住み替えでマンションを購入する際の諸費用とは
住み替えでマンションを購入する場合、新居の購入諸費用に加えて、現在の住まいの売却諸費用も発生します。さらに、売却と購入のタイミングによっては、つなぎ融資や仮住まい費用など、住み替え特有のコストがかかります。
本記事では、住み替えでマンションを購入する際の諸費用と、売却代金を活用した資金計画について詳しく解説します。
この記事のポイント
- マンション購入の諸費用は物件価格の5-8%が目安
- 売却・購入両方の諸費用で合計数百万円の資金準備が必要
- つなぎ融資・買い替えローンで資金タイミングを調整可能
- 売り先行と買い先行で資金計画が大きく異なる
- 3000万円特別控除で旧居売却の税負担を軽減できる
1. 住み替え購入マンションの諸費用の内訳
マンション購入時には、物件価格とは別に様々な諸費用が発生します。
(1) 諸費用の総額目安(物件価格の5〜8%)
マンション購入時の諸費用は、物件価格の5-8%が一般的な目安です。
主な諸費用の内訳
費目 | 金額の目安 |
---|---|
仲介手数料 | (物件価格×3%+6万円)×1.1 |
登録免許税(所有権移転) | 固定資産税評価額×0.3% |
登録免許税(抵当権設定) | 借入額×0.1% |
司法書士報酬 | 10-20万円 |
不動産取得税 | (固定資産税評価額-控除額)×3% |
火災保険料 | 10-30万円(10年分) |
ローン事務手数料 | 3-5万円または借入額×2.2% |
印紙税 | 1-3万円 |
例えば、4000万円のマンションを購入する場合、諸費用は200-320万円程度となります。
(2) 住み替えローン関連費用
住み替えローンは、旧住宅のローン残債と新居の購入資金を合算して借りられるローンです。
住み替えローンの費用
- 事務手数料:3-5万円または借入額×2.2%
- 保証料:借入額100万円あたり2-3万円
- 印紙税:1-3万円
例えば、旧住宅のローン残債が1000万円、新居が4000万円の場合:
- 住み替えローン:5000万円
- 事務手数料(定率型2.2%):110万円
- 保証料(一括前払い):100-150万円
- 合計:210-260万円
住み替えローンは通常の住宅ローンより審査が厳しくなる傾向があります。返済負担率(年収に対する年間返済額の割合)が重視され、一般的に35%以内が目安とされています。
(3) 不動産取得税と保険料
不動産取得税は、不動産取得後3-6ヶ月後に納税通知書が届きます。
不動産取得税の軽減措置(総務省)
- 原則:固定資産税評価額×4%
- 軽減後:(固定資産税評価額-1200万円)×3%
中古マンションの場合、昭和57年1月1日以降の建築で床面積50㎡以上240㎡以下であれば、最大1200万円の控除が受けられます。
火災保険料
- 10年一括払い:15-30万円(マンションは戸建てより安い)
- 地震保険(5年一括):10-20万円
マンションは耐火構造のため、火災保険料が戸建てより安くなる傾向があります。
2. 売却と購入の資金タイミング調整
住み替えでは、旧住宅の売却と新居の購入のタイミング調整が重要です。
(1) ダブルローンのリスク
ダブルローンは、旧住宅のローンと新居のローンを一時的に併用する状態です。
ダブルローンのリスク
- 月々の返済額が2倍になる
- 審査が厳しい(返済比率の問題)
- 精神的・経済的負担が大きい
例:旧住宅の月返済額10万円、新居の月返済額15万円の場合
- ダブルローン期間:月25万円の返済
- 3ヶ月継続すると75万円の負担
(2) 旧居の売却タイミング
旧居の売却タイミングは、新居購入の資金計画に直接影響します。
早期売却のメリット
- 売却代金を新居の頭金に充てられる
- 新規ローンの借入額を抑えられる
- 二重ローンを回避できる
早期売却のデメリット
- 仮住まいが必要になる可能性
- 希望する新居が見つかるまで時間がかかる場合がある
(3) 新居の購入タイミング
新居の購入タイミングも慎重に検討する必要があります。
買い先行の場合
