アメリカの住宅ローン金利が注目される理由
「アメリカの住宅ローン金利って今どのくらい?」「日本と何が違うの?」と疑問に思う方は多いのではないでしょうか。
この記事では、アメリカの住宅ローン金利の仕組み、最新動向、日本との違いを、公式データとメディア報道を元に解説します。
海外不動産投資や米国移住を検討している方、または金融市場への理解を深めたい方の参考としてお役立てください。
この記事のポイント
- 2024年12月時点で30年固定金利は6.85%に達し、7月以来の高水準(2週連続上昇)
- アメリカは30年固定金利が主流(9割以上)で、日本の変動金利主流とは対照的
- 現在の借入者の73.3%が5.0%未満の金利で返済中(過去の低金利時代の恩恵)
- アメリカは「ノンリコースローン」で返済不能時は家を手放すだけで残債が帳消しになる
- 金利が3.1%から6.9%に上がると月々の返済額が54.2%増加する
(1) 不動産市場への影響が大きい
住宅ローン金利は、不動産市場全体に大きな影響を与えます。金利が上昇すると住宅購入のコストが増加し、買い手の需要が減少します。逆に金利が低下すると購入が促進され、市場が活性化します。
2024年には、金利上昇により住宅販売が減少し、不動産市場の活動が低下する傾向が見られました。
(2) 連邦準備制度(FRB)の政策金利との関係
住宅ローン金利は、連邦準備制度(FRB)の政策金利の影響を受けます。FRBが政策金利を引き上げると、住宅ローン金利も上昇する傾向があります。
2024年9月にFRBが利下げを実施した際、住宅ローン金利は一時的に6.08%まで低下しましたが、その後再び上昇しました。金利動向は政策金利だけでなく、インフレ率、雇用統計、市場の期待など複数の要因に影響されます。
アメリカの住宅ローン金利の仕組み
(1) 30年固定金利が主流(9割以上)
アメリカでは、30年固定金利(30-year fixed-rate mortgage)が最も一般的な住宅ローンの形態です。利用者の9割以上がこの形式を選択しています。
30年固定金利の特徴は以下の通りです。
- 金利が30年間固定: 借入時の金利が30年間変わらない
- 月々の返済額も固定: 返済計画が立てやすい
- 金利上昇リスクがない: 将来金利が上がっても影響を受けない
この仕組みにより、借り手は長期的な返済計画を安心して立てることができます。
(2) 変動金利(ARM)の種類と特徴
変動金利(ARM: Adjustable-Rate Mortgage)は、一定期間は固定金利で、その後は市場金利に連動して変動する住宅ローンです。主な種類は以下の通りです。
| 種類 | 固定期間 | 変動期間 |
|---|---|---|
| 3/1 ARM | 最初の3年 | 残り27年 |
| 5/1 ARM | 最初の5年 | 残り25年 |
| 7/1 ARM | 最初の7年 | 残り23年 |
| 10/1 ARM | 最初の10年 | 残り20年 |
変動金利は、固定期間中の金利が30年固定より低く設定されることが多いため、短期間での売却を予定している場合や、金利低下を期待する場合に選択されます。
(3) ノンリコースローンとは
アメリカの住宅ローンは「ノンリコースローン(Non-recourse loan)」が一般的です。これは、返済不能時に担保物件(住宅)を手放すだけで残債が帳消しになる仕組みです。
一方、日本は「リコースローン」で、返済不能時に家を手放しても残債が債務者に残ります。この違いは、アメリカが「家にお金を貸す」のに対し、日本が「人にお金を貸す」という融資の考え方の違いによるものです。
アメリカ住宅ローン金利の最新動向(2024年)
(1) 2024年12月時点で6.85%(7月以来の高水準)
Bloombergによると、2024年12月時点で30年物固定金利は6.85%に達し、2週連続で上昇しています。これは7月以来の高水準です。
金利上昇の主な要因は、インフレの持続、雇用市場の堅調さ、FRBの政策金利見通しの変化などが挙げられます。
(2) 9月のFRB利下げ後の金利推移
2024年9月、FRBは利下げを実施し、これを受けて住宅ローン金利は一時的に6.08%まで低下しました。しかし、その後の経済指標の改善やインフレ懸念の再燃により、金利は再び上昇しました。
ジェトロによると、2024年10月の住宅ローン金利は6.72%に上昇し、住宅販売に影響を与えました。
(3) 借入者の73.3%が5.0%未満の金利で返済中
