投資用戸建て購入時の固定資産税・都市計画税の基本
投資目的で戸建てを購入した場合、固定資産税と都市計画税が毎年課税されます。固定資産税は土地・建物の所有者に対して毎年1月1日時点で課される地方税で、標準税率は1.4%です。都市計画税は市街化区域内の土地・建物に課される地方税で、制限税率は0.3%です。投資用でも新築住宅の減額措置や住宅用地の軽減措置は適用されますが、賃貸開始後の固定資産税・都市計画税は不動産所得の必要経費として算入できます。本記事では、投資用戸建て購入時の固定資産税・都市計画税について、実務上の重要ポイントを解説します。
この記事のポイント
- 投資用でも新築減額措置・住宅用地の特例は適用される
- 賃貸開始後の固定資産税・都市計画税は不動産所得の必要経費に算入可能
- 賃貸開始前の空室期間は必要経費として認められない可能性
- 1月1日時点の所有者に課税されるため、購入時期により初年度の負担が変わる
- 複数物件所有の場合、各物件の税額が累積するため経費管理が重要
投資用戸建て購入時の固定資産税・都市計画税の基礎知識
固定資産税の仕組みと税率
固定資産税は、土地・建物の所有者に対して毎年課される地方税です。標準税率は1.4%ですが、市町村により異なる場合があります(総務省: 固定資産税)。
計算式: 固定資産税 = 課税標準 × 税率(1.4%)
課税標準は、固定資産税評価額をもとに、各種軽減措置を適用した後の課税対象額です。
都市計画税の仕組みと課税対象
都市計画税は、市街化区域内の土地・建物の所有者に課される地方税です。都市計画事業(道路・公園等の整備)の財源として使われます。制限税率は0.3%で、これを超える税率を設定することはできません(総務省: 都市計画税)。
計算式: 都市計画税 = 課税標準 × 税率(0.3%以下)
投資用戸建ての課税標準の考え方
投資用戸建ての課税標準は、固定資産税評価額をもとに算出されます。市町村が3年ごとに評価替えを行い、評価額は一般的に市場価格の70%程度です。投資用でも住宅用地の特例が適用されるため、課税標準は以下のように軽減されます。
- 小規模住宅用地(200㎡以下): 課税標準が1/6に軽減
- 一般住宅用地(200㎡超): 課税標準が1/3に軽減
投資用物件と居住用物件の税制上の違い
居住用特例が適用されないケース
投資用戸建ては、以下の居住用特例が適用されません。
- 住宅ローン控除: 本人が居住することが要件のため、投資用物件には適用されません。
- 居住用財産の3,000万円特別控除: 売却時の譲渡所得から3,000万円を控除できる制度ですが、投資用物件には適用されません。
ただし、固定資産税・都市計画税の軽減措置(新築減額、住宅用地特例)は、投資用でも適用されます。
投資用でも適用される軽減措置
投資用戸建てでも、以下の軽減措置が適用されます。
- 新築住宅の減額措置: 3年間(長期優良住宅は5年間)、固定資産税が1/2に軽減
- 住宅用地の軽減措置: 小規模住宅用地は課税標準が1/6、一般住宅用地は1/3に軽減
これらの措置により、投資用でも税負担が軽減されます。
特例・軽減措置 | 居住用 | 投資用 |
---|---|---|
住宅ローン控除 | 適用可 | 適用不可 |
3,000万円特別控除(売却時) | 適用可 | 適用不可 |
新築住宅の減額措置 | 適用可 | 適用可 |
住宅用地の軽減措置 | 適用可 | 適用可 |
投資用戸建ての固定資産税・都市計画税の軽減措置
新築住宅の減額措置(3年間または5年間)
新築戸建ては、以下の要件を満たす場合、固定資産税が3年間1/2に軽減されます(総務省: 新築住宅に係る固定資産税の減額措置)。投資用でも適用されます。
適用要件:
- 床面積が50㎡以上280㎡以下
- 専用住宅または併用住宅(居住部分が1/2以上)
- 2024年3月31日までに新築された住宅(期限延長の可能性あり)
軽減内容:
- 一般住宅: 3年間、固定資産税が1/2に軽減
- 長期優良住宅: 5年間、固定資産税が1/2に軽減
- 軽減対象床面積: 120㎡まで
住宅用地の軽減措置(小規模・一般住宅用地)
住宅用地には、固定資産税・都市計画税の軽減措置があります。投資用でも適用されます(総務省: 住宅用地に係る固定資産税の軽減措置)。
小規模住宅用地(200㎡以下):
- 固定資産税: 課税標準が1/6に軽減
- 都市計画税: 課税標準が1/3に軽減
一般住宅用地(200㎡超):
- 固定資産税: 課税標準が1/3に軽減
- 都市計画税: 課税標準が2/3に軽減
軽減措置の適用条件と注意点
住宅用地の特例は、居住用の建物が建っていることが条件です。投資用戸建てでも、賃貸住宅として使用されていれば適用されます。ただし、空き家のまま放置すると、特例が適用されなくなる可能性があります。
注意点:
- 賃貸住宅として使用されていれば適用される
- 空き家のまま放置すると特例が適用されない可能性
- 新築減額措置は3年間(または5年間)で終了し、その後税負担が増加
計算例(新築投資用戸建て):
- 土地評価額: 2,000万円(200㎡)
- 建物評価額: 1,000万円
- 土地の課税標準: 2,000万円 × 1/6 = 約333万円
- 建物の課税標準: 1,000万円 × 1/2(新築減額) = 500万円
- 固定資産税: (333万円 + 500万円) × 1.4% = 約11.7万円
- 都市計画税: (2,000万円 × 1/3 + 500万円) × 0.3% = 約3.5万円
- 合計: 約15.2万円
