住宅ローンの三大疾病保障、つける人はどれくらい?
住宅ローンを契約する際、金融機関から「三大疾病保障をつけませんか?」と勧められたものの、「本当に必要なのか」「どれくらいの人が加入しているのか」と迷っている方は少なくありません。
この記事では、三大疾病保障の加入率データ、保障の仕組み、つける人とつけない人の判断理由を、公的機関や業界調査のデータを元に解説します。
ご自身の状況に合わせて、三大疾病保障が必要かどうかを判断する材料としてお役立てください。
この記事のポイント
- 三大疾病保障の加入率は50-70%程度で、過半数が特約をつけている
- 保障内容は、がん・急性心筋梗塞・脳卒中の3つの疾病が対象
- 金利上乗せ0.2-0.3%程度で、3000万円・35年返済の場合、総返済額が100-150万円程度増加
- 既存の生命保険との重複確認が重要で、二重加入による保険料の無駄を避けるべき
- 自営業・生命保険未加入の人は加入推奨、十分な生命保険加入済みの人は不要な場合が多い
三大疾病保障の加入率データ
最新の調査結果:57-68%が特約付き
住宅ローンの三大疾病保障をつける人はどれくらいいるのでしょうか。複数の調査データから、加入率の実態を見ていきましょう。
カーディフ生命の2019年調査によると、若年層(20-34歳)の50%が疾病特約付きの団信を選択しています。さらに、コロナ禍以降の調査では全体の68.1%が特約付きを選択するなど、健康リスクへの意識が高まっていることが分かります。
別の調査では、住宅ローン契約者の57%が三大疾病特約をつけているという結果も報告されています(マネーキャリア調査)。
一方、生命保険文化センターの令和4年データでは、三大疾病保険の加入率は男性30.7%、女性31.1%となっています。ただし、この統計は住宅ローン以外の三大疾病保険も含むため、住宅ローン特約とは別の調査であることに注意が必要です。
世代別の加入傾向
年代別に見ると、30-50代の加入率が高い傾向にあります。これは、住宅ローンの主要な契約者層であることに加え、家族の生活を支える責任が大きい世代であるためと考えられます。
コロナ禍による変化
コロナ禍を経て、疾病保障への関心が高まり、全体の加入率が上昇しました。感染症の流行により、「万が一の病気に備える」意識が強まったことが背景にあります。
三大疾病保障の仕組みと保障範囲
対象となる3つの疾病
三大疾病保障は、がん(悪性新生物)、急性心筋梗塞、脳卒中の3つの重大疾病を対象としています。これらは日本人の死因の上位を占める病気であり、医療費や収入減少のリスクが高いため、保障の対象とされています。
団体信用生命保険(団信)の疾病特約として提供され、金利上乗せ0.2-0.3%程度で加入できます。三大疾病と診断され、所定の状態になった場合、住宅ローンの残高がゼロになります。
支払条件の違い:がんと心筋梗塞・脳卒中
三大疾病保障の支払条件は、疾病により異なります(アフラック公式情報)。
がん(悪性新生物)
- 診断確定時点で保障される
- ただし、契約後3ヶ月の待機期間があり、この間に診断されても保障対象外
- 上皮内がん(初期がん)は対象外の商品が多い
急性心筋梗塞・脳卒中
- 「所定の状態」(60日以上の労働制限、または手術・20日以上の入院)が支払条件
- 軽症で早期回復した場合は支払われない可能性が高い
このように、急性心筋梗塞と脳卒中は、がんに比べて支払条件が厳格です。「診断されたら即座に保障」というわけではないため、支払条件を事前に確認することが重要です。
待機期間と免責事項
がん保障には、契約後3ヶ月の待機期間が設けられています。この期間中にがんと診断されても保障対象外となるため、注意が必要です。
また、保険金の支払いは基本的に1回限りで、複数回罹患しても2回目以降は保障されない商品が多いです(ただし、複数回払いに対応した商品も一部存在します)。
8大疾病・全疾病保障との違い
保障範囲の比較表
三大疾病保障のほかにも、八大疾病保障や全疾病保障といった選択肢があります。それぞれの違いを理解した上で、自分に合った保障を選ぶことが大切です。
| 保障の種類 | 対象疾病 | 金利上乗せ目安 |
|---|---|---|
