住み替えマンション購入の固定資産税|二重負担と軽減ガイド

公開日: 2025/10/20

住み替え購入マンションの固定資産税・都市計画税とは

住み替えでマンションを購入した場合、旧居と新居それぞれの固定資産税・都市計画税の扱いを正しく理解することが重要です。これらの税金は不動産を所有することで発生する地方税であり、住み替えのタイミングによっては一時的に二重負担が発生する可能性があります。

この記事でわかること:

  • 固定資産税・都市計画税の基本的な仕組みと税率
  • 住み替え時の納税義務者判定と二重負担期間
  • マンション特有の評価方法と計算の実務
  • 新築マンション購入時に活用できる軽減措置(5年間1/2減額等)
  • 旧居売却時の日割り精算と新居の税負担タイミング

(1) 固定資産税の基本(標準税率1.4%)

固定資産税は、土地・建物の所有者に毎年課される市町村税です。総務省によれば、標準税率は1.4%ですが、自治体によって異なる場合があります。課税標準額(固定資産評価額に特例を適用後の金額)に税率を乗じて税額が決定されます。

(2) 都市計画税の課税要件(市街化区域・制限税率0.3%)

都市計画税は、市街化区域内の土地・建物に課される目的税で、道路・公園整備の財源として使われます。税率の上限は0.3%で、自治体の条例により決定されます。旧居・新居がともに市街化区域内の場合、両方に課税されます。

(3) マンションの課税構造(専有部分+土地持分)

国土交通省の資料によれば、マンション(区分所有建物)では、専有面積に応じた建物評価と、共有持分に応じた土地評価の合計が課税標準となります。一戸建てと異なり、土地は共有持分として按分計算されます。

住み替え時の納税義務と二重負担期間

住み替えの場合、旧居と新居の納税義務が重複する期間が発生する可能性があります。

(1) 1月1日時点の所有者が納税義務者

固定資産税・都市計画税の納税義務者は、毎年1月1日時点の登記簿上の所有者です。年の途中で売買があっても、その年度の納税義務者は変更されません。

(2) 旧居と新居の納税義務タイミング

住み替えのタイミングによって、納税義務は以下のように変化します。

タイミング 旧居の固定資産税 新居の固定資産税
1/1以前に売却完了 納税義務なし 新居分を納税(1/1時点で所有)
1/1時点で旧居保有 旧居分を納税 新居分も納税(両方保有)
1/1以降に新居購入 旧居分を納税 翌年度から納税義務発生

(3) 一時的な二重負担の可能性

1月1日時点で旧居と新居の両方を所有している場合、両方の固定資産税を納税する必要があります。ただし、旧居を売却した場合は、引渡し時に日割り精算を行うことで、実質的な負担期間は引渡し日までとなります。

マンションの固定資産税評価と計算方法

マンションの固定資産税は、建物部分と土地部分を分けて評価・計算されます。

(1) 専有面積による建物評価

建物部分の評価額は、専有面積、構造(鉄筋コンクリート造等)、築年数などを基に市町村が決定します。評価額は新築時の建築費の5〜7割程度が目安とされています。

(2) 共有持分による土地評価

土地部分は、敷地全体の評価額に対する共有持分割合で按分されます。共有持分は専有面積の割合に応じて決まることが一般的です。国土交通省によれば、土地評価額は公示価格の約7割が目安です。

(3) 評価替え(3年ごと)と税額変動

固定資産評価額は3年ごとに見直されます(次回は2027年)。地価の変動や建物の経年劣化により、評価額が変動し、税額も増減します。長期保有を前提とする場合、この変動を資金計画に組み込むことが重要です。

住み替え購入時の軽減措置

住み替えでマンションを購入する際には、複数の軽減措置を活用できます。

(1) 小規模住宅用地の特例(200㎡以下1/6)

総務省によれば、住宅用地のうち200㎡以下の部分は、課税標準額が1/6に軽減されます。マンションの場合、敷地全体の面積を戸数で割った面積(専有面積の持分相当)が基準となります。この特例により、土地部分の税負担が大幅に軽減されます。

(2) 新築マンションの減額制度(3-7年間1/2)

新築マンションを購入した場合、建物部分の固定資産税が一定期間1/2に減額されます。国土交通省によれば、一般的なマンション(3階建て以上の耐火・準耐火建築物)では5年間、認定長期優良住宅では7年間の減額が受けられます。

