住み替えで土地を購入する際の諸費用・資金計画とは
住み替えで土地を購入し新築を建てる場合、通常の住み替えよりも複雑な資金計画が必要です。現在の住まいの売却、土地の購入、建物の建築という三段階のプロセスがあり、それぞれに諸費用が発生します。
本記事では、住み替えで土地を購入する際の諸費用と、売却代金を活用した資金計画について詳しく解説します。
この記事のポイント
- 土地購入の諸費用は土地価格の8-12%が目安
- 売却諸費用3-5%と建築費用も合わせた総合的な資金計画が必要
- つなぎ融資や仮住まい費用など、住み替え特有の費用が発生
- 土地購入から建物完成まで数ヶ月~1年の期間がある
- 3000万円特別控除などの税制優遇措置を活用可能
1. 住み替え時の土地購入諸費用全体像
土地を購入して新築を建てる住み替えでは、土地・建物・売却の三つの諸費用を把握する必要があります。
(1) 諸費用の目安(購入8-12%+売却3-5%+建築費)
土地購入時の諸費用は土地価格の8-12%程度、建物の諸費用は建築費の5-10%程度が目安です。
諸費用の総額シミュレーション
例:土地1000万円、建物2000万円、旧居売却2500万円の場合
項目 | 金額の目安 |
---|---|
土地購入諸費用(8-12%) | 80-120万円 |
建物建築諸費用(5-10%) | 100-200万円 |
旧居売却諸費用(3-5%) | 75-125万円 |
諸費用合計 | 255-445万円 |
さらに、つなぎ融資や仮住まい費用が追加で必要になる場合、総額は400-600万円程度となります。
(2) 仮住まい・2回分の引越費用
土地購入から建物完成まで数ヶ月~1年かかるため、仮住まいが必要になるケースが多くあります。
仮住まい費用の内訳
- 賃料:月10-20万円
- 敷金・礼金:賃料の2-4ヶ月分
- 引越し代:2回分(旧居→仮住まい、仮住まい→新居)
- 期間:6ヶ月-1年
- 合計:100-200万円
仮住まいを避けるには、旧居の引渡しを建物完成時期に合わせる必要がありますが、実務的には難しい場合が多いです。
2. 住み替え特有の諸費用(売却・購入の二重費用)
住み替えでは、売却と購入の両方で諸費用が発生します。
(1) 仲介手数料(売却・購入で2回)
仲介手数料は、売却時と購入時の両方で不動産会社に支払います。
仲介手数料の計算(宅地建物取引業法) 上限額:(売買価格×3%+6万円)×1.1(消費税)
住み替え時の仲介手数料
- 旧居売却2500万円:(2500万円×3%+6万円)×1.1=88.5万円
- 土地購入1000万円:(1000万円×3%+6万円)×1.1=39.6万円
- 合計:128.1万円
売却と購入を同じ不動産会社に依頼すると、仲介手数料の値引き交渉がしやすい場合があります。
(2) つなぎ融資の利息負担
つなぎ融資は、旧居の売却代金を受け取る前に土地購入資金や建築費用が必要な場合に利用する短期融資です。
つなぎ融資の費用
- 金利:年1-3%程度(住宅ローンより高い)
- 事務手数料:10-30万円
- 期間:売却完了まで(数ヶ月~1年)
例えば、1500万円を6ヶ月間つなぎ融資で借りた場合(金利2%): 1500万円×2%÷12ヶ月×6ヶ月=15万円(利息) 事務手数料を含めると25-45万円程度の費用が発生します。
(3) 登記費用(抵当権抹消・設定)
住み替えでは、旧居の抵当権抹消登記と新居の抵当権設定登記が必要です。
登記費用の内訳
- 抵当権抹消登記(旧居):1-3万円
- 所有権移転登記(土地):固定資産税評価額×1.5%(軽減税率)
- 抵当権設定登記(新居):借入額×0.1%(軽減税率)
- 司法書士報酬:5-15万円
土地1000万円(固定資産税評価額700万円)、借入2500万円の場合:
- 所有権移転登記:700万円×1.5%=10.5万円
- 抵当権設定登記:2500万円×0.1%=2.5万円
- 司法書士報酬:10万円
- 合計:約23万円
3. 土地特有の諸費用(測量・地盤調査・造成)
土地購入では、建物購入にはない特有の諸費用が発生します。
(1) 確定測量費用
土地の境界を確定するための測量が必要です。
測量費用の目安
- 境界確定測量:30-80万円
- 隣接地の数により変動
- 官民境界査定が必要な場合:+20-50万円
国土交通省の資料によれば、測量と境界確定は土地取引の安全性確保に不可欠です。境界が不明確な土地は、将来のトラブルリスクがあるため、購入前の確定測量を推奨します。
