投資用マンション購入時の確定申告・税金計算・必要書類

公開日: 2025/10/14

投資用マンション購入時の確定申告の基礎知識

投資用マンションを購入して賃貸収入を得る場合、確定申告が必須です。会社員でも、不動産所得がある場合は年末調整だけでは完結せず、翌年2月16日~3月15日に確定申告を行う必要があります。

この記事では、投資用マンション購入時の確定申告・税金計算・必要書類について、実務的に解説します。

この記事のポイント:

  • 投資用マンションの賃貸収入は「不動産所得」として確定申告が必要
  • 減価償却費、管理費、修繕費、ローン利息などを経費計上できる
  • 青色申告で最大65万円の特別控除を受けられる
  • 住宅ローン控除は投資用マンションには適用されない
  • 初年度は経費が大きく赤字になりやすく、給与所得と損益通算できる

(1) 不動産所得と給与所得の総合課税

投資用マンションの賃貸収入は、不動産所得として扱われます。不動産所得は、給与所得や事業所得と合算して「総合課税」されます。

総合課税の仕組み:

  • 給与所得:500万円
  • 不動産所得:△50万円(赤字)
  • 課税所得:500万円 - 50万円 = 450万円

不動産所得が赤字の場合、給与所得と損益通算でき、源泉徴収された税金の一部が還付されます。

(2) 確定申告が必要になるタイミング

以下の場合、確定申告が必要です:

  • 賃貸収入(不動産所得)がある場合
  • 不動産所得が20万円を超える場合(会社員の場合)
  • 不動産所得が赤字で、給与所得と損益通算したい場合

申告期限: 翌年2月16日~3月15日

(3) 居住用との税制の違い

投資用マンション居住用マンションでは、適用される税制が大きく異なります:

項目 投資用マンション 居住用マンション
住宅ローン控除 適用不可 適用可能(年末残高の0.7%、最大13年間)
減価償却費 経費計上可能 計上不可
不動産取得税 軽減措置なし 軽減措置あり(新築は一定額控除)
3,000万円特別控除 適用不可 売却時に適用可能

国税庁「住宅借入金等特別控除」によれば、住宅ローン控除は自己居住用の住宅が要件です。投資用マンションは対象外となります。

不動産所得の計算方法と必要経費の範囲

(1) 不動産所得の基本的な計算式

国税庁「不動産所得」によれば、不動産所得は以下の式で計算されます:

不動産所得 = 総収入金額 - 必要経費

  • 総収入金額:家賃収入、礼金、更新料、駐車場収入など
  • 必要経費:減価償却費、管理費、修繕費、ローン利息、固定資産税など

計算例:

  • 家賃収入:年間120万円
  • 必要経費:130万円(減価償却費50万円+管理費30万円+ローン利息40万円+その他10万円)
  • 不動産所得:120万円 - 130万円 = △10万円(赤字)

赤字の場合、給与所得と損益通算できます。

(2) 経費として計上できる項目(管理費・修繕費・ローン利息等)

投資用マンションで経費計上できる主な項目は以下の通りです:

経費項目 内容 備考
減価償却費 建物取得費を耐用年数で按分 最大の経費項目
管理費・修繕積立金 マンション管理組合への支払い 全額経費
修繕費 原状回復のための修繕 資本的支出と区別
ローン利息 借入金の利息部分 元本返済は経費不可
固定資産税・都市計画税 不動産に課される税金 全額経費
火災保険料・地震保険料 賃貸物件の保険料 全額経費
仲介手数料 購入時・賃貸募集時 購入時は取得費に算入
税理士費用 確定申告の依頼費用 全額経費

(3) 修繕費と資本的支出の区分

修繕費資本的支出の区分は、税務上重要です:

  • 修繕費:原状回復・維持管理のための支出 → 全額経費計上
  • 資本的支出:価値を高める・耐久性を延ばす支出 → 減価償却で経費計上

具体例:

  • 壁紙の張り替え(原状回復) → 修繕費
  • キッチンのリフォーム(グレードアップ) → 資本的支出
  • エアコン交換(同等品) → 修繕費
  • エアコン新設(価値向上) → 資本的支出

判断が難しい場合は、税理士に相談しましょう。

減価償却費の計算と適用方法

(1) 減価償却の基本的な考え方

減価償却費は、投資用マンションで最も重要な経費項目です。建物は年月とともに価値が減少するため、その減少分を毎年の経費として計上します。

国税庁「減価償却資産の償却方法」によれば、建物は定額法で償却します。

計算式:

減価償却費 = 建物取得費 × 償却率

償却率 = 1 ÷ 耐用年数

(2) 建物と設備の耐用年数と償却方法

マンションの耐用年数は、構造により異なります:

構造 耐用年数 償却率
鉄筋コンクリート造(RC造) 47年 0.022
鉄骨造(重量鉄骨) 34年 0.030
木造 22年 0.046

計算例(RC造マンション):

