田舎の土地を売りたい理由と現状
相続した土地や使わなくなった田舎の土地を所有している方にとって、「売れるのか」「どうやって売ればいいのか」「売れない場合はどうすればいいのか」は切実な悩みです。
この記事では、田舎の土地が売れにくい理由、売却方法、相場の調べ方、売れない場合の対処法まで、土地を手放すために必要な情報を網羅的に解説します。
国土交通省の不動産情報ライブラリの取引データや、実務に基づく情報を提供します。
この記事のポイント
- 田舎の土地が売れにくい理由は、人口減少、交通アクセスの悪さ、インフラ未整備、法的制限など
- 相場は固定資産税評価額÷0.7で概算可能、または国土交通省の不動産情報ライブラリで確認
- 売却には長期的なスケジュールが必要(6ヶ月〜1年以上が目安)
- 売れない場合は土地活用、自治体への寄付、相続土地国庫帰属制度(2023年施行)などの選択肢がある
- 放置すると固定資産税や管理費用が継続的に発生し、不法投棄・不法侵入のリスクもある
(1) 相続した土地を手放したい
田舎の土地を売りたい理由として、最も多いのが「相続した土地」です。
相続した土地は、以下のような状況になりやすいです。
- 使い道がない:親が住んでいた家や農地を相続したが、自分は都市部に住んでおり使う予定がない
- 管理が困難:遠方にあり、草刈りや清掃などの管理が負担になる
- 固定資産税の負担:使わない土地でも毎年固定資産税がかかる
これらの理由から、土地を手放したいと考える方が増えています。
(2) 固定資産税や管理費用の負担
田舎の土地でも、所有している限り以下の費用が継続的に発生します。
| 費用項目 | 年間の目安 |
|---|---|
| 固定資産税 | 評価額×1.4%(標準税率) |
| 都市計画税 | 評価額×0.3%(都市計画区域内の場合) |
| 草刈り・清掃 | 年2〜3回で数万円 |
| 不法投棄対策 | 状況により |
これらの費用負担が、土地を手放したい理由の一つとなっています。
(3) 放置するリスク
土地を放置すると、以下のリスクがあります。
- 不法投棄:ゴミや産業廃棄物が不法投棄される可能性があり、所有者が処理費用を負担する場合がある
- 不法侵入:管理されていない土地は不法侵入されやすく、事故が起きた場合に所有者が責任を問われる可能性がある
- 雑草・樹木の繁茂:周辺住民に迷惑をかけ、近隣トラブルに発展する可能性がある
- 資産価値の低下:放置期間が長いほど、建物の老朽化や土地の荒廃が進み、資産価値が下がる
これらのリスクを避けるため、早期の売却や処分が推奨されます。
田舎の土地が売れにくい理由
田舎の土地が売れにくい主な理由を4つ解説します。
(1) 人口減少と需要の低下
田舎(地方・郊外)では人口減少が進んでおり、土地の需要が低下しています。
人口減少の影響:
- 若年層が都市部に流出し、地方の人口が減少
- 新規の土地購入者(住宅建築者)が減少
- 将来的にさらに土地の需要が低下する可能性がある
この傾向により、田舎の土地は都市部に比べて売れにくくなっています。
(2) 交通アクセスの悪さ
田舎の土地は、交通アクセスが悪い場合が多く、これが売却の障害となります。
アクセスの問題:
- 最寄り駅から遠い(車がないと生活できない)
- 公共交通機関が少ない(バスの本数が少ない等)
- 高速道路のインターチェンジから遠い
通勤・通学に不便なエリアは、購入希望者が限られます。
(3) インフラ未整備や法的制限
田舎の土地は、インフラが整備されていない場合や、法的制限がある場合があります。
| 項目 | 問題 |
|---|---|
| 上下水道 | 上下水道が整備されていない(浄化槽が必要) |
| ガス | 都市ガスがない(プロパンガス) |
| 道路 | 接道義務を満たさない(建築できない) |
| 用途地域 | 市街化調整区域(建築制限が厳しい) |
これらの問題がある土地は、購入希望者が限られます。
