管・配線は、共用部分と専有部分の境界が複雑です。国土交通省のマンション標準管理規約では、一般的には以下のように区別されます。
| 項目 | 共用部分 | 専有部分 | 
|---|---|---|
| 給水管 | 本管〜メーター(各戸への分岐まで) | メーター後の専有部分内の配管 | 
| 排水管 | 縦管(共用の排水管) | 専有部分内の横引き管 | 
| 電気配線 | 幹線〜分電盤まで | 分電盤後の専有部分内の配線 | 
配管・配線の修理・交換時には、共用部分か専有部分かを確認し、管理組合・管理会社に相談してください。
バルコニー・専用庭の特殊な扱い
バルコニー・専用庭は、マンション居住者が最も混同しやすい部分です。
バルコニーは共用部分(所有権なし)
バルコニーは共用部分であり、区分所有者は所有権を持っていません。専用使用権により使用できるだけです。
バルコニーは避難経路として確保する必要があるため、以下の制約があります。
- 荷物を置きすぎない: 避難時に通行を妨げる荷物は禁止
- 構造物の設置禁止: サンルーム、物置等の恒久的な構造物の設置は禁止
- 外観の変更禁止: 手すりの色変更、外観を損なう装飾は禁止
管理規約で細かいルールが定められているため、確認してください。
専用使用権の範囲と制約
専用使用権は、管理規約で定められた範囲内で使用できる権利です。専用使用権には以下の制約があります。
- 避難経路の確保: 消防法により、避難経路としての機能を損なわないこと
- 管理組合の承認が必要: 大規模な改造・構造物の設置には管理組合の承認が必要
- 原状回復義務: 売却・退去時には原状回復が必要な場合がある
専用使用料を徴収するマンションもあります。専用使用料は共用部分の維持管理費として管理組合に支払われます。
リフォーム時の注意点
バルコニーのリフォーム(ウッドデッキの設置、床タイルの張替え等)を行う場合、管理組合の承認が必要です。
無断でリフォームを行うと、管理規約違反となり、原状回復を求められる場合があります。リフォーム前に管理組合・管理会社に相談してください。
管理費・修繕積立金の使途
管理費・修繕積立金は、共用部分の維持管理・修繕に使われます。それぞれの使途を明確に理解しましょう。
管理費の使途(共用部分の清掃・維持管理)
国土交通省のマンション管理ガイドラインでは、管理費は共用部分の日常的な清掃・維持管理・管理委託費に使われます。
| 項目 | 内容 | 
|---|---|
| 清掃費 | エントランス、廊下、階段、エレベーター等の清掃 | 
| 設備維持費 | 電気代、水道代、エレベーター保守点検費 | 
| 管理委託費 | 管理会社への委託費 | 
| 保険料 | 共用部分の火災保険、地震保険 | 
| その他 | 管理組合の運営費、理事会費用 | 
管理費は毎月支払い、共用部分の日常的な維持管理に使われます。
修繕積立金の使途(大規模修繕の積立)
修繕積立金は、大規模修繕(外壁塗装、屋上防水、給排水管の更新等)の積立に使われます。
マンションは築10〜15年周期で大規模修繕が必要であり、修繕積立金はこの費用に充当されます。修繕積立金が不足すると、一時金の徴収や管理費の値上げが必要になります。
国土交通省のマンション管理ガイドラインでは、修繕積立金の適正額は専有面積1㎡あたり月額200〜300円が目安とされています(築年数・規模により変動)。
管理費と修繕積立金の違い
管理費と修繕積立金の違いを明確に理解しましょう。
| 項目 | 管理費 | 修繕積立金 | 
|---|---|---|
| 用途 | 日常的な維持管理 | 大規模修繕の積立 | 
| 支払頻度 | 毎月 | 毎月 | 
| 使途 | 清掃、設備維持、管理委託費 | 外壁塗装、屋上防水、給排水管の更新 | 
| 積立 | 原則積立なし(使い切り) | 長期修繕計画に基づき積立 | 
管理費と修繕積立金は目的が異なるため、使途を混同しないよう注意してください。
よくあるトラブルと対処法
マンションの共用部分・専有部分を巡るトラブル事例と対処法を解説します。
バルコニーでの喫煙・ガーデニング
バルコニーでの喫煙・ガーデニングは、管理規約により禁止されている場合があります。
喫煙は煙が隣戸に流れ込む、ガーデニングは水漏れ・排水管の詰まりを引き起こす等のトラブルになる可能性があります。管理規約で禁止されている行為は避け、管理組合に相談してください。
玄関扉・窓の無断交換
玄関扉・窓は共用部分であり、無断で交換・改造することは禁止されています。外観の統一性・防火性能・防犯性能を損なうためです。
交換が必要な場合は、管理組合の承認を得てから行ってください。無断で交換すると、管理規約違反となり、原状回復を求められる場合があります。
専有部分と共用部分の修理費用の負担
配管・配線の修理費用は、共用部分か専有部分かで負担者が異なります。
共用部分の修理は管理組合が負担(管理費・修繕積立金から支出)、専有部分の修理は区分所有者が負担します。
修理前に、共用部分か専有部分かを管理組合・管理会社に確認してください。境界が不明確な場合は、管理規約・長期修繕計画を確認し、専門家(マンション管理士、建築士)に相談することを推奨します。
まとめ:共用部分と専有部分の違いを理解してトラブルを防ごう
マンションの共用部分は「法定共用部分」「規約共用部分」「専用使用権付き共用部分」の3種類に分類されます。専有部分は「居室内の壁・床・天井の内側」が原則ですが、玄関扉・窓・配管の一部は共用部分扱いになります。
バルコニーは共用部分であり所有権はありませんが、専用使用権により使用できます。避難経路としての制約があるため、荷物を置きすぎる等の行為は禁止されています。
管理費は共用部分の日常的な維持管理に、修繕積立金は大規模修繕の積立に使われます。個別マンションの管理規約により扱いが異なる場合があるため、管理組合・専門家に確認してください。
なお、2026年4月に区分所有法改正が施行される予定です。管理不全専有部分管理人制度等の新制度が導入されます。詳細は管理組合・専門家に確認してください。
管理規約の確認、管理組合への相談、専門家(マンション管理士、建築士)への相談を進め、トラブルを未然に防ぎましょう。
