買い替え購入新築マンションの諸費用一覧
買い替えで新築マンションを購入する際、物件価格以外に複数の諸費用が発生します。通常の購入費用に加え、買い替え特有の費用も考慮する必要があり、資金計画が複雑になる点に注意が必要です。
この記事の結論
- 諸費用は物件価格の5-10%が目安(3,000万円なら150-300万円)
- 通常費用に加え、つなぎ融資や仮住まい費用が発生する場合あり
- 住宅ローン事務手数料は定率型(借入額×2.2%)が主流
- 買換え特例と3,000万円控除は併用不可
- 売り先行・買い先行でかかる費用が異なる
(1) 必ずかかる費用
新築マンション購入時に必ず発生する諸費用は以下の通りです:
| 費用項目 | 金額目安(購入価格3,000万円の場合) | 
|---|---|
| 住宅ローン事務手数料 | 3-5万円(定額型)または66万円(定率型2.2%) | 
| 住宅ローン保証料 | 0-60万円(保証料不要の銀行も増加) | 
| 登録免許税 | 3-9万円(軽減措置適用時) | 
| 司法書士報酬 | 8-15万円 | 
| 不動産取得税 | 0-30万円(軽減措置で大幅減額) | 
| 印紙税 | 1万円 | 
| 火災保険料 | 10-30万円(10年一括) | 
| 修繕積立基金 | 20-60万円 | 
| 管理準備金 | 数万円 | 
| 合計 | 約150-250万円(5-8%) | 
※国税庁・総務省・住宅金融支援機構の公表資料に基づく
(2) 買い替え特有の費用
買い替えの場合、売却と購入のタイミングにより以下の費用が追加で発生します:
つなぎ融資を利用する場合
- つなぎ融資金利:年2-4%×利用期間
- つなぎ融資事務手数料:10-20万円
売り先行の場合
- 仮住まい家賃:月10-20万円×3-6ヶ月
- 敷金・礼金:家賃2-3ヶ月分
- 引越し費用:20-40万円(2回分)
これらの費用を含めると、総額で物件価格の10%程度になることもあります。
住宅ローン関連費用の詳細
(1) 事務手数料(定額型・定率型)
住宅ローン事務手数料には、定額型と定率型の2種類があります:
定額型
- 金額:3-5万円程度
- メリット:初期費用が安い
- デメリット:金利が定率型より0.1-0.2%高い
定率型
- 金額:借入額×2.2%(3,000万円なら66万円)
- メリット:金利が低い
- デメリット:初期費用が高額
どちらが有利か ローン期間が長い(25年以上)場合は、定率型の方が総返済額は少なくなる傾向があります。例えば、借入額3,000万円・期間35年の場合:
定額型(金利0.7%):総返済額約3,409万円、事務手数料5万円
定率型(金利0.5%):総返済額約3,289万円、事務手数料66万円
差額:約59万円(定率型が有利)
(2) 保証料
住宅ローン保証料は、連帯保証人の代わりに保証会社を利用する場合の費用です:
保証料の支払方法
- 一括前払い型:借入額の0.2-2%程度(3,000万円なら6-60万円)
- 金利上乗せ型:借入金利に0.2%程度上乗せ
近年は保証料不要の銀行(ネット銀行など)が増えており、その分事務手数料が定率型になっているケースが多いです。
(3) 団体信用生命保険料
団体信用生命保険(団信)は、住宅ローン契約者が死亡・高度障害になった場合にローン残債が完済される保険です:
保険料
- 一般的な団信:金利に含まれる(追加費用なし)
- がん団信:金利+0.1-0.3%
- 3大疾病特約:金利+0.2-0.4%
団信は金利に含まれるため、初期費用としては発生しませんが、総返済額に影響します。
買い替え特有の費用(つなぎ融資・仮住まい)
(1) つなぎ融資の金利と手数料
つなぎ融資は、売却代金の入金前に購入資金が必要な場合に利用する短期融資です:
つなぎ融資の費用構造
金利:年2-4%程度
利用期間:通常3-6ヶ月
事務手数料:10-20万円
具体例(借入額2,000万円・期間3ヶ月の場合)
つなぎ融資金利(年3%):2,000万×3%×3ヶ月/12ヶ月=15万円
事務手数料:15万円
合計:約30万円
(2) ダブルローンとの費用比較
ダブルローンは、売却前に新居のローンを組み、2つのローンが一時的に重複する状態です:
ダブルローンの費用構造
旧居ローン返済:月10万円
新居ローン返済:月12万円
合計:月22万円×重複期間
つなぎ融資との比較(重複期間3ヶ月の場合)
- つなぎ融資:約30万円
- ダブルローン:約66万円(22万円×3ヶ月)
短期間(3ヶ月以内)であればつなぎ融資、それ以上ならダブルローンの金利負担が小さくなる可能性があります。
(3) 仮住まい費用
売り先行で新築マンションの完成を待つ場合、仮住まいが必要です:
仮住まい費用の内訳
賃貸マンション家賃:月15万円×6ヶ月=90万円
敷金:15万円(退去時返還)
礼金:15万円
引越し費用(2回):30万円