- つなぎ融資またはダブルローンが必要
- 希望物件を逃さないメリット
- 資金的な余裕が必要
売り先行の場合
- 売却代金が確定してから購入
- 資金計画が立てやすい
- 希望物件を逃す可能性
3. 売り先行と買い先行の資金計画
住み替えの成功には、売却と購入のタイミング戦略が鍵です。
(1) 売り先行のメリット・デメリット
メリット
- 売却代金が確定し、資金計画が立てやすい
- 二重ローンのリスクがない
- 売却を急がないため、適正価格で売れる可能性が高い
- つなぎ融資が不要
デメリット
- 希望する物件を逃す可能性がある
- 仮住まいが必要な場合がある(費用70-120万円)
- 新居が決まるまでの期間が長引く可能性
(2) 買い先行のメリット・デメリット
メリット
- 希望する物件を確実に購入できる
- じっくり物件を探せる
- 仮住まい不要で直接引越し可能
デメリット
- つなぎ融資またはダブルローンの費用が発生(30-50万円)
- 売却を急ぐ必要があり、値下げリスク
- 資金的な余裕が必要
(3) 資金計画の立て方
綿密な資金計画を立てるためのステップを紹介します。
ステップ1:売却予想価格と購入予算の設定
- 旧住宅の査定額:3000万円
- ローン残債:1500万円
- 売却諸費用:115万円
- 売却後の手元資金:1385万円
ステップ2:購入資金の計算
- 新居購入価格:4000万円
- 購入諸費用:300万円
- 必要資金総額:4300万円
- 売却資金:1385万円
- 新規ローン:2915万円
ステップ3:月々の返済額の確認
- 借入額:2915万円
- 金利:1.5%
- 期間:35年
- 月返済額:約8.9万円
返済負担率が年収の35%以内に収まるかを確認しましょう。
4. つなぎ融資・買い替えローンの比較
資金ギャップを埋めるための融資方法を比較します。
(1) つなぎ融資の金利相場(3〜4%)と手数料
つなぎ融資は、旧住宅の売却代金を受け取るまでの短期融資です。
つなぎ融資の特徴
- 金利:年1-4%(通常の住宅ローンより高い)
- 事務手数料:10-30万円
- 期間:通常6ヶ月~1年以内
- 返済:旧住宅の売却代金で一括返済
費用例 2000万円を6ヶ月間つなぎ融資(金利3%): 2000万円×3%÷12ヶ月×6ヶ月=30万円(利息) 事務手数料を含めると40-60万円程度
(2) 買い替えローンの仕組み
買い替えローンは、旧住宅のローン残債と新居の購入資金を合算して借りられる商品です。
買い替えローンの特徴
- 旧住宅のローン残債+新居購入価格を一括で借入
- 売却損がある場合に有効
- 審査が厳しい(担保価値を超えた借入のため)
- 金利は通常の住宅ローンと同程度
住宅金融支援機構によれば、買い替えローンは返済負担率が重視され、年収に対する年間返済額の割合が35%以内であることが求められます。
(3) どちらを選ぶべきか
状況に応じた選択基準を紹介します。
つなぎ融資が向いているケース
- 旧住宅の売却が数ヶ月以内に見込める
- ローン残債が少ない、または完済できる
- 短期間の資金ギャップを埋めたい
買い替えローンが向いているケース
- 旧住宅の売却損が発生する(売却価格 < ローン残債)
- 売却時期が不透明
- 長期的な資金計画を立てたい
5. 旧居売却時の税金と費用
旧居売却時にも諸費用が発生します。
(1) 譲渡所得税と3000万円控除
旧居を売却して譲渡益が出た場合、譲渡所得税が課されます。
譲渡所得の計算式 譲渡所得 = 売却価格 - (取得費 + 譲渡費用)
税率
- 短期譲渡所得(所有期間5年以下):39.63%
- 長期譲渡所得(所有期間5年超):20.315%
3000万円特別控除(国税庁)
居住用財産を売却した場合、譲渡益から最高3000万円を控除できます。
適用要件:
- 自分が住んでいたマンションを売却
- 住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却
この特例により、多くの場合、譲渡所得税の負担をゼロにできます。
(2) 仲介手数料と登記費用
