住宅ローンのボーナス払いとは?基本的な仕組み
住宅ローンを組む際、「ボーナス払いを併用するとどうなるのか」と気になる方は多いでしょう。
この記事では、住宅ローンのボーナス払いのメリット・デメリット、平均利用率、向いている人・不向きな人を、住宅金融支援機構やメガバンクの公式情報を元に解説します。
ボーナス払いを利用すべきか迷っている方でも、リスクと効果を正確に把握し、自分に合った返済方法を判断できるようになります。
この記事のポイント
- ボーナス払いは月々の返済額を抑えられるが、総返済額が増加するリスクがある
- ボーナスは法的義務ではなく、減額・不支給のリスクがあるため返済計画が不安定になりやすい
- 平均利用率は20-40%程度だが、個人の収入安定性やライフプランに応じた判断が必要
- 変更・中止は原則不可で、条件変更には手数料や審査が必要
- 繰上返済の方が柔軟でコスト削減効果が高い場合が多い
ボーナス払いの割合と上限
ボーナス払いとは、年2回(夏・冬)のボーナス時期に、通常の月々返済に加えて追加返済を行う方式です。
多くの金融機関では、借入総額に対するボーナス払い部分の割合(ボーナス払い割合)を**上限40-50%**に設定しています。住宅金融支援機構のフラット35では、借入額の40%までがボーナス払いの上限とされています。
例えば、3000万円の住宅ローンを組む場合、ボーナス払いに充てられるのは最大1200万円(40%)までとなります。
月々返済との併用方法
ボーナス払いを利用すると、月々の返済額を大幅に抑えることができます。
例えば、3000万円を35年・金利1.0%で借りる場合を考えてみましょう。
| 返済方法 | 月々返済額 | ボーナス返済額(年2回) | 
|---|---|---|
| 月々返済のみ | 約8.5万円 | - | 
| ボーナス併用(借入の30%) | 約6.0万円 | 約15万円 | 
ボーナス払いを併用することで、月々の返済額が約2.5万円軽減され、家計の負担が減ります。
ボーナス払いのメリット
月々の返済額を大幅に軽減
ボーナス払いの最大のメリットは、月々の返済額を抑えられることです。
三井住友銀行の調査によれば、ボーナス払いの平均利用率は**20-40%**程度とされています。この割合でボーナス払いを設定すると、月々の返済額を2-3万円程度軽減できるケースが多く、毎月の生活費や貯蓄に回せる資金が増えます。
特に、子育て世代や固定費が多い家庭では、月々の支出を抑えられる点が大きなメリットとなります。
手元資金の柔軟な運用が可能
月々の返済額を抑えることで、手元資金を柔軟に運用できます。
例えば、以下のような用途に資金を回せる可能性があります。
- 教育費の積み立て: 子どもの学費や習い事の費用
- 投資や資産形成: 積立NISAやiDeCo等の資産運用
- 緊急時の備え: 突発的な医療費や修繕費用
月々の返済に余裕があると、ライフイベントに対応しやすくなる点もメリットです。
ボーナス払いのデメリットとリスク
総返済額が増加する理由
ボーナス払いを利用すると、実は総返済額が増加するケースがあります。
これは、ボーナス払いを設定すると、月々返済の元金減少が遅れるため、利息が増えてしまうためです。三菱UFJ銀行の試算によれば、ボーナス払いを利用した場合、月々返済のみと比較して数十万円の利息差が生じるケースもあります。
例えば、3000万円を35年・金利1.0%で借りる場合、ボーナス払いを30%併用すると、総返済額が約30万円増加する可能性があります。
ボーナス減額・不支給のリスク
ボーナスは労働基準法上の法的義務ではありません。会社の就業規則で定められていても、業績悪化時には減額・不支給が合法とされています。
特に、以下のケースではボーナス減額のリスクが高まります。
- 業績連動型のボーナス体系: 会社の業績が悪化するとボーナスが減額される
- 中小企業勤務: 大企業に比べてボーナスの安定性が低い
- 転職・独立予定: 転職後はボーナスが支給されない期間が発生する可能性がある
近年、景気変動によりボーナスカットが増加しており、ボーナス前提の返済計画は危険性が高まっています。みずほ銀行でも、ボーナス減額時のリスクを注意喚起しています。
返済計画の変更が困難
ボーナス払いの変更・中止は、原則として金融機関の承認が必要です。
変更には以下のような手続きと費用が発生します。
| 変更方法 | 手数料 | 審査 | 
|---|---|---|
