リバースモーゲージ型住宅ローンとは
自宅を活用した資金調達を検討する際、「リバースモーゲージ型住宅ローンとは何か」「通常のリバースモーゲージと何が違うのか」「相続人に負担がかからないか」と悩む方は多いのではないでしょうか。
リバースモーゲージ型住宅ローンは、自宅を担保に借り入れ、毎月利息のみを返済し、死亡後に元金を一括返済する仕組みの住宅ローンです。この記事では、リバースモーゲージ型住宅ローンの仕組み、メリット・デメリット、利用条件を、住宅金融支援機構の公式情報や最新の利用実績をもとに解説します。
高齢者でも住宅購入・建て替えを検討している方が、具体的な仕組み・注意点を把握できるようになります。
この記事のポイント
- リバースモーゲージ型住宅ローンは毎月利息のみ返済、元金は死亡後に一括返済する仕組み
- ノンリコース型(99.7%が選択)なら担保物件売却で完済できなくても相続人への請求なし
- 資金用途は住宅購入・建て替え・リフォームに限定、生活費や医療費には使えない
- 対象年齢は60歳以上が主流、一部金融機関では50歳から利用可能
- 借入限度額は担保評価額の50〜60%が上限で、最大5,000万円まで(長期優良住宅は55〜65%)
リバースモーゲージ型住宅ローンの仕組みと特徴
(1) 毎月利息のみ返済、元金は死亡後一括返済
リバースモーゲージ型住宅ローンの最大の特徴は、毎月の返済が利息のみで、元金は死亡後に一括返済する点です。通常の住宅ローンでは元金と利息を毎月返済しますが、リバースモーゲージ型では元金返済が不要なため、毎月の支払い負担が大幅に軽減されます。
死亡後、担保物件を売却するか、相続人が一括返済することで、借入金を完済します。
(2) 通常のリバースモーゲージとの違い(資金用途)
リバースモーゲージ型住宅ローンと通常のリバースモーゲージの主な違いは、資金用途です。
| 項目 | リバースモーゲージ型住宅ローン | 通常のリバースモーゲージ |
|---|---|---|
| 資金用途 | 住宅関連(購入・建て替え・リフォーム) | 自由(生活費・医療費等も可) |
| 提供元 | 住宅金融支援機構(リ・バース60) | 民間金融機関 |
| 融資限度額 | 最大5,000万円(担保評価額の50〜60%) | 金融機関により異なる |
| 金利 | 変動金利1.8%〜2.5%程度(2025年) | 変動金利2.0%〜3.5%程度 |
(出典: 住宅金融支援機構 リ・バース60)
リバースモーゲージ型住宅ローンは、住宅関連に資金用途が限定される代わりに、金利が低めに設定されています。
(3) ノンリコース型とリコース型の違い
リバースモーゲージ型住宅ローンには、ノンリコース型とリコース型の2種類があります。
- ノンリコース型(99.7%が選択): 担保物件の売却代金で借入額を完済できなくても、相続人への請求はありません。担保評価額の下落リスクを金融機関が負担します。
- リコース型: 担保物件の売却代金で借入額を完済できない場合、相続人が不足分を返済する必要があります。
ほとんどの利用者がノンリコース型を選択しており、相続人への負担を回避できます。
(4) リ・バース60(住宅金融支援機構)の仕組み
リ・バース60は、住宅金融支援機構が提供する60歳以上向けリバースモーゲージ型住宅ローンの仕組みです。政府全額出資の機構が仕組みを提供しており、民間金融機関と提携して融資が行われます。
2025年1月からは全期間固定金利タイプも導入され、金利上昇リスクを回避できる選択肢が増えました。
リバースモーゲージ型住宅ローンのメリット
(1) 60歳以上でも住宅購入・建て替えが可能
通常の住宅ローンでは、完済時年齢が80歳までとされることが多く、高齢者が長期ローンを組むのは困難です。リバースモーゲージ型住宅ローンは、60歳以上でも住宅購入・建て替えが可能で、老後の住み替えや住環境改善を実現できます。
一部金融機関(りそな銀行等)では50歳から利用可能な商品もあり、選択肢が広がっています。
(2) 毎月の支払い負担が軽減(利息のみ)
毎月の返済は利息のみで、元金返済が不要なため、月々の負担が大幅に軽減されます。年金収入で生活する高齢者にとって、毎月の支出を抑えられる点は大きなメリットです。
金利は変動金利で年1.8%〜2.5%程度(2025年現在)が主流で、通常の住宅ローンと比較しても低めに設定されています。
(3) ノンリコース型で相続人への請求なし(99.7%が選択)
ノンリコース型を選択すれば、担保物件の売却代金で借入額を完済できなくても、相続人への請求はありません。担保評価額の下落リスクを金融機関が負担するため、相続人に負債を残す心配がありません。
実際、99.7%の利用者がノンリコース型を選択しており、相続人への影響を最小限に抑えています。
(4) 長期優良住宅は融資限度額が優遇される
長期優良住宅を購入・建て替える場合、融資限度額が優遇されます。通常の住宅では担保評価額の50〜60%が上限ですが、長期優良住宅では55〜65%まで引き上げられます。