固定資産税・都市計画税の必要経費算入のタイミング
賃貸開始後の必要経費算入
投資用戸建ての固定資産税・都市計画税は、賃貸開始後、不動産所得の必要経費として算入できます(国税庁: 不動産所得の必要経費)。
必要経費算入のタイミング:
- 賃貸開始後の固定資産税・都市計画税が対象
- 納税した年の必要経費として計上
- 不動産所得の計算で賃貸収入から差し引く
賃貸開始前の空室期間の取り扱い
賃貸開始前の空室期間の固定資産税・都市計画税は、収益を生んでいないため、必要経費として認められない可能性が高いです。税務署の見解により異なる場合があるため、確定申告時に税理士に相談することをおすすめします。
賃貸開始前の取り扱い:
- 賃貸開始前は収益を生んでいないため、必要経費として認められない可能性
- 賃貸開始が決まっている場合は、認められるケースもある
- 税務署の見解により異なるため、税理士に相談
複数物件を所有する場合の経費管理
複数の投資用戸建てを所有する場合、各物件ごとに固定資産税・都市計画税が課されるため、負担は累積します。各物件の税額は個別に通知され、それぞれ不動産所得の必要経費に算入可能です。物件ごとに経費を管理し、確定申告時に正確に計上することが重要です。
初年度課税と引渡時期の関係
1月1日時点の所有者への課税
固定資産税・都市計画税は、毎年1月1日時点で土地・建物を所有している人に課税されます。例えば、2025年6月に戸建てを購入した場合、2026年1月1日時点で所有しているため、2026年度の固定資産税・都市計画税が課税されます。
引渡時期による税負担の違い
年の途中で投資用戸建てを購入した場合、初年度は前所有者に課税されます。ただし、売買契約時に固定資産税・都市計画税を日割り按分して精算するのが一般的です。
例:
- 購入日: 2025年6月1日
- 年間固定資産税: 12万円
- 売主負担: 1月1日~5月31日(151日分)= 約4.96万円
- 買主負担: 6月1日~12月31日(214日分)= 約7.04万円
売買契約時に買主が売主に約7.04万円を支払い、精算します。翌年1月1日以降は、購入者が納税義務者となります。
売主との按分処理
売買契約書に固定資産税・都市計画税の按分処理を明記し、決済時に精算します。按分処理により、購入者は所有期間に応じた税負担を負うことになります。
確定申告での固定資産税・都市計画税の処理方法
不動産所得の必要経費としての計上
投資用戸建ての固定資産税・都市計画税は、不動産所得の必要経費として計上します。確定申告書の「不動産所得の収支内訳書」に、固定資産税・都市計画税の金額を記載します。
記載例:
- 収入: 年間賃料120万円
- 必要経費: 固定資産税12万円、都市計画税3万円、その他経費(管理費、修繕費等)
- 不動産所得: 収入 - 必要経費
消費税課税事業者の場合の取り扱い
投資用戸建ての賃貸収入が年間1,000万円を超える場合、消費税課税事業者となります。ただし、固定資産税・都市計画税は消費税の課税対象外(不課税)であり、消費税の仕入税額控除の対象にはなりません。
複数年にわたる税負担の管理
固定資産税・都市計画税は毎年課税されるため、複数年にわたる税負担を管理することが重要です。新築減額措置が終了する年(4年目または6年目)は税負担が増加するため、収支計画を見直しましょう。
新築減額終了後の税負担増加例:
- 1-3年目: 固定資産税約11.7万円(減額適用)
- 4年目以降: 固定資産税約16.7万円(減額終了、建物1,000万円 × 1.4%増加)
- 増加額: 約5万円
まとめ
投資目的で戸建てを購入した場合、固定資産税・都市計画税が毎年課税されます。投資用でも新築住宅の減額措置(3年間または5年間1/2)と住宅用地の軽減措置(小規模住宅用地1/6、一般住宅用地1/3)は適用されます。賃貸開始後の固定資産税・都市計画税は不動産所得の必要経費として算入できますが、賃貸開始前の空室期間は必要経費として認められない可能性があります。1月1日時点の所有者に課税されるため、購入時期により初年度の負担が変わります。複数物件を所有する場合は、各物件の税額が累積するため、物件ごとの経費管理が重要です。税理士に相談しながら、適切に確定申告を行いましょう。
よくある質問
Q1: 投資用戸建てでも固定資産税の軽減措置は適用されますか?
A: 投資用でも新築住宅の減額措置(3年間または5年間1/2)と住宅用地の軽減措置(小規模住宅用地1/6、一般住宅用地1/3)は適用されます。ただし住宅ローン控除や居住用財産の3,000万円特別控除は適用されません。
Q2: 賃貸開始前の空室期間の固定資産税は必要経費に算入できますか?
A: 賃貸開始前の空室期間は収益を生んでいないため、必要経費として認められない可能性が高いです。賃貸開始が決まっている場合は認められるケースもありますが、税務署の見解により異なるため、税理士に相談しましょう。
Q3: 年の途中で投資用戸建てを購入した場合、固定資産税はどうなりますか?
A: 固定資産税は1月1日時点の所有者に課税されます。年の途中で購入した場合、初年度は前所有者に課税され、売買契約時に日割り按分して精算するのが一般的です。翌年1月1日以降は購入者が納税義務者となります。
Q4: 複数の投資用戸建てを所有すると固定資産税の負担はどうなりますか?
A: 各物件ごとに固定資産税・都市計画税が課されるため、負担は累積します。各物件の税額は個別に通知され、それぞれ不動産所得の必要経費に算入可能です。物件ごとに経費を管理し、確定申告時に正確に計上することが重要です。