投資用新築マンション購入時の固定資産税・都市計画税の基礎知識
投資用として新築マンションを購入する場合、固定資産税・都市計画税の負担を正確に理解し、不動産所得の計算に反映させることが重要です。本記事では、投資用新築マンションの固定資産税・都市計画税について、軽減措置の適用、経費計上の方法、確定申告での処理について詳しく解説します。
本記事のポイント
- 投資用でも新築マンションの軽減措置(5年間1/2)と住宅用地の特例(1/6)は適用される
- 固定資産税・都市計画税は不動産所得の必要経費として全額計上可能
- 賃貸開始前の空室期間は経費計上が認められない可能性がある
- 1月1日時点の所有者が納税義務者となるため購入タイミングが重要
- 複数物件保有時は物件ごとに納税通知書が届く
(1) 固定資産税の仕組みと税率
固定資産税は、毎年1月1日時点で土地・建物を所有している人に課される地方税(市町村税)です。標準税率は1.4%で、市町村が課税します(参照:東京都主税局:固定資産税・都市計画税)。
計算式 固定資産税 = 固定資産税評価額 × 1.4%
投資用マンションの場合、固定資産税は「租税公課」として不動産所得の必要経費に算入できます(参照:不動産投資で経費にできる項目)。
(2) 都市計画税の仕組みと課税対象
都市計画税は、都市計画事業や土地区画整理事業の費用に充てるための目的税です。税率は上限0.3%で、主に市街化区域内の土地・建物に課税されます(参照:総務省:都市計画税)。
税金の種類 | 税率 | 課税対象 | 経費計上 |
---|---|---|---|
固定資産税 | 1.4%(標準税率) | 全国の土地・建物 | 可能 |
都市計画税 | 上限0.3% | 主に市街化区域内 | 可能 |
(3) 投資用マンションの課税標準の考え方
投資用マンションの課税標準(固定資産税評価額)は、居住用と同じ方法で評価されます。マンションの場合、土地の持分(敷地権)と専有部分(建物)の両方に固定資産税が課税されます。
土地(敷地権)の評価
- 路線価方式:路線価×敷地面積×持分割合
- 路線価は時価の約80%が目安
建物(専有部分)の評価
- 固定資産税評価額は時価の約70%が目安
- 新築時は建築費の約50~70%が評価額
投資用物件と居住用物件の税制上の違い
投資用マンションと居住用マンションでは、税制上の取り扱いに違いがあります。軽減措置の適用範囲を正確に理解しておくことが重要です。
(1) 居住用特例が適用されないケース
投資用マンションには、住宅ローン控除は適用されません。住宅ローン控除は、自己居住用の住宅を購入した場合のみ適用される制度です。
特例・控除 | 居住用 | 投資用 |
---|---|---|
住宅ローン控除 | 適用 | 適用外 |
新築マンション軽減措置(5年間1/2) | 適用 | 適用 |
住宅用地の特例(1/6) | 適用 | 適用 |
(2) 投資用でも適用される軽減措置
投資用マンションでも、以下の軽減措置は適用されます。
適用される軽減措置
- 新築マンションの固定資産税軽減措置(5年間1/2)
- 住宅用地の特例(小規模住宅用地1/6)
これらの軽減措置は、物件の用途(居住用・投資用)に関わらず適用されます。投資用であっても、入居者が居住していれば「住宅」として認められるためです。
新築マンションの軽減措置と投資用での適用
新築マンションには、固定資産税・都市計画税の軽減措置が複数用意されています。投資用マンションでも、これらの軽減措置は適用されます。
(1) 建物の5年間1/2軽減(床面積50㎡〜280㎡)
新築マンションの建物部分は、5年間、固定資産税が1/2に軽減されます(参照:国土交通省:新築住宅に係る税額の減額措置)。この軽減措置は令和8年3月31日まで延長されています。
軽減措置の要件
- 床面積が50㎡以上280㎡以下
- 120㎡までの部分が軽減対象(120㎡超の部分は通常税率)
- 新築後5年間(マンション等の耐火建築物)
投資用でも適用される条件
- 入居者が居住していること(住宅として使用)
- 床面積が要件を満たしていること
- 事務所・店舗専用の場合は適用外
軽減効果の例:建物評価額2,000万円、床面積80㎡の新築マンション
年度 | 通常の固定資産税 | 軽減後の固定資産税 | 軽減額 |
---|---|---|---|
1~5年目 | 28万円 | 14万円 | 14万円 |
6年目以降 | 28万円 | 28万円 | - |
5年間で合計70万円の軽減効果があります。ただし、築6年目以降は固定資産税が約2倍になり、賃貸経営の収支が悪化する可能性があるため、長期的な資金計画が必要です。