(3) 適用条件と床面積要件

新築減額制度の適用には、床面積が50㎡以上280㎡以下であることが要件です。マンションの場合、専有面積で判定されます。減額期間終了後は税額が約2倍になるため、資金計画に注意が必要です。

旧居売却時の日割り精算と新居の税負担

住み替えで旧居を売却する場合、固定資産税の日割り精算が行われます。

日割り精算の仕組み:

1月1日時点で旧居を所有していた場合、売主(あなた)に年度全額の納税義務が発生します。しかし、実務上は引渡し日を基準に日割り計算を行い、買主が残日数分を売主に支払うことが一般的です。売買契約書に精算条項が含まれているか確認しましょう。

新居の税負担:

新居を1月1日より後に購入した場合、その年度の固定資産税は前所有者に課税されます。引渡し時に日割り精算を行います。翌年度からは購入者が正式な納税義務者となり、納税通知書が4〜6月に送付されます。

住み替え時の資金計画と税額試算

住み替えの際には、旧居と新居の固定資産税を含めた資金計画が必要です。

旧居の固定資産税確認:

旧居の固定資産税額は、毎年送付される納税通知書で確認できます。売却タイミングによって、日割り精算で受け取れる金額が変わります。

新居の固定資産税試算:

新居の固定資産税は、専有面積・土地持分から概算できます。

建物部分: 建物評価額 × 税率1.4%
土地部分: 土地評価額 × 持分割合 × 1/6 × 税率1.4%
都市計画税: (建物評価額 + 土地評価額×持分×1/3) × 税率0.3%

新築マンションの場合、建物部分は減額期間(5年間)の1/2になります。減額期間終了後の税額も事前に試算し、資金計画に組み込みましょう。

二重負担期間の最小化:

売却と購入のタイミングを調整することで、二重負担期間を最小化できます。例えば、12月中に旧居を売却完了させれば、翌1月1日時点では新居のみの所有となり、二重負担を回避できます。

まとめ

住み替えでマンションを購入した場合の固定資産税・都市計画税について、重要なポイントをまとめます。

  • 納税義務者は毎年1月1日時点の所有者であり、旧居・新居の所有タイミングで納税義務が決まる
  • 1月1日時点で両方を所有していれば二重負担が発生するが、売却時の日割り精算で実質負担は調整可能
  • 小規模住宅用地特例(200㎡以下1/6)新築減額制度(3-7年間1/2) を活用することで税負担を軽減
  • 旧居の固定資産税は納税通知書で確認、新居は専有面積・土地持分から試算
  • 減額期間終了後の税額増加も考慮した長期的な資金計画が重要

住み替えは大きなライフイベントです。固定資産税・都市計画税の負担を事前に把握し、売却・購入のタイミングを適切に調整することで、資金繰りの不安を軽減できます。

よくある質問

Q1住み替えで旧居と新居の固定資産税が重複する期間はありますか?

A11月1日時点で両物件を所有していれば両方の固定資産税を負担します。旧居を売却しても年度末まで納税義務は継続しますが、引渡し時に日割り精算を行うことで実質負担は軽減されます。新居は翌年度から納税義務が発生します。

Q2住み替えで新築マンションを購入した場合の固定資産税軽減は?

A2新築マンション(3階建て以上の耐火建築物)は、建物部分の固定資産税が5年間1/2に減額されます(床面積50〜280㎡が要件)。土地は小規模住宅用地特例(200㎡以下1/6)が適用されます。減額期間終了後は税額が約2倍になるため、資金計画に組み込むことが重要です。

Q3住み替えで旧居を売却した場合、固定資産税はどうなりますか?

A31月1日時点で旧居を所有していれば年度全額の納税義務があります。引渡し日で日割り精算を行い、買主が残日数分を売主に支払うのが通例です。実質的な負担は引渡し日までとなり、売却タイミングによって負担額が変わります。

Q4住み替え時の固定資産税を資金計画に組み込む方法は?

A4旧居の固定資産税は納税通知書で確認できます。新居は専有面積・土地持分から試算(評価額×1/6×1.4%程度)します。新築の場合は減額期間終了後の税額も想定しましょう。売却・購入のタイミングを調整することで二重負担期間を最小化できます。

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