不動産登記事項証明書とは:基本概念と必要な場面
不動産の売買や相続、融資を受ける際に「登記事項証明書が必要」と言われ、どのように取得すればよいか迷う方は少なくありません。
この記事では、不動産登記事項証明書の基本概念から取得方法(窓口・オンライン・郵送)、記載内容の見方、手数料や注意点まで、2025年の最新情報を元に解説します。
初めて登記事項証明書を取得する方でも、スムーズに申請できるようになります。
この記事のポイント
- 登記事項証明書は法務局に記録された不動産の所有者情報や権利関係を証明する公的書類
- 取得方法は窓口(600円・即日交付)、オンライン郵送(520円)、オンライン窓口受取(490円)の3種類
- 全部事項証明書、現在事項証明書など種類があり、不動産取引では全部事項証明書が一般的
- 地番・家屋番号は住所と異なる場合があるため、事前確認が必須
- 2025年4月1日から手数料が改定されており、オンライン申請が最も安い
(1) 登記事項証明書の定義と役割
登記事項証明書とは、法務局の登記簿に記録された土地や建物の所有者情報、権利関係を証明する公的書類です。
主な記載内容は以下の通りです。
| 記載項目 | 内容 |
|---|---|
| 表題部 | 不動産の所在地、面積、建物構造など物件を特定する情報 |
| 権利部甲区 | 所有権に関する登記事項(所有者の氏名、住所、所有権移転の履歴等) |
| 権利部乙区 | 抵当権、地上権など所有権以外の権利に関する登記事項 |
登記事項証明書は、不動産取引の当事者や金融機関が物件の権利関係を確認するために広く利用されています。
(2) 登記簿謄本から登記事項証明書への名称変更(2008年)
2008年に登記簿が全国的にコンピュータ化され、従来の「登記簿謄本」から「登記事項証明書」に名称が変更されました。
内容は同じで、名称のみが異なります。そのため、実務では今でも「登記簿謄本」と呼ばれることがありますが、正式名称は「登記事項証明書」です。
(3) 主な活用場面(売買・相続・融資等)
登記事項証明書は、以下のような場面で必要となります。
- 不動産売買: 売主・買主が物件の権利関係を確認
- 相続: 相続人が被相続人の不動産を把握
- 融資: 金融機関が担保物件の権利関係を確認
- 登記申請: 所有権移転登記や抵当権設定登記の添付書類
- 訴訟: 不動産関連の訴訟で権利関係を証明
登記事項証明書は手数料のみで誰でも取得可能で、身分証明書や印鑑は不要です。
登記事項証明書の種類:全部事項・現在事項・一部事項・閉鎖事項
登記事項証明書には、記載内容によって4種類があります。
(1) 全部事項証明書(過去から現在までの全履歴)
全部事項証明書は、抹消された事項を含めて過去から現在までの全ての履歴が記載された証明書です。
不動産取引では、過去の権利関係を含めて確認する必要があるため、最も一般的に使用されます。
抹消された登記には下線が引かれており、現在は有効でないことが一目でわかります。
(2) 現在事項証明書(現在有効な事項のみ)
現在事項証明書は、現在有効な登記事項のみが記載された証明書です。
抹消された登記は記載されないため、現在の権利関係のみを確認したい場合に利用されます。
ただし、不動産取引では過去の履歴も重要なため、全部事項証明書の方が一般的です。
(3) 一部事項証明書・閉鎖事項証明書
一部事項証明書は、登記簿に記録された事項のうち、特定の部分のみを抽出した証明書です。
閉鎖事項証明書は、閉鎖された登記記録が記載された証明書で、建物が滅失した場合などに利用されます。
これらは特殊な用途で使用されるため、一般的な不動産取引ではあまり使用されません。
取得方法の選択肢:窓口・オンライン・郵送の比較
登記事項証明書の取得方法は、窓口申請、オンライン申請、郵送申請の3種類があります。
(1) 窓口申請(600円・即日交付)
法務局の窓口で申請書を提出し、手数料600円を支払うと、10〜20分程度で即日交付されます。
急ぎで証明書が必要な場合や、地番・家屋番号がわからない場合は、窓口での申請がおすすめです。
法務局の窓口は平日8時30分〜17時15分のみで、土日祝日は休業です。
(2) オンライン申請(郵送520円・窓口受取490円)
法務局が提供する「登記・供託オンライン申請システム(かんたん証明書請求)」を利用すると、オンラインで申請できます。
オンライン申請は平日8時30分〜21時まで利用可能で、窓口よりも受付時間が長く、手数料も安くなります。
| 取得方法 | 手数料(2025年4月1日改定後) | 特徴 |
|---|---|---|
| 窓口申請 | 600円 | 即日交付、地番確認可 |
| オンライン郵送 | 520円 | 最も手数料が安い |
