住み替え戸建て購入の控除・特例|併用ルール完全ガイド

公開日: 2025/10/18

住み替えで戸建て購入時の控除・特例を理解する

住み替えで戸建てを購入する際、住宅ローン控除をはじめとする税優遇制度を正しく活用できれば、大幅な節税が可能です。しかし、旧居の売却と新居の購入が同時期に発生する住み替えでは、売却側の特例と購入側の控除の併用に制限があるため、どの特例を選ぶかによって節税効果が大きく変わります。

本記事では、住み替え時に利用できる住宅ローン控除の基本から、3000万円特別控除との併用ルール、有利な特例の選び方まで、実務上の注意点を含めて詳しく解説します。

この記事のポイント

  • 住宅ローン控除は回数制限なく何度でも利用可能だが、併用制限がある
  • 3000万円特別控除と住宅ローン控除は新居居住前2年~後3年の期間で併用不可
  • 売却損が出た場合は譲渡損失の特例と住宅ローン控除の併用が可能
  • 2024-2025年入居の控除額は新築最大13年間・年14万~35万円、中古最大10年間・年14万~21万円
  • 売却益・借入額・所得によって有利な特例が異なるため試算が重要

1. 住み替えで戸建て購入時に使える住宅ローン控除とは

(1) 住宅ローン控除は回数制限なし|2回目以降も利用可能

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、住宅を購入して住宅ローンを組んだ場合に、年末のローン残高の一定割合を所得税・住民税から控除できる制度です。国税庁の公式情報によれば、住宅ローン控除には回数制限がありません。住み替えで2回目以降の住宅購入であっても、要件を満たせば何度でも利用できます。

ただし、新居に居住を開始する前後の一定期間に、旧居の売却で3000万円特別控除や買換え特例を使用していないことが条件となります。この併用制限については後述します。

(2) 住み替え時の控除率・期間・限度額

2022年(令和4年)の税制改正により、住宅ローン控除の控除率は0.7%に変更されました。控除期間は新築住宅が最大13年間、中古住宅が最大10年間です。控除額は年末のローン残高に控除率0.7%を乗じた金額となり、所得税から控除しきれない分は住民税からも控除されます(住民税の控除上限は年9.75万円)。

(3) 新築戸建てと中古戸建ての違い

新築戸建てと中古戸建てでは、控除期間と借入限度額が異なります。新築の場合は環境性能に応じて借入限度額が2,000万円~5,000万円、中古の場合は一律3,000万円です。住み替えで中古戸建てを選ぶ場合は、控除期間が10年間に短縮される点に注意しましょう。

2. 住宅ローン控除の適用要件と控除額(2024-2025年)

(1) 基本要件|床面積50㎡以上・所得3000万円以下

住宅ローン控除を受けるための主な要件は以下の通りです:

要件項目 内容
床面積 50㎡以上(登記簿面積)
所得制限 控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下
借入期間 10年以上のローン
居住期間 取得日から6か月以内に居住開始し、適用年の12月31日まで引き続き居住
併用制限 新居居住前2年~居住後3年に旧居売却で3000万円特別控除等を使用していないこと

HOME4Uの解説によれば、所得が3,000万円を超える年は住宅ローン控除を受けられませんが、翌年以降所得が3,000万円以下に戻れば残りの期間は控除を受けられます。

(2) 新築戸建ての控除額|最大13年間・年14万~35万円

2024年・2025年に新築戸建てに居住開始する場合の控除額は、環境性能によって以下のように異なります:

住宅の種類 借入限度額 控除期間 年間最大控除額 13年間の最大控除額
長期優良住宅・低炭素住宅 5,000万円 13年間 35万円 455万円
ZEH水準省エネ住宅 4,500万円 13年間 31.5万円 409.5万円
省エネ基準適合住宅 4,000万円 13年間 28万円 364万円
その他の住宅 2,000万円 10年間 14万円 140万円

※2024年・2025年入居、控除率0.7%で計算

(3) 中古戸建ての控除額|最大10年間・年14万~21万円

中古戸建ての場合、借入限度額は一律3,000万円、控除期間は10年間です。年間の最大控除額は21万円(3,000万円×0.7%)、10年間で最大210万円の控除を受けられます。