| 条件変更 | 数千円〜数万円 | 必要 | 
| 借り換え | 数十万円(登記費用等) | 必要 | 
住宅金融支援機構では、ボーナス払いの変更・中止手続きの詳細を公開していますが、多くの金融機関で原則不可とされており、変更できても手数料や審査が必要です。
ボーナスが減額されてから変更しようとしても、すぐには対応できないケースが多いため、契約前の慎重な判断が重要です。
ボーナス払いの平均額と利用率
国土交通省の住宅市場動向調査(令和2年度)によれば、住宅ローンの年間返済額の平均は以下の通りです。
| 物件種別 | 年間返済額平均 | 
|---|---|
| 分譲戸建 | 123.5万円 | 
| 分譲マンション | 139.1万円 | 
三井住友銀行の調査では、ボーナス払い利用率は20-40%程度とされており、平均的なボーナス払い額は年間25-56万円(半年で12.5-28万円)程度と推定されます。
ただし、これはあくまで平均値であり、個人の収入やライフプランに応じて判断することが重要です。
ボーナス払いが向いている人・不向きな人
向いている人(収入安定・ボーナス確実)
ボーナス払いが向いているのは、以下のような方です。
- 公務員: ボーナス支給が安定している
- 大手企業社員: 業績が安定しており、ボーナス減額のリスクが低い
- インフラ企業勤務: 電力・ガス等の業績が安定した業種
みずほ銀行では、収入が安定しボーナスが確実な職種の方には、ボーナス払いが有効な選択肢となることを示唆しています。
不向きな人(収入不安定・自営業)
一方、ボーナス払いが不向きなのは、以下のような方です。
- 業績連動型のボーナス体系: 会社の業績次第でボーナスが変動する
- 自営業・フリーランス: そもそもボーナスの概念がない
- 転職予定がある: 転職後はボーナスが支給されない期間が発生する可能性がある
- ライフイベントが重なる: 夏・冬は帰省費用、教育費、旅行費等の支出が集中しやすい
SUUMOでは、ボーナス時期は他の支出(帰省・教育費・旅行等)と重なりやすく、住宅ローン返済で手元資金が不足し、家計が圧迫されるリスクがあることを指摘しています。
ボーナス払いの変更・中止方法
条件変更の手続きと手数料
ボーナス払いの変更・中止には、金融機関への「条件変更」申請が必要です。
手続きの流れは以下の通りです。
- 金融機関に相談: ボーナス払いの変更・中止を希望する旨を伝える
- 審査: 収入状況や返済能力を再審査
- 条件変更契約: 審査が通れば、新しい返済計画で契約を結ぶ
- 手数料支払い: 数千円〜数万円の条件変更手数料が発生
住宅金融支援機構では、フラット35のボーナス払い変更手続きを公式に案内していますが、多くの金融機関で原則不可とされており、変更できても手数料や審査が必要です。
借り換えも選択肢の一つですが、登記費用や保証料等で数十万円の費用がかかるため、慎重な判断が必要です。
繰上返済との比較
ボーナス払いの代替案として、繰上返済の方が柔軟でコスト削減効果が高い場合があります。
| 項目 | ボーナス払い | 繰上返済 | 
|---|---|---|
| タイミング | 年2回固定 | 任意のタイミング | 
| 総返済額削減効果 | 低い(利息増加) | 高い(元金減少が早い) | 
| 柔軟性 | 変更困難 | 自由に調整可能 | 
| 手数料 | 変更時に発生 | 無料〜数千円(金融機関により異なる) | 
三菱UFJ銀行では、繰上返済の方が元金減少が早いため、総返済額を大幅に削減できることを示唆しています。
ボーナスが不確実な方は、ボーナス払いを設定せず、ボーナス時期に自分のタイミングで繰上返済する方が賢明な選択となる場合が多いです。
まとめ:ボーナス払いは損か得か
住宅ローンのボーナス払いは、月々の返済額を抑えられる一方で、総返済額が増加するリスクや、ボーナス減額時の返済計画の不安定化というデメリットがあります。
「ボーナス払いは絶対に損」というわけではありませんが、個人の収入安定性やライフプランに応じた判断が重要です。公務員や大手企業社員など収入が安定している方には有効な選択肢となる一方、業績連動型のボーナス体系や自営業の方には不向きです。
変更・中止は原則不可で、手数料や審査が必要なため、契約前の慎重な判断が求められます。繰上返済の方が柔軟で総返済額削減効果も高い場合が多いため、自分に合った返済方法を金融機関や専門家に相談しながら選びましょう。