| 三大疾病 | がん・急性心筋梗塞・脳卒中 | 0.2-0.3% |
| 八大疾病 | 三大疾病+高血圧・糖尿病・慢性腎不全・肝硬変・慢性膵炎 | 0.2-0.3% |
| 全疾病 | ほぼすべての病気・ケガによる就業不能 | 0.3-0.4% |
金利上乗せ幅の違い
八大疾病保障は、三大疾病に加えて5つの生活習慣病をカバーしますが、金利上乗せ幅は三大疾病とほぼ同水準(0.2-0.3%)です。全疾病保障は幅広い病気をカバーする分、金利上乗せ幅がやや高めの0.3-0.4%程度となります。
各保障が向いている人
- 三大疾病保障: がん・心筋梗塞・脳卒中のリスクに特化して備えたい人
- 八大疾病保障: 生活習慣病(高血圧・糖尿病等)が心配な人
- 全疾病保障: 幅広い病気・ケガをカバーしたい人
ただし、全疾病保障は免責期間(12-24ヶ月)が長く、実際の支払いハードルが高い点に注意が必要です。コスト対効果を慎重に評価すべきでしょう。
三大疾病保障をつけるべき人・つけない方がいい人
加入を推奨するケース
以下のような方は、三大疾病保障の加入を検討する価値があります。
- 自営業・フリーランス: 会社員のような傷病手当金がないため、収入減少リスクが高い
- 生命保険・医療保険未加入: 既存の保障がなく、三大疾病のリスクに備えたい
- 家族に三大疾病の病歴がある: 遺伝的リスクを考慮して保障を厚くしたい
- 若年層: 保障期間が長く、長期的なリスクに備えられる
加入不要と判断できるケース
一方で、以下のような方は、三大疾病保障が不要な場合があります。
- 十分な生命保険・医療保険に既加入: がん診断給付金や就業不能保険など、既に保障が充実している
- 貯蓄が十分: 3年分の生活費以上の貯蓄があり、万が一のリスクに自己資金で対応可能
- 健康リスクが低い: 健康診断で異常がなく、家族歴にも疾病リスクが少ない
既存の生命保険との重複確認
三大疾病保障を検討する際は、既存の生命保険・医療保険と保障内容が重複しないかを必ず確認してください。がん診断給付金や就業不能保険に既加入の場合、三大疾病保障と二重加入になり、保険料の無駄が生じる可能性があります。
保険証券を確認し、保障内容を比較した上で判断することをおすすめします。
三大疾病保障のコストと注意点
金利上乗せの総額計算
三大疾病保障の金利上乗せ0.2-0.3%は、一見わずかな差に見えますが、長期的には大きな負担となります。
計算例:3000万円・35年返済・金利上乗せ0.3%の場合
- 金利上乗せなし(年1.0%): 総返済額 約3,556万円
- 金利上乗せあり(年1.3%): 総返済額 約3,706万円
- 差額: 約150万円
このように、3000万円のローンで35年返済の場合、総返済額が100-150万円程度増加します。この負担に見合う保障が得られるかを慎重に検討すべきです。
途中解約・見直しの難しさ
団信の疾病特約は、住宅ローンに組み込まれているため、基本的に途中解約できません。ローン完済まで保険料負担が続くため、加入時に慎重に判断することが重要です。
ただし、繰上返済でローン残高を減らせば、実質的な保険料負担を軽減できます。
団信の疾病特約特有のリスク
三大疾病保障には、以下のようなリスクがあります。
- 支払条件が厳格: 急性心筋梗塞・脳卒中は「所定の状態」が必要で、軽症では支払われない
- 保険金は1回限り: 複数回罹患しても2回目以降は保障されない(商品により異なる)
- 待機期間: がん保障は契約後3ヶ月間は対象外
これらのリスクを理解した上で、加入を判断してください。
まとめ:三大疾病保障の加入判断のポイント
三大疾病保障の加入率は50-70%程度で、過半数が特約をつけています。しかし、それは「万人に必要」という意味ではなく、個々の状況次第で判断すべきです。
まず、既存の生命保険・医療保険の保障内容を確認し、保障の重複や不足を把握してください。総返済額の増加(100-150万円)と保障内容のバランスを慎重に評価することが重要です。
自営業・生命保険未加入の人は加入を推奨しますが、十分な生命保険に既加入の人は不要な場合が多いでしょう。ファイナンシャルプランナーへの相談も検討し、無理のない判断を行いましょう。
