投資用戸建て購入における必要書類の全体像
投資目的で戸建てを購入する際には、居住用とは異なる審査基準と書類準備が求められます。本記事では、投資用戸建て購入時の必要書類を網羅的に解説します。
投資用戸建て購入で押さえるべきポイント
- 投資用ローンは住宅ローンより審査が厳格で、金利も1〜3%程度高い
- 事業計画書と収支シミュレーションの提出が必須(物件の収益性を証明)
- 頭金は物件価格の2〜3割程度必要になることが多い
- 購入後は個人事業の開業届と青色申告承認申請書の提出が必要
- 賃貸中物件の場合、既存入居者の賃貸借契約を引き継ぐため契約内容の確認が重要
居住用との違いと必要書類のカテゴリー
投資用戸建て購入時の必要書類は、以下の4つのカテゴリーに分類されます。
カテゴリー | 主な書類 |
---|---|
売買契約関連 | 本人確認書類、印鑑証明書、手付金の準備、賃貸借契約書(賃貸中物件) |
ローン審査関連 | 所得証明書、事業計画書、収支シミュレーション、物件評価資料 |
登記手続き関連 | 登記申請書、印鑑証明書、住民票、固定資産評価証明書 |
税務関連 | 開業届、青色申告承認申請書、確定申告書類 |
居住用との最大の違いは、物件の収益性を証明する「事業計画書」と「収支シミュレーション」が必須となる点です。
投資用ローンの審査基準と書類準備
金融庁の不動産投資ローンに関する情報によれば、投資用ローンは居住用住宅ローンとは異なる審査基準が適用されます。
居住用ローンでは借入者の返済能力(年収・勤続年数)が重視されますが、投資用ローンでは物件の収益性が最も重要な審査ポイントになります。そのため、以下の書類が追加で必要です。
- 事業計画書(物件概要・収支計画・資金計画)
- 収支シミュレーション(想定賃料・経費・収支予測)
- 物件の収益性評価資料(周辺賃料相場・賃貸需要データ)
これらの書類により、金融機関は「賃料収入で返済が可能か」を判断します。
戸建て特有の書類(土地・建物の登記)
戸建ての場合、マンションと異なり土地と建物が別々に登記されます。法務省の登記情報によれば、所有権移転登記は土地・建物それぞれに対して行う必要があります。
そのため、登記申請書も土地用と建物用の2通を準備し、登記免許税も土地・建物それぞれに課税されます。
売買契約時の必要書類
投資用戸建ての売買契約時には、以下の書類が必要です。
本人確認書類(運転免許証・パスポート等)
宅地建物取引業法により、本人確認が義務付けられています。以下のいずれかの書類を用意します。
- 運転免許証
- マイナンバーカード
- パスポート
- 健康保険証(顔写真付きでない場合は補完書類が必要)
印鑑証明書・実印
売買契約書への押印には実印が必要で、印鑑証明書(発行後3か月以内)を添付します。印鑑証明書は住所地の市区町村役場で取得でき、手数料は1通300円程度です。
手付金・契約金の準備
売買契約時には通常、物件価格の5〜10%を手付金として支払います。投資用物件の場合は現金で準備する必要があり、残代金決済時に頭金として充当されます。
投資用ローンは頭金2〜3割が一般的なため、自己資金の準備が重要です。
賃貸中物件の場合は賃貸借契約書
既に入居者がいる賃貸中物件を購入する場合、既存の賃貸借契約を引き継ぐことになります。そのため、以下の確認が必要です。
- 賃貸借契約書の内容確認(賃料・敷金・契約期間・更新条件)
- 入居者への家主変更通知
- 敷金引継ぎ証明書
契約内容が不利な場合でも、勝手に変更することはできないため、購入前に十分確認しましょう。
不動産投資ローン申し込み時の必要書類
投資用ローンの審査では、以下の書類が必要です。
所得証明書類(源泉徴収票・確定申告書)
直近2〜3年分の所得を証明する書類が必要です。
- 会社員:源泉徴収票(直近2〜3年分)
- 個人事業主・法人代表:確定申告書(直近2〜3期分)
- 既存投資家:他物件の不動産所得を含む確定申告書
事業計画書・収支シミュレーション
投資用ローンで最も重要な書類が事業計画書です。金融機関は事業性を重視するため、以下の項目を明確に記載します。
事業計画書の必須項目
- 物件概要: 所在地、築年数、構造、専有面積
- 収支シミュレーション: 想定賃料、管理費、修繕費、固定資産税、火災保険料
- 資金計画: 物件価格、頭金、借入額、返済計画
- 空室リスク対策: 空室率の想定、賃料下落リスク、修繕計画