(2) 住宅用地の特例(小規模住宅用地1/6)
住宅用地(住宅が建っている土地)には、固定資産税・都市計画税の軽減措置があります。
区分 | 固定資産税 | 都市計画税 |
---|---|---|
小規模住宅用地(200㎡以下) | 評価額の1/6 | 評価額の1/3 |
一般住宅用地(200㎡超) | 評価額の1/3 | 評価額の2/3 |
投資用マンションでも、入居者が居住していれば住宅用地として認められ、特例が適用されます。
軽減効果の例:土地評価額3,000万円、敷地権150㎡の新築マンション
項目 | 特例適用前 | 特例適用後 | 軽減額 |
---|---|---|---|
固定資産税 | 42万円 | 7万円 | 35万円 |
都市計画税 | 9万円 | 3万円 | 6万円 |
合計 | 51万円 | 10万円 | 41万円 |
(3) 投資用でも適用される条件
投資用マンションで軽減措置を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。
適用条件
- 入居者が居住していること(空室の場合も一時的であれば認められることが多い)
- 床面積が要件を満たしていること
- 事務所・店舗専用ではないこと
空室期間中の取り扱い
空室期間中でも、住宅として使用する意図があれば、一時的な空室は住宅用地として認められることが多いです。ただし、長期間(1年以上)空室が続くと、住宅用地の特例を喪失するリスクがあります。
固定資産税・都市計画税の必要経費算入
投資用マンションの固定資産税・都市計画税は、不動産所得の必要経費として算入できます。経費計上の方法と注意点を見ていきましょう。
(1) 賃貸開始後の必要経費算入
賃貸開始後の固定資産税・都市計画税は、不動産所得の必要経費として全額計上できます(参照:マネーフォワード:不動産投資で経費にできるもの)。
不動産所得の計算式 不動産所得 = 家賃収入 - 必要経費
必要経費に算入できる項目
- 固定資産税・都市計画税
- 管理費・修繕積立金
- 修繕費
- 減価償却費
- ローン利息(元本返済部分は経費にならない)
- 保険料(火災保険・地震保険)
- その他(税理士報酬、交通費等)
具体例:年間家賃収入120万円、固定資産税20万円の場合
項目 | 金額 |
---|---|
家賃収入 | 120万円 |
固定資産税・都市計画税 | △20万円 |
管理費・修繕積立金 | △24万円 |
ローン利息 | △15万円 |
減価償却費 | △30万円 |
保険料 | △2万円 |
不動産所得 | 29万円 |
(2) 賃貸開始前の空室期間の取り扱い
賃貸開始前の空室期間(引渡しから入居まで)の固定資産税は、収益を生んでいないため、必要経費として認められない可能性が高いです。
賃貸開始前の取り扱い
- 固定資産税:経費計上不可(収益との対応関係がない)
- 管理費・修繕積立金:経費計上不可
- 不動産取得税・登録免許税:経費計上可能(一度だけ)
賃貸開始後は、すべての固定資産税・都市計画税を経費計上できます。
(3) 複数物件を所有する場合の経費管理
複数の投資用マンションを所有する場合、各物件ごとに固定資産税・都市計画税が課されます。物件ごとに納税通知書が届くため、経費管理が重要です。
複数物件の経費管理のポイント
- 物件ごとに固定資産税・都市計画税を記録
- 各物件の不動産所得を個別に計算
- 確定申告では全物件の不動産所得を合算
初年度課税と引渡時期の関係
投資用マンションを購入する際、引渡時期により初年度の固定資産税負担が変わります。
(1) 1月1日時点の所有者への課税
固定資産税の納税義務者は、毎年1月1日時点で固定資産課税台帳に登録されている所有者です。年の途中で購入した場合、初年度は前所有者に課税され、売買契約時に日割り按分して精算します。
購入タイミングと初年度の税負担
購入時期 | 初年度の納税義務者 | 按分処理 |
---|---|---|
1月2日~12月31日 | 売主(前所有者) | 引渡日で日割り按分 |
1月1日 | 買主 | 按分不要 |
(2) 引渡時期による税負担の違い
例えば、2025年3月に投資用マンションを購入した場合、2025年1月1日時点では前所有者が所有しているため、2025年分の固定資産税は前所有者に課税されます。買主は、引渡し日以降の日割り分を売主に支払います。
具体例:2025年3月1日引渡し、年間固定資産税36万円
- 売主負担期間:1月1日~2月28日(59日)
- 買主負担期間:3月1日~12月31日(306日)
- 買主負担額:36万円 × 306日 ÷ 365日 = 約30.2万円
