住み替え土地購入の確定申告|買換え特例と譲渡損失繰越控除の活用

公開日: 2025/10/14

住み替えで土地購入時の確定申告は旧居売却との関連が重要

住み替えで土地を購入する場合、旧居の売却と新居の購入が同時期に行われるため、両方の税務処理を総合的に理解することが重要です。旧居売却で譲渡所得が発生すれば確定申告が必要で、損失が出れば譲渡損失の繰越控除を受けられます。土地購入時には不動産取得税・登録免許税が課税されますが、住宅を建築予定なら住宅ローン控除も視野に入れる必要があります。

この記事のポイント

  • 旧居売却で譲渡所得が発生した場合は確定申告が必要、土地購入のみなら申告不要
  • 譲渡損失が出た場合は繰越控除で給与所得と損益通算でき、翌年以降3年間繰越可能
  • 買換え特例を使えば譲渡益の課税を繰延できるが、一定の要件あり
  • 土地購入時の諸費用(仲介手数料、登記費用、測量費など)は取得費に算入可能
  • 住宅建築予定なら住宅ローン控除を視野に入れて税務対策を計画

1. 住み替えによる土地購入の基礎知識

(1) 住み替えの定義と流れ

住み替えとは、現在の住居(旧居)を売却し、新たな住居(新居)を購入することです。

住み替えの典型的な流れ:

  1. 旧居の売却活動開始(査定・媒介契約)
  2. 新居の購入先探し(土地・建物の選定)
  3. 旧居の売買契約締結
  4. 新居の売買契約締結(土地購入)
  5. 旧居の決済・引渡し
  6. 新居の決済・引渡し(土地取得)
  7. 住宅建築(土地のみ購入の場合)

(2) 旧居売却と新居購入の同時進行

住み替えでは、旧居の売却資金を新居の購入資金に充てるため、タイミングの調整が重要です。

タイミングのパターン:

パターン 特徴 注意点
売却先行 旧居を先に売却し、仮住まいを経て新居購入 仮住まいの費用・引越し2回
購入先行 新居を先に購入し、旧居を後から売却 つなぎ融資や二重ローンの負担
同時進行 売却と購入を同時期に完了 スケジュール調整が複雑

(3) 住宅建築予定の場合の注意点

土地のみを購入し、住宅を建築予定の場合、以下の点に注意が必要です。

住宅ローン控除:

  • 土地のみでは住宅ローン控除の対象外
  • 住宅建築後に初めて適用可能(入居から6ヶ月以内)
  • 土地購入と住宅建築の住宅ローンを合算して控除額を計算

建築確認申請:

  • 土地購入後、建築確認申請を済ませることで、住宅ローン控除の適用がスムーズに

2. 土地購入時の各種税金

(1) 不動産取得税の計算と軽減措置

不動産取得税は、土地を取得した際に都道府県に納める地方税です。

計算式:

不動産取得税 = 固定資産税評価額 × 3%

軽減措置:

住宅用地を取得した場合、以下の軽減措置があります。

  • 宅地評価土地の特例: 固定資産税評価額を1/2に減額(2027年3月31日まで)
  • 新築住宅の敷地の特例: 一定の要件を満たせば最大45,000円控除

計算例:

仮に、固定資産税評価額2,000万円の土地を購入した場合:

宅地評価土地の特例適用後: 2,000万円 × 1/2 = 1,000万円
不動産取得税: 1,000万円 × 3% = 30万円

申告:

不動産取得税は、土地取得後60日以内に都道府県税事務所に申告します。

(2) 登録免許税の計算

登録免許税は、土地の所有権移転登記時に国に納める税金です。

計算式:

登録免許税 = 固定資産税評価額 × 2%(土地の所有権移転)

軽減措置:

2026年3月31日までに取得した土地は、税率が**1.5%**に軽減されます。

計算例:

仮に、固定資産税評価額2,000万円の土地を購入した場合:

登録免許税: 2,000万円 × 1.5% = 30万円

登録免許税は、登記申請時に法務局に納付します。

(3) 印紙税

印紙税は、土地の売買契約書に貼付する収入印紙の代金です。

税額表:

契約金額 印紙税額
1,000万円超~5,000万円以下 2万円
5,000万円超~1億円以下 6万円
1億円超~5億円以下 10万円

印紙税は、契約書作成時に貼付します。

3. 旧居売却と連動する税制優遇

(1) 特定居住用財産の買換え特例

国税庁の「特定居住用財産の買換え特例」は、住み替え時の譲渡益への課税を買い替え先の売却時まで繰り延べることができる制度です。

主な要件:

