不動産IDとは何か
不動産業界のデジタル化が進む中、「不動産ID」という言葉を耳にする機会が増えています。不動産IDは、国土交通省が推進する17桁の不動産識別番号で、物件情報の連携や取引の透明性向上を目的としています。
この記事では、不動産IDの概要、不動産番号・登記識別情報との違い、活用メリット、確認方法、2024年の最新動向を、国土交通省の公式情報を元に解説します。
不動産業界関係者や投資家の方が、不動産IDの仕組みと活用方法を理解できるようになります。
この記事のポイント
- 不動産IDは、国土交通省が推進する17桁の識別番号(不動産番号13桁+特定コード4桁)
- 2022年3月にガイドラインが策定され、2023年から社会実装が開始
- 物件情報連携の効率化、取引の透明性向上、不動産DXの推進が期待される
- 不動産番号(13桁)、登記識別情報(12桁)との違いを理解する必要がある
- 2024年11月に官民連携の取り組みが本格始動し、今後の普及が加速する見込み
不動産IDとは何か
(1) 国土交通省が推進する17桁の識別番号
国土交通省によると、不動産IDは、建物・土地を一意に識別する17桁の番号です。不動産業界全体でのデータ連携を円滑にし、業務効率化や取引の透明性向上を実現することを目的としています。
(2) 構成(不動産番号13桁+特定コード4桁)
不動産IDは、以下の構成になっています。
| 部分 | 桁数 | 内容 |
|---|---|---|
| 不動産番号 | 13桁 | 2004年導入の固定識別番号(土地は一筆ごと、建物は一戸ごと) |
| 特定コード | 4桁 | 不動産番号に追加される識別コード |
合計で17桁の番号が不動産IDとなります。
(3) 2022年3月ガイドライン策定
2022年3月、国土交通省は「不動産IDルール ガイドライン」を策定しました。これにより、不動産業界全体での統一的な不動産IDの運用が可能になりました。
不動産番号・登記識別情報との違い
不動産IDと混同しやすい「不動産番号」「登記識別情報」との違いを解説します。
(1) 不動産番号(13桁の固定識別番号)
定義:
- 2004年に導入された13桁の固定識別番号
- 土地は一筆ごと、建物は一戸ごとに付番される
用途:
- 登記事項証明書に記載
- 相続登記申請書では、不動産番号のみで所在・地番の詳細記載を省略可能
確認方法:
- 登記事項証明書
- 登記識別情報通知書
- オンライン登記情報提供サービス(有料)
(2) 登記識別情報(12桁のシークレット番号)
定義:
- 2005年から導入された12桁のシークレット番号
- 旧権利証に代わるもので、権利者に通知される
用途:
- 不動産の登記申請時に必要
- 権利者の本人確認に使用
重要な注意点:
- 法務省によると、紛失すると再発行できないため厳重保管が必要
- 登記識別情報通知書の12桁のシークレット番号は、一度開封すると再封印できない特殊シールで保護されている
(3) 3つの番号の関係性
| 番号 | 桁数 | 導入年 | 用途 |
|---|---|---|---|
| 登記識別情報 | 12桁 | 2005年 | 登記申請時の本人確認 |
| 不動産番号 | 13桁 | 2004年 | 不動産の固定識別 |
| 不動産ID | 17桁 | 2022年(ガイドライン) | 物件情報連携・DX推進 |
不動産IDの活用メリット
不動産IDの導入により、以下のメリットが期待されます。
(1) 物件情報連携の効率化
不動産IDを使うことで、異なるシステム間での物件情報の連携がスムーズになります。例えば、不動産ポータルサイト、管理会社のシステム、金融機関のシステムなどで、同一物件を正確に識別できます。
(2) 取引の透明性向上
不動産IDにより、物件の履歴(過去の取引、修繕履歴等)を一元管理できるため、取引の透明性が向上します。買主・借主にとって、より安心して取引できる環境が整います。
(3) 不動産DXの推進
不動産IDは、不動産業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)の基盤となります。例えば、AI査定、オンライン内見、電子契約などの先進的なサービスを連携させる際の共通インフラとして機能します。
(4) 業務効率化の具体例
不動産IDを活用することで、以下のような業務効率化が可能になります。
- 物件検索の高速化: 複数のデータベースから同一物件を瞬時に特定
- 入力ミスの削減: 手作業での住所入力が不要になり、誤入力が減少
- データ重複の解消: 同一物件が複数のシステムに重複登録されるリスクを回避
確認方法と取得手順
不動産番号(不動産IDの基となる13桁の番号)は、以下の方法で確認できます。
(1) 登記事項証明書での確認
法務局で取得できる登記事項証明書に、不動産番号が記載されています。窓口申請と郵送申請が可能です。
(2) 登記識別情報通知書での確認
不動産の権利者に通知される登記識別情報通知書にも、不動産番号が記載されています。
(3) オンライン登記情報提供サービス(有料)
登記情報提供サービスを利用すると、オンラインで不動産番号を確認できます。有料サービスで、利用時間に制限があります(休日・時間外は利用不可)。
(4) 法務局での取得方法
法務局の窓口で「登記事項証明書交付申請書」を記入し、手数料(1通600円程度)を支払うことで取得できます。
2024年の最新動向と今後の展望
(1) 2023年 不動産ID官民連携協議会設立
2023年、300以上の企業・団体が参加する「不動産ID官民連携協議会」が設立されました。不動産業界全体でのID活用を推進する体制が整備されています。
(2) 2024年11月 ビジネス効率化の官民取り組み本格始動
日本経済新聞によると、2024年11月、不動産IDを使ったビジネス効率化の官民取り組みが本格始動しました。実証実験から実用化へと移行する段階に入っています。
(3) 社会実装の加速と普及状況
不動産IDの社会実装は2023年から開始されましたが、まだ全ての不動産業務で利用できるわけではありません。今後の普及状況を注視する必要があります。
(4) 今後の展望
不動産IDが広く普及すれば、以下のような変化が期待されます。
- 全国統一の物件データベース: 全ての不動産が一意に識別され、情報連携が容易に
- 取引コストの削減: 業務効率化により、仲介手数料や管理コストが削減される可能性
- 新サービスの創出: 不動産IDを活用した革新的なサービスが登場する可能性
不動産IDの重要性と注意点
不動産IDは、不動産業界のデジタル化を推進する重要な基盤です。物件情報の連携、取引の透明性向上、業務効率化など、多くのメリットが期待されます。
ただし、社会実装は始まったばかりで、全ての業務で利用できるわけではありません。今後の普及状況や、業界団体・国土交通省の動向を注視することが重要です。
不動産業界関係者は、不動産IDの基礎知識を理解し、自社の業務にどのように活用できるかを検討することをおすすめします。
まとめ
不動産IDは、国土交通省が推進する17桁の識別番号(不動産番号13桁+特定コード4桁)です。2022年3月にガイドラインが策定され、2023年から社会実装が開始されました。
物件情報連携の効率化、取引の透明性向上、不動産DXの推進が期待される一方、まだ全ての業務で利用できるわけではなく、今後の普及が課題です。
不動産番号(13桁)、登記識別情報(12桁)との違いを理解し、自社の業務にどのように活用できるかを検討しましょう。2024年11月に官民連携の取り組みが本格始動し、今後の動向に注目が集まっています。