中古住宅では、1982年(昭和57年)1月1日以降に建築された住宅、または新耐震基準に適合していることが証明された住宅が対象となります。

3. 旧居売却の3000万円特別控除と住宅ローン控除の併用不可ルール

(1) 併用不可の期間|居住前2年~居住後3年

住み替えで最も注意すべきなのが、3000万円特別控除と住宅ローン控除の併用制限です。国税庁の公式情報によれば、住宅ローン控除を受けるためには、新居に居住を開始した年の前2年・当年・後3年の計6年間に、旧居の売却で3000万円特別控除や買換え特例を使用していないことが条件となります。

具体例:

  • 2024年に新居に居住開始した場合、2022年~2027年の間に旧居売却で3000万円特別控除を使っていると住宅ローン控除は受けられません

(2) 2020年税制改正による厳格化

渡邉優税理士事務所の解説によれば、2020年の税制改正により併用制限が厳格化されました。改正前は新居居住後3年間だけの制限でしたが、改正後は居住前2年も追加され、計6年間の制限となりました。

この改正により、住み替えのタイミングによっては、売却と購入のどちらの特例を選ぶかで節税効果に大きな差が生じるケースが増えています。

(3) 4年後の併用可能化|売却から4年経過後の購入

逆に言えば、旧居売却で3000万円特別控除を使った場合でも、売却から4年経過後に新居を購入すれば住宅ローン控除を適用できます(居住前2年の制限をクリア)。住み替えのタイミングを調整できる場合は、この点も検討する価値があります。

4. 譲渡損失の特例なら住宅ローン控除と併用可能

(1) 譲渡損失の損益通算・繰越控除とは

住み替えで旧居を売却して損失が出た場合、その損失を給与所得などの他の所得と損益通算し、控除しきれない損失は翌年以降3年間繰り越して控除できる特例があります。これを「居住用財産の買換えに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」といいます。

(2) 住宅ローン控除との併用が認められる理由

国税庁の質疑応答事例によれば、譲渡損失の損益通算・繰越控除は住宅ローン控除と併用が可能です。3000万円特別控除とは異なり、併用制限がありません。

これは、譲渡損失の特例が「税負担を増やさない(損失の救済)」制度であるのに対し、3000万円特別控除は「税負担を減らす(利益の非課税化)」制度であるという性質の違いによるものです。

(3) 添付書類の兼用が可能

国税庁の質疑応答事例では、譲渡損失の特例と住宅ローン控除を併用する場合、登記事項証明書などの添付書類を兼用できることも明示されています。確定申告の手続き負担も軽減されます。

5. 住み替え時の特例選択|どちらが有利か判定する方法

(1) 売却益が出る場合の有利判定

売却益が出る場合、3000万円特別控除と住宅ローン控除のどちらを選ぶかは、以下の要素で判定します:

判定要素 3000万円特別控除が有利 住宅ローン控除が有利
売却益 大きい(1000万円以上) 小さい(500万円以下)
借入額 小さい(2000万円以下) 大きい(4000万円以上)
所得 高い(課税所得800万円以上) 中程度(課税所得400万円程度)

野村證券の解説では、具体的な試算例として、売却益1500万円・借入額3000万円・課税所得600万円のケースで、3000万円特別控除の方が約100万円有利になる例を示しています。

(2) 売却損が出る場合は両方適用可能

売却損が出る場合は、前述の通り譲渡損失の特例と住宅ローン控除の併用が可能です。この場合は迷わず両方の特例を使うことで最大限の節税効果を得られます。

(3) 所得・借入額別の試算例

一般的な目安として:

  • 売却益が500万円以下で借入額が4000万円以上なら住宅ローン控除
  • 売却益が1500万円以上で借入額が3000万円以下なら3000万円特別控除
  • 中間的なケースは税理士に試算を依頼することをお勧めします

6. 住み替え購入時の確定申告と添付書類

(1) 確定申告の時期とe-Tax利用

住宅ローン控除を受けるためには、初年度に確定申告が必要です。確定申告の期間は、居住開始年の翌年2月16日~3月15日です。e-Taxを利用すれば、自宅から24時間申告でき、還付金の振込も早くなります。

(2) 必要書類|登記事項証明書・売買契約書等

確定申告時に必要な主な書類:

  • 確定申告書
  • 住宅借入金等特別控除額の計算明細書
  • 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書(金融機関発行)
  • 登記事項証明書
  • 売買契約書または建築請負契約書の写し
  • マイナンバーカードまたは本人確認書類

中古住宅の場合は、耐震基準適合証明書または既存住宅性能評価書も必要になることがあります。

(3) 2年目以降は年末調整で可能

確定申告が必要なのは初年度のみです。2年目以降は、勤務先の年末調整で住宅ローン控除を受けられます。税務署から送られてくる「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」と金融機関の残高証明書を勤務先に提出するだけで手続きが完了します。

