住宅ローン控除終了後の変化とは
住宅ローン控除の期間が終了間近、または終了した方の中には、「控除が終わったら税金がどれくらい増えるのか」「何か対策はあるのか」と不安に感じる方は少なくありません。
この記事では、住宅ローン控除終了後の税負担増加額を年収・残債別のシミュレーションで示し、繰上返済のタイミング、iDeCo・ふるさと納税等の活用、家計見直しの対策を、国土交通省や国税庁の公式情報を元に解説します。
初めて控除終了を迎える方でも、早めの準備ができるようになります。
この記事のポイント
- 住宅ローン控除は新築13年間、中古10年間適用され、終了後は年20-30万円程度の税負担増が見込まれる
- 金利1.0%以上なら控除期間中でも繰上返済が有利、金利1.0%未満なら控除終了後が得策
- iDeCo・ふるさと納税等の所得控除を活用することで、税負担増加を一部カバーできる
- 控除終了のタイミングで家計全体を見直し、固定費削減や住宅ローン借り換えも検討すべき
住宅ローン控除の仕組みと控除期間
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、住宅ローンを利用して住宅を取得した場合、年末残高の0.7%を所得税・住民税から控除できる制度です。
国土交通省によると、令和4年以降入居の場合、新築住宅は13年間、中古住宅は10年間の控除期間が設定されています。
控除額の計算方法
控除額は以下の式で算出されます。
控除額 = 年末ローン残高 × 0.7%
例えば、年末残高が2,500万円の場合、控除額は17.5万円(2,500万円 × 0.7%)となります。この金額が所得税・住民税から差し引かれるため、実質的な税負担が軽減されます。
控除終了後の変化
控除期間が終了すると、年末残高の0.7%分の控除がなくなります。年間17.5万円の控除を受けていた場合、終了後は所得税・住民税がその分増加します。
控除終了後の税負担増加シミュレーション
以下は国税庁の控除率0.7%をもとに試算した一例です。実際の税負担増加額は個人の年収・ローン残高・扶養家族の有無等により異なります。年収・残債別の具体的なシミュレーションを提示します。
年収400万円・残債1,500万円のケース
- 控除額: 10.5万円(1,500万円 × 0.7%)
- 控除終了後の税負担増: 年10.5万円、月々約0.9万円
年収600万円・残債2,500万円のケース
- 控除額: 17.5万円(2,500万円 × 0.7%)
- 控除終了後の税負担増: 年17.5万円、月々約1.5万円
年収800万円・残債3,500万円のケース
- 控除額: 24.5万円(3,500万円 × 0.7%)
- 控除終了後の税負担増: 年24.5万円、月々約2.0万円
国税庁の公式情報によると、控除額は所得税・住民税の範囲内で適用されるため、年収が低い場合は控除しきれない可能性もあります。
上記はあくまで目安であり、実際の税負担増加額は個人の年収・ローン残高・扶養家族の有無等により異なります。正確な金額は税理士にご相談ください。
控除終了後の対策①:繰上返済のタイミング
繰上返済のベストタイミングは、金利と控除率の比較で判断します。
金利と控除率の比較
現行の住宅ローン控除率は**0.7%**です。住宅ローンの金利が0.7%より高いか低いかで、繰上返済のタイミングを判断します。
| 金利 | 繰上返済のタイミング | 理由 | 
|---|---|---|
| 1.0%以上 | 控除期間中でも優先 | 利息1.0% > 控除0.7%のため、利息削減効果が大きい | 
| 1.0%未満 | 控除終了後に実施 | 控除0.7% > 利息のため、控除期間中は繰上返済を待つ | 
繰上返済の種類
繰上返済には「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2種類があります。
| 種類 | 特徴 | 効果 | 
|---|---|---|
| 期間短縮型 | 月々の返済額を変えずに返済期間を短縮 | 総利息の削減効果が大きい | 
| 返済額軽減型 | 返済期間を変えずに月々の返済額を減少 | 家計の負担軽減に有効 | 
控除終了後は、期間短縮型の繰上返済を選択することで、総利息を最大限削減できます。
控除終了後の対策②:他の所得控除の活用
住宅ローン控除終了後は、他の所得控除を活用して税負担を軽減できます。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCoは掛金が全額所得控除の対象となる私的年金制度です。
節税効果の例:
- 年収600万円
- 月2.3万円拠出(年27.6万円)
- 節税効果: 年5.5万円程度(所得税・住民税の軽減)
iDeCoは60歳まで引き出せないため、老後資金の準備と節税を両立できます。控除終了後の税負担増加を一部カバーする手段として有効です。
ふるさと納税
ふるさと納税は、自治体への寄付により所得税・住民税の控除を受けられる制度です。自己負担2,000円で返礼品を受け取れます。
活用のポイント:
- 年収600万円の場合、年間約6万円程度の寄付が可能(家族構成により異なる)
- 所得税・住民税から控除されるため、実質負担は2,000円のみ
生命保険料控除・医療費控除
生命保険料控除(年間最大12万円)や医療費控除(年間10万円以上の医療費)も活用可能です。既に加入している保険がある場合、年末調整や確定申告で漏れなく申告しましょう。
これらは一般的な選択肢として紹介しており、個別の税務相談は税理士にご依頼ください。
控除終了後の対策③:家計の見直し
控除終了後の税負担増加に備えて、家計の支出項目を見直します。
固定費の削減
以下の固定費を見直すことで、年間数万円〜数十万円の削減が可能です。
- 通信費: 格安SIMへの乗り換えで年間5-10万円削減
- 保険料: 不要な保険の解約、見直しで年間3-5万円削減
- サブスクリプション: 使っていないサービスの解約で年間1-3万円削減
住宅ローン借り換えの検討
控除終了のタイミングで、住宅ローンの借り換えを検討するのも有効です。金利差0.5%以上、残債1,000万円以上、残期間10年以上なら借り換えメリットが大きい傾向にあります。
控除期間中は控除額が減るため借り換えを躊躇する人が多いですが、終了後は金利削減効果がそのまま利益になります。
2025年以降の制度変更と注意点
住宅ローン控除制度は頻繁に改正されるため、最新情報の確認が重要です。
国土交通省によると、2025年12月末までの入居が現行制度(控除率0.7%、新築13年・中古10年)の適用期限です。2026年以降の制度は未定のため、今後の制度変更に注意してください。
2025年度の改正では、子育て世帯への優遇措置が延長されました。該当する方は、SBI新生銀行などの金融機関の解説も参考にしてください。
この記事は2025年時点の情報です。最新の制度は国税庁公式サイトでご確認ください。
まとめ
住宅ローン控除終了後は、年10-30万円程度の税負担増が見込まれます。年収600万円・残債2,500万円の場合、年17.5万円(月々約1.5万円)の税負担増となります。
対策として、①繰上返済のタイミング調整(金利1.0%以上なら控除期間中でも優先)、②iDeCo・ふるさと納税等の活用(年5-10万円の節税効果)、③家計見直し(固定費削減、住宅ローン借り換え)が有効です。
金利と控除率の比較で繰上返済のタイミングを判断し、個別の税務相談は税理士にご依頼ください。控除終了前に早めの準備を推奨します。
複数金融機関から見積もりを取り、自身の状況に合った対策を検討しましょう。
