住み替え時の戸建て購入における必要書類の全体像
既存住宅を売却して戸建てに住み替える場合、売却と購入の両方の書類準備が必要となり、通常の購入より複雑になります。売却と購入のタイミング調整、つなぎ融資の利用、住宅ローン控除の継続など、住み替え特有の課題に対応した書類準備が求められます。
本記事では、住み替えに伴う戸建て購入の必要書類を、売却・購入両方の視点から時系列で解説します。
この記事でわかること
- 住み替え時の戸建て購入で必要な書類の全体像と準備タイミング
- 売却と購入両方の書類管理方法
- 住み替えローン・つなぎ融資の必要書類
- 譲渡損失の繰越控除・買い替え特例の申告書類
- 戸建て特有の登記書類(土地・建物それぞれ)
住み替え時の必要書類のカテゴリー
住み替えでは、旧居の売却と新居の購入で二重の書類準備が必要です。
カテゴリー | 旧居(売却) | 新居(購入) |
---|---|---|
売買契約時 | 本人確認書類・権利証・印鑑証明書 | 本人確認書類・印鑑証明書・手付金 |
ローン関連 | 残債証明書・抵当権抹消書類 | 源泉徴収票・査定書・媒介契約書 |
登記手続き | 抵当権抹消登記 | 所有権移転登記・抵当権設定登記 |
税務手続き | 譲渡所得の申告書類 | 住宅ローン控除の申告書類 |
住み替えの場合、旧居の売買契約書や残債証明書が新居の住宅ローン審査で必要になるため、売却と購入の書類を同時並行で管理する必要があります。
売却と購入の同時進行における書類管理
住み替えでは、以下の点に注意して書類を管理します。
時系列での書類準備
- 旧居の査定・媒介契約(売却開始)
- 新居の物件探し・住宅ローン事前審査
- 旧居の売買契約締結
- 新居の売買契約締結(旧居の売却が前提)
- 住み替えローン・つなぎ融資の本審査
- 旧居の引き渡し・抵当権抹消
- 新居の引き渡し・所有権移転登記
書類の整理方法
- 旧居と新居でファイルを分ける
- 契約書・重要事項説明書は複数部コピー
- 登記関連書類は司法書士に確認しながら準備
戸建て特有の書類(土地・建物の登記)
戸建ては土地と建物それぞれの登記が必要なため、住み替えの場合は旧居・新居ともに複雑になります。
旧居(売却)の登記
- 土地・建物の抵当権抹消登記(2件)
- 土地・建物の所有権移転登記(2件)
新居(購入)の登記
- 土地・建物の所有権移転登記(2件)
- 土地・建物の抵当権設定登記(2件)
合計6〜8件の登記手続きとなり、司法書士報酬も増加します。同時決済(旧居の引き渡しと新居の引き渡しを同日に行う)なら手続きを一括で進められます。
売買契約時の必要書類(売却・購入両方)
本人確認書類(運転免許証・パスポート等)
旧居の売却・新居の購入ともに本人確認書類が必要です。
必要な書類
- 運転免許証(両面コピー)
- パスポート
- マイナンバーカード(通知カードは不可)
住み替えで住所が変わる場合、運転免許証の住所変更を段階的に行う必要があります。
印鑑証明書・実印
旧居の売却・新居の購入ともに印鑑証明書・実印が必要です。
印鑑証明書の取得方法
- 市区町村の窓口(印鑑登録カード必要)
- コンビニ交付(マイナンバーカード必要)
発行部数の目安
- 旧居売却:2〜3部(売買契約・登記・金融機関用)
- 新居購入:2〜3部(売買契約・登記・金融機関用)
- 合計:4〜6部
印鑑証明書の有効期限は発行から3ヶ月以内のため、必要なタイミングで取得します。
手付金・契約金の準備
新居購入の手付金(売買代金の5〜10%)は、旧居の売却前に準備する必要があります。
資金調達方法
- 自己資金
- つなぎ融資(旧居の売却まで短期借入)
- 親族からの借入・贈与
住み替えの場合、旧居の売却代金を新居の購入資金に充てる計画であっても、手付金は先に準備が必要です。
旧居の売買契約書(住み替えローン申込時に必要)
新居の住宅ローン審査では、旧居の売買契約書が必要になります。
提出が必要な理由
- 旧居の売却計画を確認
- 既存ローンの完済計画を確認
- 自己資金(頭金)の裏付けを確認
金融機関は、旧居が確実に売却できる価格で契約されているかを審査します。旧居の査定書や媒介契約書も併せて提出を求められる場合があります。
住宅ローン・住み替えローン申し込み時の必要書類
所得証明書類(源泉徴収票・確定申告書)
通常の住宅ローンと同様、所得証明書類が必要です。