(2) 地盤調査・改良費用
建物を建てる前に、地盤の強度を調査する必要があります。
地盤関連費用
- 地盤調査(スウェーデン式サウンディング試験):5-10万円
- 地盤改良工事(軟弱地盤の場合):50-200万円
- 地盤改良の方法により費用が大きく変動
地盤調査の結果、軟弱地盤と判明した場合は地盤改良が必要です。この費用は建築費とは別に考える必要があります。
(3) 造成・インフラ整備費用
土地の状態によっては、造成や インフラ整備が必要です。
造成・インフラ費用の例
- 造成工事(整地・盛土):50-300万円
- 上下水道引込工事:50-150万円
- ガス引込工事:10-30万円
- 擁壁工事(必要な場合):100-500万円
特に、市街化調整区域や郊外の土地では、インフラ整備費用が高額になる場合があります。購入前に必要な工事と費用を確認しましょう。
4. 買い替えローンとつなぎ融資
土地購入と建物建築を伴う住み替えでは、資金調達の方法が重要です。
(1) 土地先行融資の仕組み
住宅ローンは通常、建物完成時に実行されますが、土地を先行して購入する場合は「土地先行融資」を利用します。
土地先行融資の特徴
- 土地購入時に一部実行、建物完成時に残額実行
- 土地購入時から利息が発生
- 審査には建築プランの提出が必要
住宅金融支援機構によれば、土地先行融資を利用する場合、土地購入から建物完成までの期間の利息負担を考慮した資金計画が必要です。
(2) つなぎ融資の利用条件と金利
つなぎ融資は、旧居の売却代金を受け取るまでの短期融資です。
つなぎ融資の条件
- 利用目的:土地購入資金、建築費中間金、建築費最終金
- 金利:年1-3%(住宅ローンより高い)
- 期間:通常6ヶ月~1年以内
- 返済:旧居の売却代金または住宅ローン実行時に一括返済
つなぎ融資の利息計算例 土地購入1000万円+建築中間金500万円=1500万円を6ヶ月借入(金利2%) 1500万円×2%÷12ヶ月×6ヶ月=15万円
(3) ダブルローンのリスク管理
ダブルローンは、旧居のローンと新居のローンを一時的に併用する状態です。
ダブルローンのリスク
- 月々の返済額が2倍になる
- 審査が厳しい(年収の返済比率の問題)
- 精神的・経済的負担が大きい
回避方法
- 売却先行のスケジュール
- つなぎ融資の利用
- 旧居の売却を建物完成時期に合わせる
ダブルローン期間は最小限に抑えることが重要です。
5. 旧居売却時の譲渡所得税
旧居を売却して譲渡益が出た場合、譲渡所得税が課されます。
(1) 譲渡所得税の計算方法
譲渡所得の計算式は以下の通りです。
計算式 譲渡所得 = 売却価格 - (取得費 + 譲渡費用)
税率
- 短期譲渡所得(所有期間5年以下):39.63%
- 長期譲渡所得(所有期間5年超):20.315%
所有期間の判定
売却した年の1月1日時点で判定します。例えば、2020年4月に購入し2025年6月に売却する場合、2025年1月1日時点で所有期間5年未満のため短期譲渡所得となります。
(2) 3000万円特別控除の適用
居住用財産を売却した場合、譲渡益から最高3000万円を控除できる特例があります。
適用要件(国税庁)
- 自分が住んでいた家屋または家屋と土地を売却
- 住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却
- 売却先が配偶者・直系血族・同族会社等でないこと
例えば、譲渡益が2000万円の場合、3000万円特別控除を適用すれば譲渡所得税はゼロになります。
(3) 買い替え特例の選択
買い替え特例は、旧居の売却益への課税を次回売却時まで繰り延べられる制度です。
適用要件
- 所有期間10年超、居住期間10年以上
- 売却価格1億円以下
- 買い替え先の床面積50㎡以上
3000万円控除との比較
項目 | 3000万円控除 | 買い替え特例 |
---|---|---|
適用効果 | 譲渡益3000万円まで非課税 | 課税の繰延 |
所有期間要件 | なし | 10年超 |
併用 | 不可 | 不可 |
将来の税負担 | なし | 次回売却時に課税 |
譲渡益が3000万円以下なら3000万円控除、それを超える場合は買い替え特例が有利になる場合があります。税理士への相談を推奨します。
6. 住み替えの資金計画パターン