  • 購入価格:3,000万円(土地1,000万円、建物2,000万円)
  • 建物取得費:2,000万円
  • 償却率:0.022
  • 減価償却費:2,000万円 × 0.022 = 44万円/年

設備(給排水・電気・ガス等)は別途償却:

  • 耐用年数:15年
  • 償却率:0.067

建物と設備を区分して償却することで、より多くの経費を計上できます。

(3) 土地は減価償却の対象外

重要: 土地は減価償却の対象外です。建物部分のみが減価償却されます。

購入価格を土地と建物に按分する必要があります。按分方法は以下の通り:

  • 売買契約書に土地・建物の価格が明記されている → その価格を使用
  • 明記されていない → 固定資産税評価額の比率で按分

按分例:

  • 購入価格:3,000万円
  • 固定資産税評価額(土地1,200万円、建物800万円)
  • 按分比率:土地60%、建物40%
  • 建物取得費:3,000万円 × 40% = 1,200万円

青色申告のメリットと事業的規模の判定

(1) 青色申告特別控除の仕組み(10万円・65万円)

青色申告を行うと、青色申告特別控除を受けられます。控除額は以下の通り:

条件 控除額
簡易な帳簿(単式簿記) 10万円
複式簿記+貸借対照表・損益計算書作成+e-Tax申告 65万円
複式簿記+貸借対照表・損益計算書作成(書面申告) 55万円

国税庁「青色申告特別控除」によれば、65万円控除を受けるには、複式簿記による記帳とe-Tax申告が必要です。

(2) 事業的規模(5棟10室)の判定基準

青色申告特別控除65万円を受けるには、事業的規模で不動産賃貸を行っている必要があります。

事業的規模の基準(5棟10室基準):

  • アパート・マンション:10室以上
  • 戸建て:5棟以上
  • 駐車場:50台以上(おおむね)

具体例:

  • マンション1室のみ → 事業的規模ではない → 控除額10万円
  • マンション10室以上 → 事業的規模 → 控除額65万円

事業的規模でない場合でも、10万円控除は受けられます。

(3) 青色申告の申請手続き

青色申告を行うには、事前に税務署へ申請が必要です:

  • 新規開業の場合:開業から2ヶ月以内に「青色申告承認申請書」を提出
  • 既に白色申告している場合:青色申告したい年の3月15日までに提出

申請書は国税庁のWebサイトからダウンロードできます。

確定申告に必要な書類と作成手順

(1) 確定申告書と収支内訳書の作成

不動産所得の確定申告には、以下の書類が必要です:

  • 確定申告書B(第一表・第二表)
  • 収支内訳書(不動産所得用) または 青色申告決算書

国税庁「確定申告書等の様式・手引き」から様式をダウンロードできます。

収支内訳書の記載項目:

  • 収入金額(家賃、礼金、更新料など)
  • 必要経費(減価償却費、管理費、修繕費など)
  • 不動産の所在地・面積・取得価額

(2) 賃貸契約書・領収書等の保管

確定申告には、以下の証明書類が必要です:

  • 賃貸契約書(家賃収入の証明)
  • 売買契約書(取得費の証明)
  • 領収書・請求書(経費の証明)
  • 管理会社からの収支報告書
  • ローンの返済予定表(利息部分の証明)
  • 固定資産税納税通知書

これらの書類は、7年間保管が義務付けられています。

(3) e-Taxによる電子申告

e-Tax(電子申告)を利用すると、以下のメリットがあります:

  • 青色申告特別控除が55万円から65万円に増額
  • 税務署に行かずに自宅から申告可能
  • 還付金の振込が早い(3週間程度)

e-Taxを利用するには、マイナンバーカードまたはID・パスワード方式の登録が必要です。

投資用マンション特有の税務上の注意点

(1) 住宅ローン控除は投資用には適用されない

重要: 投資用マンションには、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は適用されません。

国税庁「住宅借入金等特別控除」によれば、住宅ローン控除は自己が居住する住宅が対象です。賃貸目的の投資用マンションは対象外です。

代わりに活用できる節税方法:

  • ローン利息を経費計上
  • 減価償却費を経費計上
  • 青色申告特別控除(最大65万円)

(2) 賃貸収入の計上タイミング

賃貸収入は、実際に入金された日ではなく、賃料の支払い期日で計上します(発生主義)。

具体例:

  • 12月分家賃(支払期日12月末日)が1月5日に入金された場合
  • 12月分として収入計上(12月の不動産所得)

滞納があった場合でも、支払期日で計上する必要があります。

(3) 経費の過大計上による税務調査リスク

経費を過大に計上すると、税務調査の対象となるリスクがあります。

よくある誤り:

  • プライベートの支出を経費計上
  • 修繕費を資本的支出として計上すべきところ、全額経費計上
  • ローンの元本返済を経費計上(利息のみが経費)

不安な場合は、税理士に相談し、適切な経費計上を心がけましょう。

まとめ

投資用マンション購入時の確定申告・税金計算について、以下の点を押さえておきましょう:

  • 賃貸収入は不動産所得として確定申告が必須
  • 減価償却費、管理費、修繕費、ローン利息などを経費計上できる
  • 青色申告で最大65万円の特別控除を受けられる
  • 住宅ローン控除は投資用マンションには適用されない
  • 初年度は経費が大きく赤字になりやすく、給与所得と損益通算できる

不動産投資を始める際は、税理士に相談し、正しい税務処理を行うことが重要です。初年度の確定申告をサポートしてもらうことで、以降の申告もスムーズに進められます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 投資用マンションでも住宅ローン控除は使えますか?