給与所得者
- 源泉徴収票(直近1〜3年分)
- 住民税課税証明書
自営業者・フリーランス
- 確定申告書の控え(直近3年分)
- 所得税納税証明書
既存ローン残債証明書
住み替えローンの審査では、旧居の既存ローン残債を確認するため、残債証明書が必要です。
残債証明書とは
- 既存の住宅ローン残高を金融機関が証明する書類
- 現在の借入先金融機関に依頼
- 発行に1〜2週間程度かかる場合があるため早めに依頼
残債証明書に記載される情報
- ローン残高
- 月々の返済額
- 完済予定日
- 抵当権設定状況
住み替えローンは、旧居の売却代金で完済できない残債を新規ローンに組み込むため、残債証明書が審査で重要な書類となります。
売却予定物件の査定書・媒介契約書
住み替えローン・つなぎ融資の審査では、旧居の売却計画の実現性を確認するため、以下の書類が必要です。
査定書
- 不動産会社による査定価格を記載
- 複数社の査定書があると信頼性が高まる
媒介契約書
- 不動産会社との売却委託契約書
- 専属専任媒介・専任媒介・一般媒介のいずれか
売買契約書(契約後)
- 旧居の売買契約が成立している場合、売買契約書のコピー
金融機関は、旧居が適正価格で売却できるか、売却期限までに確実に売れるかを審査します。
物件関連書類(重要事項説明書・建築確認済証)
新居(戸建て)の購入では、以下の物件関連書類が必要です。
重要事項説明書
- 不動産会社が作成(売主側)
- 契約前に必ず内容を確認
建築確認済証・検査済証
- 戸建ての場合、建築基準法に基づく建築確認済証・検査済証が必要
- 中古戸建てで紛失している場合、台帳記載事項証明書を自治体から取得
土地の測量図・境界確認書
- 土地の境界が明確であることを証明
- 隣地とのトラブル防止のため重要
登記手続き時の必要書類
登記申請書(旧居・新居それぞれ土地・建物)
住み替えでは、旧居と新居それぞれで登記手続きが必要です。
旧居(売却)の登記
- 抵当権抹消登記申請書(土地・建物それぞれ)
- 所有権移転登記申請書(土地・建物それぞれ)
新居(購入)の登記
- 所有権移転登記申請書(土地・建物それぞれ)
- 抵当権設定登記申請書(土地・建物それぞれ)
戸建ては土地と建物それぞれで登記が必要なため、住み替えの場合は最大8件の登記手続きとなります。
登記識別情報(売主側・自分も旧居売却時は売主)
旧居の売却時
- 自分が売主となるため、旧居購入時に取得した登記識別情報(権利証)を提供
- 紛失している場合、司法書士による本人確認または公証人による認証が必要
新居の購入時
- 売主が提供する登記識別情報を確認
印鑑証明書・住民票
印鑑証明書
- 旧居売却:2〜3部
- 新居購入:2〜3部
- 発行から3ヶ月以内
住民票
- 旧居売却時:現在の住民票
- 新居購入時:新居の住民票(引き渡し後に転入届を提出)
- 発行から3ヶ月以内
住み替えでは、住民票移動のタイミングが重要です。旧居の引き渡し後、新居の引き渡し前に転入届を提出すると、新居の登記に新しい住民票を使用できます。
固定資産評価証明書
登録免許税の計算に使用します。
旧居(売却)
- 土地・建物それぞれの固定資産評価証明書
- 買主側の登記で使用(売主も内容確認を推奨)
新居(購入)
- 土地・建物それぞれの固定資産評価証明書
- 物件所在地の市区町村の資産税課で取得
- 司法書士に依頼すれば代理取得も可能
住み替え特有の追加書類と税務手続き
譲渡損失の繰越控除の確定申告書類
旧居を売却して損失が出た場合、譲渡損失の繰越控除を受けられます(国税庁「買い替え特例と譲渡損失の繰越控除」)。
適用要件
- 旧居の住宅ローン残高が売却価格を上回る(オーバーローン)
- 新居を購入し、年末までに居住開始
- 新居で住宅ローンを借入(借入期間10年以上)
必要書類
- 確定申告書B(第一表・第二表)
- 確定申告書B(第三表:譲渡所得用)
- 譲渡損失の金額の明細書(確定申告書付表)
- 旧居の売買契約書のコピー
- 旧居の登記事項証明書
- 旧居の住宅ローン残高証明書
- 新居の売買契約書のコピー
- 新居の登記事項証明書
- 新居の住宅ローン年末残高証明書
譲渡損失は給与所得など他の所得と損益通算でき、控除しきれない損失は翌年以降3年間繰り越せます。
買い替え特例適用時の必要書類
旧居を売却して譲渡益が出た場合、買い替え特例(特定居住用財産の買換え特例)を適用すると、譲渡益への課税を将来に繰り延べることができます。