興味深いのは、現在の借入者の73.3%が5.0%未満の金利で返済している点です。これは、2020-2021年の超低金利時代(2%台)に借り入れた人が多いためです。
この層は、金利が上昇した現在でも低金利の恩恵を受け続けています。一方、新規に住宅ローンを組む人は6-7%台の金利に直面しており、格差が生じています。
アメリカと日本の住宅ローン金利の違い
(1) 固定金利と変動金利の利用率の違い
アメリカと日本では、固定金利と変動金利の利用率が大きく異なります。
| 項目 | アメリカ | 日本 |
|---|---|---|
| 固定金利 | 9割以上 | 約1割 |
| 変動金利 | 1割未満 | 約9割 |
| 主流の金利タイプ | 30年固定 | 変動金利 |
アメリカでは長期的な返済計画の安定性を重視し、日本では低金利のメリットを享受するために変動金利を選択する傾向があります。
(2) ノンリコースローンとリコースローンの違い
前述の通り、アメリカはノンリコースローン、日本はリコースローンが一般的です。
| 項目 | アメリカ(ノンリコース) | 日本(リコース) |
|---|---|---|
| 返済不能時 | 家を手放すだけで残債消滅 | 家を手放しても残債が残る |
| リスクの所在 | 貸し手が負う | 借り手が負う |
| 融資の考え方 | 家にお金を貸す | 人にお金を貸す |
この違いは、債務者保護の考え方や、不動産市場の流動性にも影響を与えています。
(3) 金利水準の比較
2024-2025年時点での金利水準は以下の通りです。
- アメリカ: 30年固定金利 6-7%台
- 日本: 変動金利 0.3-0.5%台、固定金利(35年)1-2%台
日本の金利がアメリカより大幅に低いのは、日本銀行の金融緩和政策、デフレ傾向、経済成長率の違いなどが背景にあります。
金利が返済額に与える影響と借り換え戦略
(1) 金利3.1%と6.9%での返済額比較(54.2%増)
金利の変動が返済額にどれほど影響するか、具体例で見てみましょう。
借入額: 50万ドル(約7,500万円)、30年固定金利の場合
| 金利 | 月々の返済額 | 30年間の総支払額 |
|---|---|---|
| 3.1% | 2,137ドル | 約76.9万ドル |
| 6.9% | 3,297ドル | 約118.7万ドル |
| 差額 | +1,160ドル(+54.2%) | +41.8万ドル |
金利が3.1%から6.9%に上がると、月々の返済額が1,160ドル(約17万円)増加し、30年間で約41.8万ドル(約6,270万円)の差が生じます。
(2) 借り換え(リファイナンス)の動向
金利が低下すると、既存の住宅ローンを低金利のローンに借り換える「リファイナンス」が活発化します。
2024年7-9月に金利が7%台から6%台に下がった際、借り換え申込みが急増し、申込みの54%が借り換え目的でした。金利が1%下がるだけでも、総支払額が大幅に削減できるため、借り換えを検討する人が増えます。
(3) 借り換えの判断基準とタイミング
借り換えを検討する際の判断基準は以下の通りです。
- 金利差: 現在のローンと新しいローンの金利差が1%以上ある
- 総コスト: 借り換え手数料(2-5%)を含めても総支払額が削減できる
- 残存期間: ローンの残存期間が長いほど、借り換えのメリットが大きい
借り換えには手数料や諸費用がかかるため、金利が下がったからといってすぐに借り換えるのではなく、総コストで比較することが重要です。ファイナンシャルプランナーや住宅ローン専門家に相談することをおすすめします。
まとめ:アメリカの住宅ローン金利と今後の展望
アメリカの住宅ローン金利は、2024年12月時点で6.85%に達し、7月以来の高水準となっています。30年固定金利が主流で、借り手は長期的な返済計画を安心して立てることができます。
日本との大きな違いは、固定金利の利用率、ノンリコースローンの仕組み、金利水準です。金利が3.1%から6.9%に上がると月々の返済額が54.2%増加するため、金利動向は住宅購入の意思決定に大きな影響を与えます。
金利は毎週変動し、FRBの政策、インフレ率、雇用統計など複数の要因に影響されます。海外不動産投資や米国移住を検討している方は、最新の金利情報をTrading Economicsなどの公式サイトで確認し、専門家(ファイナンシャルプランナー、国際不動産アドバイザー)に相談しながら慎重に判断することをおすすめします。
