シニア向けマンションとは?自立生活を前提とした分譲住宅
シニア向けマンション購入を検討する際、「一般のマンションと何が違うのか」「介護が必要になったらどうなるのか」と不安に感じる方は少なくありません。
この記事では、シニア向けマンションの選び方、バリアフリー設備、費用、購入時の注意点を、実際のデータと専門機関の情報を元に解説します。
初めてシニア向けマンションを検討する方でも、将来を見据えた判断材料を得られるようになります。
この記事のポイント
- シニア向け分譲マンションは60歳以上が対象で、バリアフリー設計・24時間スタッフ常駐・緊急通報装置が標準装備
- 購入すると自分の資産になり、売却・賃貸・相続が可能(サ高住・有料老人ホームとの大きな違い)
- 購入費用は数千万円~数億円(中古は1,000万円台から)、月額費用は8~12万円程度が相場
- 要介護度が進むと住み替えが必要になるため、将来的な資金計画が重要
- 2024年調査で60歳以上の新築マンション契約者が8.1%と過去最高を記録
(1) シニア向け分譲マンションの定義
シニア向け分譲マンションとは、民間事業者が販売・運営するバリアフリーの分譲住宅で、見守りサービスや緊急時対応、充実した共用施設を備える住宅です。
主な特徴:
- バリアフリー設計(段差解消、手すり、車椅子対応の廊下幅等)
- 24時間スタッフ常駐
- 緊急通報装置
- レストラン・ジム・温泉等の共用施設
購入すると自分の資産になり、売却・賃貸・相続が可能です。
(2) 入居条件:60歳以上、自立した日常生活が送れること
基本的な入居条件は以下の通りです。
入居条件:
- 年齢: 60歳以上が一般的
- 健康状態: 自立して日常生活が送れること
要介護度が進むと、介護サービスがないため住み替えが必要になるケースがあります。
(3) 主な特徴:バリアフリー設計、24時間スタッフ常駐、緊急通報装置
シニア向けマンションの主な特徴は以下の通りです。
バリアフリー設備:
- 段差を少なくした構造
- 手すり(玄関、廊下、浴室、トイレ等)
- 車椅子対応の廊下幅(780mm以上)
- 引き戸の採用(開閉がラク)
見守り・緊急対応:
- 24時間スタッフ常駐
- 緊急通報装置(居室内のボタンで通報)
- 定期的な安否確認
共用施設:
- レストラン(食事サービス)
- フィットネスジム
- 温泉・大浴場
- ラウンジ・図書室
一般のマンションにはない、シニア層に特化したサービスが充実しています。
(4) 2024年市場動向:60歳以上の新築マンション契約者が8.1%と過去最高
2024年リクルート調査によると、首都圏の新築マンション契約者に占める60歳以上の割合が8.1%と過去最高を記録しました。
フージャースグループが2025年8月時点で3,307戸を供給し、シニア向け分譲マンション供給戸数No.1となっています。
シニア向けマンション市場は拡大傾向にあります。
シニア向けマンションの種類と他施設との違い
シニア向けマンションには複数の種類があり、それぞれ特徴が異なります。
(1) シニア向け分譲マンション:購入で資産になる
シニア向け分譲マンションは、購入することで自分の資産になります。
特徴:
- 所有形態: 購入(分譲)
- 資産性: 売却・賃貸・相続が可能
- 費用: 購入費数千万円~数億円、月額費用8~12万円程度
- 介護サービス: なし(要介護度が進むと住み替えが必要)
資産として残せることが最大のメリットです。
(2) サービス付き高齢者向け住宅(サ高住):賃貸で資産にならない
サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)は賃貸形式の高齢者向け住宅です。
特徴:
- 所有形態: 賃貸
- 資産性: なし(賃貸のため)
- 費用: 敷金・礼金、月額賃料10~30万円程度
