戸建とは:土地と建物を一体で所有する住宅形態
住宅購入を検討する際、「戸建とマンション、どちらを選ぶべきか」と悩む方は少なくありません。
この記事では、戸建の定義、マンションとの違い、メリット・デメリット、費用の違いを、国土交通省・国税庁の公式情報を元に解説します。
初めて住宅を購入する方でも、戸建とマンションの特徴を理解し、自分に合った選択ができるようになります。
この記事のポイント
- 戸建は「土地と建物を一体で所有する住宅形態」で、土地の所有権が完全に自分のものになる
- マンションは「区分所有建物」で、専有部分のみを所有し、土地は共有持分となる
- 戸建は建替えや増改築の自由度が高い反面、維持管理・修繕の負担も全て自己責任
- マンションは管理組合が共用部分を管理するため、個別の維持管理負担は少ないが、管理費・修繕積立金が必要
- 購入費用はマンションが低い傾向だが、長期的な維持費用は戸建が低い場合が多い
戸建の定義と法的な位置づけ
戸建とは「土地と建物を一体で所有する住宅」
戸建(戸建住宅、一戸建て)とは、土地と建物を一体で所有する独立した住宅形態を指します。
建築基準法や不動産登記法において、戸建は「建物」として扱われ、土地とは別の不動産として登記されます。ただし、所有者は同一であることが一般的です。
戸建の主な特徴:
- 土地の所有権が完全に自分のものになる
- 建物の設計・建替え・増改築の自由度が高い
- 隣接する住戸がなく、独立性が高い
- 維持管理・修繕の責任は全て所有者にある
戸建は、注文住宅(土地を購入して自由設計で建築)または建売住宅(完成済みまたは建築中の住宅を購入)の2つの購入方法があります。
マンションとの違い:区分所有と単独所有
マンションは「区分所有建物」として扱われ、戸建とは法的な扱いが大きく異なります。
| 項目 | 戸建 | マンション | 
|---|---|---|
| 所有形態 | 土地・建物を単独所有 | 専有部分のみ所有、土地は共有持分 | 
| 法律 | 民法、建築基準法 | 建物の区分所有等に関する法律(区分所有法) | 
| 管理 | 所有者が全て管理 | 管理組合が共用部分を管理 | 
| 建替え | 所有者の判断で可能 | 区分所有者の5分の4以上の同意が必要 | 
| 土地の権利 | 所有権 | 敷地利用権(共有持分) | 
(出典: 国土交通省)
マンションでは、専有部分(住戸内部)は個別に所有できますが、共用部分(廊下、エレベーター、外壁等)は全区分所有者の共有となります。
戸建の種類:注文住宅と建売住宅
戸建には、大きく分けて2つの種類があります。
注文住宅:
- 土地を購入し、設計事務所やハウスメーカーに依頼して自由設計で建築
- 間取り・外観・設備を自由に選べる
- 建築期間は通常6ヶ月~1年程度
- 費用は建売住宅より高い傾向(設計費用が別途必要)
建売住宅:
- 完成済みまたは建築中の住宅を土地付きで購入
- 間取り・外観は既に決定済み
- すぐに入居できる(または数ヶ月で完成)
- 費用は注文住宅より低い傾向(大量生産によるコストダウン)
どちらを選ぶかは、予算・こだわり・入居時期等によって異なります。
戸建のメリット:自由度と資産性
土地の所有権が完全に自分のものになる
戸建の最大のメリットは、土地の所有権が完全に自分のものになることです。
マンションでは土地は共有持分となり、敷地全体を区分所有者全員で共有します。一方、戸建では土地を単独で所有するため、以下のメリットがあります。
- 土地の価値が資産として残る(建物は経年劣化するが、土地は減価しない)
- 将来的に建替え・売却・賃貸が自由にできる
- 相続時に分割しやすい
国土交通省の「不動産価格指数」によると、戸建の土地部分は長期的に価値を保つ傾向があります。
建替えや増改築の自由度が高い
戸建は、所有者の判断で建替えや増改築が可能です。
マンションでは、専有部分(住戸内部)のリフォームは可能ですが、建替えには区分所有者の5分の4以上の同意が必要で、実現は困難です。
戸建で可能な変更:
- 間取り変更(壁を撤去して広いリビングに等)
- 外観変更(外壁の色、屋根の形状等)
- 増築(2階建てを3階建てに、離れを追加等)
- 建替え(老朽化した建物を取り壊して新築)
ただし、建築基準法や都市計画法の制限(建ぺい率、容積率、高さ制限等)は遵守する必要があります。
管理費・修繕積立金が不要
マンションでは、管理費・修繕積立金が毎月必要ですが、戸建では不要です。
マンションの管理費・修繕積立金:
- 管理費:月1~3万円程度(共用部分の清掃、管理人の人件費等)
- 修繕積立金:月1~3万円程度(外壁塗装、屋上防水、エレベーター更新等に備える)
- 合計:月2~6万円程度
- 30年間で720万円~2,160万円の負担
戸建では、これらの費用が不要ですが、維持管理・修繕の費用は全て自己負担となります。長期的には、自分でメンテナンス計画を立てて費用を積み立てる必要があります。
騒音トラブルが少ない
戸建は隣接する住戸がないため、生活音によるトラブルが少ない傾向があります。
マンションでは、上下階・隣室の生活音(足音、子供の走り回る音、ピアノの音等)がトラブルの原因になることがあります。
戸建では、以下の点でストレスが少なくなります。
- 子供が走り回っても下の階への影響を気にしなくて良い
- ペットを飼いやすい
- 楽器演奏がしやすい(ただし、近隣への配慮は必要)
戸建のデメリット:維持管理と防犯
維持管理・修繕の負担が全て自己責任
戸建では、建物の維持管理・修繕の責任は全て所有者にあります。