住み替えの成功には、売却・土地購入・建築のタイミング調整が鍵です。
(1) 売り先行vs買い先行の費用比較
売り先行
メリット:
- 売却代金が確定し資金計画が立てやすい
- つなぎ融資不要
- 売却を急がず適正価格で売れる可能性
デメリット:
- 仮住まいが必要(費用100-200万円)
- 引越し2回分の費用と手間
買い先行
メリット:
- 希望の土地を確実に購入できる
- 建築スケジュールを優先できる
デメリット:
- つなぎ融資費用(25-45万円)
- ダブルローンのリスク
- 売却を急ぐ必要があり値下げリスク
(2) 売却資金の活用(土地vs建築費)
旧居の売却代金をどのタイミングで充てるかが重要です。
パターン1:売却代金を土地購入に充当
- 土地購入時に自己資金として投入
- 建築費は住宅ローンで全額借入
- メリット:土地の借入額を抑えられる
- デメリット:売却完了まで土地購入できない
パターン2:売却代金を建築費に充当
- 土地購入は住宅ローンまたはつなぎ融資
- 建築費の一部を売却代金で支払い
- メリット:住宅ローンの借入額を抑えられる
- デメリット:土地購入から建築までつなぎ融資が必要
パターン3:売却代金を住宅ローン頭金に
- 土地+建築費を住宅ローンで借入
- 売却代金を頭金として一括繰上返済
- メリット:スケジュールの柔軟性が高い
- デメリット:初期の借入額が大きい
(3) 建築スケジュールと資金調達
土地購入から建物完成までのスケジュールと資金調達を整理します。
標準的なスケジュール
時期 | 項目 | 資金調達 |
---|---|---|
1ヶ月目 | 土地購入 | つなぎ融資または土地先行融資 |
2-4ヶ月目 | 建築プラン確定・建築契約 | - |
5ヶ月目 | 着工金支払い | つなぎ融資 |
7ヶ月目 | 中間金支払い | つなぎ融資 |
10ヶ月目 | 建物完成・引渡し | 住宅ローン実行 |
11ヶ月目 | 旧居売却・決済 | つなぎ融資返済 |
このスケジュールでは、約10ヶ月間のつなぎ融資が必要です。売却のタイミングを早められれば、つなぎ融資の期間と費用を抑えられます。
まとめ
住み替えで土地を購入する場合、土地購入諸費用(8-12%)、建築諸費用(5-10%)、売却諸費用(3-5%)が発生し、総額で400-600万円程度の諸費用が必要です。
つなぎ融資や仮住まい費用など、住み替え特有の費用も考慮する必要があります。土地購入から建物完成まで数ヶ月~1年かかるため、長期的な資金計画が重要です。
旧居売却時の譲渡所得税は、3000万円特別控除や買い替え特例を活用することで軽減できます。売却代金を土地購入と建築費のどちらに充てるか、売り先行か買い先行かなど、自身の資金状況と優先順位に合わせた戦略を選びましょう。
不動産会社、住宅メーカー、金融機関、税理士と連携した綿密な資金計画が、住み替え成功の鍵です。
よくある質問
Q1. 住み替えで土地を購入する場合の諸費用はいくらですか?
A. 土地購入諸費用は土地価格の8-12%、売却諸費用は売却価格の3-5%、建築諸費用は建築費の5-10%が目安です。土地1000万円・建物2000万円・売却2500万円の場合、諸費用合計は255-445万円程度となります。つなぎ融資や仮住まい費用を含めると400-600万円程度の準備が必要です。
Q2. 旧居売却前に土地を購入できますか?
A. 可能ですが、資金調達が複雑になります。ダブルローンやつなぎ融資の利用が必要です。売却資金を建築費に充てる計画の場合、土地購入から売却完了までの期間(数ヶ月~1年)のつなぎ融資費用を考慮する必要があります。タイミング調整が資金計画の鍵となります。
Q3. 土地購入と建築のタイミングで資金計画は変わりますか?
A. 大きく変わります。土地購入から建物完成まで数ヶ月~1年かかるため、その間のつなぎ融資利息負担が発生します。また、不動産取得税の軽減措置は建物完成後に適用されるため、タイミングにより税負担も変動します。建築スケジュールと売却タイミングを連動させた資金計画が重要です。
Q4. 旧居売却の譲渡所得税を減らす方法はありますか?
A. 3000万円特別控除を活用することで、譲渡益から最高3000万円を控除できます。居住用財産の譲渡であれば、多くの場合この特例が適用可能です。譲渡益が3000万円を超える場合は買い替え特例も選択肢になります。土地購入・建築の資金計画と合わせて、税理士への相談を推奨します。