アメリカの固定資産税はいくら?州別税率・日本との違い・計算方法を解説

著者: Room Match編集部公開日: 2025/12/22

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アメリカの固定資産税とは

Property Tax(プロパティタックス)の概要

アメリカの固定資産税は、**Property Tax(プロパティタックス)**と呼ばれる地方税です。州・郡・市の各自治体が独自に税率を設定し、徴収します。

日本の固定資産税(標準税率1.4%)とは異なり、州により税率が大きく異なり(0.18%〜1.89%程度)、時価(Fair Market Value)ベースで評価されるため、築年数が経過しても評価額は下がりません。

課税対象(不動産・動産・無体財産)

アメリカの固定資産税は、以下の財産に課税されます。

  • 不動産(Real Property): 土地・建物
  • 動産(Personal Property): 自動車・機械設備・家具等(州により異なる)
  • 無体財産(Intangible Property): 株式・債券等(一部の州)

日本の固定資産税は不動産のみが対象ですが、アメリカは動産・無体財産も含む点が大きな違いです。

(出典: 自治体国際化協会「アメリカにおける財産税(固定資産税)について」)

税収の使途(学校・警察・消防等の地域サービス)

アメリカの固定資産税は、地域の学校・警察・消防・道路整備等の公共サービスに充当されます。特に学校の運営費の多くを固定資産税が賄うため、学区の質と税率が相関します。

良い学区(高い学校評価)のエリアは税率が高い傾向がありますが、教育環境が良いため不動産価値も高く維持される傾向があります。

この記事のポイント

  • アメリカの固定資産税率は州により大きく異なる(ルイジアナ0.18%〜ニュージャージー1.89%)
  • 日本と異なり時価(鑑定評価額)ベースで算出されるため、築年数が経過しても評価額は下がらず税負担が継続
  • テキサス州は税率約1.9%と高く、取引発生で課税標準額が見直され税額が2-8倍に急増するケースがある
  • 日本人投資家は日米両国で申告必要、外国税額控除で二重課税回避可能

アメリカの固定資産税の計算方法

評価額(Assessed Value)の決定方法

アメリカの固定資産税は、Assessed Value(課税評価額)×税率で計算されます。

Assessed Valueは、時価(Fair Market Value)をベースに算出されます。評価方法は自治体により異なりますが、一般的には以下の3つの手法が使われます。

評価手法 内容
Sales Approach(販売比較法) 近隣の類似物件の取引価格を参考に評価
Cost Approach(原価法) 再建築費用から減価償却を差し引いて評価
Income Approach(収益還元法) 賃料収入から評価額を算出

税率の決定(州・郡・市の合算)

税率は、州・郡・市の各自治体が独自に設定した税率を合算して決まります。

例(テキサス州の場合):

  • 州税: 0%(テキサス州は州レベルの固定資産税なし)
  • 郡税: 0.5%
  • 市税: 0.8%
  • 学区税: 1.3%
  • 合計: 2.6%

このように、複数の自治体が課税するため、税率は地域により大きく異なります。

計算例(具体的な試算)

条件:

  • 物件価格: 50万ドル
  • Assessed Value: 50万ドル(時価の100%)
  • 税率: 1.5%

計算:

固定資産税 = 50万ドル × 1.5% = 7,500ドル(年間)

円換算(1ドル=150円と仮定):

7,500ドル × 150円 = 1,125,000円(年間)

日本の固定資産税(標準1.4%)と比較すると、評価額が時価ベースのため、実質的な負担はアメリカの方が高くなる傾向があります。

州別の税率比較と投資家への注意点

税率の州間格差(ニュージャージー1.89% vs ルイジアナ0.18%)

州別の平均固定資産税率は以下の通りです。

平均税率 特徴
ニュージャージー 1.89% 全米最高税率
イリノイ 1.73% シカゴ都市圏は高税率
テキサス 1.60% 州所得税なしだが固定資産税は高い
カリフォルニア 0.76% 税額上昇が年2%に抑制される
ハワイ 0.28% 全米で低税率
ルイジアナ 0.18% 全米最低税率

(出典: フォレストクリーク「米国の固定資産税を州別に比較」)

最も高いニュージャージー州と最も低いルイジアナ州では、約10倍の差があります。

テキサス州の注意点(税率1.9%、取引発生で税額急増リスク)

テキサス州は、州所得税がない代わりに固定資産税が高く設定されています(平均1.6%、地域により2.6%超も)。

注意点:

  • 取引発生で課税標準額が見直される: 不動産売買が発生すると、取引価格をベースに評価額が見直され、税額が2-8倍に急増するケースがあります。
  • 想定利回りが確保できないリスク: 購入時の税額試算が甘いと、取引後の税額急増で想定利回りが確保できない可能性があります。

テキサス州での投資を検討する場合は、取引後の税額見直しを前提に収支シミュレーションを行うことが重要です。

(出典: クレディテック「アメリカ不動産の固定資産税が丸わかり!テキサスは要注意!」)

カリフォルニア州の特徴(年2%上限の税額上昇抑制)

カリフォルニア州は、**Proposition 13(プロポジション13)**という州法により、税額が毎年最大2%しか上がらない仕組みがあります。

メリット:

  • 物件価格が急騰しても、固定資産税の負担が抑えられる
  • 長期保有を前提とした投資に有利

デメリット:

  • 取引が発生すると評価額が見直され、税額が急増する

カリフォルニア州は平均税率0.76%と比較的低めですが、取引発生時の評価額見直しには注意が必要です。

ニューヨーク市の4クラス税率

ニューヨーク市は、不動産タイプ別に4つのクラスに分類し、異なる税率を適用しています。

クラス 対象 税率(Assessed Value比)
クラス1 1-3世帯住宅 21.045%
クラス2 集合住宅(4世帯以上) 12.267%
クラス3 公共設備 11.562%
クラス4 商業用不動産 10.694%

注意: この税率はAssessed Valueに対する税率で、Assessed ValueはFair Market Valueの一部(例: 6-45%)として算出されるため、実効税率は異なります。

(出典: 自治体国際化協会「アメリカにおける財産税(固定資産税)について」)

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日本との違い(制度・税率・評価方法)

税率の違い(アメリカ0.18-1.89% vs 日本標準1.4%)

項目 アメリカ 日本
税率 0.18-1.89%(州により異なる) 標準1.4%(全国統一)
評価方法 時価ベース(Fair Market Value) 公示地価・再建築価格の70%程度
課税対象 不動産・動産・無体財産 不動産のみ
税率決定権 州・郡・市が独自に設定 標準税率あり(条例で変更可)

税率だけを見ると日本の方が高いように見えますが、アメリカは時価ベースで評価されるため、実質的な負担はアメリカの方が高いケースが多くなります。

評価方法の違い(時価ベース vs 公示地価・再建築価格)

アメリカ:

  • 時価(Fair Market Value)ベースで評価
  • 築年数が経過しても評価額は下がらない
  • 物件価格が上昇すれば評価額も上がる

日本:

  • 土地: 公示地価の70%程度
  • 建物: 再建築価格×経年減点補正率(最低20%まで減価)
  • 築年数が経過すれば評価額は下がる

不動産取得・保有・売却時の税金比較

項目 アメリカ 日本
取得時 固定資産税のみ 不動産取得税、登録免許税
保有時 固定資産税(高め) 固定資産税(標準1.4%)
売却時 譲渡税(キャピタルゲイン税) 譲渡所得税

アメリカは取得時の税金(不動産取得税・登録免許税)がない代わりに、保有時の固定資産税が高めです。

学区の質と税率の相関(アメリカ独自の特徴)

アメリカでは、固定資産税の税収の多くが学校の運営費に充当されるため、学区の質と税率が相関します。

  • 良い学区: 税率が高い → 教育環境が良い → 不動産価値が高い
  • 悪い学区: 税率が低い → 教育環境が悪い → 不動産価値が低い

投資判断の際は、税率だけでなく学区の質・不動産価値の維持性も含めて総合的に判断することが重要です。

日本人投資家の税務(日米両国での申告)

日米両国での税務申告義務

日本居住者が米国不動産を所有する場合、日米両国で税務申告が必要です。

アメリカでの申告:

  • 賃料収入・売却益に対して連邦税・州税を申告
  • 固定資産税は経費として控除可能

日本での申告:

  • 全世界所得課税(米国の賃料収入・売却益も日本で申告)
  • 外国税額控除で二重課税を回避

外国税額控除で二重課税回避

外国税額控除は、日本居住者がアメリカで支払った税金を日本の所得税から控除し、二重課税を回避する制度です。

仕組み:

日本の所得税 = 全世界所得 × 税率 - アメリカで支払った税金(控除上限あり)