- 介護サービス: 生活相談・安否確認(介護サービスは別途契約)
購入費用が不要で初期負担が少ない反面、資産として残せません。
(3) 有料老人ホーム:介護サービス付き、入居一時金制度
有料老人ホームは介護サービス付きの施設です。
特徴:
- 所有形態: 入居一時金制度(施設により異なる)
- 資産性: なし(入居権のみ)
- 費用: 入居一時金数百万円~数千万円、月額費用10~30万円程度
- 介護サービス: あり(介護付き有料老人ホーム)
要介護度が進んでも対応可能ですが、介護サービス付きのため費用が高額です。
(4) 一般マンションとの違い:見守りサービス、充実した共用施設
一般マンションとの違いは以下の通りです。
シニア向け分譲マンションの特徴:
| 項目 | シニア向けマンション | 一般マンション |
|---|---|---|
| バリアフリー | 標準装備 | 物件により異なる |
| 見守りサービス | あり | なし |
| 24時間スタッフ常駐 | あり | なし |
| 緊急通報装置 | あり | なし |
| 共用施設 | レストラン、ジム、温泉等 | 一般的な共用施設 |
| 月額費用 | 8~12万円程度 | 管理費・修繕積立費のみ |
シニア層に特化したサービスが充実している分、月額費用は一般マンションより高めです。
選び方のポイント:バリアフリー・立地・サービス内容
シニア向けマンションを選ぶ際の確認ポイントを解説します。
(1) バリアフリー設備:段差解消、手すり、車椅子対応の廊下幅
バリアフリー設備は、将来の身体機能低下に備えて重要です。
確認ポイント:
- 段差: 玄関・居室内・浴室の段差が解消されているか
- 手すり: 玄関・廊下・浴室・トイレに設置されているか
- 廊下幅: 車椅子対応(780mm以上)か
- 扉: 引き戸か(開閉がラク)
- 浴室: 滑りにくい床材、シャワーチェア設置可能か
現地見学時に、実際に動いて確認することを推奨します。
(2) 立地:医療・介護施設の近さ、交通利便性
立地は生活の質に大きく影響します。
確認ポイント:
- 医療施設: 総合病院、クリニックが徒歩圏内か
- 介護施設: 将来的に利用する可能性のある有料老人ホーム等が近くにあるか
- 交通利便性: 駅が近いか、バス路線が充実しているか
- 商業施設: スーパー、ドラッグストアが徒歩圏内か
将来的に外出が困難になった場合も考慮して、医療・介護施設の近さを重視してください。
(3) サービス内容:レストラン、ジム、温泉、見守りサービス
共用施設やサービス内容は、生活の充実度に影響します。
確認ポイント:
- レストラン: 食事サービスの有無、料金体系
- フィットネスジム: 高齢者向けのトレーニング機器
- 温泉・大浴場: 毎日利用可能か
- ラウンジ・図書室: 交流の場があるか
- 見守りサービス: 安否確認の頻度、緊急時の対応体制
月額費用に含まれるサービスと、別途料金が必要なサービスを明確に確認してください。
(4) 管理体制:24時間スタッフ常駐、緊急時対応
管理体制は安心感に直結します。
確認ポイント:
- スタッフ常駐: 24時間常駐か、夜間は宿直か
- 緊急通報装置: 居室内のボタンで通報可能か
- 緊急時対応: 救急車手配、医療機関連携体制
- 定期的な安否確認: 頻度、方法(訪問、電話等)
現地見学時に、スタッフの対応や雰囲気も確認してください。
費用と資金計画:購入費用・月額費用・住宅ローンの利用
シニア向けマンションの費用と資金調達方法を解説します。
(1) 購入費用:数千万円~数億円(中古は1,000万円台から)
購入費用は立地・設備により大きく異なります。
購入費用の相場:
- 新築: 数千万円~数億円
- 中古: 1,000万円台から
一般のマンションより高額になる傾向があります。
(2) 月額費用:8~12万円程度(管理費、修繕積立費、固定資産税)
購入後も継続的に月額費用がかかります。
