中古マンション建て替え狙いの投資戦略とリスク【2025年版】

著者: Room Match編集部公開日: 2025/12/14

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中古マンション建て替え狙いとは:投資手法の概要

中古マンション建て替え狙いとは、老朽化したマンションを低価格で購入し、将来の建て替えによる資産価値の上昇を狙う投資手法です。立地の良い物件を安く取得できる魅力がある一方、建て替えが実現しないリスクや、高額な費用負担が発生する可能性があります。

この記事では、マンション建て替えの法的手続き、投資のメリット・デメリット、実現確率の現実、物件選びのポイントを詳しく解説します。投資判断に必要な情報を正確に理解し、リスクを踏まえた判断ができる内容になっています。

この記事のポイント

  • 建て替え実現確率は全マンションの0.27%と極めて低く、ギャンブル性の高い投資手法である
  • 建て替え費用は1戸あたり平均2,800万円、引越し・仮住まい費用で300-400万円が追加で必要
  • 2025年の法改正で建て替え決議要件が5分の4から4分の3に緩和される予定(施行時期は未定)
  • 容積率に余裕がある物件なら増設した部屋の売却で費用負担が免除される可能性がある
  • 立地と管理組合の機能が正常な物件を選ぶことが成功の鍵

(1) 老朽化マンションの建て替えによる価値上昇を狙う投資

中古マンション建て替え狙いは、築年数が古く老朽化したマンションを購入し、建て替えによって新築同様の資産価値を得ることを目指す投資手法です。

建て替え前は低価格で購入できるため、建て替え後に大幅な資産価値の上昇を期待できます。ただし、建て替えが実現しない場合は、老朽化マンションをそのまま所有し続けることになります。

(2) 低価格で立地の良い物件を取得できる可能性

建て替えを検討しているマンションは、築年数が古く建物自体の価値は低いものの、立地が良いケースが多くあります。

都心部や駅近の好立地でありながら、築40年以上の物件であれば、新築や築浅物件と比べて大幅に低価格で購入できます。建て替えが実現すれば、立地の良い新築マンションを割安で取得できることになります。

(3) 実現までに5~10年以上かかるリスク

建て替えは、検討開始から完成まで最短でも5-10年程度、長い場合は20年以上かかることもあります。合意形成に時間がかかるため、短期の投資には向きません。

また、検討を開始しても途中で頓挫する可能性もあり、投資資金が長期間拘束されるリスクがあります。

マンション建て替えの法的手続きと要件

マンション建て替えには、法的手続きと厳格な要件があります。以下、マンション建替円滑化法の仕組み、決議要件、法改正、手続きの流れ、反対者への対応について解説します。

(1) マンション建替円滑化法の仕組み

マンション建替円滑化法は、2002年に制定された法律で、老朽化マンションの建て替えを円滑化するため、組合設立や権利変換の手続きを定めています。

この法律により、建替組合を設立し、組合施行で建て替えを進めることができます。また、建て替えに反対する区分所有者への対応(売渡請求権)も規定されています。

(2) 建替え決議の要件(区分所有者の5分の4以上の同意)

建て替えを実施するには、区分所有者および議決権の各5分の4以上の賛成による建替え決議が必要です(区分所有法)。

5分の4以上という高いハードルは、建て替え実現の大きな障害となっています。特に、投資用物件が多いマンションや、高齢世帯が多いマンションでは、合意形成が困難です。

(3) 2025年法改正:決議要件を4分の3に緩和予定

2025年3月4日に区分所有法改正案が閣議決定され、建て替え決議要件が5分の4から4分の3に緩和される予定です。

これにより、建て替えの実現がやや容易になると期待されていますが、施行時期は未定です。また、4分の3でも依然として高いハードルであり、大幅に建て替えが増加するかは不透明です。

(4) 検討から完成までの流れ(検討→調査→決議→権利変換→建設)