控除上限があるため、全額控除できない場合もあります。詳細は税理士への相談を推奨します。

2021年税制改正の影響(個人の減価償却節税は不可)

2021年税制改正により、個人の海外不動産減価償却による節税は不可となりました(法人は引き続き可能)。

改正前:

  • 米国不動産の建物部分(土地建物比率2:8)を27.5年で減価償却
  • 日本の給与所得と損益通算して節税

改正後:

  • 個人の海外不動産減価償却は認められない
  • 法人は引き続き減価償却可能

個人での節税効果は限定的となったため、法人での投資検討が増えています。

(出典: Univis America「米国不動産投資による節税」)

SALT控除上限(10,000ドル)の制約

アメリカでは、**SALT控除(State And Local Tax Deduction)**という制度があり、州・地方税を連邦所得税から控除できます。

ただし、2017年税制改正により、控除上限が年間10,000ドルに制限されました。

影響:

  • 高税率州(ニュージャージー、カリフォルニア等)では、固定資産税だけで10,000ドルを超える場合があり、控除しきれない税額が発生します。
  • 2025年以降、SALT控除上限の見直しが議論されています。

(出典: Reinvent「2025年アメリカ不動産投資の節税戦略」)

まとめ:アメリカの固定資産税の特徴と投資判断

アメリカの固定資産税(Property Tax)は、州・郡・市により税率が大きく異なり(0.18%〜1.89%)、時価ベースで評価されるため、日本の実質負担より高い傾向があります。

テキサス州は税率約1.9%と高く、取引発生で課税標準額が見直され税額が2-8倍に急増するリスクがあります。カリフォルニア州は税額が毎年最大2%しか上がらない仕組みで、物件価格上昇時も税負担が抑えられます。

日本人投資家は日米両国で申告が必要で、外国税額控除で二重課税を回避できます。2021年税制改正で個人の海外不動産減価償却による節税は不可となり(法人は引き続き可能)、SALT控除上限10,000ドルの制約もあります。

投資判断の際は、税率だけでなく学区の質・不動産価値の維持性・為替変動リスクも含めて総合的に判断し、米国公認会計士や税理士への相談を推奨します。

執筆時点: 2025年。税率・税制は州・郡・市により毎年変動する可能性があるため、最新情報はJETROや各州政府公式サイトでご確認ください。

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よくある質問

Q1アメリカの固定資産税は日本より高いのですか?

A1税率は州により大きく異なり、ニュージャージー1.89%〜ルイジアナ0.18%と最大10倍の差があります。時価(Fair Market Value)ベースで評価されるため、日本の実質負担より高い傾向があります。テキサス州は約1.9%と高税率で、取引発生時に課税標準額が見直され税額が2-8倍に急増するリスクがあります。日本の標準税率は1.4%ですが、評価額が公示地価の70%程度で築年数経過により減価するため、実質負担はアメリカより低めです。(出典: フォレストクリーク「米国の固定資産税を州別に比較」、クレディテック)

Q2州によってどれくらい税率が違いますか?

A2最も高いニュージャージー州1.89%、最も低いルイジアナ州0.18%で約10倍の差があります。カリフォルニア州は平均税率0.76%で、Proposition 13により税額が毎年最大2%しか上がらない仕組みのため、物件価格上昇時も税負担が抑えられます。ただし取引が発生すると評価額が見直され税額が急増します。投資先選定時に税率確認が必須です。(出典: フォレストクリーク「米国の固定資産税を州別に比較」)

Q3日本人が米国不動産投資する場合の税務は?

A3日米両国で申告が必要です。外国税額控除により、アメリカで支払った税金を日本の所得税から控除し、二重課税を回避できます。2021年税制改正で個人の海外不動産減価償却による節税は不可となりました(法人は引き続き可能)。SALT控除上限10,000ドルの制約があり、高税率州では控除しきれない固定資産税が発生します。米国公認会計士や税理士への相談を推奨します。(出典: Univis America「米国不動産投資による節税」、Reinvent)

Q4アメリカの固定資産税は築年数で下がりますか?

A4日本と異なり時価(鑑定評価額)ベースで算出されるため、築年数が経過しても評価額は下がらず税負担が継続します。物件価格が上昇すれば評価額も上がり、固定資産税も増加します。日本は建物評価額が経年減点補正率(最低20%まで)で減価しますが、アメリカは時価を反映するため、長期保有を前提とした収支シミュレーションが重要です。(出典: 国土交通省「アメリカの税制関係」)

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