| オンライン窓口受取 | 490円 | 最も手数料が安く、窓口で受取 |
オンライン申請には電子証明書や専用ソフトは不要で、Webブラウザから簡単に申請できます。
(3) 郵送申請の手順と注意点
郵送申請は、法務局に申請書と手数料(収入印紙600円)を郵送する方法です。
返信用封筒(切手を貼付)を同封する必要があり、手続きに数日かかります。
急ぎの場合や手続きをシンプルにしたい場合は、窓口申請またはオンライン申請がおすすめです。
(4) 必要書類と手数料(2025年4月1日改定版)
登記事項証明書の取得には、以下の情報が必要です。
- 土地: 所在地、地番
- 建物: 所在地、家屋番号
- 手数料: 窓口600円、オンライン郵送520円、オンライン窓口受取490円
2025年4月1日に手数料が改定されており、オンライン郵送は500円→520円、オンライン窓口受取は480円→490円に値上げされました。
身分証明書や印鑑は不要で、手数料のみで誰でも取得可能です。
登記事項証明書の見方:表題部・権利部甲区・権利部乙区
登記事項証明書は、表題部、権利部甲区、権利部乙区の3つのセクションで構成されています。
(1) 表題部(所在地・面積・建物構造)
表題部には、不動産の所在地、地番、地目(土地)、面積、建物構造(建物)など、物件を特定する情報が記載されています。
| 記載項目 | 内容 |
|---|---|
| 所在 | 土地・建物の所在地 |
| 地番/家屋番号 | 登記上の番号(住所とは異なる場合あり) |
| 地目 | 土地の用途(宅地、田、畑等) |
| 地積/床面積 | 土地の面積または建物の床面積 |
| 構造 | 建物の構造(木造、鉄筋コンクリート造等) |
表題部の情報は、物件が正しいかどうかを確認するために重要です。
(2) 権利部甲区(所有権の履歴)
権利部甲区には、所有権に関する登記事項が記載されています。
具体的には、所有者の氏名、住所、所有権移転の日付、原因(売買、相続等)が記録されています。
抹消された登記には下線が引かれており、過去に所有者が変わった履歴を確認できます。
(3) 権利部乙区(抵当権等の権利)
権利部乙区には、抵当権、地上権など、所有権以外の権利に関する登記事項が記載されています。
抵当権が設定されている場合、担保権者(金融機関等)の名称、債権額、設定日が記録されています。
抵当権が抹消されると下線が引かれ、現在は有効でないことがわかります。
(4) 抹消登記の確認方法(下線の意味)
登記事項証明書では、抹消された登記には下線が引かれています。
例えば、抵当権が完済されて抹消された場合、抵当権の記載に下線が引かれ、現在は有効でないことが一目でわかります。
不動産取引では、現在有効な権利関係を正確に把握することが重要なため、下線の有無を必ず確認してください。
取得時の注意点:地番・家屋番号の確認と手数料改定
登記事項証明書を取得する際には、以下の点に注意が必要です。
(1) 地番・家屋番号の事前確認方法(固定資産税納税通知書・権利書)
地番・家屋番号は、住所とは異なる場合があります。
地番・家屋番号を間違えると正しい証明書が取得できないため、事前確認が必須です。
確認方法は以下の通りです。
- 固定資産税納税通知書: 毎年送付される通知書に記載
- 権利書: 登記済証または登記識別情報通知に記載
- 法務局の地番照会サービス: 法務局に問い合わせて確認
事前に地番・家屋番号を確認しておくと、申請がスムーズに進みます。
(2) オンライン申請の受付時間(平日8時30分〜21時)
オンライン申請は平日8時30分〜21時まで利用可能です。
土日祝日や夜間は利用不可のため、申請のタイミングに注意してください。
法務局の窓口よりも受付時間が長いため、平日の日中に窓口に行けない方にはオンライン申請がおすすめです。
(3) 法務局窓口の営業時間(平日8時30分〜17時15分)
法務局の窓口は平日8時30分〜17時15分のみで、土日祝日は休業です。
窓口申請を希望する場合は、営業時間内に訪問する必要があります。
急ぎで証明書が必要な場合は、窓口申請で即日交付を受けるのが最も早い方法です。
まとめ:登記事項証明書取得の次のステップ
不動産登記事項証明書は、不動産の権利関係を証明する公的書類で、売買、相続、融資など様々な場面で必要となります。
取得方法は窓口、オンライン、郵送の3種類があり、手数料や交付速度が異なります。2025年4月1日から手数料が改定されており、オンライン申請が最も安く、窓口申請が最も早い選択肢です。
地番・家屋番号は住所と異なる場合があるため、事前に確認しておくとスムーズに申請できます。
不動産取引や相続など重要な手続きでは、登記事項証明書を取得した後、司法書士や税理士などの専門家に相談することを推奨します。