(4) 境界の不明確さや建物の老朽化
田舎の土地は、境界が不明確な場合や、古い建物が残っている場合が多くあります。
境界の問題:
- 境界標がない、または損壊している
- 隣接地との境界が曖昧で紛争のリスクがある
- 境界確定に時間と費用がかかる
建物の問題:
- 古い建物(空き家)が残っており、解体費用がかかる
- 買主が解体の手間を嫌い、購入を避ける
これらの問題が、売却の障害となります。
田舎の土地の相場と調べ方
田舎の土地の相場を調べる3つの方法を解説します。
(1) 固定資産税評価額から概算する方法
最も簡単な方法は、固定資産税評価額から概算する方法です。
計算式: 実勢価格(概算)= 固定資産税評価額 ÷ 0.7
例:
- 固定資産税評価額が700万円の場合
- 実勢価格(概算)= 700万円 ÷ 0.7 = 1,000万円
この方法はあくまで目安であり、実際の取引価格は立地・地形・需要により大きく異なります。
(2) 国土交通省の不動産情報ライブラリで確認
国土交通省の不動産情報ライブラリでは、全国の土地取引価格データを確認できます。
確認手順:
- 不動産情報ライブラリにアクセス
- 「不動産取引価格情報検索」を選択
- 都道府県・市区町村を選択
- 土地の取引事例を確認
このデータは実際の取引価格に基づいており、相場を把握する上で信頼性が高い情報です。
(3) 一括査定サービスで市場価格を把握
最も確実な方法は、複数の不動産会社に一括査定を依頼することです。
一括査定のメリット:
- 複数社の査定額を比較できる
- 市場価格を素早く把握できる
- 各社の売却戦略を聞ける
注意点:
- 査定額はあくまで「売れる可能性のある価格」であり、必ずその価格で売れるわけではない
- 複数社から連絡が来るため、対応の手間がかかる
一括査定サービスを利用して、複数の視点から相場を把握することが重要です。
田舎の土地の売却方法と手順
田舎の土地を売却する主な方法と、売却の流れを解説します。
(1) 不動産会社仲介(媒介契約の種類)
最も一般的な方法は、不動産会社に仲介を依頼する方法です。
媒介契約の種類:
| 契約種類 | 特徴 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 専属専任媒介 | 1社のみに依頼、自己発見取引も不可 | 大手に任せたい場合 |
| 専任媒介 | 1社のみに依頼、自己発見取引は可能 | 1社に集中して販売してほしい場合 |
| 一般媒介 | 複数社に依頼可能 | 幅広く買い手を探したい場合 |
田舎の土地の場合:
- 地域の不動産会社に依頼する(地元のネットワークが強い)
- 複数社に一般媒介で依頼し、幅広く買い手を探す方法も有効
(2) 空き家バンクへの登録
自治体が運営する「空き家バンク」に登録する方法もあります。
空き家バンクの特徴:
- 無料または低料金で登録できる
- 田舎暮らしを希望する層にアピールできる
- 自治体によっては購入者への補助金制度がある
注意点:
- 登録しても必ず売れるわけではない
- 自治体によって対応が異なる(事前に確認が必要)
(3) 買取業者への売却
不動産買取業者に売却する方法もあります。
買取業者のメリット:
- 素早く現金化できる(数週間〜1ヶ月程度)
- 仲介手数料がかからない
- 訳あり物件(境界不明確、建物老朽化等)でも買い取ってくれる可能性がある
買取業者のデメリット:
- 買取価格が市場価格の6〜7割程度になる
- 業者によって買取条件が異なる
早急に現金化したい場合や、訳あり物件の場合に検討する価値があります。
(4) 売却の流れと必要書類
売却の流れ:
- 相場調査(一括査定等)
- 不動産会社と媒介契約を締結
- 売却活動(広告掲載、内覧対応等)
- 買主との条件交渉
- 売買契約の締結
- 決済・引き渡し
必要書類:
- 登記識別情報(権利証)
- 固定資産税納税通知書