収支シミュレーションは最低10年分を作成し、空室期間を考慮した現実的な収支計画を示すことが重要です。
物件の収益性評価書類(想定賃料・賃貸借契約書)
国土交通省の収益物件評価情報によれば、収益還元法による評価が一般的です。
想定賃料の根拠を示すため、以下の資料を準備します。
- 周辺の賃貸相場データ(同じエリア・同程度の築年数の戸建て賃料)
- 類似物件の賃貸事例
- 不動産会社の賃料査定書
- 既に賃貸中の場合は現在の賃貸借契約書
既存投資家は他物件の収支実績
既に他の投資物件を所有している場合、その収支実績を提出します。
- 他物件の確定申告書(不動産所得の明細)
- 賃貸借契約書
- 家賃入金記録(通帳コピー等)
実績のある投資家は審査で有利になる場合があります。
物件関連書類(重要事項説明書・建築確認済証)
物件の詳細情報を証明する書類も必要です。
- 重要事項説明書
- 売買契約書
- 建築確認済証・検査済証(新築時の書類)
- 土地測量図・境界確認書
- 修繕履歴(中古物件の場合)
登記手続き時の必要書類
売買契約後、所有権移転登記を行います。
登記申請書(土地・建物それぞれ)
戸建ての場合、土地と建物で別々の登記申請書を作成します。法務省の登記申請情報に従い、以下を記載します。
- 不動産の表示(所在地、地番、地目、地積等)
- 登記の目的(所有権移転)
- 登記原因及びその日付(売買、○年○月○日)
- 登記権利者(買主)・登記義務者(売主)の情報
通常は司法書士が作成しますが、内容を確認しておくことが重要です。
登記識別情報(売主側)
売主が所有権を証明するため、登記識別情報通知(従来の権利証)が必要です。紛失している場合は、司法書士による本人確認情報の作成が必要になります。
印鑑証明書・住民票
買主側で必要な書類は以下の通りです。
- 印鑑証明書(発行後3か月以内)
- 住民票(発行後3か月以内)
- 実印
法人で購入する場合は、登記事項証明書と代表者印鑑証明書も必要です。
固定資産評価証明書
登記免許税を計算するため、対象不動産の固定資産評価証明書が必要です。取得先は物件所在地の市区町村役場で、手数料は1通200〜400円程度です。
投資用物件特有の追加書類と税務手続き
投資用戸建て購入後、税務手続きが必要です。
個人事業の開業届・青色申告承認申請書
国税庁の開業届情報によれば、以下の期限内に提出が必要です。
- 個人事業の開業届: 事業開始から1か月以内
- 青色申告承認申請書: 開業年は事業開始から2か月以内、翌年以降は3月15日まで
青色申告を選択すると、最大65万円の特別控除が受けられるため、早期提出を推奨します。
不動産所得の確定申告に必要な書類
国税庁の不動産所得情報によれば、賃貸収入が発生した場合、確定申告が必要です。
不動産所得 = 総収入金額 - 必要経費
必要経費として計上できるもの:
- 減価償却費(建物・設備)
- 修繕費
- 管理費・仲介手数料
- 固定資産税・都市計画税
- ローン金利(元本は不可)
- 火災保険料
- 広告宣伝費
領収書や契約書は7年間保管する必要があります。
収益還元法による物件評価資料
投資判断の指標として、収益還元法による評価を行います。
収益価格 = 年間賃料収入 ÷ 還元利回り
例:年間賃料120万円、還元利回り5%の場合 収益価格 = 120万円 ÷ 0.05 = 2,400万円
この評価により、購入価格が妥当か判断できます。
賃貸中物件の場合の既存契約引継ぎ書類
賃貸中物件を購入する場合、以下の手続きが必要です。
- 入居者への家主変更通知: 売主から入居者へ、家主が変更される旨を通知
- 賃貸借契約の引継ぎ: 買主が既存契約を承継する旨を書面で確認
- 敷金の引継ぎ: 敷金引継ぎ証明書を作成し、売主から買主へ敷金を引き継ぐ
契約条件が不利な場合でも、勝手に変更はできないため、購入前の確認が重要です。
まとめ
投資用戸建て購入には、居住用とは異なる審査基準と書類準備が求められます。特に事業計画書と収支シミュレーションは、物件の収益性を証明する重要書類であり、想定賃料の根拠を明確に示す必要があります。
投資用ローンは審査が厳格で金利も高いため、頭金2〜3割の自己資金準備が重要です。また、購入後は個人事業の開業届と青色申告承認申請書を期限内に提出し、不動産所得の確定申告を毎年行う必要があります。
賃貸中物件を購入する場合は、既存の賃貸借契約を引き継ぐため、契約内容を十分確認してから購入を決定しましょう。