合計:約135万円(敷金除く)
新築マンションの完成が遅れると仮住まい期間が延び、費用が増加するリスクがあります。
登記費用と税金
(1) 所有権保存登記と登録免許税
新築マンションの所有権を登記する際の費用です:
登録免許税=固定資産税評価額×0.4%(本則)
軽減税率=固定資産税評価額×0.15%(2026年3月31日まで)
軽減措置の適用要件
- 床面積50㎡以上
- 自己の居住用であること
- 取得後1年以内の登記
例:固定資産税評価額2,100万円の場合
本則:2,100万×0.4%=8.4万円
軽減後:2,100万×0.15%=3.15万円
(2) 抵当権設定登記
住宅ローンを利用する場合、抵当権を設定する登記が必要です:
登録免許税=債権金額(借入額)×0.4%(本則)
軽減税率=債権金額×0.1%(2026年3月31日まで)
例:借入額3,000万円の場合
本則:3,000万×0.4%=12万円
軽減後:3,000万×0.1%=3万円
(3) 不動産取得税
不動産を取得した際にかかる地方税です。新築マンションの場合、大幅な軽減措置があります:
不動産取得税=(固定資産税評価額-1,200万円)×3%
軽減措置の適用要件
- 床面積50㎡以上240㎡以下
- 自己の居住用であること
例:固定資産税評価額2,100万円の場合
通常:2,100万×3%=63万円
軽減後:(2,100万-1,200万)×3%=27万円
(4) 印紙税
売買契約書と金銭消費貸借契約書(ローン契約)にそれぞれ印紙税がかかります:
| 契約金額 | 印紙税(軽減措置適用後) | 
|---|---|
| 1,000万円超5,000万円以下 | 1万円 | 
| 5,000万円超1億円以下 | 3万円 | 
※令和9年3月31日まで軽減措置が適用
買い替え時の資金計画と節税対策
(1) 買換え特例の活用
一定の要件を満たす場合、譲渡所得税の課税を繰り延べられる制度です:
主な適用要件
- 売却物件の所有期間が10年超
- 売却価格が1億円以下
- 売却した年の前年から翌年までに買換え資産を取得
- 買換え資産の床面積50㎡以上
この特例を適用すると、売却益に対する課税が買換え資産の売却時まで繰り延べられます。
(2) 住宅ローン控除の適用
住宅ローンを利用して新築マンションを購入した場合、年末のローン残高の0.7%を所得税・住民税から最大13年間控除できます:
控除額の計算
年間控除額=年末ローン残高×0.7%(上限21万円)
13年間の最大控除額=273万円
主な適用要件
- 自己の居住用であること
- 床面積50㎡以上
- 合計所得金額2,000万円以下
- 住宅ローンの返済期間10年以上
(3) 売却代金の充当方法
売却代金は以下のように活用するのが一般的です:
売却代金3,000万円の場合:
-住宅ローン残債:1,500万円
-諸費用:200万円
=手取り額:1,300万円
新居購入3,500万円の場合:
-頭金(売却手取り):1,300万円
-住宅ローン借入:2,200万円
売却代金を頭金に充当することで、借入額を減らし、月々の返済負担を軽減できます。
売り先行・買い先行の費用比較
(1) 売り先行のメリット・デメリット
メリット
- 売却代金を確実に確保できる
- 資金計画が立てやすい
- ダブルローンのリスクなし
デメリット
- 仮住まい費用が発生(月10-20万円×3-6ヶ月)
- 引越しが2回必要
- 新居探しに時間制限がある場合がある
費用目安
仮住まい費用:90-150万円(6ヶ月の場合)
引越し費用:30万円(2回分)
合計:約120-180万円
(2) 買い先行のメリット・デメリット
メリット
- 仮住まい不要
- 引越し1回で済む
- 新居探しに余裕がある
デメリット
- つなぎ融資またはダブルローンの金利負担
- 売却が遅れるとローン負担が増加
- 資金調達が課題
費用目安
つなぎ融資(3ヶ月):30-50万円
または
ダブルローン(6ヶ月):60-120万円
選択のポイント
- 売却までの期間が3ヶ月以内と見込める場合:買い先行(つなぎ融資)
- 売却まで半年以上かかる可能性がある場合:売り先行(仮住まい)
まとめ
買い替えで新築マンションを購入する際の諸費用は、物件価格の5-10%が目安となります。通常の購入費用に加え、つなぎ融資や仮住まい費用など買い替え特有の費用も考慮する必要があります。
住宅ローン事務手数料は定率型(借入額×2.2%)が主流で、長期ローンの場合は定率型の方が総返済額は少なくなります。また、不動産取得税や登録免許税は軽減措置により大幅に減額されるため、適用要件を確認しましょう。
買換え特例と3,000万円控除は併用できないため、売却益の額を試算し、どちらが有利か検討することが重要です。売り先行・買い先行はそれぞれメリット・デメリットがあるため、売却までの期間や資金状況を考慮して選択しましょう。
