住み替えマンション売却時の固定資産税・都市計画税を理解しよう
住み替えでマンションを売却する際、固定資産税・都市計画税の扱いは多くの方が疑問に感じるポイントです。1月1日時点の所有者に納税義務があるという原則と、実際の売買契約での日割り精算の慣習が混在しているため、理解が難しくなっています。さらに、新居購入後の税負担の変化や、ダブルローン期間中の2物件分の課税も考慮する必要があります。
この記事のポイント
- 売却年度の固定資産税は1月1日時点の所有者(売主)が全額納税義務を負う
- 日割り精算は法的義務ではなく商慣習で、売買契約で規定される
- 起算日は関東では1月1日、関西では4月1日が一般的
- 新居が新築マンションなら5年間の軽減措置が適用される可能性がある
- ダブルローン期間中は2物件分の固定資産税が課される
1. 固定資産税・都市計画税の基本
(1) 固定資産税とは
固定資産税は、毎年1月1日時点で土地・建物を所有している者に課される地方税です。標準税率は1.4%で、固定資産税評価額(課税標準額)に税率を掛けて計算されます。
マンションの場合、土地は敷地全体の評価額を専有面積の割合(持分割合)で按分し、建物は各専有部分ごとに評価されます。
(2) 都市計画税とは
都市計画税は、市街化区域内の土地・建物に課される目的税で、都市計画事業や土地区画整理事業の財源となります。税率は上限0.3%で、各自治体が条例で決定します。
マンションは通常、市街化区域内に建っているため、固定資産税と合わせて都市計画税も課税されるのが一般的です。
(3) 課税のタイミングと納税義務者
固定資産税・都市計画税の納税義務者は、毎年1月1日時点で固定資産課税台帳に登録されている所有者です。これは地方税法で明確に定められています。
例えば、2025年8月にマンションを売却した場合、2025年度分の固定資産税は1月1日時点の所有者(売主)が全額納税義務を負います。買主が2026年1月1日以降に所有していれば、買主は2026年度分から納税義務が発生します。
2. 計算方法と税額の目安
(1) 評価額の算定方法
固定資産税評価額は、市区町村が3年ごとに評価替えを実施して決定します。
- 土地:公示価格の約70%を目安に算定
- 建物:再建築価格から経年減価を考慮して算定
マンションの場合、土地は敷地全体の評価額を専有面積の持分割合で按分します。建物は鉄筋コンクリート造の場合、経年減価率が緩やかで、築年数が経過しても評価額の下がり方が比較的小さいという特徴があります。
(2) 税率と計算式
固定資産税と都市計画税の計算式は以下のとおりです。
固定資産税 = 課税標準額 × 1.4% 都市計画税 = 課税標準額 × 0.3%(上限)
住宅用地の特例措置が適用される場合、課税標準額は評価額より低くなります(後述)。
(3) 税額の目安
【計算例:専有面積70㎡のマンション(土地持分20㎡相当)】
土地評価額(持分相当):700万円
建物評価額(専有部分):1,000万円
住宅用地の特例適用前
- 固定資産税:(700万円 + 1,000万円) × 1.4% = 23.8万円/年
- 都市計画税:(700万円 + 1,000万円) × 0.3% = 5.1万円/年
- 合計:28.9万円/年
住宅用地の特例適用後(土地部分のみ1/6軽減)
- 固定資産税:(700万円 × 1/6 + 1,000万円) × 1.4% = 15.6万円/年
- 都市計画税:(700万円 × 1/3 + 1,000万円) × 0.3% = 3.7万円/年
- 合計:19.3万円/年
3. 軽減措置と特例
(1) 住宅用地の特例措置
住宅用地には、課税標準額を減額する特例措置があります。
区分 | 固定資産税 | 都市計画税 |
---|---|---|
小規模住宅用地(200㎡以下) | 評価額の1/6 | 評価額の1/3 |
一般住宅用地(200㎡超) | 評価額の1/3 | 評価額の2/3 |
マンションの土地持分は通常200㎡以下なので、小規模住宅用地の特例が適用されます。
(2) 小規模住宅用地の特例
小規模住宅用地の特例は、1戸あたり200㎡以下の住宅用地に適用されます。マンションの場合、敷地全体ではなく、専有部分に対応する土地持分で判定されます。
この特例により、土地部分の固定資産税は評価額の1/6、都市計画税は評価額の1/3に軽減されます。
(3) その他の軽減措置