建て替えの一般的な流れは以下の通りです。

ステップ 内容 期間の目安
1. 検討開始 建て替え検討委員会の設立 1-2年
2. 調査・計画 建物診断、事業計画の策定 2-3年
3. 建替え決議 区分所有者の5分の4以上の同意取得 1-2年
4. 権利変換 既存の権利を新しいマンションの権利に転換 1-2年
5. 建設 解体・新築工事 2-3年

合計で5-10年以上かかるのが一般的で、合意形成に難航する場合はさらに長期化します。

(5) 売渡請求権と反対者への対応

建替え決議が成立した場合、反対した区分所有者に対して、賛成者が時価での買取を請求できる権利(売渡請求権)があります。

これにより、反対者を排除して建て替えを進めることができますが、時価での買取が必要なため、賛成者の資金負担が増加する可能性があります。

建て替え狙い投資のメリットとデメリット

建て替え狙い投資には、明確なメリットとデメリットがあります。以下、メリット2点とデメリット4点を詳しく解説します。

(1) メリット:立地の良い物件を低価格で購入できる

建て替えを検討しているマンションは、築年数が古いため、市場価格が低く抑えられています。しかし、立地は良いケースが多く、都心部や駅近の好立地でありながら、新築の半額以下で購入できる場合もあります。

建て替えが実現すれば、立地の良い新築マンションを割安で取得できることになります。

(2) メリット:容積率に余裕がある物件なら費用負担が免除される可能性

容積率(敷地面積に対する延床面積の割合)に余裕がある物件では、建て替え時に住戸数を増やすことができます。

増設した住戸を売却することで、建て替え費用を相殺でき、既存の区分所有者の費用負担が免除される場合があります。このような物件は、建て替え狙い投資の理想的なケースです。

(3) デメリット:建て替え実現の不確実性

建て替えの最大のデメリットは、実現の不確実性です。検討を開始しても、合意形成ができず頓挫するケースが多くあります。

後述しますが、建て替え実現確率は全マンションの0.27%と極めて低く、大半のマンションは建て替えが実現していません。

(4) デメリット:1戸あたり平均2,800万円の費用負担

建て替えが実現した場合でも、高額な費用負担が発生します。1戸あたりの平均費用負担は約2,800万円です。

容積率に余裕がなく、増設した住戸の売却で費用を相殺できない場合は、この費用を現金で負担する必要があります。

(5) デメリット:引越し・仮住まい費用300~400万円の追加負担

建て替え期間中は、一時的に別の住居に移る必要があり、引越し費用と仮住まい費用が発生します。この費用は300-400万円程度が目安です。

建て替え費用に加えて、これらの追加費用も考慮する必要があります。

(6) デメリット:修繕積立金は調査費用のみ使用可、解体費・建設費には使えない

修繕積立金は、建て替えの調査費用にのみ使用でき、解体費や建設費には使用できません。

このため、建て替え費用は基本的に区分所有者が現金で負担する必要があり、修繕積立金が多額に積み立てられていても、費用負担を大幅に軽減できるわけではありません。

建て替えの現実:実現確率0.27%の厳しい実態

建て替え狙い投資を検討する際、最も重要なのは、建て替え実現の厳しい現実を理解することです。以下、実現確率、年間実績、築古マンションの実態、費用負担の増加、高齢化による合意形成の困難さについて解説します。

(1) 累計323件(2025年3月時点)、実現確率0.27%

国土交通省のデータによると、2025年3月時点で、全国のマンション建て替え実績は累計323件です。日本全国には約12万棟のマンションがあるため、建て替え実現確率は約0.27%と極めて低い水準です。

大半のマンションは建て替えが実現しておらず、建て替え狙い投資は、宝くじに近いギャンブル性の高い投資といえます。

(2) 2024年度は全国でわずか8棟のみ

国土交通省の統計によると、2024年度に建て替えが実施されたマンションは、全国でわずか8棟です。毎年数十棟程度しか建て替えが実現しておらず、建て替えは極めて稀なイベントです。