マンションでは管理組合が共用部分の修繕計画を立て、修繕積立金で対応しますが、戸建では自分で計画を立て、費用を用意する必要があります。
戸建で必要な主な修繕:
| 修繕項目 | 時期 | 費用の目安 | 
|---|---|---|
| 外壁塗装 | 10~15年ごと | 80万円~150万円 | 
| 屋根塗装・葺き替え | 10~20年ごと | 50万円~200万円 | 
| 給湯器交換 | 10~15年ごと | 20万円~40万円 | 
| キッチン・浴室リフォーム | 20~30年ごと | 100万円~300万円 | 
| シロアリ対策 | 5~10年ごと | 10万円~30万円 | 
30年間で合計500万円~1,000万円程度の修繕費用が必要になる場合があります。計画的に積み立てることが重要です。
防犯・セキュリティ対策が必要
戸建は、マンションに比べて防犯面で不利な場合があります。
マンションでは、オートロック、防犯カメラ、管理人の常駐等のセキュリティ設備が整っている場合が多いですが、戸建では自分で対策を講じる必要があります。
戸建で推奨される防犯対策:
- 防犯カメラの設置(5万円~20万円)
- センサーライトの設置(1万円~5万円)
- 窓の補助錠・防犯フィルム(1万円~3万円)
- 玄関の二重ロック(1万円~5万円)
- ホームセキュリティの契約(月3,000円~7,000円程度)
警察庁の統計によると、戸建住宅の侵入窃盗件数はマンションの約2倍です。立地や周辺環境に応じた対策が必要です。
立地・利便性がマンションより劣る場合が多い
戸建は、駅から離れた郊外に立地することが多く、利便性ではマンションに劣る場合があります。
立地の傾向:
- 戸建:郊外、住宅地、駅から徒歩15分以上が多い
- マンション:都心部、駅近(徒歩10分以内)が多い
通勤・通学時間や生活利便性を重視する場合は、マンションの方が有利な場合があります。ただし、近年は駅近の戸建も増えており、立地を優先して選ぶことも可能です。
高齢になると階段が負担になる可能性
戸建は2階建て・3階建てが多く、高齢になると階段の昇り降りが負担になる可能性があります。
マンションでは平面移動が中心で、エレベーターもあるため、高齢者にとって生活しやすい場合があります。
対策:
- 将来を見据えて平屋を選ぶ
- 1階に寝室・水回りを配置するプランにする
- リフォームでホームエレベーターを設置する(200万円~400万円)
戸建とマンションの費用比較
購入費用:マンションが低い傾向
購入費用は、一般的にマンションの方が低い傾向があります。
首都圏の平均購入価格(2024年):
| 住宅種別 | 平均価格 | 
|---|---|
| 新築戸建(建売) | 約4,500万円 | 
| 新築マンション | 約5,500万円 | 
| 中古戸建 | 約3,500万円 | 
| 中古マンション | 約3,800万円 | 
(出典: 国土交通省)
新築マンションは戸建より高額ですが、専有面積が戸建より狭いことが多く、㎡単価では戸建の方が低い場合があります。
維持費用:戸建が長期的に低い場合が多い
長期的な維持費用は、戸建の方が低くなる場合が多いです。
30年間の維持費用比較:
| 費用項目 | 戸建 | マンション | 
|---|---|---|
| 管理費・修繕積立金 | 0円 | 720万円~2,160万円 | 
| 修繕費用(自己負担) | 500万円~1,000万円 | 200万円~500万円 | 
| 固定資産税 | 年10万円~30万円 × 30年 = 300万円~900万円 | 年8万円~20万円 × 30年 = 240万円~600万円 | 
| 合計 | 800万円~1,900万円 | 1,160万円~3,260万円 | 
マンションでは管理費・修繕積立金が大きな負担となり、長期的には戸建より費用がかかる傾向があります。
資産価値:戸建は土地の価値が残る
資産価値の面では、戸建は土地の価値が残るため、有利な場合があります。
建物の資産価値:
- 木造戸建:築20~30年で建物の価値はほぼゼロ(土地の価値は残る)
- マンション:築30~40年で建物の価値が大きく下がる(土地の共有持分は残るが、建替え費用負担のリスクもある)
国土交通省の「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」によると、中古戸建は土地の価値により一定の資産価値を保つ傾向があります。
一方、マンションは立地が良ければ資産価値を保ちやすいですが、管理状況や修繕積立金の不足により、築年数が経過すると価値が大きく下がる場合があります。
まとめ:自分のライフスタイルに合った選択を
戸建は「土地と建物を一体で所有する住宅形態」で、土地の所有権が完全に自分のものになります。建替えや増改築の自由度が高く、管理費・修繕積立金が不要である一方、維持管理・修繕の負担は全て自己責任です。
マンションは「区分所有建物」で、専有部分のみを所有し、土地は共有持分となります。管理組合が共用部分を管理するため、個別の維持管理負担は少ないですが、管理費・修繕積立金が必要です。
購入費用はマンションが低い傾向ですが、長期的な維持費用は戸建が低い場合が多いです。資産価値では、戸建は土地の価値が残るため、有利な場合があります。
どちらを選ぶかは、予算・ライフスタイル・家族構成・将来の計画等によって異なります。それぞれのメリット・デメリットを理解し、自分に合った選択をすることが重要です。
信頼できる不動産会社やファイナンシャルプランナーに相談しながら、無理のない住宅購入計画を立てましょう。