適用要件
- 譲渡対価が1億円以下
- 所有期間10年超、居住期間10年以上
- 新居の床面積50㎡以上、土地面積500㎡以下
必要書類
- 確定申告書B(第一表・第二表)
- 確定申告書B(第三表:譲渡所得用)
- 買換え特例の適用を受ける旨の申告書
- 旧居の売買契約書のコピー
- 旧居の登記事項証明書(所有期間・居住期間を証明)
- 新居の売買契約書のコピー
- 新居の登記事項証明書
買い替え特例は将来の売却時に課税されるため、長期保有を前提とした場合に有利です。
つなぎ融資利用時の追加書類
買い先行(新居購入→旧居売却)の場合、つなぎ融資を利用すると購入資金を確保できます。
つなぎ融資とは
- 旧居の売却までの短期間(数ヶ月〜1年)利用する融資
- 旧居の売却代金で一括返済が前提
- 金利は通常の住宅ローンより高め(年2〜4%程度)
必要書類
- 通常の住宅ローン書類
- 旧居の査定書・媒介契約書
- 旧居の売買契約書(契約済みの場合)
- 売却計画書(不動産会社が作成)
つなぎ融資は金融機関が旧居の売却計画の実現性を厳格に審査するため、査定書や媒介契約書が重要な書類となります。
住民票移動のタイミングと注意点
住み替えでは、住民票移動のタイミングが税務上重要です。
住民票移動の流れ
- 旧居から転出:転出届を提出(転出証明書を取得)
- 新居へ転入:転入届を提出(転出証明書を添付)
タイミングの注意点
- 旧居の引き渡し前に転出届を提出すると、旧居の登記で住所が不一致になる
- 新居の引き渡し後に転入届を提出すると、住宅ローン控除の居住要件を満たす
- 仮住まいを挟む場合、仮住まいへの転入・転出が必要
住宅ローン控除は「居住開始」が要件のため、新居の引き渡し後すぐに転入届を提出することを推奨します。
まとめ
住み替えで戸建てを購入する場合、以下の点を押さえれば書類準備をスムーズに進められます。
書類準備の全体像
- 旧居の売却・新居の購入で二重の書類準備が必要
- 戸建ては土地・建物それぞれの登記で最大8件の手続き
- 印鑑証明書・住民票は合計4〜6部取得
住み替えローン・つなぎ融資の書類
- 旧居の売買契約書・残債証明書・査定書・媒介契約書が必須
- 金融機関は旧居の売却計画の実現性を厳格に審査
税務手続き
- 譲渡損失の繰越控除:旧居・新居の売買契約書・登記事項証明書・ローン残高証明書
- 買い替え特例:所有期間10年超、譲渡対価1億円以下が要件
住民票移動
- 旧居の引き渡し後、新居の引き渡し前に転入届を提出
- 住宅ローン控除の居住要件を満たすため早めに移動
住み替えは書類が多く複雑ですが、不動産会社・司法書士・金融機関と密に連携し、計画的に進めれば問題なく対応できます。
よくある質問
住み替えで戸建てを購入する場合、旧居の売買契約書は必ず必要ですか?
住み替えローン申込時は必須です。金融機関は旧居の売却計画・既存ローン完済計画を確認します。買い替え特例・譲渡損失の繰越控除を受ける場合も税務署に提出が必要です。旧居の登記事項証明書も併せて準備してください。旧居の売却が確実に進んでいることを証明する重要な書類です。
売却と購入のタイミングがずれる場合、つなぎ融資の必要書類は何ですか?
通常の住宅ローン書類に加え、売却予定物件の査定書・媒介契約書が必要です。つなぎ融資は短期間(数ヶ月〜1年)で完済が前提のため、売却計画の実現性を金融機関が厳格に審査します。つなぎ期間中の金利は通常より高めです。売却計画書(不動産会社が作成)も提出を求められる場合があります。
住み替えで住宅ローン控除は継続できますか?確定申告に必要な書類は?
新居購入で新たに住宅ローン控除を受けられます。旧居の控除は終了します。確定申告には新居の登記事項証明書・売買契約書・住宅ローン年末残高証明書が必要です。譲渡損失の繰越控除を併用する場合は旧居の売買契約書・譲渡所得計算書も提出してください。2つの税制は併用可能です。
戸建ての登記は土地と建物で別々ですか?住み替えの場合、手続きはさらに複雑になりますか?
戸建ては土地・建物それぞれで登記が必要です。住み替えの場合、旧居の土地・建物の抵当権抹消登記、新居の土地・建物の所有権移転登記・抵当権設定登記で計6〜8件の登記手続きとなります。司法書士報酬も増加します。同時決済なら手続きを一括で進められるため、手間を軽減できます。