住み替えマンション購入の全体スケジュール
現在の住居を売却して新たなマンションを購入する「住み替え」は、売却と購入を同時進行させる必要があるため、通常の購入より複雑です。全体のスケジュールは4-8ヶ月が目安で、売却と購入のタイミング調整が最大の課題となります。
住み替えマンション購入のポイント:
- 売り先行か買い先行かの選択が重要(資金状況とライフスタイルで判断)
- 旧居の売却と新居の購入を同時進行させるため、スケジュール管理が複雑
- つなぎ融資やダブルローンの検討が必要(買い先行の場合)
- 住み替えローンで旧居の残債を新居ローンに上乗せできる
- 居住用財産の買換え特例で譲渡所得税を繰延できる
旧居売却と新居購入の期間(4-8ヶ月)
住み替えの全体スケジュールは以下の通りです:
売り先行の場合:
ステップ | 所要期間 | 主な内容 |
---|---|---|
旧居売却活動 | 3-6ヶ月 | 査定、媒介契約、内覧対応、売買契約 |
仮住まい | 2-6ヶ月 | 賃貸住宅への一時的な転居 |
新居購入 | 2-3ヶ月 | 物件探し、購入契約、決済 |
合計 | 7-15ヶ月 | 旧居売却→仮住まい→新居購入 |
買い先行の場合:
ステップ | 所要期間 | 主な内容 |
---|---|---|
新居購入 | 2-3ヶ月 | 物件探し、購入契約、決済 |
旧居売却活動(並行) | 3-6ヶ月 | 査定、媒介契約、内覧対応、売買契約 |
合計 | 4-8ヶ月 | 新居購入と旧居売却を同時進行 |
買い先行の方が引越しが1回で済み、時間も短縮できますが、資金負担が大きくなるため、資金計画が重要です。
同時進行のタイムライン
売却と購入を同時進行させる場合の理想的なタイムラインは以下の通りです:
第1ヶ月:
- 旧居の査定依頼(複数社)
- 新居の物件探し開始
- 住宅ローン事前審査(新居分)
第2-3ヶ月:
- 旧居の媒介契約締結、売却活動開始
- 新居の内覧、物件決定
- 新居の購入申込、売買契約
第4-5ヶ月:
- 旧居の内覧対応、価格交渉
- 新居の住宅ローン本審査
- 旧居の売買契約締結(目標)
第6ヶ月:
- 新居の決済・引き渡し
- 新居への引越し
- 旧居の決済・引き渡し(新居引き渡し後1-2週間)
このスケジュールなら、仮住まいなしで住み替えが完了します。
各工程の所要期間
各工程の詳細な所要期間は以下の通りです:
- 旧居査定:1-2週間(複数社に依頼)
- 旧居媒介契約締結:1週間
- 旧居売却活動:1-3ヶ月(内覧対応、価格交渉)
- 旧居売買契約:1日
- 旧居決済・引き渡し:契約から1-2ヶ月
- 新居物件探し:1-2ヶ月
- 新居売買契約:1日
- 新居ローン審査:1-2週間
- 新居決済・引き渡し:契約から1-1.5ヶ月
売り先行・買い先行の判断基準
住み替えでは、「売り先行」か「買い先行」かを最初に決める必要があります。
資金状況による選択
売り先行が向いている人:
- 自己資金に余裕がない
- 旧居の住宅ローン残債が多い
- 旧居の売却代金を新居の頭金に充てたい
- 確実に資金計画を立てたい
買い先行が向いている人:
- 自己資金に余裕がある(新居の頭金を用意できる)
- 旧居の住宅ローン残債が少ない(完済済みが理想)
- 引越しを1回で済ませたい
- 仮住まいのコストと手間を避けたい
仮住まいコストの試算
売り先行を選ぶ場合、仮住まいが必要になります。コストを試算して判断材料にしましょう。
仮住まいの費用(2-6ヶ月):
- 家賃:月10-20万円(地域により異なる)
- 敷金・礼金・仲介手数料:家賃の3-5ヶ月分
- 引越し費用:10-20万円(旧居→仮住まい)+ 10-20万円(仮住まい→新居)
- 合計:80-200万円
計算例:
家賃15万円、期間4ヶ月の場合
- 家賃:15万円 × 4ヶ月 = 60万円
- 敷金・礼金・仲介手数料:15万円 × 4ヶ月 = 60万円
- 引越し費用:15万円 × 2回 = 30万円
- 合計:150万円