- 身分証明書・印鑑証明書
- 境界確認書類(ある場合)
(5) 売却にかかる費用と税金
売却費用:
| 費用項目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 仲介手数料 | 売却価格×3%+6万円+消費税(上限) |
| 測量費用 | 30万〜80万円(境界確定測量が必要な場合) |
| 建物解体費用 | 80万〜200万円(木造住宅の場合) |
| 譲渡所得税 | 売却益の20.315%〜39.63%(所有期間により異なる) |
譲渡所得税の計算:
- 所有期間5年以下:39.63%(短期譲渡所得)
- 所有期間5年超:20.315%(長期譲渡所得)
- 取得費や諸費用を差し引いて計算
- 特別控除(3,000万円控除等)が適用される場合もある
詳細は国税庁の公式サイトでご確認ください。
売れない場合の対処法と選択肢
売却活動をしても売れない場合の対処法を4つ解説します。
(1) 土地活用(駐車場・太陽光発電・賃貸)
売却が困難な場合は、土地活用を検討する方法があります。
| 活用方法 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 駐車場経営 | 初期投資が少ない | 需要がある場所に限られる |
| 太陽光発電 | 安定した収入が見込める | 初期投資が大きい(数百万円) |
| 賃貸(農地・資材置き場) | 定期的な収入が得られる | 借り手を見つけるのが困難な場合がある |
これらの活用方法により、固定資産税や管理費用をカバーできる可能性があります。
(2) 自治体への寄付
自治体に土地を寄付する方法もあります。
注意点:
- 多くの自治体は固定資産税収入減を懸念して受け入れない
- 受け入れ条件は自治体により異なる(事前確認が必要)
- 公共目的に利用できる土地(道路・公園等に隣接)は受け入れられやすい
寄付を希望する場合は、まず自治体の担当窓口に相談してください。
(3) 無償譲渡サービスの活用
専門業者が運営する「無償譲渡サービス」を利用する方法もあります。
特徴:
- 売れない土地を無償で引き取ってくれる
- 手数料がかかる場合がある(数万円〜数十万円)
- 引き取り条件は業者により異なる
無償譲渡は最終手段として検討する価値があります。
(4) 相続土地国庫帰属制度(2023年施行)
2023年4月に施行された「相続土地国庫帰属制度」を利用する方法もあります。
制度の概要:
- 相続した土地を国庫に帰属させる(国に引き取ってもらう)制度
- 審査手数料(1.4万円/筆)と負担金(20万円〜)が必要
- 審査要件がある(建物がない、担保権がない、境界が明確等)
注意点:
- 相続した土地に限られる(購入した土地は対象外)
- すべての土地が認められるわけではない(審査がある)
詳細は法務局の公式サイトでご確認ください。
まとめ:田舎の土地を手放すために押さえるべきポイント
田舎の土地が売れにくい理由は、人口減少、交通アクセスの悪さ、インフラ未整備、法的制限などです。
相場は固定資産税評価額÷0.7で概算できますが、国土交通省の不動産情報ライブラリで実際の取引事例を確認するのが確実です。一括査定サービスで複数社から査定を取得することも推奨します。
売却には長期的なスケジュール(6ヶ月〜1年以上)が必要で、複数社の一括査定、相場よりやや低めの価格設定、境界確定、古い建物の解体などが売却成功のコツです。
売れない場合は、土地活用(駐車場・太陽光発電・賃貸)、自治体への寄付、無償譲渡サービス、相続土地国庫帰属制度(2023年施行)などの選択肢があります。
土地を放置すると、固定資産税や管理費用が継続的に発生し、不法投棄・不法侵入のリスクもあります。早期に売却または処分の判断をすることが重要です。
個別の状況に応じて、不動産会社・税理士・司法書士などの専門家に相談し、最適な方法を選択してください。
