住宅ローン名義変更の方法と注意点|離婚・相続・親子間の手続き

公開日: 2025/10/31

住宅ローン名義変更の基本│債務者変更と所有権移転の違い

離婚や相続などの事情で、住宅ローンの名義変更が必要になる場面があります。しかし、「名義変更」という言葉には、実は2つの異なる意味が含まれています。

この記事では、SBI新生銀行アトム法律事務所の情報を元に、住宅ローン名義変更の手続き方法と注意点を解説します。

この記事のポイント

  • 住宅ローンの名義変更には「債務者変更」と「所有権移転登記」の2種類があり、それぞれ手続きが異なる
  • 債務者変更には金融機関の承諾が原則必須で、承諾を得ずに行うと契約違反のリスクがある
  • 離婚・相続・親子間贈与など、ケースによって手続き方法と注意点が異なる
  • 名義変更が認められない場合は、借り換え・任意売却・リースバック等の代替手段を検討する

債務者変更とは(金融機関の承諾が必須)

債務者変更とは、住宅ローンの返済義務を負う人(債務者)を別の人に変更することです。原則として金融機関の審査と承諾が必要で、新しい債務者の返済能力を審査します。

SBI新生銀行によると、金融機関は債務者の返済能力を重視するため、新しい債務者の収入・勤務先・信用情報を確認します。

所有権移転登記とは(法務局での手続き)

所有権移転登記とは、不動産の所有者を法的に変更する手続きです。法務局で行い、登記費用・登録免許税が発生します。債務者変更とは別の手続きであり、両方を同時に行う必要がある場合もあります。

金融機関の承諾が必要な理由(債務者の返済能力審査)

金融機関が債務者変更に承諾を必要とするのは、新しい債務者に返済能力があるかを確認するためです。アトム法律事務所の情報によると、承諾を得ずに勝手に名義変更すると契約違反となり、最悪の場合一括返済を求められるリスクがあります。

名義変更が可能なケース│離婚・相続・親子間贈与別の手続き

名義変更が可能なケースは主に3つあります。それぞれの手続き方法と注意点を解説します。

離婚時の名義変更(財産分与・連帯保証解除)

離婚時には、財産分与により住宅ローン付きの不動産の名義を変更する場合があります。例えば、夫名義の住宅ローンを妻名義に変更するケースです。

アトム法律事務所によると、金融機関が承諾するかは新しい債務者の返済能力次第です。また、連帯保証人・連帯債務者の解除は金融機関が認めないケースが多く、離婚後も債務が残るリスクがあります。

相続時の名義変更(団信の有無・相続人の債務承継)

相続時には、住宅ローンの債務者が亡くなった場合の対応が必要です。団体信用生命保険(団信)に加入していれば、保険金でローン残債が完済されます。

親の住宅ローンを子が払う方法(マネーキャリア)によると、団信未加入の場合は相続人が債務を全額引き継ぐことになります。複数の相続人がいる場合、誰が債務を引き継ぐかを協議する必要があります。

親子間贈与時の名義変更(贈与税の負担・返済能力審査)

親子間で住宅ローン付きの不動産を贈与する場合、住宅ローン残債も贈与とみなされる可能性があり、贈与税の負担が発生します。年間110万円を超える贈与には課税されるため、税理士への相談が必須です。

また、金融機関は新しい債務者(子)の返済能力を審査します。審査に通らない場合、名義変更が認められない可能性があります。

名義変更と借り換えの違い│どちらを選ぶべきか

名義変更が認められない場合、借り換えが代替手段となります。両者の違いを比較します。

名義変更のメリット・デメリット

名義変更は、既存の住宅ローンをそのまま継続する方法です。

項目 内容
メリット 諸費用が少ない(登記費用・印紙税のみ)
デメリット 金融機関の承諾が必要、審査が厳しい場合がある

借り換えのメリット・デメリット

借り換えは、既存ローンを完済して新たに組み直す方法です。

項目 内容
メリット 新規審査で承認される可能性がある、金利条件を見直せる
デメリット 諸費用が高い(数十万円)、審査に時間がかかる

借り換え時の住宅ローン控除適用要件

借り換え時には、住宅ローン控除の適用条件が変わる場合があります。国税庁によると、借り換え後のローンが住宅の取得等のために必要な資金である場合に限り、引き続き控除が適用されます。

控除額が減少または適用できなくなるリスクがあるため、借り換え前に国税庁の要件を確認することが重要です。

名義変更が認められない場合の対応│借り換え・任意売却・リースバック

金融機関が名義変更を承諾しない場合、以下の3つの代替手段があります。

借り換え(新たな金融機関でローンを組み直す)

借り換えは、新しい金融機関でローンを組み直し、既存ローンを完済する方法です。新規審査に通る必要がありますが、名義変更が認められない場合の有効な選択肢です。

任意売却(不動産を売却して残債を返済)

任意売却は、不動産を売却して残債を返済する方法です。住宅ローン問題を解決するためのコラム集によると、売却額が残債を下回る場合は差額の返済計画が必要です。

リースバック(売却後も賃貸で住み続ける)

リースバックは、売却後も同じ物件に賃貸で住み続けられる仕組みです。家賃負担が発生しますが、住み続けたい場合に検討できる選択肢です。

名義変更の必要書類と費用│登記費用・印紙税・司法書士報酬

名義変更に必要な書類と費用を具体的に説明します。

必要書類一覧

名義変更には以下の書類が必要です。

  • 金融機関への申請書
  • 所有権移転登記の申請書
  • 印鑑証明書
  • 住民票
  • 売買契約書または贈与契約書の写し

費用の内訳(登記費用・印紙税等)

名義変更にかかる費用は以下の通りです。

項目 目安額
登録免許税 固定資産税評価額の2%
司法書士報酬 5-10万円程度
印紙税 契約書に応じて

ケースにより費用は異なりますが、事前に確認しておくことをおすすめします。

まとめ│名義変更は専門家への相談が必須

住宅ローンの名義変更は、金融機関の承諾が原則必須で、承諾を得ずに行うと契約違反のリスクがあります。離婚・相続・親子間贈与など、ケースによって手続き方法と注意点が異なります。

名義変更が認められない場合は、借り換え・任意売却・リースバック等の代替手段を検討する必要があります。税務上の影響(相続税・贈与税)や住宅ローン控除への影響もあるため、弁護士・税理士等の専門家への相談をおすすめします。

よくある質問

Q1住宅ローンの名義変更は勝手にできますか?

A1金融機関の承諾が原則必須です。承諾を得ずに勝手に名義変更すると契約違反となり、最悪の場合一括返済を求められるリスクがあります。必ず金融機関に事前相談することが重要です。

Q2離婚後、連帯保証人を外すことはできますか?

A2連帯保証人・連帯債務者の解除は金融機関が認めないケースが多い傾向にあります。離婚後も債務が残る可能性があるため、借り換えや任意売却を検討する必要があります。金融機関と早めに相談することをおすすめします。

Q3親子間で名義変更すると贈与税はかかりますか?

A3住宅ローン残債も贈与とみなされる可能性があり、贈与税の負担が発生します。年間110万円を超える贈与には課税されるため、税理士への相談が必須です。贈与税の計算方法や軽減措置についても確認することが重要です。

Q4借り換えをすると住宅ローン控除はどうなりますか?

A4借り換え時に住宅ローン控除の適用条件が変わる場合があり、控除額が減少または適用できなくなるリスクがあります。国税庁によると、借り換え後のローンが住宅の取得等のために必要な資金である場合に限り、引き続き控除が適用されます。借り換え前に国税庁の要件を確認することが重要です。