月額費用の内訳:
| 項目 | 金額(目安) |
|---|---|
| 管理費 | 3~5万円 |
| 修繕積立費 | 2~3万円 |
| 固定資産税 | 年間20~40万円(月換算2~3万円) |
| その他(食事サービス等) | 利用分 |
| 合計 | 8~12万円程度 |
誰も住んでいなくても、管理費・修繕積立費・固定資産税は継続的に支払う必要があります。
(3) 住宅ローンの利用:年齢制限はあるがシニアでも利用可能
シニアでも住宅ローンは利用可能です。
確認ポイント:
- 年齢制限: 金融機関により異なる(完済時年齢80歳未満が一般的)
- 借入可能額: 年収・勤続年数・他の借入状況
- 金利タイプ: 固定金利・変動金利のメリット・デメリット
- 返済期間: 定年までの期間を考慮
金融機関や住宅ローンアドバイザーへの相談を推奨します。
(4) リバースモーゲージ等の資金調達手段
リバースモーゲージ(自宅を担保に生活資金を借りる制度)も選択肢の一つです。
特徴:
- 自宅を担保に借入
- 毎月の返済は利息のみ(元本は死亡後に自宅売却で返済)
- 年齢制限あり(60歳以上が一般的)
詳細は金融機関にご確認ください。
購入時の注意点:売却の困難・要介護時の住み替え
シニア向けマンション購入前に確認すべき注意点を解説します。
(1) 高額な購入費用と継続的な月額費用負担
購入費用が数千万円~数億円と高額で、月額費用も8~12万円程度かかります。
確認ポイント:
- 購入費用を自己資金で賄えるか
- 月額費用を継続的に支払えるか(年金収入等を考慮)
- 将来的な医療費・介護費用も考慮した資金計画
無理のない資金計画を立てることが重要です。
(2) 売却時の困難:購入層が限定的、シニア向け価値が査定に反映されないケースも
売却時に以下のリスクがあります。
売却時のリスク:
- 購入層が限定的(60歳以上のみ)で買い手が見つかりにくい
- シニア向け設備が一般の査定で評価されないケースがある
- 売却まで時間がかかる可能性
売却を前提とする場合は、事前に不動産会社に査定を依頼してください。
(3) 要介護度が進むと住み替えが必要
シニア向け分譲マンションは介護サービスがないため、要介護度が進むと住み替えが必要になります。
確認ポイント:
- 要介護時の住み替え先(有料老人ホーム等)の費用を試算
- 将来的な資金計画(売却益を住み替え費用に充当等)
将来的な資金計画を含めて検討してください。
(4) 物件数が限られており、希望エリアで見つからないケースも
シニア向け分譲マンションは物件数が限られており、希望エリアで見つからないケースもあります。
対応策:
- 複数のエリアを候補に入れる
- 中古物件も検討する
- 不動産会社に相談し、新規物件情報を入手
柔軟に検討することを推奨します。
(5) 高齢者の不動産売却時の注意点:判断能力低下、後期高齢者医療保険料への影響
高齢者が不動産を売却する際の注意点は以下の通りです。
注意点:
- 判断能力低下: 認知症等で判断能力が低下すると売却が困難(成年後見制度の利用が必要)
- 後期高齢者医療保険料: 売却益により翌年の保険料が上がる可能性
売却は判断能力がしっかりしているうちに行い、家族や専門家(宅建士、ファイナンシャルプランナー、弁護士等)への相談を推奨します。
まとめ:将来を見据えたシニアマンション選び
シニア向けマンションは、バリアフリー設計・24時間スタッフ常駐・緊急通報装置が標準装備で、自立したシニア層に適した住宅です。購入費用は数千万円~数億円、月額費用は8~12万円程度が相場です。
購入すると資産になりますが、要介護度が進むと住み替えが必要になるため、将来的な資金計画が重要です。
信頼できる不動産会社や金融機関に相談しながら、現地見学を複数回行い、バリアフリー設備・立地・サービス内容を確認し、無理のない資金計画を立てましょう。