新築マンションの建物軽減措置 新築マンション(5階建以上の耐火・準耐火建築物)の場合、建物部分の固定資産税が新築後5年間、1/2に軽減される措置があります(適用要件あり)。
住み替え先が新築マンションであれば、この軽減措置が適用される可能性があります。
4. 納付方法と期限
(1) 納税通知書の見方
固定資産税・都市計画税の納税通知書は、毎年4月頃に市区町村から送付されます。通知書には以下の情報が記載されています。
- 固定資産税評価額
- 課税標準額(特例適用後の額)
- 税額(固定資産税・都市計画税の内訳)
- 納期限(4回分)
住み替えで転居する場合、転居先に納税通知書が届くよう、事前に市区町村に届出をしておくことが重要です。
(2) 納付時期と支払い方法
固定資産税・都市計画税は、年4回に分けて納付するのが一般的です。
【東京都の例】
- 第1期:6月末
- 第2期:9月末
- 第3期:12月末
- 第4期:翌年2月末
一括払いも可能ですが、多くの自治体では分割払いと比べて割引はありません。
(3) クレジットカード・口座振替の利用
納付方法は以下の選択肢があります。
- 窓口納付:金融機関、コンビニエンスストアで納付書により支払い
- 口座振替:指定口座から自動引き落とし
- クレジットカード払い:インターネット経由で支払い(手数料がかかる場合あり)
- スマートフォン決済:PayPayなどのアプリで支払い
住み替えで忙しい時期は、口座振替やクレジットカード払いの設定をしておくと、納付忘れを防げます。
5. よくある疑問と注意点
(1) 評価替えと税額の変動
固定資産税評価額は3年ごとに見直されます。令和6年度(2024年度)が基準年度で、次回は令和9年度(2027年度)です。
地価が上昇している地域では評価額も上昇し、固定資産税が増加する可能性があります。一方、建物は経年減価により評価額が下がるため、税額が減少する場合もあります。
(2) 特例終了後の税額増加
新築マンションの建物軽減措置は、新築後5年間で終了します。6年目以降は軽減措置が適用されなくなるため、固定資産税が増加します。
【例:建物評価額1,000万円の場合】
- 軽減措置適用中(1〜5年目):1,000万円 × 1/2 × 1.4% = 7万円/年
- 軽減措置終了後(6年目〜):1,000万円 × 1.4% = 14万円/年
住み替え先が新築マンションの場合、6年目以降の税額増加を考慮した資金計画が必要です。
(3) 空き家となった場合の影響
住み替えで売却マンションが空き家となった場合でも、住宅用地の特例措置は継続して適用されます(建物が存在する限り)。ただし、長期間放置して建物が荒廃すると、特例が外される可能性があります。
6. 専門家への相談タイミング
(1) 税理士への相談が必要なケース
以下のケースでは、税理士への相談を検討しましょう。
- 売却益が大きく、譲渡所得税の申告が必要な場合
- 3,000万円特別控除などの特例適用の可否を確認したい場合
- 住み替えローン利用時の税務上の扱いを確認したい場合
(2) 不動産会社への相談内容
不動産会社には、以下の点を確認しましょう。
- 固定資産税の日割り精算の起算日(1月1日または4月1日)
- 精算方法の詳細(売買契約書への記載内容)
- 売却時期と納税通知書の送付先の調整方法
(3) 市区町村への問い合わせ方法
市区町村の固定資産税課には、以下の点を問い合わせできます。
- 固定資産税評価額の確認
- 住宅用地の特例適用の有無
- 転居後の納税通知書送付先の変更手続き
まとめ
住み替えでマンションを売却する際の固定資産税・都市計画税は、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 売却年度の納税義務者は1月1日時点の所有者(売主)。日割り精算は商慣習で、売買契約で規定される
- 起算日は関東では1月1日、関西では4月1日が一般的
- 住宅用地の特例により、土地部分の課税標準額が1/6に軽減される
- 新築マンションに住み替える場合、建物軽減措置(5年間1/2)が適用される可能性がある
- ダブルローン期間中は2物件分の固定資産税が課されるため、資金計画に組み込む必要がある
- 評価替えにより3年ごとに税額が変動する可能性がある
住み替えは大きな資金が動くライフイベントです。固定資産税・都市計画税の扱いを正確に理解し、不動産会社や税理士と連携しながら、スムーズな住み替えを実現しましょう。