旧居売却時の主な諸費用は以下の通りです。
売却側の諸費用
- 仲介手数料:(売却価格×3%+6万円)×1.1
- 抵当権抹消登記費用:1-3万円
- 印紙税:1-3万円
3000万円で売却する場合:
- 仲介手数料:約106万円
- その他諸費用:5-10万円
- 合計:110-115万円
(3) 新居購入諸費用との合計
住み替え全体での諸費用を把握しましょう。
諸費用の合計例
- 旧居売却諸費用:115万円
- 新居購入諸費用:300万円
- つなぎ融資費用(買い先行の場合):50万円
- 合計:465万円
数百万円規模の諸費用が必要となるため、事前の資金準備が重要です。
6. 仮住まい費用とトータルコスト
売り先行の場合、仮住まい費用も考慮する必要があります。
(1) 賃貸物件の初期費用
仮住まいの初期費用は以下が一般的です。
初期費用の内訳
- 敷金:賃料の1-2ヶ月分
- 礼金:賃料の1-2ヶ月分
- 仲介手数料:賃料の1ヶ月分
- 前家賃:賃料の1ヶ月分
- 火災保険料:1-2万円
賃料15万円の場合:
- 初期費用:60-90万円
(2) 引越し費用(2回分)
仮住まいを利用する場合、引越しが2回必要です。
引越し費用
- 1回目(旧居→仮住まい):30-50万円
- 2回目(仮住まい→新居):30-50万円
- 合計:60-100万円
(3) 住宅ローン控除の継続適用
住宅ローン控除は、新居でも要件を満たせば再度適用可能です。
住宅ローン控除の適用要件(国税庁)
- 床面積50㎡以上
- 年間所得3000万円以下
- 借入期間10年以上
新居が要件を満たせば、新規で最長13年間の控除を受けられます。前の住まいでの控除期間との通算はなく、新たに13年間の控除が開始されます。
年末ローン残高3000万円の場合: 3000万円×0.7%=21万円(年間控除額)
まとめ
住み替えでマンションを購入する際の諸費用は、物件価格の5-8%が目安です。売却側の諸費用と合わせると、数百万円規模の資金準備が必要となります。
つなぎ融資や買い替えローンを活用することで、売却と購入のタイミングのずれによる資金ギャップを埋められます。売り先行と買い先行では資金計画が大きく異なるため、自身の資金状況と希望物件の状況に合わせた戦略を選びましょう。
旧居売却時の譲渡所得税は、3000万円特別控除を活用することで、多くの場合ゼロにできます。住宅ローン控除も新居で再度適用可能です。
不動産会社、金融機関、税理士と連携した綿密な資金計画が、住み替え成功の鍵です。
よくある質問
Q1. 住み替えでマンションを購入する場合、諸費用はどのくらいかかりますか?
A. 新居購入の諸費用は物件価格の5-8%(4000万円なら200-320万円)、旧居売却の諸費用は売却価格の4-7%(3000万円なら120-210万円)が目安です。仮住まいが必要な場合は引越し費用2回分と賃貸初期費用も発生し、総額で400-600万円程度の準備が必要です。
Q2. 売り先行と買い先行、どちらが資金計画上有利ですか?
A. 売り先行は売却代金が確定するため資金計画が立てやすく、ダブルローンのリスクもありません。買い先行は希望物件をじっくり探せますが、つなぎ融資や買い替えローンの金利負担が増えます。資金余裕があるなら買い先行、堅実に進めるなら売り先行を推奨します。
Q3. つなぎ融資と買い替えローンの違いは何ですか?
A. つなぎ融資は旧居売却までの短期間だけ購入資金を借りる融資で、金利1-4%と高めです。買い替えローンは旧居のローン残債と新居の購入資金を合算して借りられるローンで、金利は通常の住宅ローンと同程度です。どちらも諸費用が発生するため、期間と金額を比較検討しましょう。
Q4. 旧居を売却した場合の譲渡所得税はいくらですか?
A. 売却益(譲渡所得)に対して課税されます。居住用の場合、3000万円まで非課税の特例があるため、多くの場合税負担はゼロになります。3000万円を超える利益には所有期間5年超で20.315%、5年以下で39.63%の税率が適用されます。売却価格から取得費と諸費用を引いた額が譲渡所得です。