耐久性・省エネ性能に優れた住宅を購入する際、より多くの資金を借り入れることが可能です。
リバースモーゲージ型住宅ローンのデメリット・注意点
(1) 変動金利で金利上昇リスクがある
リバースモーゲージ型住宅ローンの多くは変動金利で、金利上昇局面では利息負担が増加する可能性があります。2025年1月から全期間固定金利タイプが導入されたため、金利上昇リスクを回避したい方は固定金利を選択することを検討してください。
(2) 担保物件の評価額下落リスク
担保物件の評価額が下落すると、借入限度額が減少する可能性があります。リコース型の場合、評価額下落により売却代金で完済できず、相続人に返済義務が生じるリスクがあります。
ノンリコース型を選択することで、このリスクを回避できます。
(3) 資金用途は住宅関連に限定(生活費不可)
リバースモーゲージ型住宅ローンの資金用途は、住宅購入・建て替え・リフォームに限定されています。老後の生活費や医療費には使用できません。
生活費や医療費に資金が必要な場合は、通常のリバースモーゲージを検討する必要があります。
(4) 長生きリスク(利息総額の増加)
想定より長寿の場合、返済期間が長期化し、利息総額が増加します。毎月利息のみを支払い続けるため、長期間にわたって利息負担が発生します。
金利が低めに設定されているとはいえ、長期的な利息負担を考慮する必要があります。
(5) 相続人への影響(物件売却または一括返済が必要)
死亡後、相続人は担保物件を売却するか、借入金を一括返済する必要があります。物件を引き継ぎたい場合、相続人が一括返済できる資金を用意する必要があります。
相続人と事前に話し合い、返済方法を決めておくことをおすすめします。
利用条件と申込の流れ
(1) 対象年齢(60歳以上、一部50歳から)
リ・バース60の対象年齢は60歳以上です。一部金融機関(りそな銀行等)では50歳から利用可能な商品もあります。
夫婦で申し込む場合、申込者・連帯債務者の両方が対象年齢を満たす必要があります。
(2) 借入限度額(担保評価額の50〜60%、最大5,000万円)
借入限度額は、担保評価額の50〜60%が上限で、最大5,000万円までです。長期優良住宅の場合、55〜65%まで優遇されます。
一部金融機関(SBI新生銀行等)では、最大8,000万円まで融資可能な商品もあります。
(3) 対象物件の条件
対象物件は、一戸建て住宅または共同住宅(マンション)です。ただし、金融機関により対象エリア・物件種別に制限がある場合があります。
- 一戸建て: 敷地面積・建物面積の基準あり
- マンション: 耐震基準・管理状況の確認あり
- 地方物件: 金融機関により対象外となる場合あり
詳細は金融機関にご確認ください。
(4) 申込の流れ(審査・契約・融資)
リバースモーゲージ型住宅ローンの申込の流れは以下の通りです。
- 金融機関への相談: 商品内容・金利・手数料を確認
- 仮審査: 年齢・収入・担保物件の評価を審査
- 本審査: 詳細な審査・担保評価を実施
- 契約: 金銭消費貸借契約を締結
- 融資実行: 借入金が振り込まれる
審査には1〜2ヶ月程度かかる場合があります。
(5) 主要金融機関の商品比較
主要金融機関のリバースモーゲージ型住宅ローンを比較しました。
| 金融機関 | 対象年齢 | 借入限度額 | 金利(2025年) |
|---|---|---|---|
| 三井住友銀行 | 60歳以上 | 最大5,000万円 | 変動1.8%〜 |
| りそな銀行 | 50歳以上 | 最大5,000万円 | 変動1.9%〜 |
| SBI新生銀行 | 60歳以上 | 最大8,000万円 | 変動2.0%〜 |
(出典: 各金融機関公式サイト、2025年1月時点)
金融機関により条件が異なるため、複数社で比較検討することをおすすめします。
まとめ:リバースモーゲージ型住宅ローンを検討する際のポイント
リバースモーゲージ型住宅ローンは、毎月利息のみを返済し、元金は死亡後に一括返済する仕組みで、60歳以上の高齢者でも住宅購入・建て替えが可能です。ノンリコース型(99.7%が選択)を選べば、相続人への請求がなく、安心して利用できます。
ただし、資金用途は住宅関連に限定され、変動金利による金利上昇リスク、長生きリスクによる利息総額の増加といった注意点もあります。
利用を検討する際は、以下のポイントを確認してください。
- 資金用途: 住宅購入・建て替え・リフォームに限定
- 金利タイプ: 変動金利か全期間固定金利か
- ノンリコース型の選択: 相続人への請求を回避
- 相続人との事前相談: 物件売却または一括返済の方針を決める
- 複数社比較: 金利・融資限度額・対象物件を比較検討
信頼できるファイナンシャルプランナーや金融機関に相談しながら、無理のない資金計画を立て、老後の住環境改善を実現してください。