まとめ

住み替えで戸建てを購入する際の控除・特例について、以下のポイントを押さえておきましょう:

  1. 住宅ローン控除は回数制限なし:2回目以降の住宅購入でも要件を満たせば利用可能
  2. 併用制限に注意:3000万円特別控除と住宅ローン控除は新居居住前2年~後3年の期間で併用不可
  3. 売却損なら両方適用可能:譲渡損失の特例と住宅ローン控除は併用できる
  4. 2024-2025年の控除額:新築最大13年間・年14万~35万円、中古最大10年間・年14万~21万円
  5. 有利な特例選択が重要:売却益・借入額・所得によって試算し、有利な方を選ぶ

住み替えでは売却と購入が同時期に発生するため、特例の選択によって数百万円単位で節税効果が変わることがあります。国税庁の公式情報や税理士への相談を通じて、ご自身の状況に最適な選択をすることをお勧めします。

よくある質問

Q1: 住み替えで2回目の住宅ローン控除は使えますか?

A: はい、使えます。住宅ローン控除には回数制限がありません。ただし、新居に居住を開始する前2年・当年・後3年の計6年間に、旧居の売却で3000万円特別控除や買換え特例を使用していないことが条件です。旧居売却で損失が出た場合の譲渡損失の特例であれば、住宅ローン控除と併用できます。

Q2: 3000万円特別控除と住宅ローン控除、どちらを選ぶべきですか?

A: 売却益の大きさ、借入額、所得によって有利な方が異なります。一般的には、売却益が小さく借入額が大きい場合は住宅ローン控除、売却益が大きい場合は3000万円特別控除が有利です。売却損が出る場合は譲渡損失の特例と住宅ローン控除の両方を適用できます。具体的な金額で試算することをお勧めします。

Q3: 住み替えで旧居を売却して損した場合も特例は使えますか?

A: はい、使えます。譲渡損失の損益通算及び繰越控除という特例があり、売却損を給与所得などと相殺できます。控除しきれない損失は翌年以降3年間繰り越せます。この特例は住宅ローン控除と併用可能なので、両方の税優遇を受けられます。

Q4: 2020年の税制改正で住み替え時の控除はどう変わりましたか?

A: 3000万円特別控除と住宅ローン控除の併用制限が厳格化されました。改正前は新居居住後3年間だけの制限でしたが、改正後は居住前2年も追加され、計6年間の制限になりました。これにより、売却と購入のタイミングによっては、どちらの特例を選ぶかで節税効果に大きな差が生じるようになりました。なお、旧居売却から4年経過後に新居を購入すれば、住宅ローン控除を適用できます。

よくある質問

Q1住み替えで2回目の住宅ローン控除は使えますか?

A1はい、使えます。住宅ローン控除には回数制限がありません。ただし、新居に居住を開始する前2年・当年・後3年の計6年間に、旧居の売却で3000万円特別控除や買換え特例を使用していないことが条件です。旧居売却で損失が出た場合の譲渡損失の特例であれば、住宅ローン控除と併用できます。

Q23000万円特別控除と住宅ローン控除、どちらを選ぶべきですか?

A2売却益の大きさ、借入額、所得によって有利な方が異なります。一般的には、売却益が小さく借入額が大きい場合は住宅ローン控除、売却益が大きい場合は3000万円特別控除が有利です。売却損が出る場合は譲渡損失の特例と住宅ローン控除の両方を適用できます。具体的な金額で試算することをお勧めします。

Q3住み替えで旧居を売却して損した場合も特例は使えますか?

A3はい、使えます。譲渡損失の損益通算及び繰越控除という特例があり、売却損を給与所得などと相殺できます。控除しきれない損失は翌年以降3年間繰り越せます。この特例は住宅ローン控除と併用可能なので、両方の税優遇を受けられます。

Q42020年の税制改正で住み替え時の控除はどう変わりましたか?

A43000万円特別控除と住宅ローン控除の併用制限が厳格化されました。改正前は新居居住後3年間だけの制限でしたが、改正後は居住前2年も追加され、計6年間の制限になりました。これにより、売却と購入のタイミングによっては、どちらの特例を選ぶかで節税効果に大きな差が生じるようになりました。なお、旧居売却から4年経過後に新居を購入すれば、住宅ローン控除を適用できます。

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