住み替え新築マンション購入の控除・特例|完全ガイド

公開日: 2025/10/20

住み替えで新築マンション購入時の控除・特例

住み替えで新築マンションを購入する際、住宅ローン控除や登録免許税の軽減措置など、さまざまな控除・特例を活用できます。しかし、旧居売却時の3,000万円特別控除との併用制限など、注意すべきポイントも多くあります。本記事では、住み替えに伴う新築マンション購入時の控除・特例を実務的に解説します。

この記事でわかること

  • 住み替えでも回数制限なく利用できる住宅ローン控除(0.7%・最大13年間)
  • 旧居売却の3,000万円特別控除と住宅ローン控除の併用不可ルール
  • 譲渡損失の特例なら住宅ローン控除と併用可能
  • 新築マンション特有の注意点(床面積・省エネ基準)
  • 売却益・借入額・所得による特例選択の判断基準

1. 住み替えで新築マンション購入時の控除・特例の全体像

(1) 住み替えに伴う税制メリット

住み替えでは、旧居売却と新築マンション購入で複数の税制メリットを受けられます。ただし、一部の特例は併用不可のため、選択が必要です。

(2) 利用可能な主な控除・特例一覧

控除・特例 内容 併用可否
住宅ローン控除 年末残高の0.7%を13年間控除 基本
3,000万円特別控除(旧居売却) 譲渡益から3,000万円控除 住宅ローン控除と併用不可
譲渡損失の損益通算・繰越控除 売却損を給与所得と相殺 住宅ローン控除と併用可
登録免許税の軽減措置 所有権移転登記0.3%(通常2%) 併用可
不動産取得税の軽減措置 建物評価額から1,200万円控除 併用可

(3) 旧居売却と新築マンション購入のタイミング

住み替えでは、売却先行と購入先行の2つのパターンがあります。特例の適用を考慮し、タイミングを調整することが重要です。

2. 住宅ローン控除は住み替えでも回数制限なし

(1) 2回目以降も適用可能

国税庁によれば、住宅ローン控除は回数制限がありません。住み替えで2回目・3回目の新築マンション購入でも適用されます。ただし、旧居売却で3,000万円特別控除や買換え特例を使っていないことが条件です。

(2) 控除率0.7%・最大13年間

2024年以降の新築マンション購入では、年末ローン残高の0.7%を所得税・住民税から最大13年間控除できます。

控除額の計算例:

年末ローン残高:3,500万円
控除額:3,500万円 × 0.7% = 24.5万円/年
13年間総額:24.5万円 × 13年 = 318.5万円(残高一定の場合)

(3) 借入限度額|認定住宅5,000万円・ZEH4,500万円・省エネ4,000万円

国土交通省によれば、新築マンションの借入限度額は以下の通りです。

住宅の種類 借入限度額 最大控除額(13年間)
認定住宅 5,000万円 455万円
ZEH水準省エネ住宅 4,500万円 409.5万円
省エネ基準適合住宅 4,000万円 364万円

2024年1月以降建築確認の新築マンションは、省エネ基準適合が必須です。

3. 旧居売却の3,000万円特別控除と住宅ローン控除の併用不可ルール

(1) 併用不可の期間|居住前2年~居住後3年

国税庁によれば、新居に居住した年とその前2年・後3年の計6年間に、旧居売却で3,000万円特別控除や買換え特例を使っていないことが住宅ローン控除の条件です。

併用不可の期間例:

新居居住開始:2024年
併用不可期間:2022年・2023年・2024年・2025年・2026年・2027年
この期間に旧居売却で3,000万円特別控除を使うと、住宅ローン控除不適用

(2) 2020年税制改正による厳格化

2020年税制改正前は、新居居住年とその前後2年の5年間でしたが、改正後は前2年・後3年の6年間に拡大されました。

(3) 特例選択の判断基準

3,000万円特別控除と住宅ローン控除のどちらを選ぶかは、売却益・借入額・所得により異なります。

選択の目安:

  • 売却益が3,000万円以上:3,000万円特別控除が有利
  • 売却益が小さく借入額が大きい:住宅ローン控除が有利
  • 所得が低い:住宅ローン控除の恩恵が小さい

税理士に試算を依頼し、有利判定を行うことを推奨します。

4. 譲渡損失の特例なら住宅ローン控除と併用可能

(1) 譲渡損失の損益通算・繰越控除とは

国税庁によれば、住み替えで旧居を売却して損失が出た場合、その損失を給与所得等と損益通算し、翌年以降3年間繰越控除できます。

(2) 住宅ローン控除との併用が認められる理由

譲渡損失の特例は、売却で損失が出た場合の救済措置です。住宅ローン控除と併用可能であり、両方の恩恵を受けられます。

(3) 住み替えで損失が出る場合の税制メリット

譲渡損失の計算例:

旧居売却価格:3,000万円
旧居取得費:4,000万円
譲渡損失:1,000万円

給与所得:600万円
損益通算後の所得:0円(残損失400万円を翌年以降繰越)

所得税・住民税が軽減され、さらに新居で住宅ローン控除も受けられます。

5. 新築マンション特有の注意点|床面積・省エネ基準

(1) マンションの床面積は登記面積(内法面積)で判定

住宅ローン控除の適用要件は、床面積50㎡以上です。マンションの場合、登記面積(内法面積)で判定されます。

(2) 壁芯面積より2-3㎡小さい点に注意

マンションの広告では壁芯面積が表示されますが、登記面積(内法面積)は壁芯面積より2〜3㎡小さくなります。

床面積の違い例:

壁芯面積:52㎡
登記面積:49㎡ → 住宅ローン控除不適用

購入前に登記面積を不動産会社に確認しましょう。

(3) 2024年1月以降は省エネ基準適合が必須

国土交通省によれば、2024年1月以降に建築確認を受けた新築マンションは、省エネ基準適合が住宅ローン控除の必須要件です。省エネ基準を満たさない場合、控除を受けられません。

6. 住み替え時の確定申告と特例選択

(1) 住宅ローン控除の確定申告

住宅ローン控除を受けるには、初年度に確定申告が必要です。2年目以降は年末調整で対応できます。

必要書類:

  • 住宅ローンの年末残高証明書
  • 登記事項証明書
  • 売買契約書・工事請負契約書
  • 源泉徴収票

(2) 旧居売却の特例との有利判定

3,000万円特別控除と住宅ローン控除の有利判定は、以下の要素で決まります。

  • 売却益の大きさ
  • 借入額(控除対象額)
  • 所得水準(控除しきれるか)
  • 金利タイプ(変動・固定)

税理士に試算を依頼し、具体的な金額で比較することを推奨します。

(3) 売却益・借入額・所得による選択

選択の具体例:

  • 売却益2,000万円・借入額4,000万円・年収700万円 → 住宅ローン控除が有利
  • 売却益5,000万円・借入額3,000万円・年収900万円 → 3,000万円特別控除が有利

まとめ

住み替えで新築マンションを購入する際、住宅ローン控除は回数制限なく利用できますが、旧居売却の3,000万円特別控除との併用は不可です(居住前2年〜居住後3年の制限)。一方、譲渡損失の特例は住宅ローン控除と併用可能です。新築マンションは床面積(登記面積50㎡以上)と省エネ基準適合が必須です。売却益・借入額・所得により特例選択が変わるため、税理士に相談し有利判定を行いましょう。計画的な住み替えで税制メリットを最大化できます。

よくある質問

Q1住み替えで2回目の住宅ローン控除は使えますか?

A1使えます。回数制限はありません。ただし新居居住前2年〜後3年に旧居売却で3,000万円特別控除や買換え特例を使っていないことが条件です。譲渡損失の特例は住宅ローン控除と併用可能です。2024年以降の新築マンションは省エネ基準適合が必須で、控除率0.7%・最大13年間、借入限度額は認定住宅5,000万円・ZEH4,500万円・省エネ4,000万円です。

Q23,000万円特別控除と住宅ローン控除、どちらを選ぶべきですか?

A2売却益・借入額・所得で変わります。売却益が小さく借入額が大きい場合は住宅ローン控除、売却益が大きい(3,000万円以上)場合は3,000万円特別控除が有利です。所得が低いと住宅ローン控除の恩恵が小さくなります。税理士に具体的な試算を依頼し、有利判定を行うことを推奨します。

Q3住み替えで旧居を売却して損した場合も特例は使えますか?

A3使えます。譲渡損失の損益通算・繰越控除と住宅ローン控除は併用可能です。売却損を給与所得と相殺し、翌年以降3年間繰越控除できます。所得税・住民税が軽減され、さらに新居で住宅ローン控除も受けられるため、住み替えで損失が出た場合の強力な救済措置となります。

Q4マンションの床面積が50㎡ギリギリの場合、注意点はありますか?

A4登記面積(内法面積)で判定されます。壁芯面積50㎡でも内法面積で50㎡未満なら控除不適用です。広告表示の壁芯面積より2〜3㎡小さくなるため、購入前に不動産会社に登記面積を確認しましょう。50㎡ギリギリの物件は避けるか、登記面積を確実に確認することが重要です。

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