仮住まいコストが高額なため、買い先行を選ぶ人も多いです。
それぞれのメリット・デメリット
項目 | 売り先行 | 買い先行 |
---|---|---|
資金計画 | 売却代金確定後に購入、安心 | 売却前に購入、資金繰りリスクあり |
引越し回数 | 2回(旧居→仮住まい→新居) | 1回(旧居→新居) |
仮住まい | 必要(2-6ヶ月) | 不要 |
二重ローン | なし | あり(旧居と新居の両方) |
物件探しの余裕 | 売却後なので急ぐ必要あり | 売却前からゆっくり探せる |
売却活動の余裕 | 購入前なので急ぐ必要なし | 購入後なので早く売りたい |
住み替え資金計画とローン戦略
住み替えでは、旧居の売却と新居の購入の資金繰りが複雑になるため、適切なローン戦略が必要です。
住み替えローンとダブルローン
住み替えローン:
旧居の住宅ローン残債を新居のローンに上乗せして借りられる商品です。旧居が売却損(売却価格 < ローン残債)の場合に有効です。
仕組み:
- 旧居の残債:2,000万円
- 旧居の売却価格:1,800万円
- 不足分:200万円
- 新居の価格:3,500万円
- 住み替えローン:3,700万円(新居3,500万円 + 不足分200万円)
注意点:
- 融資額が新居の担保価値を超えるため、審査が厳しい
- 金利が通常の住宅ローンより高い場合がある
- 頭金2-3割必要なケースが多い
ダブルローン:
旧居と新居の両方の住宅ローンを並行して返済する状態です。買い先行で発生します。
仕組み:
- 旧居のローン残債を返済し続ける
- 新居のローンも返済開始
- 旧居売却時に残債を一括返済
注意点:
- 返済額が2倍になるため、資金負担が大きい
- 審査では両方のローンを返済できる年収が必要
- 期間は3-6ヶ月程度(旧居売却まで)
つなぎ融資の活用
つなぎ融資は、旧居の売却代金を新居の購入資金に充てる際、決済日のずれを補う短期融資です。
利用シーン:
- 新居の決済日:6月15日
- 旧居の決済日:7月10日
- 資金不足期間:25日
この期間、つなぎ融資で新居の購入資金を借り、旧居売却後に一括返済します。
条件:
- 融資期間:1-6ヶ月程度
- 金利:2-4%程度(住宅ローンより高い)
- 事務手数料:融資額の1-2%
注意点:
- 旧居の売却が確定していることが条件
- 売却が遅れるとつなぎ融資の返済が困難に
旧居の住宅ローン残債処理
旧居に住宅ローン残債がある場合、売却前に抵当権を抹消する必要があります。
パターン1:売却代金 > ローン残債
- 売却代金でローンを一括返済
- 抵当権抹消登記を申請
- 余剰金を新居の頭金に充当
パターン2:売却代金 < ローン残債(オーバーローン)
- 不足分を自己資金で補填
- または住み替えローンで新居ローンに上乗せ
- 抵当権抹消後に売却可能
パターン3:任意売却
- 自己資金も住み替えローンも難しい場合
- 金融機関と交渉して任意売却
- 残債は無担保ローンとして返済継続
購入マンション契約の流れ
新居のマンションを購入する際の契約の流れは、通常の購入と同じです。
物件探しと内覧
物件探しの開始時期:
- 売り先行:旧居売却後に開始(売却代金確定後)
- 買い先行:旧居売却活動と並行して開始
内覧のポイント:
- 旧居との比較(広さ、日当たり、設備など)
- 通勤・通学の利便性
- 周辺環境(スーパー、病院、学校など)
- 管理状況(共用部の清掃、修繕計画)
重要事項説明と売買契約
購入申込後、宅地建物取引士による重要事項説明が行われ、その後売買契約を締結します。
契約時に必要なもの:
- 手付金(売買代金の5-10%)
- 印鑑(実印)
- 印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)
- 本人確認書類
融資特約:
住宅ローン審査が通らなかった場合、手付金を返還して契約を白紙解除できる特約を必ず付けましょう。
住宅ローン審査
新居の住宅ローン審査では、以下を重点的に審査されます:
返済能力:
- 年収(旧居のローンがある場合は返済比率に影響)
- 勤続年数
- 他の借入状況
物件の担保価値:
- 新居の評価額
- 築年数、立地、管理状況
住み替え特有の審査:
- 旧居の売却契約書(売却が確定している証明)
- 住み替えローンの場合、旧居の残債証明
旧居売却と税務手続き
旧居を売却した際の税務手続きについて理解しておきましょう。
買換え特例の活用
居住用財産の買換え特例は、旧居の譲渡所得税を新居売却時まで繰延できる制度です。
適用要件:
- 旧居の所有期間10年超、居住期間10年以上
- 旧居の売却価格1億円以下
- 新居の床面積50㎡以上
- 旧居売却の前年から翌年までに新居を購入
メリット:
- 売却年の譲渡所得税を支払わなくて済む
- 新居売却時に旧居分の譲渡所得も合算して課税
注意点:
- 3,000万円特別控除との併用不可
- 新居売却時の税負担が大きくなる可能性
住宅ローン控除の適用
新居で住宅ローン控除を利用する場合、以下の要件を満たす必要があります:
- 自己の居住用住宅であること
- 床面積50㎡以上
- 借入期間10年以上
- 取得後6ヶ月以内に入居し、年末まで居住
- 年収3,000万円以下
控除額:
- 年末ローン残高の0.7%
- 最大控除額:年間21-35万円(物件種別により異なる)
- 控除期間:10-13年間
譲渡所得税の計算
旧居を売却した際、譲渡所得に対して税金がかかります。
譲渡所得の計算式:
譲渡所得 = 売却価格 - (取得費 + 譲渡費用)
**取得費:**購入価格 + 購入時の諸費用 - 減価償却費 **譲渡費用:**仲介手数料、測量費用など
税率:
- 短期譲渡(所有期間5年以下):39.63%
- 長期譲渡(所有期間5年超):20.315%
3,000万円特別控除:
居住用財産を売却した場合、譲渡所得から3,000万円を控除できます。多くのケースで譲渡所得税が非課税になります。
決済・引き渡しとタイミング調整
住み替えでは、旧居と新居の決済日をどう調整するかが最大の課題です。
旧居と新居の決済日調整
理想的なスケジュール:
- 新居の決済・引き渡し(例:6月15日)
- 旧居から新居への引越し(例:6月16-17日)
- 旧居の決済・引き渡し(例:6月30日)
このスケジュールなら、仮住まいなしで住み替えが完了します。
調整のポイント:
- 新居の引き渡し日を先に決定
- 旧居の売買契約時に、引き渡し日を新居引き渡し後に設定するよう交渉
- 買主の都合で調整が難しい場合、つなぎ融資を検討
登記手続きの流れ
決済日には、以下の登記を行います:
旧居:
- 抵当権抹消登記(ローン残債がある場合)
- 所有権移転登記(売主→買主)
新居:
- 所有権移転登記(売主→買主)
- 抵当権設定登記(住宅ローン利用時)
それぞれの決済日に司法書士が登記申請を行います。
住所変更届と各種手続き
新居への引越し後、以下の手続きを行います:
住民票の移動:
- 転出届(旧住所の市区町村役場)
- 転入届(新住所の市区町村役場)
各種届出:
- 電気・ガス・水道の開栓・閉栓手続き
- 郵便の転送届
- 銀行・クレジットカード会社への住所変更届
- 運転免許証の住所変更
- 子供の転校手続き(学校への届出)
まとめ
住み替えマンション購入は、売却と購入を同時進行させるため、通常の購入より複雑です。売り先行か買い先行かの選択は、資金状況とライフスタイルで判断しましょう。
売り先行は資金計画が立てやすく安心ですが、仮住まいが必要で引越しが2回になります。買い先行は引越しが1回で済みますが、資金負担が大きく、ダブルローンやつなぎ融資が必要になります。
旧居の住宅ローン残債が売却価格を下回る場合、住み替えローンで新居ローンに上乗せできます。税務面では、3,000万円特別控除または買換え特例を活用して譲渡所得税を軽減しましょう。
旧居と新居の決済日を調整し、理想的には新居引き渡し後1-2週間で旧居を引き渡すスケジュールを組むことで、仮住まいなしで住み替えが完了します。