今後、築古マンションが急増する中で、建て替えが増加する可能性はありますが、現時点では実現確率は極めて低い状況です。

(3) 築40年以上のマンションでも約2%しか建て替えられていない

築40年以上のマンションは、全国に約126万戸ありますが、そのうち建て替えが実現したのは約2%に過ぎません。

築年数が古いからといって、建て替えが実現するわけではなく、合意形成や費用負担の問題で大半のマンションは建て替えられていません。

(4) 費用負担は1997-2001年平均378万円から2017-2021年平均1,941万円へ5倍以上に増加

国土交通省の調査によると、建て替え費用の住民負担は、年々増加しています。1997-2001年の平均負担額は378万円でしたが、2017-2021年には平均1,941万円と、5倍以上に増加しています。

建築コストの上昇により、今後も費用負担は増加する可能性が高く、費用負担が合意形成の大きな障害となっています。

(5) 1979年以前建築のマンションでは世帯主の約半数が70歳以上で合意形成が困難

1979年以前に建築されたマンションでは、世帯主の約半数が70歳以上です。高齢世帯は、建て替え後に長く住む見込みが少なく、高額な費用負担を嫌う傾向があります。

このため、高齢化が進んだマンションでは、合意形成が極めて困難です。

建て替え可能性の見極め方と物件選びのポイント

建て替え狙い投資で成功する可能性を高めるには、物件選びが重要です。以下、立地、容積率、管理組合、投資用物件の比率、要除却認定について解説します。

(1) 立地が最重要:駅近・都心部は成功確率が高い

建て替えが成功する物件の最大の共通点は、立地の良さです。駅近(徒歩10分以内)、都心部、人気エリアの物件は、建て替え後の販売価格が高く、増設した住戸の売却で費用を相殺しやすいため、建て替えが実現しやすい傾向にあります。

立地が悪い物件は、建て替え後も資産価値が上がらず、費用負担だけが重くなるため、建て替えが実現しません。

(2) 容積率に余裕がある物件を選ぶ(増設した部屋の売却で費用相殺)

容積率に余裕がある物件は、建て替え時に住戸数を増やすことができ、増設した住戸を売却することで費用を相殺できます。

一方、容積率を使い切った物件は、住戸数を増やせず、既存の区分所有者が全額負担する必要があるため、建て替えが実現しにくくなります。

物件購入前に、容積率に余裕があるかを必ず確認してください。

(3) 管理組合の機能が正常な物件(管理費・修繕積立金の滞納がない)

管理組合の機能が正常な物件は、建て替えの合意形成が進めやすい傾向にあります。管理費や修繕積立金の滞納が多い物件は、管理組合の運営に問題があり、建て替えの合意形成が困難です。

重要事項調査報告書で、管理費・修繕積立金の滞納状況を必ず確認してください。

(4) 投資用物件が多いマンションは合意形成が困難でリスクが高い

投資用物件(賃貸に出されている物件)が多いマンションは、建て替えの合意形成が極めて困難です。オーナーは居住していないため、建て替えに関心が薄く、費用負担を嫌う傾向があります。

物件購入前に、投資用物件の比率を確認し、居住者が多いマンションを選ぶことが重要です。

(5) 要除却認定を受けている物件の確認

要除却認定とは、耐震性不足や外壁剥離リスクなどで除却(解体)の必要性が認定されたマンションです。要除却認定を受けている物件は、建て替えや敷地売却の要件を満たしており、建て替えが進めやすい可能性があります。

ただし、要除却認定を受けていても、費用負担や合意形成の問題で建て替えが実現しないケースも多いため、慎重な判断が必要です。

まとめ:建て替え狙いはギャンブル性の高い投資

中古マンション建て替え狙いは、立地の良い物件を低価格で購入し、建て替えによる資産価値の上昇を狙う投資手法です。容積率に余裕がある物件なら、増設した住戸の売却で費用負担が免除される可能性があり、理想的なケースでは大きなリターンを得られます。

しかし、建て替え実現確率は全マンションの0.27%と極めて低く、2024年度は全国でわずか8棟しか建て替えが実施されていません。築40年以上のマンションでも約2%しか建て替えられておらず、大半のマンションは建て替えが実現していません。