  • 旧居の所有期間: 売却年の1月1日時点で10年超
  • 旧居の居住期間: 売却年の1月1日までに10年以上居住
  • 売却価格: 1億円以下
  • 新居の面積: 床面積50㎡以上280㎡以下
  • 買い替え期間: 売却年の前年1月1日から翌年12月31日までに購入

注意点:

  • 課税繰延であり非課税ではない(買い替え先を売却する際に課税)
  • 住宅ローン控除と併用不可

(2) 譲渡損失の繰越控除

住み替えで譲渡損失が出た場合、譲渡損失の繰越控除を受けることができます。

主な要件:

  • 旧居の所有期間: 売却年の1月1日時点で5年超
  • 住宅ローン残高: 売却時にローン残高あり
  • 新居の面積: 床面積50㎡以上
  • 新居の住宅ローン: 返済期間10年以上

メリット:

  • 譲渡損失を給与所得など他の所得と損益通算できる
  • 控除しきれない損失は翌年以降3年間繰越可能
  • 住宅ローン控除と併用可能(買換え特例との大きな違い)

計算例:

仮に、旧居を3,000万円で売却し、取得費が4,000万円(譲渡損失1,000万円)、給与所得が600万円の場合:

損益通算後の所得: 600万円 - 1,000万円 = -400万円(所得税・住民税が0円に)
繰越損失: 400万円(翌年以降3年間繰越可能)

(3) 旧居売却と新居購入の同時申告

旧居売却と新居購入が同じ年に行われた場合、両方を同じ確定申告書で申告します。

申告書の記載内容:

  • 譲渡所得の内訳書(旧居売却)
  • 買換え特例または譲渡損失の繰越控除の計算明細書
  • 住宅借入金等特別控除額の計算明細書(新居の住宅ローン控除、譲渡損失の繰越控除と併用可能)

4. 確定申告の手順と必要書類

(1) 旧居売却の譲渡所得申告

旧居売却で譲渡所得が発生した場合、以下の書類が必要です。

必要書類:

  • 譲渡所得の内訳書(国税庁HPからダウンロード)
  • 旧居の売買契約書(コピー可)
  • 旧居の取得時の売買契約書(取得費の証明)
  • 登記事項証明書(法務局で取得)
  • 住民票(売却時の住所を証明)

(2) 土地購入の必要書類

土地購入で買換え特例や譲渡損失の繰越控除を適用する場合、以下の書類が必要です。

必要書類:

  • 新居の売買契約書(土地購入)
  • 登記事項証明書(法務局で取得)
  • 住宅ローン残高証明書(譲渡損失の繰越控除を適用する場合)
  • 住民票(新居の住所を証明)

(3) 申告期限と提出先

確定申告の期限は、売却した年の翌年2月16日~3月15日です。

提出先:

  • 税務署: 売却時の住所を管轄する税務署
  • e-Tax: オンライン申告(24時間受付)

期限を過ぎると:

  • 無申告加算税(5~20%)
  • 延滞税(年2.4~8.7%)
  • 特例が適用できなくなる場合あり

5. 取得費に算入できる諸費用

(1) 仲介手数料

土地購入時の仲介手数料は取得費に算入できます。

計算例:

仮に、土地を3,000万円で購入した場合:

仲介手数料: (3,000万円 × 3% + 6万円) × 1.1 = 105.6万円

この105.6万円は、将来土地を売却する際の譲渡所得計算で取得費として差し引けます。

(2) 登記費用・測量費

登記費用(登録免許税、司法書士報酬)と測量費も取得費に算入できます。

費用例:

  • 登録免許税: 30万円
  • 司法書士報酬: 10万円
  • 測量費: 50万円
  • 合計: 90万円

これらの費用は、将来の譲渡所得計算で取得費として差し引けます。

(3) 造成費・整地費用

土地を購入後、造成費整地費用をかけた場合も取得費に算入できます。

対象費用:

  • 土地の造成・整地費用
  • 擁壁工事費用
  • 地盤改良費用

これらの費用は領収書を保管しておくことが重要です。

6. 住み替えのタイミングと税務対策

(1) 売却と購入の時期調整

買換え特例や譲渡損失の繰越控除を適用するには、売却と購入のタイミング調整が重要です。

買い替え期間:

  • 売却年の前年1月1日から翌年12月31日までに購入

調整のポイント:

  • 売却と購入を同じ年に完了させることで、確定申告が1回で済む
  • 購入を先行させる場合、つなぎ融資の利用を検討

(2) つなぎ融資の活用

購入先行で新居を取得する場合、つなぎ融資を利用できます。

つなぎ融資とは:

  • 旧居の売却資金が入るまでの間、一時的に借りる融資
  • 旧居の売却後に一括返済

費用:

  • 金利: 年2~4%程度
  • 事務手数料: 10万円程度

(3) 記録保存の重要性

土地購入時の諸費用は、将来の譲渡所得計算で取得費として差し引けます。領収書を保管しておくことが重要です。

保管すべき書類:

  • 売買契約書
  • 仲介手数料の領収書
  • 登記費用の領収書
  • 測量費の領収書
  • 造成費・整地費用の領収書

これらの書類は、将来土地を売却する際の確定申告で必要になります。

まとめ

住み替えで土地を購入する場合、旧居の売却と新居の購入を総合的に理解し、税務処理を適切に行うことが重要です。以下のポイントを押さえることで、税負担を軽減できます。

  • 旧居売却で譲渡所得が発生した場合は確定申告が必要、土地購入のみなら申告不要
  • 譲渡損失が出た場合は繰越控除で給与所得と損益通算でき、翌年以降3年間繰越可能
  • 買換え特例を使えば譲渡益の課税を繰延できるが、住宅ローン控除と併用不可
  • 土地購入時の諸費用(仲介手数料、登記費用、測量費など)は取得費に算入可能
  • 住宅建築予定なら住宅ローン控除を視野に入れて税務対策を計画
  • 申告期限は売却した年の翌年2月16日~3月15日
  • 領収書を保管し、将来の譲渡所得計算に備える

税制優遇措置を最大限活用するため、税理士への相談も検討することをお勧めします。

よくある質問

Q1. 住み替えで土地を購入する場合、確定申告は必要ですか?

A. 旧居を売却して譲渡所得が発生した場合、または譲渡損失を繰越控除する場合は確定申告が必要です。土地購入だけであれば申告不要ですが、住宅建築予定で住宅ローン控除を受ける場合は、住宅建築・入居後の翌年に確定申告が必要です。買換え特例や譲渡損失の繰越控除を適用する場合も、確定申告が必須です。

Q2. 旧居売却と新居購入は同じ年に申告しますか?

A. 旧居売却と新居購入が同じ年に行われた場合、両方を同じ確定申告書で申告します。買換え特例や譲渡損失の繰越控除を適用する場合は、両方の取引が記載された申告書を提出します。売却と購入が異なる年の場合は、それぞれの年に申告が必要です。

Q3. 住み替えで売却損が出た場合、どうなりますか?

A. 一定の要件(所有期間5年超、新居の住宅ローン返済期間10年以上など)を満たせば、譲渡損失を給与所得など他の所得と損益通算でき、控除しきれない損失は翌年以降3年間繰り越せます。この制度を使うには確定申告が必須で、住宅ローン控除と併用可能です。給与所得が高い場合、大幅な税負担軽減が期待できます。

Q4. 土地購入の諸費用はどこまで取得費に含められますか?

A. 仲介手数料、登記費用(登録免許税・司法書士報酬)、測量費、造成費、整地費用、地盤改良費用などが取得費に算入できます。将来土地を売却する際の譲渡所得計算で差し引けるため、領収書を保管しておくことが重要です。購入時の売買契約書も取得費の証明に必要なので、大切に保管してください。

よくある質問

Q1住み替えで土地を購入する場合、確定申告は必要ですか?

A1旧居を売却して譲渡所得が発生した場合、または譲渡損失を繰越控除する場合は確定申告が必要です。土地購入だけであれば申告不要ですが、住宅建築予定で住宅ローン控除を受ける場合は、住宅建築・入居後の翌年に確定申告が必要です。買換え特例や譲渡損失の繰越控除を適用する場合も、確定申告が必須です。

Q2旧居売却と新居購入は同じ年に申告しますか?

A2旧居売却と新居購入が同じ年に行われた場合、両方を同じ確定申告書で申告します。買換え特例や譲渡損失の繰越控除を適用する場合は、両方の取引が記載された申告書を提出します。売却と購入が異なる年の場合は、それぞれの年に申告が必要です。

Q3住み替えで売却損が出た場合、どうなりますか?

A3一定の要件(所有期間5年超、新居の住宅ローン返済期間10年以上など)を満たせば、譲渡損失を給与所得など他の所得と損益通算でき、控除しきれない損失は翌年以降3年間繰り越せます。この制度を使うには確定申告が必須で、住宅ローン控除と併用可能です。給与所得が高い場合、大幅な税負担軽減が期待できます。

Q4土地購入の諸費用はどこまで取得費に含められますか?

A4仲介手数料、登記費用(登録免許税・司法書士報酬)、測量費、造成費、整地費用、地盤改良費用などが取得費に算入できます。将来土地を売却する際の譲渡所得計算で差し引けるため、領収書を保管しておくことが重要です。購入時の売買契約書も取得費の証明に必要なので、大切に保管してください。

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