A. いいえ、投資用マンションには住宅ローン控除は適用されません

住宅ローン控除は、自己が居住する住宅が対象です。賃貸目的の投資用マンションは対象外となります。

代わりに活用できる節税方法:

  • ローン利息を不動産所得の経費として計上
  • 減価償却費を経費計上
  • 青色申告特別控除(最大65万円)

これらの方法で、不動産所得を減らし、税負担を軽減できます。

Q2. 減価償却費はどのように計算しますか?

A. 減価償却費は、建物取得費 ÷ 耐用年数で計算します。

マンション(RC造)の耐用年数は47年です。

計算例:

  • 建物取得費:2,000万円
  • 耐用年数:47年
  • 償却率:0.022
  • 減価償却費:2,000万円 × 0.022 = 44万円/年

重要: 土地は減価償却の対象外です。購入価格を土地と建物に按分し、建物部分のみを償却します。

設備(給排水・電気等)は建物と別に償却できるため、区分することで経費を増やせます。

Q3. 青色申告をするメリットは何ですか?

A. 青色申告の最大のメリットは、最大65万円の特別控除を受けられることです。

控除額:

  • 簡易な帳簿(単式簿記):10万円
  • 複式簿記+e-Tax申告:65万円

その他のメリット:

  • 赤字を3年間繰り越せる
  • 家族への給与を経費計上できる(事業的規模の場合)
  • 貸倒引当金を経費計上できる

帳簿作成の手間はありますが、会計ソフト(freee、マネーフォワードなど)を使えば簡単に作成できます。節税効果が大きいため、青色申告をお勧めします。

Q4. 初めての確定申告で注意すべきことは?

A. 初年度は、購入費用やリフォーム費用が大きく、赤字になるケースが多いです。

初年度の特徴:

  • 仲介手数料、登記費用、不動産取得税などの初期費用が大きい
  • リフォーム費用(資本的支出)を減価償却で経費計上
  • 賃貸収入が少ない(年度途中から開始)

赤字の活用:

  • 不動産所得の赤字は、給与所得と損益通算できる
  • 源泉徴収された税金の一部が還付される

例:

  • 給与所得:500万円
  • 不動産所得:△100万円(赤字)
  • 課税所得:400万円 → 税金が還付される

初年度の確定申告は複雑なため、税理士に依頼することをお勧めします。

よくある質問

Q1投資用マンションでも住宅ローン控除は使えますか?

A1いいえ、投資用マンションには住宅ローン控除は適用されません。住宅ローン控除は、自己が居住する住宅が対象です。賃貸目的の投資用マンションは対象外となります。代わりに、ローン利息を不動産所得の経費として計上、減価償却費を経費計上、青色申告特別控除(最大65万円)などの方法で、不動産所得を減らし、税負担を軽減できます。

Q2減価償却費はどのように計算しますか?

A2減価償却費は、建物取得費 ÷ 耐用年数で計算します。マンション(RC造)の耐用年数は47年です。例えば、建物取得費2,000万円なら、年間44万円程度の減価償却費を経費計上できます。重要なのは、土地は減価償却の対象外であること。購入価格を土地と建物に按分し、建物部分のみを償却します。設備(給排水・電気等)は建物と別に償却できるため、区分することで経費を増やせます。

Q3青色申告をするメリットは何ですか?

A3青色申告の最大のメリットは、最大65万円の特別控除を受けられることです。簡易な帳簿(単式簿記)なら10万円、複式簿記+e-Tax申告なら65万円の控除が可能です。その他のメリットとして、赤字を3年間繰り越せる、家族への給与を経費計上できる(事業的規模の場合)、貸倒引当金を経費計上できるなどがあります。帳簿作成の手間はありますが、会計ソフトを使えば簡単に作成でき、節税効果が大きいです。

Q4初めての確定申告で注意すべきことは?

A4初年度は、購入費用やリフォーム費用が大きく、赤字になるケースが多いです。仲介手数料、登記費用、不動産取得税などの初期費用が大きく、賃貸収入が少ない(年度途中から開始)ためです。不動産所得の赤字は給与所得と損益通算でき、源泉徴収された税金の一部が還付される可能性があります。例えば、給与所得500万円、不動産所得△100万円なら、課税所得400万円となり税金が還付されます。初年度の確定申告は複雑なため、税理士に依頼することをお勧めします。

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