買主は、売主に約30.2万円を支払います(清算金)。
(3) 売主との按分処理
売買契約書に、固定資産税の按分処理を明記することが重要です。按分の起算日は地域により異なります。
地域 | 起算日 |
---|---|
関東 | 1月1日 |
関西 | 4月1日 |
起算日が異なると按分額も変わるため、売買契約時に確認が必要です。
確定申告での固定資産税・都市計画税の処理方法
投資用マンションの固定資産税・都市計画税は、確定申告で不動産所得の必要経費として計上します。
(1) 不動産所得の必要経費としての計上
固定資産税・都市計画税は、租税公課として不動産所得の必要経費に算入します。確定申告書の「不動産所得の内訳書」に記載します。
確定申告書の記載箇所
- 不動産所得の内訳書:「租税公課」欄に固定資産税・都市計画税の金額を記載
- 添付書類:固定資産税納税通知書の写し(添付義務はないが保管が必要)
(2) 消費税課税事業者の場合の取り扱い
投資用マンションの賃貸収入は、原則として消費税非課税です。住宅の貸付けは消費税法で非課税とされているためです(事務所・店舗の賃貸は課税対象)。
消費税の取り扱い
- 住宅の賃貸収入:消費税非課税
- 事務所・店舗の賃貸収入:消費税課税
- 固定資産税・都市計画税:消費税非課税
(3) 複数年にわたる税負担の管理
固定資産税は毎年継続して課税されるため、複数年にわたる税負担を管理することが重要です。
管理のポイント
- 納税通知書を年度ごとに保管
- 軽減期間終了後(築6年目)の税額増加を考慮した資金計画
- 評価額の見直し(3年ごと)による税額変動のチェック
まとめ
投資用新築マンション購入時の固定資産税・都市計画税については、以下のポイントを押さえることが重要です。
- 投資用でも新築マンションの軽減措置(5年間1/2)と住宅用地の特例(1/6)は適用される
- 固定資産税・都市計画税は不動産所得の必要経費として全額計上可能(賃貸開始後)
- 賃貸開始前の空室期間は経費計上が認められない可能性がある
- 築6年目以降は固定資産税が約2倍になるため、長期的な資金計画が必要
- 複数物件保有時は物件ごとに納税通知書が届き、経費管理が重要
- 住宅ローン控除は投資用マンションには適用されない
固定資産税・都市計画税は毎年継続して課税される税金のため、購入時だけでなく、長期的な視点で税負担を考慮することが重要です。投資判断の際は、不動産会社や税理士等の専門家に相談することをお勧めします。
FAQ
Q1. 投資用新築マンションでも固定資産税の軽減措置は適用されますか?
投資用でも新築マンションの軽減措置(5年間1/2)と住宅用地の特例(小規模住宅用地1/6)は適用されます。入居者が居住していれば「住宅」として認められるためです。ただし、住宅ローン控除は自己居住用のみで、投資用マンションには適用されません。事務所・店舗専用の場合は軽減措置の対象外となります。
Q2. 投資用マンションの固定資産税は必要経費に算入できますか?
賃貸開始後の固定資産税・都市計画税は不動産所得の必要経費として全額計上可能です。「租税公課」として確定申告の不動産所得の内訳書に記載します。ただし、賃貸開始前の空室期間は収益を生んでいないため、必要経費として認められない可能性が高いです。賃貸開始後は、すべての固定資産税・都市計画税を経費計上できます。
Q3. 年の途中で投資用新築マンションを購入した場合、固定資産税はどうなりますか?
固定資産税は1月1日時点の所有者(売主)に課税されます。年の途中で購入した場合、初年度は前所有者に課税され、売買契約時に引渡し日で日割り按分して精算します。例えば、3月1日引渡し、年間固定資産税36万円の場合、買主は約30.2万円を売主に支払います。翌年1月1日以降は購入者が納税義務者となります。
Q4. 複数の投資用マンションを所有すると固定資産税の負担はどうなりますか?
各物件ごとに固定資産税・都市計画税が課されるため、負担は累積します。各物件の税額は個別に納税通知書で通知され、それぞれ不動産所得の必要経費に算入可能です。複数物件の経費管理が重要で、物件ごとに固定資産税を記録し、確定申告では全物件の不動産所得を合算します。
Q5. 投資用マンションの固定資産税が軽減期間終了後に増加する影響は?
新築マンションの建物部分の軽減措置は5年間のみです。築6年目以降は、建物の固定資産税が約2倍に増加します。例えば、1~5年目が年間24万円だった場合、6年目以降は約38万円となり、年間約14万円の税負担増加となります。賃貸経営の収支が悪化する可能性があるため、長期的な資金計画を立て、軽減期間終了後の税負担増加を考慮することが重要です。