建て替えが実現した場合でも、1戸あたり平均2,800万円の費用負担、引越し・仮住まい費用300-400万円が必要で、修繕積立金は調査費用のみに使用可能です。費用負担は1997-2001年の平均378万円から2017-2021年には1,941万円と5倍以上に増加しており、今後も増加する可能性が高い状況です。

2025年の法改正で建て替え決議要件が5分の4から4分の3に緩和される予定ですが、施行時期は未定で、4分の3でも依然として高いハードルです。また、高齢化が進んだマンションでは合意形成が極めて困難で、投資用物件が多いマンションでは建て替えがほぼ不可能です。

建て替え狙い投資で成功する可能性を高めるには、立地が良く(駅近・都心部)、容積率に余裕があり、管理組合の機能が正常な物件を選ぶことが重要です。ただし、これらの条件を満たしても建て替えが実現する保証はなく、極めてギャンブル性の高い投資手法であることを理解する必要があります。

建て替え狙い投資を検討する場合は、宅地建物取引士やマンション管理士などの専門家に相談し、リスクを十分理解したうえで判断してください。

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よくある質問

Q1建て替え狙いは本当に儲かるのですか?

A1現実には累計323件(2025年3月時点)しか建て替え実績がなく、全マンションに対する実現確率は約0.27%と極めて低い水準です。2024年度は全国でわずか8棟しか建て替えが実施されておらず、築40年以上のマンションでも約2%しか建て替えられていません。立地が良く(駅近・都心部)、容積率に余裕がある物件に限られるため、宝くじに近いギャンブル性の高い投資手法です。成功すれば大きなリターンを得られる可能性がある一方、大半のケースで建て替えが実現しないリスクがあることを理解する必要があります。

Q2建て替え費用は誰が負担するのですか?

A2基本的に区分所有者が負担します。1戸あたりの平均費用負担は約2,800万円で、さらに引越し・仮住まい費用で300-400万円が追加で必要です。費用負担は年々増加しており、1997-2001年の平均378万円から2017-2021年には1,941万円と5倍以上に増加しています。容積率に余裕があり、増設した住戸を売却できる場合のみ、費用負担が免除される可能性があります。修繕積立金は建て替えの調査費用にのみ使用でき、解体費や建設費には使用できません。

Q3建て替えにはどのくらい期間がかかりますか?

A3検討開始から完成まで最短でも5-10年程度、長い場合は20年以上かかることもあります。一般的な流れは、検討開始(1-2年)、調査・計画(2-3年)、建替え決議(1-2年)、権利変換(1-2年)、建設(2-3年)で、合計5-10年以上が目安です。合意形成に難航する場合はさらに長期化するため、短期の投資には向きません。また、検討を開始しても途中で頓挫する可能性もあり、投資資金が長期間拘束されるリスクがあります。

Q4建て替えに反対したらどうなりますか?

A4区分所有者および議決権の各5分の4以上が賛成すれば、建替え決議が成立します(2025年法改正で4分の3に緩和予定)。決議が成立した場合、反対した区分所有者は売渡請求権の対象となり、賛成者から時価で買取請求されます。これにより、反対者を排除して建て替えを進めることができますが、賛成者の資金負担が増加する可能性があります。反対者は、自分の意思に関わらず、物件を手放さなければならない点に注意が必要です。

Q52025年の法改正で何が変わりますか?

A52025年3月4日に区分所有法改正案が閣議決定され、建て替え決議要件が区分所有者および議決権の各5分の4以上から4分の3以上に緩和される予定です。これにより、建て替えの実現がやや容易になると期待されていますが、施行時期は未定です。また、4分の3でも依然として高いハードルであり、合意形成の困難さが大幅に解消されるわけではありません。高齢化が進んだマンションや投資用物件が多いマンションでは、引き続き建て替えが困難な状況が続くと考えられます。

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Room Match編集部

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